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ミステリの祭典

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白鳥の歌
ジャーヴァス・フェンシリーズ

作家 エドマンド・クリスピン
出版日2000年05月
平均点6.00点
書評数3人

No.3 5点 nukkam
(2016/08/30 08:20登録)
(ネタバレなしです) 「白鳥の歌」はもとはクラシック音楽界の業界用語で「最後の作品」の意味で使われていますが、1947年発表のフェン教授シリーズ第4作の本書は別にクリスピンの最終作ではありません。オペラの稽古を重ねていた被害者にとって最後の出演(予定)だったことを象徴的に表しているのではと思います。繊細なイメージのタイトルとは裏腹に思い切ったトリックが使われているのが印象的です。皮肉な真相も大変珍しく、個人的にはこういうのはあまり好きでないのですが成立させる難易度の高い仕掛けを作者が緻密に組み立てた努力は評価すべきでしょう。

No.2 6点 蟷螂の斧
(2014/05/18 11:30登録)
裏表紙より『オックスフォードで催されるワーグナー歌劇の稽古中、歌手としては一流ながら人間的には最低の男ショートハウスが様々なトラブルを引き起こしていた。そして初日も間近に迫ったある夜、歌劇場の楽屋でショートハウスの首吊り死体が発見される。死亡時刻には現場は密室状況にあり、作曲家で奇行で知られる被害者の兄、恋敵の歌手、理不尽な扱いを受けていた新人指揮者など、殺人の動機を持った容疑者には事欠かなかった。友人の求めに応じて事件の解明に乗りだしたオックスフォード大学の名物教授ジャーヴァス・フェンだが、歌劇場の周辺ではその後も怪事件が相次いだ…。J・D・カーターばりの不可能犯罪』                     単なる物理的密室(どのように密室にしたか?)より、他の意図があったというアイデアが良かったと思います。最近は物理的密室そのものにはあまり興味が湧きません(苦笑)。本作は、密室より「皮肉な真相」の方に軍配を上げたいと思います。会話に引用文が多くちょっと読みにくいのが難点でした。

No.1 7点 mini
(2009/03/26 10:05登録)
イネス、ブレイク、ヘアーらと並ぶ40年代前後の英国教養派を代表する作家の一人クリスピンは、そのトリッキーさとドタバタ調ユーモアで日本でも人気がある
「白鳥の歌」はファースが足らず持ち味が必ずしも出ていない点で作者の代表作とは言えないが、その代わり謎解き色が強く日本の本格オタクな読者にはクリスピン作品中最も好まれそうだ
大掛かりな物理トリックという点では、初期の「大聖堂は大騒ぎ」の方がトリック自体は豪快だが、あれはトリックマニアにも賛否両論ありそうだし
「白鳥の歌」は物理トリックの部分はありきたりでつまらないが、別の部分に錯綜トリックが仕掛けられており、純粋に謎解きパズルとしては作者の中では最右翼と言えるだろう
難を言えば、クリスピンらしい得意のドタバタ場面が少なく、スラップスティックな味を求めるクリスピンのファンにはちょっと物足らないかもしれない

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