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ミステリの祭典

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五色の雲
ディー判事ものの短編集

作家 ロバート・ファン・ヒューリック
出版日2005年01月
平均点6.33点
書評数3人

No.3 7点 nukkam
(2016/08/30 01:51登録)
(ネタバレなしです) 本物の剣にすりかえられたことによる死亡事件を描いた「すりかえ」、戦争危機という緊急事態の中で謎解きをする「西沙の柩」などディー判事が活躍する8編の短編を収録した1967年出版の短編集です。いつも丁寧に自作解説している作者ですが短編でも読者サービスを怠らず、ちゃんと登場人物リストまで付いているのが親切ですね。特に印象に残ったのは奇抜なトリックの「赤い紐」(ハヤカワポケットブック版の巻末解説で堂々とネタバレされていますので要注意です)、判事の副官マー・ロンやチャオ・タイの活躍が面白い「すりかえ」ですが、他の作品もそれぞれにいい味出していて粒揃いの短編集です。

No.2 6点
(2014/12/11 10:00登録)
本格短編ミステリーとしては、典型スタイルといえます。
決定的な(といえない場合もあるが)ワンポイント伏線があって、それが事件解決の決め手となる、というものが多い。
些細なものもあり読み飛ばしがちです。これが映像だと、伏線に相当する映像が大写しだったり、会話の場合には言葉が強調されていたりして、記憶に止まるのですが、小説の場合はそうはいきません。それをほめるべきか、物足らないとみるべきか。
とにかく、ミステリーの読み手として、あまりにも注意力不足であることにはちがいありませんw

全8作品のうち、とくに印象に残ったのは次の3話。
『赤い紐』。このタイトルはうまい。殺し方は理解しがたし。
『西沙の柩』。ディー判事は少し聞き取りしただけでスピード解決。真相を開示する前に、他の事件を挿入するところは絶妙。これがベスト。
『小玉』。あの真相、〇〇つながりで、三国志のある場面を思い出した。

わずか2,30ページで筋の通った本格を期待するのは無理なのでしょうが、唐時代版中国系ホームズぐらいに思って読めば問題はありません。2,30ページながらも、みなプロットにひと工夫があって、そこに惹かれます。
全話の共通点は男女絡みの通俗性があることです。多くの読者を惹きつけるための秘訣なのでしょう。

いまのミステリーなら、1時間もののドラマ「相棒」なんかが好きな人には、たぶん喜ばれると思います。

No.1 6点 mini
(2011/02/04 09:35登録)
本日4日にヒューリックの「寅申の刻」が発売される
唯一未訳で残っていた中編集で、これで和邇桃子訳の早川書房刊行ディー判事シリーズは全作翻訳された事になる
そこでもう1冊の既刊の短篇集「五色の雲」を書評しよう
今回刊行された「寅申の刻」は中編を2編だけ収めた完全なる中編集で短編は載っていないが、「五色の雲」は普通に短篇集である
ディー判事シリーズは前期長編5部作などを見るように、モデュラー型による謎を重層的に織り込んだプロットが魅力なんだけど、流石に短編ではプロットを単純化せざるを得ない
しかしながらそれでも、シリーズの雰囲気が損なわれていないのは素晴らしい
いきなりディー判事シリーズに入門するのをためらっている方などは、まずこの短篇集で独特の雰囲気に慣れてから長編に進むのも一つの手ではないかと思う
かく言う私も最初に読んだのはは古本屋で見付けた講談社文庫版の「中国迷宮殺人事件」だったが、次からは新訳の早川版で読もうと思っていたので慣れる意味で2冊目に読んだのがこの短篇集だったのだ

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