| nukkamさんの登録情報 | |
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| 平均点:5.44点 | 書評数:2929件 |
| No.649 | 6点 | 災いの黒衣 アン・ペリー |
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(2015/04/11 23:49登録) (ネタバレなしです) 1991年発表のモンクシリーズ第2作の歴史本格派推理小説で、上流階級の一族を中心にしながら使用人たちの描写にもかなりの力を入れているのがユニークです。推理としては不完全で一部の謎解きを自白に頼ってしまってはいますが、真相は非常に大胆なもので印象に強く残りました。それにしてもモンクは終盤はヘスターに主役の座、そして探偵役までも(?)を明け渡してしまったようなところがあり、今後はどうなるんでしょうね。なお作中でシリーズ前作の「見知らぬ顔」(1990年)の犯人名をネタバラシしているのは残念です。 |
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| No.648 | 5点 | 幽溟荘の殺人 岡田鯱彦 |
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(2015/04/11 23:39登録) (ネタバレなしです) 1952年発表の本格派推理小説で1958年には「黒い断崖」というタイトルの改訂版が出版されています。典型的なパズル・ストーリーになっており、「読者への挑戦状」と「手掛かり索引」が挿入されています。どちらも読者に対してフェアプレーな謎解きであることを強調する手法ですが、一つの作品で両方を備えているのは初めて読みました。もっとも改訂版の「黒い断崖」(私は未読です)では「手掛かり索引」が削除されてしまったそうです。この改訂版では探偵役やワトソン役が別人になり、さらには舞台の名前が幽溟荘からミモザ荘に変更されています。ページ数が少なく登場人物も多くなく犯人当てとしては難易度は低め(トリックがなかなか面白いです)、物語性は完全に犠牲にして謎解きのみに集中しており、「薫大将と匂の宮」(1950年)と同じ作者の作品とは思えません。本格派嫌いの読者には全くお勧めできないです。論創社版の「岡田鯱彦探偵小説選Ⅱ」(2014年)に収められているものは仮名づかいを現代風に改めてあって読みやすくなっています。 |
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| No.647 | 6点 | 龍神池の小さな死体 梶龍雄 |
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(2015/04/11 23:35登録) (ネタバレなしです) 1979年発表の本格派推理小説です(ケイブンシャ文庫版では長編第4作と紹介されていますが、「透明な季節」(1977年)、「海を見ないで陸を見よう」(1978年)、「大臣の殺人」(1978年)、「天才は善人を殺す」(1978年)に次ぐ長編第5作です)。全部で5章から構成されていますが、過去の事件を調べる最初の2章はあまりにも手探り感が強くてテンポが遅く少々退屈です。しかし現代で事件が発生し、名探偵気取りのヒロインが活躍する第3章から一気に謎解きが盛り上がり、第4章の最後では「推理小説でいえばここで犯人を推理するデータは全部出つくしたというところ」と宣言されます。そして第5章、ネタバレにならないように紹介するのは難しいのですが、この章は「解決」と「もうひとつの解決」で構成されています。前者だけで物語を終わらせることも可能だったでしょう。ところが後者によってまるで世界が歪んでしまったかのような衝撃が読者に提供されます。例えば(結末は全く違いますが)ジョン・ディクスン・カーの「火刑法廷」(1937年)のようなひっくり返し方です。但しカーが最初の解決を否定するようなところがあったのに対して本書は「もうひとつの解決」が「解決」を否定しているわけではありませんし、カーよりも手が込んでいます。 |
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| No.646 | 5点 | ハーバード同窓会殺人事件 ティモシー・フラー |
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(2015/04/11 23:27登録) (ネタバレなしです) 全部で5作書かれたジュピター・ジョーンズシリーズの1941年発表の第3作でシリーズ代表作と評価の高い本格派推理小説ですが個人的には評価の分かれる問題作かと思います。真相は(似た前例はありますが)あまりに大胆過ぎて万人受けは難しいでしょう(この大胆さのゆえに高く評価する意見があるのも何となく理解はできますけど)。この作者の持ち味である軽妙な文体で簡潔に説明しているのが本書の場合はネックとなっており、こういう真相ならもっと丁寧に説明しないと論創社版の巻末解説にある通り、読者にとって「不条理感が残る」ことになってしまうでしょう。 |
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| No.645 | 5点 | ブルーベリー・マフィンは復讐する ジョアン・フルーク |
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(2015/04/11 23:23登録) (ネタバレなしです) 2002年に発表された本書は序盤から思い切りストレートに事件関係者にアリバイを尋ねまわるハンナの探偵ぶりが何ともおかしいです。シリーズ3作目ともなるとさすがに(マイク以外は)みんなも彼女のアマチュア探偵としての存在を認めるようになったのか意外と素直に取り調べ(?)に応じています(笑)。ほとんど運任せで解決されて論理的な謎解きはないに等しいけどいかにもコージー派らしく気楽に読めるミステリーになっています。 |
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| No.644 | 3点 | インパーフェクト・スパイ アマンダ・クロス |
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(2015/04/11 23:18登録) (ネタバレなしです) 1995年発表のケイト・ファンスラーシリーズ第11作です。ジョン・ル・カレの「パーフェクト・スパイ」(1986年)を意識したタイトルが付いていますが、あいにく私はカレ作品を読んでいないのでどれほどの影響を受けているのか見当もつかず(あちこちでカレ作品からの引用があるのはわかりますが)、国際的陰謀があるわけでも産業スパイが登場するわけでもありません。フェミニズム問題ばかりが目立っており、終盤のケイトのせりふにあるように、探偵が「何かを解決する」わけではなく、これまでに私が読んだクロス作品の中でも最もミステリーらしくありません。デビュー作でユーモア本格派だった「精神分析殺人事件」(1964年)と本書を比べるとあまりの作風の違いに驚きます。クロス(1926-2003)は本書以降にシリーズ作品を3作発表したところで自殺してしまうのですが、本当に書きたかったのは何だったのだろうと考えさせられます。 |
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| No.643 | 5点 | 暗闇の鬼ごっこ ベイナード・ケンドリック |
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(2015/04/11 23:15登録) (ネタバレなしです) 米国のベイナード・ケンドリック(1894-1977)は1945年にアメリカ探偵作家クラブ(MWA)の創立に携わり初代会長に就任した大物で、ミステリー作家としては12作の長編といくつかの短編で活躍する盲人探偵ダンカン・マクレーンシリーズで知られています。本書は1943年発表のシリーズ第4作の本格派推理小説です。連続転落死の謎が魅力的ですが現場状況やトリックの説明描写が粗く、マクレーンの推理が鋭いというよりも警察の捜査がいい加減過ぎではの疑問が拭えません(あのトリックは痕跡をかなり残すでしょう)。終盤でのマクレーンと犯人の対決場面が非常にサスペンスに富んでいます。謎解きとは直接関係ありませんが最後の一行にはびっくりしました。 |
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| No.642 | 7点 | 謀殺の火 S・H・コーティア |
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(2015/04/03 18:50登録) (ネタバレなしです) 1967年に書かれた本書はシリーズ探偵の登場しない本格派推理小説です。論創社版の「緻密な推理」という評価には首をかしげざるを得ません。ある登場人物が述べるように、「不正確で、限られたことしかわからなかった」推理であり、仮説の域を脱しきれていないように思えます。とはいっても非常に大胆で魅力的な仮説で、決して本書は凡作ではないと思います。序盤は事件の紹介が細切れになり過ぎてわかりにくかったり、登場人物の大半が生身の人間として登場しないので(その言動は手紙や新聞記事の中で伝えられるのみ)その性格が把握しづらいなど欠点も多いのですが、読むだけの価値は十分にあると思います。 |
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| No.641 | 5点 | 殺人混成曲 マリオン・マナリング |
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(2015/04/03 18:36登録) (ネタバレなすです) 米国の女性作家マリオン・マナリングについてはあまり詳細な経歴は知られていないようですし、書かれたミステリー作品数も多くはないようです。1954年発表の本書は彼女のミステリー第2作で、クリスティーのエルキュール・ポアロ、セイヤーズのピーター・ウィムジー卿、マイケル・イネスのアプルビイ警部、E・S・ガードナーのメイスン弁護士、レックス・スタウトのネロ・ウルフ、ナイオ・マーシュのアレン警部、エラリー・クイーンのエラリー・クイーン、ミッキー・スピレーンのマイク・ハマー(唯一のハードボイルド探偵代表)、パトリシア・ウェントワースのミス・シルヴァーという著名な名探偵を(但し作中では名前を微妙に変えてます)登場させたパスティシュ小説にして本格派推理小説です(本書の英語原題はずばり「Murder in Pastiche」)。それほどページ数の多い作品ではなく、しかも9人の探偵たちのそれぞれの捜査を描いた第2章だけで全体の8割ぐらいを占めています。逆に真相説明は非常にあっさりしているし、動機の説得力に欠けているのが大きな弱点です。結末にはあまり期待せず、各々の探偵活動がどれだけ原作を上手くパロっているかを楽しみながら読むべきだと思います。ちなみにハヤカワポケットブック版は都筑道夫を含めた10人の訳者がそれぞれの探偵パートを分担して翻訳している企画になっており、それが効果的だったかは何とも判断できませんがこういうこだわりは大いに拍手したいです。 |
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| No.640 | 7点 | ママは眠りを殺す ジェームズ・ヤッフェ |
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(2015/04/03 18:27登録) (ネタバレなしです) 1991年発表のママシリーズ第3作は2人の語り手がいるのが新趣向です。血の繋がりがないので仕方ないのかもしれませんが片方がママのことを「老婦人」と呼ぶのが最初は違和感ありました(といってもママと呼んだらやっぱり変ですが)。相変わらずヤッフェは期待を裏切らず、本書も本格派推理小説のお手本のような謎解き小説になっていて、次々に明かされる手掛かりと論理的な推理が楽しめました。 |
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| No.639 | 5点 | ハーレー街の死 ジョン・ロード |
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(2015/03/29 21:14登録) (ネタバレなしです) 1946年発表のプリーストリー博士シリーズ第42作の本格派推理小説です。殺人か、自殺か、事故か、それとも第4の可能性があるのかというのがメインの謎です。この真相は凄く意外とまでは思いませんがまずまず小器用にはまとめていると思います。ただ一般的な犯人探しのプロットと違っているためか、延々と続く地道な捜査が中だるみ気味に感じられてしまいます。論創社版の巻末解説にあるように、アイデア勝負の作品だしアイデア自体はまあまあとは思いますが結末に至るまでが結構しんどい作品でした。 |
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| No.638 | 5点 | ペンローズ失踪事件 R・オースティン・フリーマン |
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(2015/03/29 21:06登録) (ネタバレなしです) 1936年発表のソーンダイク博士シリーズ第17作の本格派推理小説です。真相が早い段階で見当がついてしまうことも多いフリーマンですが、本書はちょっとしたどんでん返しがあって読者の意表を突くことを意識したところがあります。しかし短気でせっかちな私には事件性がはっきりしない失踪事件は苦手なテーマで、F・W・クロフツの「ホッグズ・バックの怪事件」(1933年)と同じく、後半にならないと局面が大きく変わらない展開は辛かったです。あとこれは作者の問題ではないのですが、他の作品でもよく顔を出しているミラー警視の口調があまりにも乱暴な長崎出版版の翻訳には違和感を覚えました。 |
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| No.637 | 6点 | 恐怖は同じ カーター・ディクスン |
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(2015/03/29 20:59登録) (ネタバレなしです) カーター・ディクスン名義での最後の作品となったのはヘンリー・メリヴェール卿シリーズではなく、1956年発表の歴史本格派推理小説である本書です。現代人が過去にタイムスリップするというのはジョン・ディクスン・カー名義の「ビロードの悪魔」(1951年)と同じ設定ですが、本書では現代の謎と過去の謎が提示されているのが特徴です。とはいえ謎解き要素はやや希薄で、特に現代の謎は推理も不十分なままに何となく解決されてしまったようなところがあります(過去の謎解きはまあまあだと思います)。しかし冒険小説としては一級品で、序盤から複雑なロマンス、皇族との対面、相次ぐ決闘とハラハラドキドキの場面が連続し、最後までテンションは落ちません。 |
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| No.636 | 5点 | マリオネット園「あかずの扉」研究会首吊塔へ 霧舎巧 |
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(2015/03/29 20:52登録) (ネタバレなしです) 2001年発表の《あかずの扉》研究会シリーズ第4作となる本格派推理小説です。相変わらず「マンガ的」な軽さと生真面目に考え貫かれた謎解きの組み合わせが不思議な魅力を醸し出していますが、国内ミステリーをある程度読んでいないとわかりにくい暗号など、やや読み手を選ぶようなところがあるのはちょっと気になりました。 |
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| No.635 | 4点 | だれがコマドリを殺したのか? イーデン・フィルポッツ |
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(2015/03/29 20:36登録) (ネタバレなしです) ハリントン・ヘキスト名義で1924年に発表された本格派推理小説です。タイトルは王道的な犯人当て本格派推理小説のような雰囲気がありますが、前半部は恋愛と恋愛成就後の人間関係がゆっくりとした展開で描かれていてミステリーらしさがなく、ここが退屈に感じる読者もいるかもしれません。手掛りからの推理というよりは突如思いついた仮説から強引に解決へ持って行くので犯人当てとしてはあまり楽しめません。これ見よがしの殺意とか狂気の描写とは異なるものの、じっくりと醸成されたかのような犯人像の描写には作者の個性を感じます。 |
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| No.634 | 6点 | 内部の真実 日影丈吉 |
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(2015/03/29 20:22登録) (ネタバレなしです) 作者自身、第二次世界対戦中の台湾に約2年半駐留し、そこで後に妻となる女性と知り合い、終戦を迎えています。そのためか1959年発表の長編第3作となる本格派推理小説の本書の舞台である1944年の台湾の描写には何か思い入れのようなものが感じられます(なお作中の桃源街は架空の地です)。江戸川乱歩が「プロットが凝りすぎて少しわかりにくい」とコメントしたそうですが、複数の探偵役がいて、複数の自白があって、語り手が容疑者でもあることでその記述が無条件で信用できるものではないということなどが読者を混乱させている点は否めないでしょう。しかし所々で挿入される幻想的な描写も含めてそれが本書の個性だと思います。一度読んでよく理解できなかった人にはそのままではもったいない、ぜひもう1回読んで理解を深めたらどうですかと勧めたくなる内容を含んでいます。 |
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| No.633 | 5点 | 白犬の柩 垂水堅二郎 |
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(2015/03/29 20:15登録) (ネタバレなしです) 1960年代にわずか2作のミステリーを発表し長い沈黙の後、1990年代になって芳野昌之というペンネームで作品を発表した作者の1963年発表の長編第2作の本格派推理小説です。1962年のデビュー作のスリラー小説「紙の墓標」(後に「紙の墓碑」に改題)は、使われているアイデアが英国の某多作家が1928年に発表したスリラー小説とあまりに類似している胡散臭さが気に入らなかったのですが本書はなかなか力の入った作品だと思います。ペットの誘拐事件(誘拐犯は最初から判明しています)に端を発するサスペンス小説風に始まりますが、個性的な登場人物の思惑とすれ違いが予想外の展開を見せるプロットを生み出しています。本格派推理小説としては偶然の産物で殺人犯があの人に決まった(?)かのような真相は謎解きとして不満もありますが、皮肉に満ちた結末が何とも言えません。 |
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| No.632 | 7点 | 死が最後にやってくる アガサ・クリスティー |
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(2015/03/20 11:38登録) (ネタバレなしです) 歴史ミステリーを語る時にクリスティーが引き合いに出されることはまずないと思いますが、1945年発表の本書は古代エジプトを舞台にした唯一の歴史ミステリーです(非ミステリー作品には「アクナーテン」(1973年)という戯曲もありますが(私は未読です))。注目すべきは発表時期の早さで、歴史ミステリーの先駆的作品では他にジョン・ディクスン・カーの「エドマンド・ゴドフリー卿殺害事件」(1936年)やリリアン・デ・ラ・トーレの「消えたエリザベス」(1945年)が知られていますがこの2作は実際に起こった事件の研究論文的な作品で、小説として楽しめる内容ではありません。その点本書は謎解きと家族ドラマが融合された堂々たる本格派推理小説です。外面的な時代描写もありますが、登場人物が生と死についていろいろ考えている場面にこそ古代エジプトを舞台に選んだ意義があるように思います。考古学者の夫の助言を得られたから完成できたのでしょうね。前半は地味でゆったりした展開ですが後半はサスペンスに富む急展開が待っています。弱点とまでは言いませんが、意外と死ぬ人が多くて犯人当てが容易になってしまったようなところがあります。 |
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| No.631 | 6点 | 虫のくったミンク E・S・ガードナー |
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(2015/03/19 16:27登録) (ネタバレなしです) 1952年発表のペリー・メイスンシリーズ第39作です。たたみかけるような尋問で手掛かりを求めるのがメイスンの得意技ですが、本書では登場人物が次々に行方をくらますのでその捜査手法が思うように進められず、もどかしさがいつもと違う緊張感を生み出しています。シリーズに登場する警官の中では冷静沈着型のトラッグ警部がいつになく熱い思いを語っているのも珍しいですが、最終章でメイスンの代わりにトラッグが真相を説明しているのもこれまた珍しいです。その締め括りはかなりの衝撃度です。 |
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| No.630 | 5点 | 蜘蛛と蠅 F・W・クロフツ |
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(2015/03/18 10:34登録) (ネタバレなしです) 1941年発表の本格派推理小説である本書(フレンチシリーズ第22作)ではクロフツとしては珍しくも男女のカップルが大勢登場します(関係は色々です)。もっともそれをあまり上手く活用できていないところが人物描写が苦手なクロフツらしいですね(惜しい)。終盤で読者に対してだけあるトリックが図解付きで紹介され、その後にフレンチがもう一度トリックを説明していますがトリックを見破った過程には全く触れていない説明なので推理という点では不満を残しました。アマチュア探偵の(やや危なっかしいが)頑張りが単調さを解消しているのは評価できますけど。 |
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