home

ミステリの祭典

login
日本庭園の秘密
エラリイ・クイーン、国名シリーズ 別題『ニッポン樫鳥の謎』『日本庭園殺人事件』『境界の扉 日本カシドリの秘密』

作家 エラリイ・クイーン
出版日1958年01月
平均点5.86点
書評数14人

No.14 5点 レッドキング
(2020/03/30 22:54登録)
喉を切り裂かれた女の部屋と、屋根裏部屋の間のドアは内側から閉まっており、窓には鉄格子、もう一つの出入り口はずっと別の女の眼があり、犯人の出入りが不可能な「密室」だった・・。当初、「ニッポン扇~」てなタイトルで雑誌に載ったが対日外交状況から「The Door Between」で刊行されたとかの風説あるが、眉唾らしい。でもこれ内容からして、「ニッポン樫鳥~」ていうのが一番よいかと。三津田信三「凶鳥の如き忌むもの」もそうだったが、「密室」には猿や蛇より鳥を使うのが良いのではと思った。
※ところで、殺人鬼を毒殺しちゃう探偵はともかく、証拠を捏造する探偵てのはいただけないぞ。

No.13 4点 HORNET
(2020/02/29 16:51登録)
 フーダニット形式で、一番好まない真相のパターン。
 あと、私立探偵テリーが最後まで好きになれなかった。訳の時代(東京創元・1961年版)もあるからだろうけど、エヴァを「おねんねちゃん」と呼んだり、なんか鬱陶しかった…(原点は「Baby」とかなのかな?)
 他にも、日本人女中キヌメのセリフが「・・・ある」と訳されているところにも時代を感じた。そっちは笑えた。

 国名シリーズの方は新訳は出ないのかなぁ。

No.12 6点 ボナンザ
(2020/02/14 21:30登録)
色物かと思いきや結構よくできた作品。入り組んだ真相と展開は中々読ませる。

No.11 6点 虫暮部
(2019/08/14 12:49登録)
 作者は何故わざわざ婚約者の名前をリチャードにしたのか。おかげで警視は一度もフルネームで呼ばれていない。ありふれた名だから偶然重複するのもリアリティだとか考えたのだろうか。いや待て、そもそもEQシリーズ全体の設定として、リチャード・クイーンと言うのは仮名だっけ?

No.10 7点
(2018/11/15 10:07登録)
興味がそがれることなく最後まで楽しめました。つまり、少ない登場人物にもかかわらず、解けそうに見えてまったく真相にたどりつけず、でも飽きることもなく、嫌気がさすこともなく、事件に対する興奮が最後まで持続したということです。

本格ミステリーとしては、やや変化球気味。これでもトリックなのか、とも言えますが、これを密室に絡めたことが最高のテクニックなのでしょう。
クイーンは密室が苦手なのか、密室トリックをバカにしているのか、あるいはいいネタが思いつかなかったのか、とも言えますがね。
そしてトリックと同程度にすごいのが、エラリーの過激な推理です。これが際立っています。
たしかに、推理は飛躍しすぎの感もあり、なんでそこまでわかるの、という疑問はあります。でも、それを話の面白さがカバーしてくれます。
ようするに、トリック、推理、ストーリーの三拍子そろった作品でした。

ちょっと褒めすぎか?
日本の文化、習慣を題材にした作品なので、ちょっと贔屓してしまいました。

No.9 4点 クリスティ再読
(2017/09/03 21:25登録)
本作は日本をネタにしたということで、日本人にとってはどうにも困惑な内容が多々あるが、細かいことには突っ込まないでおこう。
けどねえ、本作の真相が「ミステリとしてどうよ」というのとは別に、ハサミを凶器として選択する、ということ自体、またそれを、当時のアメリカ人のステレオタイプとしての「日本人的行為」である〇〇〇〇の道具に結びつけるという不適切さがやはりどうにもこうにも、違和感が強い。しかし、最後の再真相となると、再真相で明かされる主たる原因の結果としての〇〇〇〇...再真相としてはちょっと受け入れがたいものだ。そういうものじゃないでしょ。また再真相の犯人が完全に捨て身ならば、そういうこともできるかもしれないけど、被害者が事情を周囲に漏らす可能性を全然否定できないから、現実性があるようでない話だよ。後の再真相は「ミステリとしてどうよ、と突っ込まれがちな件よりも気が利いてる」と思って追加したんだろうけど、逆じゃないかなぁ。クイーンの方こそが「トリックのためのトリック」に淫している感じだ。
あと本作、前半エヴァ視点で描写が続くんだけど、他人に依存的な不快なほどのカマトト娘である。読んでてはっきり苦痛。国名シリーズあたりでクイーンの描く女性像って「令嬢が死体を見て失神」したりして「いるのかよこんなステレオタイプ!」ってなるくらいに保守的だしね。
印象的な女性キャラクタって「災厄の町」のノーラか「ダブル・ダブル」のリーマくらいにならないと出てこないから、女性が苦手な印象が強いなぁ。映画だってヒロインは、オフィスワーカーで自立した皮肉屋くらいがウケの線といっていい時代なんだから、同時代のハードボイルドな女たちと比較しちゃいけないが、それにしても保守的にすぎるんじゃない?

No.8 5点 nukkam
(2016/08/27 08:18登録)
(ネタバレなしです) 1937年発表のエラリー・クイーンシリーズ第11作で、日本人が登場して日本の文化風習(作者の勘違いっぽいところもありますがそこはご愛嬌)が紹介されていますが国名シリーズではなく、英語原題は「The Door Between」です。密室状態の現場に被害者と有力容疑者(エヴァ)の二人きりという状況が設定されており、エヴァが無実かどうかに謎解きの重点を置いたストーリーになっていますので伝統的な犯人探し本格派のプロットを期待していると違和感を覚えるかもしれません。(類似例はありますが)珍しい密室トリックが印象的です。(ネタバレぎりぎりですが)でもあの道具では本来の目的の確実性を損ってしまうのではないかという矛盾も感じました。ハードボイルド小説を意識したような私立探偵の登場、ある意味密室トリック以上に大胆なトリック、単なる名探偵役にとどまらなかったエラリーなど意欲作であり問題作でもあります。

No.7 6点 青い車
(2016/07/24 21:42登録)
(直接的な説明は避けていますがネタバレ気味です)



 『日本庭園の秘密(ニッポン樫鳥の謎)』の肝は何と言っても○○に見えて実は××だった、という点に尽きます。そして裏にそれを仕向けた人物がいた、というのも凝った趣向です。初期クイーンは直球の本格ばかりだと思われがちですが、実際は基本のパズラーの核はあってもけっこう色んなアイディアに手を出しています。大袈裟に言ってしまえば、現在のミステリーの教科書に載るような手法を網羅しているかのようです。
 僕は幸せなことにこの手のパターンは本作が初だったので、解決篇には興奮を覚えました。ただ、「傑作の本格推理」を求めて読むとがっかりするのもわかります。そこが、ニッポン樫鳥が代表作に比べて評価がパッとしない原因なのでしょう。

No.6 7点 斎藤警部
(2015/10/29 23:28登録)
結末で一気に熱くなりましたね。。まさかあんな残酷な人間ドラマが真相だったとはね。。ニセ国名シリーズと呼ばれるのが不憫なくら良い作品ですよ。まぁ結末以外はあんまり記憶に無いんだけど。 

No.5 5点 TON2
(2013/01/23 18:51登録)
ハヤカワ・ミステリ文庫
 国名シリーズ最後の作品ですが、本国では発表時の日米関係から国名シリーズには数えられていません。
 日本帰りの流行作家が殺された。室内に畳を敷いたり、日本庭園が造られていたりと日本情緒豊かな舞台建てですが、女性のいやらしさを十分に見せつけられて、後味はよくありませんでした。

No.4 6点 ミステリー三昧
(2011/08/22 19:15登録)
※ネタばれあり<創元推理文庫>
私的には国名シリーズと比較してみても登場人物や作風、プロットに劇的な変化は特に感じられませんでした。敢えて別な位置付けとして捉えるほどの、大きなテーマがある訳でもなさそうなので、国名シリーズとしてカテゴリ化されてても特別違和感を抱くことはなかったかもしれない。久々にクイーン警視やその従順なる部下達も登場してきて、初期作品のような雰囲気もありましたし。
ただし本作は、初期作品のようなストレートな犯人当てとは異なり、どちらかというと変化球で読者の意表の突くような作品です。私的には、偶然要素を幾つも組み込むことで論理性が薄くなっているなと感じるのが正直なところ。被害者に纏わる驚くべき事実が捜査過程の中で幾つも明るみになる中盤から終盤にかけての展開は面白いと思いました。
最後に創元推理文庫のあらすじ紹介についてですが、最初の2行はネタばれだと思います。幾つか物語を楽しむ上で伏せるべきだったと思われるキーワードが含まれていました。






(ここからネタばれ感想)
あらすじで<①令嬢ふたりが②時を同じくして③不可解な「自殺」をとげた>とありますが、これはかなり終盤になってから明かされる真相です。端から序盤の展開を否定する文章になっているので、マズイと思います。。。
①序盤では、令嬢ひとりの死が話題の中心となります。「ふたり」という言葉と矛盾してしまい、違和感を抱きかねません。②お姉さんは数年前に死んでいるという設定と矛盾してしまうので、これも違和感を抱きかねません。③殺人の可能性を否定している点でネタばれです。

No.3 7点 E-BANKER
(2011/06/21 23:07登録)
国名シリーズなのか、そうでないのか、いろいろな意見・見方が可能な作品。
「日本」が題材になっている点でも興味深いのですが・・・
~流行作家のNYの邸内に美しい日本庭園が作られた。だが、結婚を控え、幸せの絶頂にあった彼女がその庭を望む1室で謎の死を遂げる。窓には鉄格子がはめられ、屋根裏部屋へ通じる扉は開かず、事件現場に出入りした者は誰もいないようにみえた。密室と思われる状況下の悪夢の死に、エラリーの推理は?~

これは、いい意味で予想を裏切られた感じ。
国名シリーズも回を重ねるごとにクオリティが落ちており、本作もその延長線上なのかと思いきや・・・というわけです。
そういう意味では、国名シリーズのラストというよりは、やはり「中途の家」へつながる後期クイーンの端緒を切る作品という見方が合っているのでしょう。
邦訳の作品名よりは、原題の「The Door Between」の方が、この作品の本質を捉えており、「言い得て妙」のタイトルかなと思います。
そして、本作の「鍵」となるのが、「密室殺人」の謎。
ほぼ完全に密閉された部屋での殺人、唯一開閉可能なドアの前には、1人の人間の目が光る・・・という状況。
ただ、その解法については「鮮やか」とは言い難いのも事実・・・
「樫鳥」(琉球カケス?)の存在も、凶器との関連での「仕掛け」はちょっとミエミエでしたねぇー。
ラスト、大方の謎解きが終わった後の、更なるエラリーの悲痛な謎解きは、何となく後期クイーン作品を彷彿させられます。
なかなかの力作という評価でいいのではないですか。
(今回、創元版で読みましたが、キヌメの台詞が「・・・アル」って、中国人じゃないんだから・・・これってワザとか?)

No.2 7点 Tetchy
(2009/06/25 23:08登録)
空さんもおっしゃってますが、日本では邦題が示すように国名シリーズに数えられているが、原題は“The Door Between”と全く別。私見を云わせていただければ、やはりこれは国名シリーズではなく、『中途の家』同様、第2期クイーンへの橋渡し的作品だと考える。

その根拠は『中途の家』と本作では事件の容疑者は既に1人に絞られ、その人物の冤罪を晴らすという構成に変わっていること。これは『スペイン岬の秘密』で最後にエラリーが吐露した、自身が興味本位で行った犯人捜しが果たして傲慢さの現われではなかったか、知られない方がいい真実というのもあるのではないかという疑問に対する当時作者クイーンが考えた1つの解答であるのではないか。即ち部外者が犯行現場に乗り込んで事件の真実を探ること、犯人を捜し出すことの正当性を、無実の罪に問われている人物への救済へ、この時期、クイーンは見出したのではないだろうか。それは最後、真犯人に対してエラリーが行った行為に象徴されているように思う。

また犯罪のプロセスを証拠によって辿るというよりも、犯行に携わった人々の心理を重ね合わせて、状況証拠、物的証拠を繋ぎ合わせ、犯罪を再構築する、プロファイリングのような推理方法になっているのが興味深い。

しかし私は本書を存分には楽しめなかった。なぜならある作品を読んで真相を知っていたからだ。未読の方のために老婆心ながら本書を読む前に、麻耶雄嵩氏の『翼ある闇』を読まないでおく事を勧めておこう。

No.1 7点
(2008/12/06 19:21登録)
『中途の家』で国名シリーズ打ち切り宣言をした直後の作品であり(原題The Door Between)、読者への挑戦もやめるにふさわしい事件でした。日本趣味を取り入れて雰囲気を出したところも、ラストの心理的推理に至る構成も、この後に続く軽めの3長編を飛び越して『災厄の町』以降の作品群につながっていくような印象があります。
この節目の作品でクイーンが初めて挑戦した密室(そうですよね!)のアイディアはまあまあ程度で、だからこそのこの終わり方なのではないかと思えます。

14レコード表示中です 書評