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ミステリの祭典

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だれがコマドリを殺したのか?
別題『誰が駒鳥を殺したか?』『だれがダイアナ殺したの?』(ハリントン・ヘクスト名義)

作家 イーデン・フィルポッツ
出版日1960年01月
平均点6.42点
書評数12人

No.12 5点 ボナンザ
(2021/10/30 21:48登録)
フィルポッツらしく引き込まれる内容と今見ると流石に無理がないかという真相。

No.11 6点 ミステリ初心者
(2021/08/18 19:54登録)
ネタバレをしています。

 2015年の割と新訳を買いました。実は、赤毛のレドメイン家を買おうとしたのですが、なかなか新訳で買えませんでした(笑)。

 さて本作ですが、訳が新しいためか、非常に読みやすく、ページが進むのが速かったです。しかし、事件発生までが長く、主人公ノートンと妻ダイアナの愛憎劇でかなり費やされます。自分には合っていなかったようで、「はやくだれか死んでおくれよ…」と思いながら読んでしまいました(笑)。

 ダイアナが謎の病気にかかってからが事件性がでてきて面白くなるのですが、まあこの手のトリックはミステリファンならば1度は体験するような類ではあり、察してしまいました(笑)。それに、ちょっと現実離れしているとも思えます。姉妹が似ているところ、ダイアナの演技力が高く女優志望だったこと、事件後はノートンとマイラ(ダイアナ)があまり会っていないことなど、読者に納得感をもたらす要素がちりばめられているところはよかったです。

No.10 5点 弾十六
(2018/11/01 01:08登録)
1924年出版 創元文庫の新訳(2015年)で読みました。
JDC/CDのアンチ小説を立て続けに読んだので、冒頭からいかにも小説らしい展開の本作に、これこれ、こんなのが読みたかった… と思ったら、50ページを超えるあたりからあっとゆう間の急展開で、シノプシスめいた文章がずらずら並び、地の文で主人公たちの心理を説明しちゃう素人っぽい表現… 後半も拙い書き方で大ネタがすっかり割れてしまいました。プロットは非常に素晴らしいのにとても残念。もっと構成と文章を工夫すれば大傑作になったと思います。
だ〜れが殺したコックロビン。あ、それ!とコックロビン音頭を歌いたい気分です。

<ネタバレになるかもしれない蛇足>2018-11-3追記


これ、「ミソサザイ」が回想する形式の一人称小説にしたらかなりイケるんじゃないか、と思いつきました。もちろん「変死」事件後に書いている、というテイで…

No.9 7点 あびびび
(2016/11/01 12:30登録)
最後のトリックはあまり感心しない。誰か気づくものはいたはずである。ただ、物語として読ませる。わずか300数ページだが、上下巻を読んだような読み応えがあった。

「愛憎」がテーマだが、女性のわがまま、傲慢がいつの場合でも悲劇を読んでいる気がする。

No.8 6点 E-BANKER
(2016/05/15 16:35登録)
1924年。ハリントン=ヘクスト名義で発表された長編。
創元推理文庫創刊当時、「誰が駒鳥を殺したか?」とのタイトルで発表され、長らく絶版となっていたものを今回新訳にて復刊。
(他の方も書いてますので今さらですが・・・)

~医師のノートン=べラムは、海岸の遊歩道で美貌の女性に出会い、一瞬にして心を奪われた。彼女の名はダイアナ。あだ名は“コマドリ”・・・。ノートンは踏み出しかけていた成功への道から外れることを決意し、燃え上がる恋の炎に身を投じる。それが予測不能な数奇な物語の始まりと知るよしもなく・・・。さながら美麗な万華鏡を覗くように、目まぐるしくその姿を変える事件の行き着く先は?~

『だれが殺したコック・ロビン』
というわけで、ヴァン・ダインの「僧正殺人事件」でも有名なマザーグースの一節が、本作のモチーフとなっている。
(別に童謡殺人ではないが・・・)

作者の略歴や背景、作品の特徴や経緯などは戸川安宣氏の文庫版あとがきや、他の方の書評で詳しく書かれているので、重ねては書かない。
作者の代表作である「赤毛のレドメイン家」や「闇からの声」と比較しても、確かに本作はそれらに肩を並べるに値する出来ではある。
主人公ノートンとコマドリ、そして二人の近しい家族や友人。都合六人の男女がイギリス・フランスの田舎町を舞台に、愛憎渦巻く一大活劇を演じていく。
そう、まさに「愛憎」なのだ。
『可愛さ余って、憎さ百倍』
人間の感情は、時代や洋の東西を問わず一緒ということだろう。
この辺りを書かせると、作者はさすがに一流の腕前を発揮する。

野暮を承知でミステリー的な観点で見ると・・・
まぁ「○れ○○りトリック」は仕方ないかな、時代性を考えると。
このサイトで何回も書いたような気がするけど、人間の感覚ってそこまで鈍くないから、「○れ○○り」は正直あまり感心はしない。
でも本作の場合は、プロットの勝利だろう。
読者も「分かってて騙される」感があるのではないか?
一旦物語の世界に引き込まれると、ついつい作者のペースに巻き込まれてしまうのだろう。それだけの作品ということ。
(ところで探偵役のニコル=ハートはなぜ気付いたのだろうか? もしかして単なる勘?)

No.7 7点 HORNET
(2016/05/08 11:42登録)
 ここまでの方が多く書かれているように、事件発生まで作品の半分以上を要しているが、まったく苦にならなかった。男女の愛憎劇、人間模様が面白く描かれており、もともとはミステリ作家ではなかった著者の力量がいい意味で発揮されている。
 逆にミステリの仕掛けとしてはこの時代だからこそで、今では典型的な「〇〇ネタ」である。少しでもミステリに通じている読者ならば早々に気づいてしまうトリックであるが、それでも最後まで興が削がれることがなかったのは、人物造形のしっかりした「物語」となっているからだ。
 それにしても主人公ノートンは、純粋であり悪気はないのだが、結果的に周りに甘えた生き方に映り、周りの人たちの気高さや心の広さが逆に際立った。自分の幼さ、青臭さが招いた悲劇であるのに(しかも周りの人はさんざん忠告したのに)、なんだかなぁ…。もっと痛い目見てもいいのに。
 …なんて思いながら、とにかく「かなり楽しめた」

No.6 8点 ロマン
(2015/10/21 10:03登録)
タイトルからだと、童謡殺人ものかと推するも、半ばまではミステリ的な展開すらなく、しかし、巨匠の代表作と帯に書いてたしなー、と思いながら、中盤を過ぎ、後半、ラストとどんどん加速する展開に最後は一気読み。間違いなく王道のミステリであった。流石に書かれた年代なりのトリックで現在では不可能な犯罪ではあるが、ミステリの本質という観点からは問題なく楽しめる作品だ。

No.5 7点 蟷螂の斧
(2015/10/06 16:22登録)
1924年の作品。愛憎劇はじっくり描かれており退屈はしなかった。サプライズは用意されており、面白いと思いますが、やはり時代性を感じる。トリックはやや古いパターンの部類かな?。消去法でいくと、こういう結果にならざるを得ないのですが、三人称形式では、ややアンフェアか?と思われる部分も・・・。といいつつも7点を献上(笑)。

No.4 7点 makomako
(2015/06/27 19:23登録)
 物語の半分以上たっても事件は発生せず、恋愛小説風なのでどうなることかと思っていましたが、最後まで読めばまごう事なき推理小説でした。
 登場人物は外国の推理小説にありがちな(最近は日本の推理小説でもしばしばだが)変な人ばかり出てくるといったことはない。むしろ我慢強く他人をおもんばかる人物のお話なので、読んでいて嫌な感じはしない。ただしその話が長く、人物が必ずしも魅力的に描かれているわけではないので、凡長な感じとなるのは否めないと思います。こんな人物ばかりで推理小説となるのか心配となるぐらいに思っていると、途中からは推理小説へ変身して、トリックも立派にあり見事に騙されてしまいました。

No.3 7点 kanamori
(2015/05/06 15:03登録)
若い開業医ノートンは海岸の遊歩道で美貌の姉妹に出会い、”コマドリ”の愛称がある妹・ダイアナに一目で心を奪われる。資産家の伯父の希望に逆らい、ふたりは結婚するが、遺産相続に関するノートンの虚言をきっかけに、夫婦の熱愛は急激に冷め憎悪に変わる状況のなか、ダイアナが原因不明の病に倒れる---------。

過去に「誰が駒鳥を殺したか?」のタイトルで邦訳されるも、長らく絶版だったフィルポッツの代表作の一冊。今回半世紀ぶりに新訳で復刊されました。
正直なところ、いままでフィルポッツ初期の”ダートムア小説”と呼ばれる田園恋愛小説を引きずった形のゆったりした展開が冗長に感じられたのですが、本書は新訳ということもあって、男女の複数の三角関係を中心とした愛憎の物語という前半部も面白く読めました。殺人事件の発覚は物語の半分以上を過ぎてからですが、それまでにキッチリと伏線が敷かれています。
フェアプレイを重視する読み方をすると、客観描写のなかに現代の観点から見て気になる記述がありますが、後のエラリー・クイーンでさえ同様のことをやらかしているので、時代性を考慮すると、この種のトリックでは許容の範囲かなと思います。
探偵ニコル・ハートが再登場してから物語が転調し、急展開、活劇シーンが続く終盤も非常にスリリングです。読み終えて、タイトルの付け方が色々な意味で上手いなと感心させられました。

No.2 8点 Tetchy
(2015/04/29 20:31登録)
1960年に刊行されて以来、長らく絶版となっていたフィルポッツのまさに幻の作品がこの2015年に新訳で刊行されるとは一体誰が想像していただろうか?ちなみに1960年刊行の同書をAmazonで調べてみるとなんと7,700円という価格が付いているのには驚いた。

いやはや読み始めと読み終わりの抱く印象がこれほどガラリと変わる作品も珍しい。
若き美しき男女の恋物語が一転してボタンの掛け違いでお互いを恨むようになった夫婦の憎悪の話、そして謎の妻の死とその罪を着せられる誠実な夫の無実を証明する話と、本書は紹介分にあるようにまさに万華鏡のような変幻自在な物語の展開を見せる。

しかしたった330ページの分量ながら、男女の愛憎劇にとんでもないサプライズまで仕掛けられている本書が50年以上も絶版だったのは何とも不思議だ。正直高を括っていたが、今でも本書に描かれる男女の機微、運命の皮肉、そして最後に感じられる女性の恐ろしさは現代でも十分読ませる内容だ。今こうやって新訳で読める事の幸せを改めて嬉しく思う。この機会を逃すと次に手に入るのはまた50年後かもしれないので、ぜひとも多くの人に読まれ、版を重ねて絶版とならないようになることを強く祈るばかりだ。

No.1 4点 nukkam
(2015/03/29 20:36登録)
(ネタバレなしです) ハリントン・ヘキスト名義で1924年に発表された本格派推理小説です。タイトルは王道的な犯人当て本格派推理小説のような雰囲気がありますが、前半部は恋愛と恋愛成就後の人間関係がゆっくりとした展開で描かれていてミステリーらしさがなく、ここが退屈に感じる読者もいるかもしれません。手掛りからの推理というよりは突如思いついた仮説から強引に解決へ持って行くので犯人当てとしてはあまり楽しめません。これ見よがしの殺意とか狂気の描写とは異なるものの、じっくりと醸成されたかのような犯人像の描写には作者の個性を感じます。

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