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ミステリの祭典

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nukkamさんの登録情報
平均点:5.44点 書評数:2812件

プロフィール| 書評

No.1532 5点 白い眠り
レイア・ルース・ロビンソン
(2016/08/05 05:32登録)
(ネタバレなしです) 米国のレイア・ルース・ロビンソン(1951年生まれ)は病院の検査技師や用務員としてのキャリアを持つ女性作家ですが本人のコメントにれば「作家になることを目指したので医療に携わる仕事に就いた」だそうな。まじめに医者を目指している人の反感を買いかねない発言のような気もしますが(笑)。とはいえ1988年発表のデビュー作である本書(新潮文庫版でメディカル・スリラーと紹介されています)で描かれている病院の雰囲気は医学に疎い私には十分にリアリティーを感じさせました。主人公の研修医エヴリン・サトクリフ(新潮文庫版ではイブリン)を中心に複雑な人間関係や内面心理を丁寧に描いており、キャラクター小説と言ってもおかしくありません。もっとも時に相手を追い詰めるような口調で質問するエヴリンのキャラクターは好き嫌いが分かれそうです。退屈な作品ではありませんが殺伐とした緊張感のようなものがずっと続くのでこれはこれで読んでて疲れます。さりげなく提示される動機の伏線などミステリーとして巧妙な部分もあるけれど「病院物語」要素の方が強いように思います。このシリ-ズ、後年作になるほど本格派推理小説の謎解きが充実していきます。


No.1531 5点 ローリング邸の殺人
ロジャー・スカーレット
(2016/08/03 07:28登録)
(ネタバレなしです) 本格派推理小説のケイン警視シリーズ第5作にしてスカーレットの最終作となったのが1933年発表の本書です。登場人物がみんないわくありげな態度をとり、どこかつかみどころのないような展開が続くので中盤のサスペンスは不足気味ですが主要登場人物を6人に絞り込んでいるためか意外と読みやすいです。結末のどんでん返しが見事で、(強引な仕掛けではあるので)読者によってはあまりにも非現実的な真相だとお気に召さないかもしれませんがアイデアとしては非常に秀逸で個人的には十分に楽しめました。


No.1530 5点 赤毛のレドメイン家
イーデン・フィルポッツ
(2016/08/03 07:24登録)
(ネタバレなしです) 英国の文豪イーデン・フィルポッツ(1862-1960)は長命の上に作品数も膨大で、ミステリーも19世紀から書いているそうですが代表作とされるのは1920年代から1930年代にかけて発表されているようです。1922年発表の本書は本格派推理小説ですが、風景や恋愛を丁寧過ぎるぐらいたっぷりと描いていて謎解きに集中したい読者にはまわりくどく感じるかもしれません。発表された時代は本格派推理小説黄金時代に突入していますがこの作風はむしろ19世紀のミステリー(普通小説に犯罪要素が加わった程度の過渡期的な作品)に近いかも。謎解きの出来栄え自体も大げさな芝居を見ているような感じで現代の読者が見破るのはそれほど難しくないと思います。江戸川乱歩が「万華鏡の色彩」を引用してべた誉めしていることでも有名ですが華麗さよりもむしろ重苦しさを感じます。


No.1529 5点 マイアミ沖殺人事件
デニス・ホイートリー
(2016/08/03 05:34登録)
(ネタバレなしです) 「世界最初の袋綴じ本」と紹介している文献もある1936年発表の本書はジョー・リンクス原案、デニス・ホイートリー著という共著である旨が記載されています。リンクスについてはよく知りませんがデニス・ホイートリー(1897-1977)は映画にもなった「黒魔団」(1934年)などのオカルト小説を書いたことで有名な英国作家です。写真や実物の証拠品(カーテンの切れ端や髪の毛など)が添付され、事情聴取の記録や刑事からの報告書を読んで犯人を当てようという捜査ファイルシリーズ第1作です。私の読んだ中央公論社の大判は文章ページは100ページ少々で後は証拠が添付されたページ、そして解決編は袋とじになっています。小説というよりゲームブックに近く、物語としての感想は書きようがありません。となるとパズルとしての出来栄えで評価するしかないのですが添付された証拠品をちゃんと推理の論拠にしている点は素晴らしいです。だけどシュワッブ警部補の4つの推理(特に1番目と2番目)をあの証拠品から見抜くのは相当難しいと思います。読者に本物の捜査に参加する気分を味わせようというこの企画、本格派黄金時代ならではですね。特殊なタイプの本のため価格は2800円と当時(国内では1982年発売)としては結構高額でかなりの推理マニア向けといえそうです。


No.1528 5点 書斎の死体
アガサ・クリスティー
(2016/08/03 05:06登録)
(ネタバレなしです) 「よく知られたテーマで斬新な変化」を求めて1942年に発表した本書はミス・マープルシリーズとしては「牧師館の殺人」(1930年)以来となる複雑なプロットの本格派推理小説です。ミス・マープルの友人であるバントリー夫妻の家の書斎に死体が出現することがタイトルにつながっていますが、捜査範囲はバントリー家どころかセント・メアリ・ミード村の外にまで拡大して後半は書斎の存在感はなくなってしまいます。本書の特徴は舞台描写よりもむしろミス・マープルやバントリー夫妻とは世代的に相容れないような現代的な若者たちを登場させていることではないでしょうか。


No.1527 4点 名探偵のコーヒーのいれ方
クレオ・コイル
(2016/08/03 04:21登録)
(ネタバレなしです) 米国のクレオ・コイルは夫婦によるコンビ作家で、アリス・キンバリーという別名義でもミステリーを発表しています。2003年発表のミステリー第1作となる本書は紅茶の香り漂うローラ・チャイルズの「お茶と探偵」シリーズの向こうを張ったかのようにコーヒーの風味溢れるコージー派ミステリーです。主人公のクレア(コーヒーハウス「ビレッジブレンド」のマネージャー)がマイペースで遊び人風な前夫マテオを避けようとしているのはありきたりな展開ですが、後半になるとこの2人が意外といいコンビ探偵ぶりを発揮しているのが何とも不思議です。この場面はユーモアとスリルが一体となっており本書の読みどころの一つです。クレアがクィン警部補相手にシャーロック・ホームズみたいな人間観察を披露しているのもミステリー好きにはアピールしています。しかし結末はコージー派にありがちな棚ぼた式解決で終わってしまうのが残念。謎解き伏線も十分でなく、誰が犯人でもよかったようにしか思えませんでした。


No.1526 5点 ヴァンパイアの塔
ジョン・ディクスン・カー
(2016/08/02 06:26登録)
(ネタバレなしです) カー(1906-1977)の死後にダグラス・G・グリーンによって編集された1983年発表のラジオ・ドラマ脚本集で、降霊会の参加者が互いの手を握り合っている際中の殺人事件をフェル博士が謎解く「暗黒の一瞬」、郊外の住宅街が丸ごと消えてしまった「亡者の家」など1940年代から1950年代にかけて書かれた9編の脚本が収められています。創元推理文庫版には独自ボーナスとして短編小説「刑事の休日」が追加されていますが、どうせならラジオ脚本だった方が統一感があってよかったような気がします。謎解き自体は平凡だったり小説からのアイデア再利用もありますがラジオを意識してか高い演出効果を狙ったようなところがあります。特に「悪魔の使途」と「プールのなかの竜」は結構怖い結末で、小さいお子さまにはちょっとお勧めできないな(笑)。謎解きとして面白かったのは「暗黒の一瞬」で、トリックは専門的知識が使われていて感心しませんが謎解き伏線の張り方が巧妙です。


No.1525 5点 フレンチ油田を掘りあてる
F・W・クロフツ
(2016/08/02 06:19登録)
(ネタバレなしです) クロフツ晩年の1951年に発表されたフレンチシリーズ第28作(警視としては2作目)となる本格派推理小説です。前半はフレンチが5つの証拠をもとに容疑者を絞り込みますがそれほど強力な説得力があるわけではなくやや手詰まり感を覚えます。ここで第二の事件が起きますがこちらは倒叙スタイルで描かれているのが珍しい構成です。この事件はあまりにあっさりと解決されるのでちょっと拍子抜けですがこれによって第一の事件も解決に向かって進展していくのが上手いプロット展開だと思います。ただ空さんのご講評でも紹介されているように、このミステリーらしからぬタイトル(英語原題は「French Strikes Oil」)は「看板に偽りあり」という気もしますが。


No.1524 5点 研修医エヴリンと夏の殺人鬼
レイア・ルース・ロビンソン
(2016/08/02 06:04登録)
(ネタバレなしです) 「白い眠り」(1988年)以来9年ぶりの1997年に発表されたエヴリン・サトクリフシリーズ第2作です。前作に比べてボリュームと人物関係の複雑さは増しました。そして推理が大変充実したものになり謎解き伏線の張り方も上手く、メディカル・スリラーと本格派推理小説の両方を楽しめるジャンルミックス型の傑作になっています。但し私のような器量の狭い読者には残念ながら肌が合いませんでした。第30章の描写なんかは(あの程度でも私には)ショッキングに過ぎました。創元推理文庫版の巻末解説でエクスターンから専門医に至る医者のキャリアステップを紹介しているのは私のような医療門外漢には大変ありがたかったです。


No.1523 5点 邪魔な役者は消えていく
サイモン・ブレット
(2016/08/02 05:57登録)
(ネタバレなしです) 英国のサイモン・ブレット(1945年生まれ)はラジオやテレビのプロデューサーや舞台劇の脚本家を経験した、演劇界に造詣の深い作家です。犯罪小説なども書いていますが創作の中心は軽妙な文章による本格派推理小説で、俳優チャールズ・パリスシリーズとミセス・パージェターシリーズが有名です。本書が1975年発表のミステリーデビュー作です。各章が「シンデレラ」、「妖精」、「舞踏会」、「王子さま」など童話ネタにちなんだタイトルになっていますが作品内容の方はロマンチックでもファンタジックでもありません。主人公(チャールズ・パリス)は第1章で演技を批判され、酒場をはしごした挙句に妻でもない女性とベッドインと何ともしまらない登場です。さらにページをめくると今度は年の差カップルの関係修復話みたいになってきてまるで風俗小説です。風俗小説が悪いというのではないのですがミステリーらしさがありません。第7章あたりからようやくミステリーらしくなりますが王道的に犯人探しの本格派推理小説とは異なった展開を見せていきます。前例はありますが動機が印象的な謎解きです。チャールズは充実した生活をおくっているとは言い難そうですが飄々と描かれていてあまり陰鬱な雰囲気は感じられません。この辺が軽妙な作風と評価される所以でしょうか。


No.1522 5点 美しい乞食
E・S・ガードナー
(2016/08/02 05:39登録)
(ネタバレなしです) 1965年発表のペリイ・メイスンシリーズ第76作の本書は不幸な女性(ダフネ)を助けるメイスンという典型的な騎士道物語の出だしに加えて、途中までは「ころがるダイス」(1939年)を丸ごとぱくったみたいな展開となります。ダフネを単なる「虐げられしヒロイン」にしないところがひねりになっています。推理というより自滅誘導型で犯人を特定していて謎解き的にも物足りませんがテンポよく読ませるストーリーテリングには衰えを感じさせないし、シリーズファンにとっては目新しいものがなくてもいいのかもしれません。こういうのを偉大なるマンネリというのでしょうか?


No.1521 5点 ケイティ殺人事件
マイケル・ギルバート
(2016/08/01 01:45登録)
(ネタバレなしです) 1980年発表の警察小説と本格派推理小説のジャンルミックスタイプの作品です。序盤から登場人物がどんどん増えていくので登場人物リストを作りながら読むことを勧めます。大胆な真相は内田康夫の某作品を連想しましたが、内田作品では浅見光彦というシリーズ名探偵が登場しているところが本書と大きく違っており真相のインパクトも随分と違いました。21章あたりから(作中人物の言葉を借りるなら)「ひどく汚らわしい事件」の様相を見せ始めるのが読者を選びそうです(直接的なエログロ描写はありませんけど)。


No.1520 5点 緋文字
エラリイ・クイーン
(2016/08/01 01:20登録)
(ネタバレなしです) 1953年発表のエラリー・クイーンシリーズ第23作はユニークな趣向が多い異色作で、このユニークさがどこまで受け容れられるかで読者を選びそうな作品です。まずエラリーの助手としてニッキー・ポーターが登場しています。彼女は映画やラジオドラマの脚本を小説化した中短編に何度も登場していてその代表作は本書と同年に単行本化された「犯罪カレンダー」(1953年)ですが、全く別人のような描写にびっくりします。また事件がなかなか発生しません。エラリーとニッキーの浮気調査が延々と続くプロットです。いつどこでカタストロフィーを迎えるかわからない不安がサスペンスを持続させ、陰鬱なムードに拍車をかけています。かなり後半になってようやく事件が起きるのですが犯人当ての謎解きは放棄されています。事件の背後にある秘密をエラリーが推理で明らかにするのですが、この謎を解いてみよという形で明確に提示された謎ではなかったのでああそんなところに秘密があったのねというのが私の読後感でした。


No.1519 6点 ママ、嘘を見抜く
ジェームズ・ヤッフェ
(2016/08/01 00:28登録)
(ネタバレなしです) 1992年発表のママシリーズ第4作ですが残念ながらヤッフェ(1927-2017)の最後の作品となりました(作中には特にお別れ的な演出はありませんが)。相変わらず本格派推理小説のお手本のような論理的な推理が楽しめます。過去3作品を読んでいるともうこのぐらいのどんでん返しでは驚かなくなってしまいましたが良質の作品には違いありません。おなじみとなった、ママの胸中にしまわれる最後の秘密についても、今回は秘密にしておくことに十分納得できました。だけどデイヴ、いい年して反抗期ですか、みっともないぞ(笑)。


No.1518 8点 盲目の理髪師
ジョン・ディクスン・カー
(2016/08/01 00:21登録)
(ネタバレなしです) アントニー・バウチャーが絶賛した1934年発表のフェル博士シリーズ第4作です。カー全作品の中でもファルス(笑劇)要素の強い作品で、まるで映画のように派手などたばたが繰り広げられます。あまりのどたばたぶりに筋についていくのが精一杯で私は謎解きに集中できませんでしたが、本格派推理小説としても緻密に作られていて最後の謎解きシーンでは手掛かり脚注まで用意されています。事件は航行中の豪華客船の中で起きるのですがフェル博士はこの船に乗ってはおらず、乗船客の1人から事件のあらましを聞いて真相を当てるという安楽椅子探偵役です。死体なき殺人(創元推理文庫版の登場人物リストに被害者の名前は載ってません)の謎解きというのも珍しいです。


No.1517 4点 骨の島
アーロン・エルキンズ
(2016/08/01 00:08登録)
(ネタバレなしです) 2003年発表のギデオン・オリヴァーシリーズ第11作は残念ながらやや精彩を欠いた作品です。ならず者を雇っての誘拐というのが本格派推理小説にはそぐわない感がありますし、ギデオン襲撃事件の理由が例えば「呪い!」(1989年)に比べると弱いです。骨に関する知識を謎解きに活かしているのはいいのですが(それがシリーズの持ち味ですし)、本書のように最後の謎解き場面で使われると一般的読者としては「専門知識を最後の決め手にしないでくれ」と負け惜しみを言いたくなります。ユーモアに富んだ会話や観光ミステリーとしての風俗描写(美味しそうな料理が登場します)は健在で、気軽に読める作品です。なおハヤカワ文庫版の巻末解説はストレートなネタバレではないものの大きなヒントになりかねない記述があるので先には読まないほうがいいと思います。


No.1516 7点 スペイン岬の秘密
エラリイ・クイーン
(2016/07/31 01:15登録)
(ネタバレなしです) 1935年発表の国名シリーズ第9作でシリーズ最終作となった作品です。お約束ごとの「読者への挑戦状」ももちろん付いています。ネタバレになるので詳しく書けませんが前作「チャイナ・オレンジの秘密」(1934年)での「被害者の名前を明かさずに謎を解く」と同じぐらい珍しい趣向を織り込んだ意欲作です。「マントだけ身にまとった全裸死体」という魅力的な謎も印象的ですが偶然の要素で謎が深まっている点はちょっと減点でしょうか(全裸にしなくても何とかなったような気もしますし)。でも動機調査については国名シリーズの中でもかなり丁寧に描かれているのはポイント高いです。できれば現場見取り図が欲しいところですが国名シリーズでは私のお気に入りの1冊です。


No.1515 6点 議会に死体
ヘンリー・ウエイド
(2016/07/31 01:09登録)
(ネタバレなしです) 1930年発表の長編第4作である本書はウェイド入門書としても適格な本格派推理小説で、3人の警察官を上手く描き分けて地道な捜査描写が一本調子にならぬよう工夫しています。現場見取り図、ダイイングメッセージ、アリバイ表などの推理ネタも充実しており(原書房版に登場人物リストがないのは残念ですが)、最後の一行まで謎解きを続けるなどまさしく本格派黄金時代の作品です。生真面目な文章ではありますが、長編第3作でプール警部シリーズ第1作の「ヨーク公階段の謎」(1929年)から語り口が進歩しているように思いました。


No.1514 6点 ホロー荘の殺人
アガサ・クリスティー
(2016/07/31 01:02登録)
(ネタバレなしです) 人気作家ゆえに批判もまた数多く浴びせられるクリスティーですが特に文学的ミステリー作家の代表とされるセイヤーズなどと比較されて人物描写に深みがないことが指摘されているそうです。それに対してクリスティーにだって文学的なミステリーが書けるんだと擁護派がよく引き合いに出すのが1946年発表のポアロシリーズ第22作である本書です。登場人物の内面が一人一人丁寧に描かれ、ロマンス描写も単純な相思相愛ではなく時には一方的だったり時には自虐的だったりと複雑です。ポアロの出番は物語が三分の一を経過してからようやくですが作者はポアロの起用について必ずしも満足していたわけではなかったそうで、1951年に本書の戯曲版を作った際には何とポアロ抜きの作品にしたそうです。それだけ個々の登場人物の存在感が強くてポアロを活かしにくかったのでしょう。とはいえ少ない出番ながらもポアロにもしっかり花を持たせており、「罠にかかった犬」のたとえ話は名せりふだと思うし、第29章最後のせりふも実に印象的です。


No.1513 6点 代価はバラ一輪
エリス・ピーターズ
(2016/07/31 00:51登録)
(ネタバレなしです) 毎年庭に咲く白バラの最高の一輪を届けることを条件に夫との思い出の詰まった屋敷を修道院に寄進した未亡人へのバラを摘み取る時期が近づいた1142年5月にバラの根本で死体が発見される事件を描いた、1986年発表の修道士カドフェルシリーズ第13作です。容疑者群の中で唯一犯人のみが持っている特徴に着目して推理するなどシリーズ作品中では最も本格派推理小説としての謎解きがしっかりしていると思います。ロマンスについても無器用な片思いを複雑に絡ませるなど従来とはちょっと違う展開を用意しているのも新鮮です。

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