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ミステリの祭典

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僕は僕の書いた小説を知らない

作家 喜友名トト
出版日2018年09月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 メルカトル
(2022/04/04 22:53登録)
「失ってしまう記憶の代わりに、最高の物語を残したい」小説家の岸本アキラは、ある朝目覚めると“昨日”の記憶がないことに気付く。実は彼は二年前の事故により、記憶が毎日リセットされてしまうのだ。そしてそんな困難な状況でも、アキラは小説を書き進めていた。絶望的な不安と闘い葛藤しながら、決して“明日”を諦めまいともがく感動ストーリー。
『BOOK』データベースより。

何故買ったのか、今思えばよく分からない作品。多分その時の気分と評価の高さに惹かれたのだと思います。前向性健忘という脳の病気を交通事故で背負ってしまった主人公の、悪戦苦闘ぶりが読み所です。過去の例としては西尾維新の『掟上今日子シリーズ』がありますね。一晩寝ると前日の記憶が無くなっているというものです。
小説家岸本アキラの一人称で書かれている為、その時々の心の揺れ様が手に取るように分かります。本人はややハードボイルドを気取っているので、感情移入はし難いと思われます。まあしかし、あまり深刻になり過ぎずそれなりに前向きに生きようとする姿には、多少の共感は覚えます。

それにしても、カフェに勤め、何かとアキラに接触してくる翼の存在が大きいですね。彼女なくしてこの物語は成立しえないでしょう。ストーリーはアキラと翼の付かず離れずの付き合いと、小説の締め切りが迫る中障碍を負い乍ら何とか試行錯誤して、完成に漕ぎ着けようと奮闘するアキラの頑張りを軸に進行していきます。
どちらかと言うと感性で読む作品なので派手な展開などはありませんが、最後にちょっとしたサプライズが読者へのプレゼントとして用意されています。若い世代により受けそうな作風ですね。あと、ある意味メタな部分もあります。

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