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ミステリの祭典

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殺人混成曲

作家 マリオン・マナリング
出版日1959年01月
平均点6.00点
書評数4人

No.4 5点 ミステリーオタク
(2016/07/13 16:25登録)
暇潰しとしては、まあまあ

No.3 5点 nukkam
(2015/04/03 18:36登録)
(ネタバレなすです) 米国の女性作家マリオン・マナリングについてはあまり詳細な経歴は知られていないようですし、書かれたミステリー作品数も多くはないようです。1954年発表の本書は彼女のミステリー第2作で、クリスティーのエルキュール・ポアロ、セイヤーズのピーター・ウィムジー卿、マイケル・イネスのアプルビイ警部、E・S・ガードナーのメイスン弁護士、レックス・スタウトのネロ・ウルフ、ナイオ・マーシュのアレン警部、エラリー・クイーンのエラリー・クイーン、ミッキー・スピレーンのマイク・ハマー(唯一のハードボイルド探偵代表)、パトリシア・ウェントワースのミス・シルヴァーという著名な名探偵を(但し作中では名前を微妙に変えてます)登場させたパスティシュ小説にして本格派推理小説です(本書の英語原題はずばり「Murder in Pastiche」)。それほどページ数の多い作品ではなく、しかも9人の探偵たちのそれぞれの捜査を描いた第2章だけで全体の8割ぐらいを占めています。逆に真相説明は非常にあっさりしているし、動機の説得力に欠けているのが大きな弱点です。結末にはあまり期待せず、各々の探偵活動がどれだけ原作を上手くパロっているかを楽しみながら読むべきだと思います。ちなみにハヤカワポケットブック版は都筑道夫を含めた10人の訳者がそれぞれの探偵パートを分担して翻訳している企画になっており、それが効果的だったかは何とも判断できませんがこういうこだわりは大いに拍手したいです。

No.2 9点 mini
(2010/09/22 10:32登録)
この作品に関しては長文になるので御容赦、さらに最初にプチ自慢をさせて欲しい
実は本自体はかなり以前に入手していたのだが、ずっと積読
なぜかってぇーと、物真似される9人の作家を全員読むまで我慢していたのだ、我ながらストイックな奴
最後に残ったスピレインを最近読んだので準備完了、ウェントワースとスピレインは1冊だけだが、それ以外の作家は最低でも2~3冊以上は読んだし
自慢じゃないが、本書を後で新しく買ったのではなく長年所持していながら、元ネタの9人の作家を最低1冊でも全員読むのを待ってからこの作品に取り掛かったのは全国でも私を含めて少数派だぞきっと
だってさ、この作品はかなり昔から刊行されていたのだが、その時点でウェントワースは刊行されてなかったし
論創社がウェントワースを出したのはずっと後だし、イネスやマーシュもまともに紹介されたのもちょっと後、下手をすると浅羽訳セイヤーズすら読まないで先にこれを読んでしまった読者も過去には居そう
今は恵まれた時代になったもんだ、まぁ、スタウトやガードナーあたりが未読だったなんてのはきっと初心者だろうから、この作には手を出さないだろうしね
ここから各論へ、尚、各探偵は微妙に名前変えてあるので面倒だからもどきで統一

(1) ポアロもどきの章は雰囲気が出てるけど、やはり訳者を選任した効果は発揮されてると思うな
特に場面転換時に会話文で終わるのは原文もそうなのか分からないが、感じが出ている
ただクリスティの真似としてはちょっと文章が書き込み過ぎな印象

(2) アプルビイもどきの章は他のサイトのネット評ではあまり言及されて無いが結構傑作
この作の発表は1954年、その時点でマイケル・イネスの「ストップ・プレス」や「アプルビイズ・エンド」は刊行されてるから、どうもイネス中期のファースっぽい作風を真似たようだ
大袈裟な推論を巡らす割には真相が拍子抜けなイネス中期作の真似はなかなか上手い

(3) メイスン弁護士もどきの章もまあまあで、短く会話文を連ねる文章などいいんじゃない

(4) アレン警部もどきの章も、ナイオ・マーシュを読まずにこちらを先に読んでしまった人は残念で、紳士を強調したり、特に部屋に一人づつ呼んでの尋問シーンが続く件などは、マーシュを既読の人ならニヤリとするはずだ

(5) ネロ・ウルフもどきの章も、語り手である助手のアーチーもどきが張り切りすぎて痛い目に合うとこなんか、スタウトの元ネタにもありそうで笑える

(6) ミス・シルヴァーもどきの章は元ネタ未読だった人多そう、今でも読めるのはたった1冊だからね
この探偵を選んだのは、ポアロを使用済みなので、同一作家重複を避ける意味でマープルが使えず、代役かもと思ってたのだが、ウェントワースは作品数も多く、当時の英国では人気作家だったのだろう、もっと訳して欲しい作家だ

(7) マイク・ハマーもどきの章はちょっと大袈裟にパロってる
1954年ならハードボイルド代表でチャンドラーも人気作家だったはずだが、マーロウではなくハマーの方を選んだのは当時は衝撃的な登場だったし、内容的にパロディに向いていたからだろう

(8) クイーンもどきの章は、これは戦後後期のクイーンのイメージだと思う

(9) ウィムジイ卿もどきの章だが、セイヤーズは戦後は筆を折ってしまったので、これだけが引退した過去の探偵である
最後に謎を解かせる役割なので、公平の為に現役探偵は避けたのかも
クリスティとは逆で、セイヤーズの真似こそもっと大袈裟に書き込んでも良かったんじゃないか、ちょっとあっさりし過ぎ
強烈にキャラ立ちしてる探偵だからね

ここから総論、作者が英国作家なせいか全体としてアメリカ作家に厳しく英国作家は敬愛しているのかパロディ度が優しい印象がある
でもどの探偵にもそれなりに華を持たせ、描き分けた作者の手腕には脱帽せざるを得ない
ところで他の各ネット上での評価が低いものが多いが、その理由の一つに、多重解決ではなくて連作リレー長編のような構成が肩透かしに感じるからかも
私は前評判から、これは単に物真似が主眼だと知って読んだので、物真似が上手いかどうかが鍵で、多重解決などは最初から期待してなかった
ちょっと新本格風のメタな真相解明を見ても、作者の狙いは最初から物真似ありきな感じで、多重解決ものなどを指向してないのは明らかだし、本書の趣向からして動機が軽い点などを突っ込むのも野暮というものだろう
もう一つは先にも述べたがスタウトやガードナーあたりは読んでいたとしても、イネスやマーシュを未読状態でこれを読んだのではないかな
イネスやマーシュなどは翻訳が進んだ現在では必読でしょ、ただイネスとマーシュは現役文庫本で読めるものが無いので、ハードカバーに手を出さない人は読まないんだよな、残念ながら
1冊しか翻訳が無いウェントワースは仕方無いが、本格しか読まないハードボイルド嫌いな人だと、古本でも比較的入手容易なスピレインでもスルーする可能性あるしね

作家選択に関しては当時の作家の人気状況が分かって興味深くやはり英国らしいな、もし日本の作家がこういうの書いたら、例えばイネスやマーシュは省いてヴァン・ダインとか入れたかも
1954年には既にヴァン・ダインの人気が凋落していたに違いないし、ヴァン・ダインを今でも有難がって読んでるのは日本だけかも
逆に戦後作は無くてもセイヤーズは人気作家だったようで、こうしたパロディものには良く引き合いに出されるもんな
戦前のレオ・ブルースのパロディ作にも使われてるしな
結論としては、この作品はマイケル・イネスとナイオ・マーシュとスピレインに馴染みがあるか無いかが大きく評価を左右する気がするんだよなぁ、全体の構成とかじゃなくて
私としては読書時間ががこんなに楽しかったのは久々

No.1 5点 kanamori
(2010/09/21 18:31登録)
大西洋航路の豪華客船上の殺人を扱った本格ミステリ。と書いても本書の特徴をなんら表現していない。
本書のウリは、ポアロ、クイーン、ピーター卿、ネロ・ウルフ、ペリイ・メイスン、マイク・ハマーなど、偶然9名の有名な現役名探偵が乗り合わせて、協調して事件を解決するプロットで、パスティーシュの大判振る舞いです。
しかし、この設定でこれだけ面白くないミステリになるとは思わなかった。ようするに探偵役が多すぎて、推理合戦ではなく、リレー形式で部分的に捜査に関与するだけなので、消化不良という感じです。
翻訳は都筑道夫他となっていて、9名の探偵パートで9名の翻訳者(マイク・ハマーは田中小実昌ね)を割り当てるなど、編集者は涙ぐましい趣向を凝らしているんですが、肝心の中身が伴っていませんでした。

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