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ミステリの祭典

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ハーバード同窓会殺人事件
ジュピター・ジョーンズ

作家 ティモシー・フラー
出版日2015年04月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 6点 kanamori
(2015/05/04 21:40登録)
結婚式を明日に控えたジュピターのもとに、大学の先輩で友人のエドから助けを求める電話がかかってくる。ハーバード大学卒業10周年の同窓会が催されているホテル近くのゴルフ場で参加者の射殺死体が見つかり、エドが重要参考人となったらしい。ジュピターは婚約者のベティとともに現地に赴くが--------。

アマチュア探偵ジュピター・ジョーンズ登場のシリーズ第3作。
デビュー作の事件から8年経ちジュピターは母校ハーバードの講師になっていますが、若さと勢いは相変わらずで、強引に警察捜査に鼻を突っ込みつつ、独自の調査で真相に迫ります。軽いユーモアを交えた癖のない語り口は読みやすく、あまり分量もない長編なので、あっという間に読み終えました。
作者が仕掛けた”犯人像”に関する大胆な趣向が本書の最大の読ませどころで、某有名作品を想起させるアイデアの類似性はあるものの、ゴルフ場近くの小屋に住む老人の証言や、いくつかの矛盾する証拠などの伏線の張り具合はいい感じです。ただ、被害者の人物造形や事件の背景描写が十分でなく、動機を推理する情報が欠けているのが気になります。そのあたりの人間ドラマ部分を書くのが作者の作風に合致しないとも言えますが、大学時代の青春群像のようなエピソードが入っていれば物語に厚みが出たのではと惜しまれます。
いずれにしても、以前から気になっていた作品を読めただけでも満足。刊行リクエストに応えてくれた論創社さんに感謝を込めて採点はプラス1点w

No.1 5点 nukkam
(2015/04/11 23:27登録)
(ネタバレなしです) 全部で5作書かれたジュピター・ジョーンズシリーズの1941年発表の第3作でシリーズ代表作と評価の高い本格派推理小説ですが個人的には評価の分かれる問題作かと思います。真相は(似た前例はありますが)あまりに大胆過ぎて万人受けは難しいでしょう(この大胆さのゆえに高く評価する意見があるのも何となく理解はできますけど)。この作者の持ち味である軽妙な文体で簡潔に説明しているのが本書の場合はネックとなっており、こういう真相ならもっと丁寧に説明しないと論創社版の巻末解説にある通り、読者にとって「不条理感が残る」ことになってしまうでしょう。

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