(2016/08/28 00:54登録)
(ネタバレなしです) 米国のジャニータ・シェリダン(1906-1974)がミステリー作家として活躍したのは1940年代から1950年代で、米国では本格派推理小説の人気が低落していく時期にあたります。ヘレン・マクロイやパトリック・クェンティンなどは作風をサスペンス小説路線に変えて執筆活動を続けましたがシェリダンは早々とミステリー作家としてのキャリアに終止符を打ってしまいました。1949年発表の本書はジャニス・キャメロンシリーズの第1作です。創元推理文庫版では本書をコージー派の本格派として紹介していますが少なくとも前半部はコージー派によく見られる優雅さやユーモアの類は感じられず、むしろジャニスの孤立感が漂うサスペンス小説的な息苦しささえ感じさせます。後半になると雰囲気は多少明るくなり、推理議論などもあって本格派推理小説らしさもでてきますが論理的な解決になってないのは残念。舞台となるアパートの見取り図も欲しかったです。最後はそれまでの展開が嘘のように幸福感溢れる締めくくりになっており、次回作はもっとコージー派らしくなるのかもしれません。それにしても殴られて気絶するシーンが多いのは当時流行していたハードボイルド小説の影響でしょうか?
|