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ミステリの祭典

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ハーレー街の死
プリーストリー博士シリーズ

作家 ジョン・ロード
出版日2007年03月
平均点6.00点
書評数5人

No.5 6点 E-BANKER
(2023/12/09 13:55登録)
J.ロード。生涯で147作ものミステリーを残したものすげぇー多作の作家。
ただし、巻末解説の新保博久氏によれば、ロードは「ワンアイデアだけで長編を紡げる剛腕作家」ということ(らしい)。ということで、代表作のひとつとされる本作を読んでみることに。
1946年の発表作品。

~ロンドンのハーレー街にある診療所で医師の変死体が見つかった。死因はストリキニーネによる毒死。検視審問では、目撃者の証言と動機の不在から他殺でも自殺でもなく事故死の評決がくだった。だが何か気になる。プリーストリー博士の書斎に集まるメンバーは捜査と推理を始めた。そして博士は事故でも自殺でも他殺でもない「第四の可能性」を示唆するのだった。意外な真相が待ち受ける本格派の巨匠ロードによる最高傑作!~

他の方々も書かれてますが、本作のメインテーマである「第四の可能性」。これは確かに微妙。
そんなに大上段に構えるほどの新機軸には思えないし、探偵役のプリーストリー博士も「えらくもったいぶったなあー」という感想になってしまう。
そもそも、最終的な真相のための条件が「後出し」なのが問題なのかな? 構成上やむを得ないところもあるんだろうけど、物語そして推理の「カギ」となるだけに、そこはせめて伏線だけでも用意すべきでは?というふうに見える。

でも、そこは本作の「肝」ではないんだろうな。
途中の長々した捜査過程が退屈という意見もあるようで、それも確かにと思わせるところはある。
なにせ、終わってみれば「捨て筋」をひたすら読まされていたわけなのだから・・・
作者に言わせるなら、「第四の可能性」を浮かび上がらせるために、第一から第三の可能性をなくさせる必要があったわけで、この捜査過程も必要!ということになるのだろう。
こんなやり方が、きっと冒頭の「ワンアイデアを膨らませる作家」という評価にもつながっているに違いない。

ただ、決して「つまらない」ということではない。登場人物たちの試行錯誤や刑事の実直な捜査行についても、十分個人的な「好み」の範疇だった。
たったひとつの事件をあらゆる角度から検証していく試みは、バークリーの諸作などを持ち出さなくても特に目新しさはない(のかもしれない)。
ただ、その過程を「面白くする」のか「退屈」にするのかは、それこそ作家の力量にかかっている、ということなのだろう。
そういう意味では、どちらかというと「好き」なベクトルの作品。
それでいいのだ。

No.4 8点 斎藤警部
(2022/06/18 23:35登録)
甘みや愛嬌は薄いが、高潔な威厳とさり気ない温かみで力強く構築された堂々の長篇。締まりが抜群。前期レッド・ツェッペリンのたたずまいを彷彿とさせる。上級市民の世界が尊敬できる対象として真摯に描かれている。(中にはそうでない者も混じっていた..)ともあれ、この気高さが本格ミステリとがっちり手を組んでくれた事象はもう尊ぶしかない。

名医街と呼ばれるロンドンのハーレー街にて、一人の医師が謎の多い(色々と辻褄が..)毒死を遂げる。検死法廷では一旦事件性無しと処されたが、そこに強い違和感を覚えたスコットランド・ヤードの警視がいる。彼は或る私的な「定例会」の席にこの話を持ち込んだ。

「犯罪捜査に関するかぎり、この件は終わった」 プリーストリー博士は答えた。 「これ以上議論する必要なない」

他殺でも自殺でも事故死でも自然死でもないって。。これぞ、心理的超物理(⚫️学?◯学?)トリックの爆発だ!! そのトリック解明に至るまでのロジック披瀝も高潔にして鮮烈。専門知識を要する部分が全く不満や違和感無く呑み込めたのは、その肝となる⚫️学?◯学?的要素がミステリの土俵であまりにも興味津々に光り輝いたからに違いない。

地味なキャラクターの探偵役が或ることをやらかすのだが、そのお茶目感さえ妙に地味でシリアスなのが却って温かい。うむ、この不思議な温かさが底にあるからこそ、バランスが取れているんだろうなあ。

No.3 5点 nukkam
(2015/03/29 21:14登録)
(ネタバレなしです) 1946年発表のプリーストリー博士シリーズ第42作の本格派推理小説です。殺人か、自殺か、事故か、それとも第4の可能性があるのかというのがメインの謎です。この真相は凄く意外とまでは思いませんがまずまず小器用にはまとめていると思います。ただ一般的な犯人探しのプロットと違っているためか、延々と続く地道な捜査が中だるみ気味に感じられてしまいます。論創社版の巻末解説にあるように、アイデア勝負の作品だしアイデア自体はまあまあとは思いますが結末に至るまでが結構しんどい作品でした。

No.2 6点 mini
(2012/07/20 09:53登録)
気象庁は梅雨明け宣言を1週間ほど早まったのとちゃう?ところで先日7月16日にジョン・ロードが亡くなった
と言ってもキーボード奏者(いやオルガン奏者という表現の方が適切か)であり、元ディープ・パープルのあのジョン・ロードである
以前に作家の方のジョン・ロードをgoogle検索したら、ずら~っと伝説のロック・バンド関連の結果が並んだのには笑った
流石にミステリー作家にブラックモアってのは居ないな、怪奇ホラー分野でブラックウッドやブラックバーンなら居るが

さて作家ジョン・ロードと言えば、本格限定ならばミステリー史上の最多作作家である、もちろん非本格分野ならばさらなる多作家はざらに居るが、本格だけで多作するのは難しいのだろうか
しかしその割には邦訳刊行されて現在入手容易なものはたったの2冊、クラシックミステリーマニアには未訳作の翻訳作品要望が最も多い作家の1人である
それでもその2冊「見えない凶器」「ハーレー街の死」は作者の中では比較的に定評のある2作なのが救いだ
「見えない凶器」はトリックはお粗末なもののプロットに工夫が凝らされた佳作だったし、「ハーレー街」は発想のユニークさが光る
その発想とは、自殺でも他殺でも事故死でもない第4の可能性だ
とすると病死か?、なんて突っ込みはなしよ、病死は自然死であって”変死”じゃ無いからね
「ハーレー街」という作品は、この第4の可能性というアイデアが評価出来るかに全てがかかっている、と言うのも物語に起伏が少なく、定例会でのディスカッションに終始する展開だからだ
アイデアに感銘しなければただ単調にしか感じられないだろう
このアイデア、kanamoriさんも御指摘通りで、”第4”と言うにはちょっと苦しいかな、全くの新機軸とは言い難いからね
”第4”と言うより、”はっきりと第1でも第2でも第3でも無い”という微妙な言い方の方が近いか、う~んネタバレしないように表現するのは面倒くさいな
ただ、よく考えたな、とは思う

No.1 5点 kanamori
(2010/09/06 21:46登録)
プリーストリー博士シリーズ中期の本格編。
このシリーズ、中期以降は毎週土曜日に警察関係者らを招いた定例会での安楽椅子探偵風になりますが、本作もある医師の毒死事件を巡って推理を凝らしています。
毒死の原因に関して、博士が事故、自殺、他殺以外の”第4の可能性”を示唆しますが、真相はちょっと微妙でした、それは第4の可能性とは言わないでしょう。

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