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ミステリの祭典

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プシュケの涙
由良シリーズ

作家 柴村仁
出版日2009年01月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 メルカトル
(2022/03/11 22:46登録)
「こうして言葉にしてみると…すごく陳腐だ。おかしいよね。笑っていいよ」「笑わないよ。笑っていいことじゃないだろう」…あなたがそう言ってくれたから、私はここにいる―あなたのそばは、呼吸がしやすい。ここにいれば、私は安らかだった。だから私は、あなたのために絵を描こう。夏休み、一人の少女が校舎の四階から飛び降りて自殺した。彼女はなぜそんなことをしたのか?その謎を探るため、二人の少年が動き始めた。一人は、飛び降りるまさにその瞬間を目撃した榎戸川。うまくいかないことばかりで鬱々としてる受験生。もう一人は“変人”由良。何を考えているかよく分からない…そんな二人が導き出した真実は、残酷なまでに切なく、身を滅ぼすほどに愛しい。
『BOOK』データベースより。

正直、ミステリとしてもラノベとしても薄味です。しかし、そこにスパイスが加わればこれ程までに輝いた青春小説に成り代わるという見本の様な作品です。そのスパイスとは由良のキャラの魅力であったり、幾つかのサプライズという事になるでしょう。文体ひとつ取ってみても、お世辞にも完成されているとは言い難いですし、ミステリの読者にとってはいささか物足りなさを覚えるかも知れません。ですが、それを補って余りある新味が私には感じられました。

シリーズ化は必然とは言えないと思います。真実は不明ですが、もしかしたら編集者から続編を催促されたのかも知れないし、作者が最初からそのつもりだったかも知れません。其処に関してはこれから追々読んでいって、良し悪しを判断したいところですね。興味がある人は読んでみるのも良いですが、必ずしも私のような高評価を与えるとは思えません。評者は本作に対して不当に甘い評価をしている可能性も否定できませんので。

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