愚者の毒 |
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作家 | 宇佐美まこと |
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出版日 | 2016年11月 |
平均点 | 7.75点 |
書評数 | 4人 |
No.4 | 8点 | 虫暮部 | |
(2023/03/02 12:44登録) 全体の構図の予測が付いても、エピソードの肉付けがしっかりしていて消化試合のような感じは無い。確かに解説に書かれている通り、犯人に同化してしまうな~。 強いて文句を言えばラスト。妻が何故か方言で呼びかけ、それが夫の心の糸を切った。この部分、どちらの気持もピンと来ない。 |
No.3 | 7点 | メルカトル | |
(2022/03/09 22:46登録) 一九八五年、上野の職安で出会った葉子と希美。互いに後ろ暗い過去を秘めながら、友情を深めてゆく。しかし、希美の紹介で葉子が家政婦として働き出した旧家の主の不審死をきっかけに、過去の因縁が二人に襲いかかる。全ての始まりは一九六五年、筑豊の廃坑集落で仕組まれた、陰惨な殺しだった…。絶望が招いた罪と転落。そして、裁きの形とは?衝撃の傑作! 『BOOK』データベースより。 暗くて重いです。そういうのが嫌いな方にはお薦めしません。ジャンルはサスペンスとして登録されていますが、個人的見解は本格ミステリです。トリックとしては中盤に明らかにされるものが、山田風太郎や竹本健治みたいな感じで結構面白いと思いました。それ程派手ではありませんけどね。それよりも本作にはもっと大胆な・・・が。おっとこれ以上は書くのは無粋というものでしょう。 誰が誰を殺したのかを含めて、なかなか複雑な物語で三部構成になっています。第二章を読み始めた時は、いきなり場面が切り替わり、物凄く違和感を覚えましたが、最後まで読んでそれが計算されつくしたものだと悟りました。まあ何はともあれ日本推理作家協会賞受賞作ですから、それだけのものは備えた作品とは言えましょう。結局私は作者にしてやられた一人です。詳細は伏せますが、そういうのもミステリの醍醐味のひとつですから、作者の勝利でしたね。 |
No.2 | 8点 | 蟷螂の斧 | |
(2019/08/17 20:58登録) 第70回日本推理作家協会賞受賞。裏表紙より~『一九八五年、上野の職安で出会った葉子と希美。互いに後ろ暗い過去を秘めながら、友情を深めてゆく。しかし、希美の紹介で葉子が家政婦として働き出した旧家の主の不審死をきっかけに、過去の因縁が二人に襲いかかる。全ての始まりは一九六五年、筑豊の廃坑集落で仕組まれた、陰惨な殺しだった…。絶望が招いた罪と転落。そして、裁きの形とは?衝撃の傑作!』~ なんと女性心理をうまく書く「男性」作家さんなどと思いながらの読書。読後「女性」作家さんと知り納得(苦笑~大変失礼しました)。他の書評をみると、ある仕掛けはすぐわかるなどの評が多いですね。私はホワイダニットのことばかりが頭の中にあり、まんまと引っかかってしまいました。重い題材だけれど後味は良い。ミステリー的にフェアに書こうとする著者の意志が伝わってくる作品でした。 |
No.1 | 8点 | 名探偵ジャパン | |
(2019/06/04 00:24登録) この作者はホラー作家という印象があったので、本作を読んで「こういうものも書くのか」と嬉しい驚きを感じました。迷ったうえでジャンルは「サスペンス」と登録しましたが、限りなく「本格」に近いサスペンスだと思います。事件の根底には「社会派」っぽい背景もあり、一冊で色々なミステリの要素を味わえる豪華な構成になっています。 ガチガチのミステリ作家が書いたものではないため、本格ミステリを読み慣れた読者であれば仕掛けに早々に感づいてしまうかもしれませんが、そのうえでも楽しめると思います。 第一章では2015年と1985年。第二章では1965年と三つの時代で物語は進み、第三章ではそれまでの事件を総括し、全ての謎が小気味よく解かれていきます。 ドラマとしても重厚でハードカバーが似合う作品ですが、文庫書き下ろしだと知って意外でした。もっと人目に触れていい傑作だと思います。(「第70回日本推理作家協会賞」を受賞しています) |