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ミステリの祭典

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クワバカ
クワガタを愛し過ぎちゃった男たち

作家 中村計
出版日2020年08月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 メルカトル
(2022/03/31 23:13登録)
クワバカ―クワガタムシを愛し、人生のすべてを賭してしまった男たちのことだ。ハブに咬まれても採集をやめない男、一回の勝負に数十万円を費やす“闘クワガタ士”、採集のためにインドネシアへ移住した世界的コレクター。そんな男たちを取材するうちに、著者自身もクワガタの沼へ少しずつはまっていった。そして、そのクワバカたちにも底知れない魅力を感じていき―。少年時代を想起させ、なぜか羨ましさも感じさせる不思議な男たちを描く、傑作“昆虫”ノンフィクション。
『BOOK』データベースより。

クワガタは男のロマンだ、クワガタこそ男達を冒険に駆り立てる対象物だ、といった声が聞こえてきそうな熱い作品です。
ノンフィクションにしてはストーリー性があり、男子なら誰もが好きなクワガタの謎を解き明かし、クワガタに魅入られて人生を捧げた男達の人生を追う、稀有な一冊となっています。

まずはかつて幻、黒いダイヤと呼ばれたオオクワガタ。兎に角1ミリでも大きな野生の個体を求めて、コレクターたちは奔走します。又、採集から養殖への変遷の歴史なども語られており、興味深く読めました。今でこそ道の駅とかで数千円でつがいで売られているオオクワガタ、私の子供の頃の憧れであり続けた存在であり、どうしても手の届かない夢でした。続いて登場するのが、悔しい事に名前すら知らなかった表紙の写真のマルバネクワガタ。マニアが最後に辿り着くと言われる大歯型、中歯型、小歯型が存在し、トラップにすら掛からない難敵であります。ハブに襲われる恐怖を抱きながら奄美大島でマルバネを探し求める男たちの執念は凄まじいものがあります。そしてドルクスチャンプ杯というクワガタバトルで、パラワン、テイオウの二大オオヒラタクワガタに国産ヒラタクワガタで対抗する勝負の行方。最後はインドネシアの昆虫図鑑を作る為、インドネシアに移住した男の物語。
いずれ、大人になっても子供の頃の夢を忘れる事が出来ず、そのままコレクターの道を突き進んだ、ロマン溢れる男たちの熱きストーリーを追ったノンフィクションの傑作だと思います。

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