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ミステリの祭典

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武家屋敷の殺人
那珂邦彦シリーズ

作家 小島正樹
出版日2009年11月
平均点5.92点
書評数13人

No.13 6点 じきる
(2021/12/07 16:27登録)
数々の謎・トリックは魅力的で、水準レベルはあると思う。
登場人物にまるで魅力がないのと、詰め込み過ぎによって面白みを少し損ねているのが瑕か。

No.12 5点 Kingscorss
(2020/08/22 11:13登録)
やりすぎミステリーと言われているだけあって、本当に何でも詰め込みすぎ。単行本の方で読みました。

正直言うと、最後の解決編みたいなものまでは謎が多すぎて息苦しいが、どう着地するのか結構ワクワクしながら読んでいた。しかし、解決編が何度も二転三転する挙げ句、最後の最後の大どんでん返しの真実が出たときには、もうお腹いっぱいで驚かなくなってしまっている。そこに行くまでにたくさん料理(解答)を出されすぎて、最後のメインディッシュ(真実)が美味しく感じないのだ。

ミステリーの謎も、ほとんどが推理の土台になる登場人物の証言が嘘ばかり。推理する根本が成り立たず、読者には絶対正解を導けない。あの証言も嘘、この証言も嘘でしたのオンパレードでアンフェアと言っていいでしょう。しかし、探偵役の那珂邦彦は少し聞いただけで全てが完全にわかってしまう、ありえない推理力の持ち主。

そして、その探偵役とワトソン役の二人のキャラが全く共感できない。探偵はぶっきらぼうでなんに対しても投げやりすぎ。ワトソン役は弁護士なのに主語が”わし”、言葉の語尾は”〜っす”と読者から嫌悪感を誘う喋り方。その証拠に文庫本では標準語に変更されているようです。やはり不評だったのでしょう…

内容の方も、トリックは本格を意識した作りで賛否両論あるかと思いますが、もちろん現実世界では絶対やらないようなトリックでした。あと、詰め込み過ぎ以外に、ミスリードも兼ねていたとは思いますが明らかな余分なパート(断片1〜4)や、著者の趣味のカヤックを無理やり入れただけ感が目立ち、それらがバランスを悪くしてると感じました。

総評としては、たくさんの方が感じているとおり、何でもかんでも詰め込み過ぎでそれがかなりマイナスになっていると思います。文庫化の際に大分改修されているらしいのでまた機会があったら再読してみたいと思います。

No.11 6点 E-BANKER
(2016/12/21 22:59登録)
2009年発表の<那珂邦彦>シリーズの第一作。
作者の作品はこれまで<海老原浩一>探偵もの(?)しか読んでこなかったため、本シリーズは初読となる。
他の方も触れられているとおり、『やりすぎ』ミステリー、略して『やりミス』全開!

~孤児院育ちの美女から生家を探して欲しいとの依頼を受けた弁護士・川路弘太郎。唯一の手掛かりは、二十年前の殺人事件と蘇るミイラについて書かれた異様な日記のみ。友人・那珂邦彦の助けを借りてついに生家を突き止めるが、そこは江戸時代から存続する曰くつきの屋敷だった。そして新たな殺人が・・・。謎とトリック二倍増しミステリー~

思ったよりも「まともな」ミステリーだったというのが最初の感想。
なんでだろうと考えながら、千街氏の巻末解説を読んでいると、今回の文庫化に伴い、ノベルズ版から大幅に改稿されたことが判明。
なるほど。そのせいか・・・
確かに以前読んだ書評で、鹿児島弁がいらない、表現が回りくどすぎ・・・etcというのを読んでいたので、その辺りは作者も意識したんだろうな。かなり読みやすくなっている。

ただし、プロットそのものは変わっていないわけで、当然「やりすぎ」は「やりすぎ」だ。
本作は死体移動や氷室が消えるなどの不可思議現象は出てくるものの、大掛かりな物理トリックというよりは、日記・手記等を目眩しとし、読者の思考のズレを誘うタイプの作品。
特に、○人○○(ネタバレ?)を効果的に使っているところはセンスを感じる。
(人間のカンを無視したこの手のトリックはどうしてもリアリティを感じないけどね・・・)

ただなぁー、あまりにも詰め込みすぎているため、トリックを成立させるための舞台設定というか、材料があちこちに置かれすぎて、どうしても「とっちらかっている」印象になってしまう。
ラストに畳み掛けられているドンデン返しも、一応理由付けは成されているものの、そこまでダミー推理がいるか?という感覚にはなってしまった。
でも、それをなくしてしまうと「小島正樹でなくなる」んだろうし、難しいところだ。

いろいろな批判はあるだろうけど、とにかくこれからも「やりすぎ」に拘って、小島正樹のミステリーを追求してほしい。
一本格ファンとしてはそう思う。

No.10 6点 名探偵ジャパン
(2016/09/09 23:40登録)
これが噂の、やりミス、こと「やりすぎミステリ」か!
講談社文庫版の解説によると、この呼び方は作者自身が言い出したものとか。
……何だ。こういうのは自分で言ったらダメでしょう。

およそ幻覚を見たとしか思えない怪奇現象が羅列された日記を読んだ探偵が、「ここに書かれていることは全て事実だと考えよう」と、いきなり島荘イズム全開。さすが正当後継者(?)
もう、「どこのページを開いても何かしらのトリックがある」トリックの金太郎飴状態。
あまりに「やりすぎ」なため、ラストの「どんでん返し」で初めて触れられる作中の違和感については、もうすっかり忘れてしまっていて、「あ、いけね! まだその謎が残ってた!」となりました。
読者も全ての謎をいちいち覚えていられず、いえ、把握出来ず、これは本当に、本来の意味とはちょっと違いますが「やられた」と感じました。
物量に、文字通り「物を言わせて」読者の記憶容量を圧迫してしまう。文庫本で600ページ近くという大作ですが、本作をお読みになる場合は、肝心なところを忘れてしまわないうちに一気読みをおすすめします。
とはいえ、やっぱりこの「出し惜しみなし」のサービス精神は凄いです。

なお、以前のレビュアーの幾人かの方が書かれていた、ワトソン役の、方言の残る喋り方は文庫版にて標準語に改定されています。

No.9 6点 nukkam
(2016/08/28 01:47登録)
(ネタバレなしです) 海老原浩一シリーズの「十三回忌」(2008年)に次いで2009年に発表された那珂邦彦シリーズ第1作の本格派推理小説で、この作者が(謎とトリックの詰め込み方が)「やり過ぎ」という評価が定着した作品と言われてます。講談社文庫版で550ページを越す大作です。第1章で早くも武家屋敷探しと数多くの不可解な謎が解決されるという密度の濃い展開です。ところが第2章では狂気を帯びた犯罪小説風になるのには唖然としました(これはこれで読み応えがあります)。第3章から再び本格派の世界に戻りますが話があちこちに飛んで江戸時代の謎解きまで挿入されたのにはついていくのが大変でした。真相を知ると実に「やり過ぎ」らしく色々な仕掛けがあったことがわかるのですが、そこに至るまでの謎の提示はもう少し整理してほしかったです。

No.8 6点 パンやん
(2016/04/13 14:16登録)
日記のナゾから生家を探り、20年前、江戸時代、現代の事件と次々と解かれていき、間には断片の章と、実に手が込んでいて読み応えがあるというか、いやはや確かに満腹。弁護士キャラ、リバーカヤック、探偵よりもヒロイン瑞希をもっと素敵に描いて欲しかったところである。

No.7 5点 蟷螂の斧
(2014/07/06 12:14登録)
満腹過ぎて、どれが美味しかったのか判らなくなってしまいました(笑)。2章の玲子の独白あたりは非常に楽しめましたが、どんでん返しは、かなり無理では?の印象。三津田信三氏の「首無・・・」を読んだ印象と似ています。過剰な反転で訳が分からなくなってしまいました。それ以来遠ざかっています(苦笑)。

No.6 7点 測量ボ-イ
(2012/02/18 08:06登録)
謎の提示はホラ-めいた話しがあるも、解決は合理的で満足度
は高い一遍。図書館で偶然見つけましたが、氏の他の作品も
いずれ読もうと思います。
けれど探偵役の人物は、あれだけの材料で依頼者の生家に辿り
つくとは、あの御手洗潔並の洞察力(超能力?)?

No.5 6点 メルカトル
(2010/12/17 23:24登録)
まず何よりも冒頭の現実離れした日記には、いかにも島田荘司氏の好みそうな滑り出しでニヤリとさせられた。
この時点ではかなりの期待感を抱かせるが、長い第二章であっさり謎が明かされるのは、構成的に如何なものかと思ってしまった。
しかし、そこにもまた作者のミスリードも含まれているわけで、まさに詰め込みすぎ、の謳い文句の本領発揮と言ったところか。
全体としては、プロットが個人的にはイマイチと感じた。
トリックもよく考えられているし、謎の解明も緻密なだけに、もう少し上手く料理すれば、もっと傑作になっただろう、そう考えると惜しい作品ではないかと思う。

No.4 5点 虫暮部
(2010/12/06 09:34登録)
 終盤がくどい。それとも私の読み方が下手なのか。
 邦彦の「わけあり」は、いらなかったような。
 あと、この作品に限らず、「一族の者が同じ漢字を含む名前を付けるならわし」という設定は良く出て来るが、結果似たような名前が並んで紛らわしいよね?

No.3 6点 makomako
(2010/09/26 09:05登録)
 話の展開は興味深いものがあり、トリックも盛りだくさんで何回も修正される謎解きも精緻であり、、、となれば本格推理小説として非常によく出来ていると思うはずなのだが、残念ながらそれほどでもない。原因は登場人物が平坦にしか描けていないことと、本の帯にあるようにトリックの詰め込みすぎにあるように感じる。私も探偵の「っす」としゃべるのは全くなじめない。弁護士がこんな言葉でしゃべったらまず自分の弁護人にはしないだろうな。
 主人公の瑞樹はもう少し素敵でかわいい女性に描いてもらいたかった。そうすれば印象はぐんとよくなったのに。最後のトリックの解決も精緻なのだが解法事典の答えを見ているようでちょっとうんざりしてしまった。「つめこみすぎ」なのです。
 旬な食材をふんだんに使った料理を高級な雰囲気のレストランで食べたのに意外と美味しくなかったような感じでした。

No.2 6点 touko
(2010/02/21 00:31登録)
島田荘司との共著でデビューしただけあって、幻覚や妄想にしか思えない手記がすべて真実だったり、アクロバティックな死体移動があったり、あったはずの部屋が消えたりと、初期の島田作品の数々を思わせるけれんみたっぷりのなんともなつかしい作風です。
ジェットコースターミステリというのが売り物で、これでもかとネタを詰め込んでいるわりには、どれもイマイチ大味な印象なんですが、島田のファンなら読んでみてもいいんじゃないでしょうか。

ただし小説家としての筆力はイマイチ。作者の趣味らしいカヤックの薀蓄も、事件そのものと何ら関連性がないので、自己満足にしか思えませんでした。まだ小説を、読者の反応を想定して書くということが出来てないって感じ。
ホームズ役の友人が、ひねた性格で終始冷淡なのは、挿入されているエピソードで明らかになる生育歴ゆえにかとまだ納得できないことはないものの、ワトソン役の弁護士である主人公の背景はほとんど描かれていないのに、「わしは○○っす」なんて体育会の学生のような口調なのには、最後まで馴染めませんでした。
カヤックの薀蓄に頁数を割くくらいなら、読者の違和感を払底し、主人公への思いいれや愛着を持たせるためにも、まずそれを書くべきでしょうに……。

No.1 7点 江守森江
(2010/02/08 13:20登録)
最初に提示される日記から場所を特定するプロファイリング的推理だけで一編書ける。
しかも、屋敷と地域の設定が先々の伏線として絶妙。
そして、その先に更なる「謎また謎」の連打をかましてくる。
アッサリと明かされる(部分的な)解決をダミー推理に絡めて提示しながら何回も捻る推理過程は三津田信三の刀城言耶シリーズに通じるものがあり圧巻!
※要注意
以下察する方にはネタバレする危険があります!
特に、最初の謎を解決する名探偵役を一旦退場させながらダミー探偵役に推理させる‘操り’と「主要登場人物紹介」から仕込まれたドンデン返しの二点は素晴らしい。
惜しむらくは、大量に詰め込み過ぎた反動で、実行不能そうなトリックやご都合主義が散見され充分な納得が得られない事だろう(それでも、ここまでバカミスとして8点)
しかし、最後まで作品の本質に関係しない、途中に挿入された「断片」でのミスリードは不要で作品の特色である新感覚を減じたと思う(1点減点)
また、最初に日記が掲載された時点で思い描いた通りの帰結と処理で、東野「悪意」や歌野「絶望ノート」と同系統だったのは残念で(バリエーションに限りがあり)どこまで二番煎じと感じさせないかがミステリ界全体の課題だろう。

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