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ミステリの祭典

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内部の真実

作家 日影丈吉
出版日1959年01月
平均点6.50点
書評数2人

No.2 6点 nukkam
(2015/03/29 20:22登録)
(ネタバレなしです) 作者自身、第二次世界対戦中の台湾に約2年半駐留し、そこで後に妻となる女性と知り合い、終戦を迎えています。そのためか1959年発表の長編第3作となる本格派推理小説の本書の舞台である1944年の台湾の描写には何か思い入れのようなものが感じられます(なお作中の桃源街は架空の地です)。江戸川乱歩が「プロットが凝りすぎて少しわかりにくい」とコメントしたそうですが、複数の探偵役がいて、複数の自白があって、語り手が容疑者でもあることでその記述が無条件で信用できるものではないということなどが読者を混乱させている点は否めないでしょう。しかし所々で挿入される幻想的な描写も含めてそれが本書の個性だと思います。一度読んでよく理解できなかった人にはそのままではもったいない、ぜひもう1回読んで理解を深めたらどうですかと勧めたくなる内容を含んでいます。

No.1 7点 kanamori
(2010/05/17 20:55登録)
太平洋戦争末期の日本統治下の台湾を時代背景とした長編ミステリ。
民家の密室状況の中庭で見つかった軍人射殺事件の捜査を、主人公で同僚軍曹の手記の形で描かれる第1部が本書全体の9割を占めます。
現場に残された拳銃と銃弾を巡って次から次へと推論がなされ、容疑者が三転四転する展開はコアな本格編という感じで、当時の台湾の情景描写も合わさって読み応えがありました。
第2部で、残された手記を基に明かされる真相は意表を突きますが、王蘭の花に関するあるエピソードの謎が残っているように思えます。これは幻想と理解すべきなのか、それとも読解力不足なのか、悩ましい。

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