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ミステリの祭典

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究極の推論
ネロ・ウルフ EQ118号掲載

作家 レックス・スタウト
出版日不明
平均点6.00点
書評数2人

No.2 6点
(2018/08/24 14:54登録)
 予告なしにウルフの事務所を訪れた富豪夫人アルシア・ヴェイル。彼女は誘拐された夫ジミー・ヴェイル救出の為に、内密の助言を求めに来たのだった。詳細な情報提供を渋る彼女に、ウルフは自分が事件解決に一枚噛むという新聞広告を出し、犯人ミスター・ナップによる人質解放の一助とするよう提案する。
 それが効を奏したか、ジミーは身代金と引き換えに即日解放された。だが受け取り場所近くで、犯人一味と目されていた夫人秘書ダイナの轢殺死体が発見され、解放の翌日にはジミーも自宅で不審死を遂げる。ナップとは果たして何者か? そして50万ドルの身代金の行方は?
 前回採点した「ロデオ殺人事件」を含む3中編の次、1961年に発表された57番目のネロ・ウルフ物にして未単行本化長編。スタウトには珍しく、展開が二転三転します。直線的過ぎて事件の大筋が割れ易いという欠点はありますが、まあ悪くないです。
 初期6作以降のアーチーの語りは劣化コピーか使い回しで冴えなくなる一方、というのが大方の評価。「料理長が多すぎる」辺りの文章が一番きびきびして生きが良いのは認めますが、ミステリ的には後期作品の中にも結構面白そうなのがちらほら。
 そのうちの一つ、Champagne for One(1958)は、不可能犯罪(毒殺事件)がテーマだそうです。本格向きの作品らしいので、論創辺りで訳してくれると良いですね。

No.1 6点 nukkam
(2016/08/28 02:20登録)
(ネタバレなしです) 1961年発表のネロ・ウルフシリーズ第24作の本格派推理小説で、ミステリー雑誌「EQ」118号(1997年)で国内紹介されました。家族を誘拐されたという依頼人の登場というのが珍しいですが、身代金を犯人に渡すまではウルフにほとんど情報を提供しないという依頼人の態度が事態をややこしくします。そんな制約下でもウルフはそれなりに手を打って何と誘拐犯の共犯者の目星までつけるところがさすが名探偵です。しかしそこからプロットは二転三転して殺人事件まで発生し、癖のある容疑者たちとのやりとりもあってあっという間に終盤です。推理が容疑者の性格分析に拠るところが多くて説得力はやや弱いですがウルフが容疑者を1人ずつ犯人でないと消去していき、最後に残った容疑者を犯人だと指摘する場面はサスペンスに富んでます。

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