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ミステリの祭典

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空さんの登録情報
平均点:6.12点 書評数:1515件

プロフィール| 書評

No.795 6点 恋人たちの小道
ナンシー・ピカード
(2015/06/03 21:35登録)
第1回アンソニー賞(1986)のペーパーバック賞受賞作。
主人公のジェニファー・ケインは市民財団の所長というキャリア・ウーマンで、町の経済復興計画をめぐる事件に直面します。甘ったるい印象の邦題とは全く関係ない内容だなあと思いながら読み進んでいたのですが、最後近くになって、この小道のことはほんの少しだけ言及されていました。しかし特に事件と関係あるわけでもなく、原題の “Say No to Murder”を踏まえた邦題にできなかったものか思います。
諮問委員たちの集まっている桟橋にトラックが突っ込んできた理由には、教会での事件が起こってみると疑問が出てくる(そんな必要がない)ので、そこが事件解決の鍵かと思ったのですが、結局その点に関して説明はありませんでした。
miniさんが『死者は惜しまない』評で書かれているように、コージーとハードボイルドの中間的なスタイルで、ジャンル分けはしにくいのですが。


No.794 6点 探偵を捜せ!
パット・マガー
(2015/05/31 15:33登録)
マガー初期4作は、邦題では『七人のおば』以外同一パターンですが、原題には統一性はありません。で、本作の原題は “Catch Me If You Can”。同じタイトルのスピルバーグ映画もありましたが、話はまるっきり別物です。鬼ごっこ等で使われる慣用句ですが、これがなるほどと思わせられます。Me が主役の殺人者とも、探偵とも解釈できるわけで、最後にどっちに転んで一件落着となるかは、読んでのお楽しみ。
犯人がどんなトリックを使うか、またどんな手がかりが残されているかといった興味の「倒叙」ではありませんし、犯罪心理小説系とも言い難い。探偵探しの趣向であれば、当然主人公は犯罪者になるにしても、じっくり謎解きタイプにもできたと思いますが、探偵がいる「雪の山荘(ホテル)」の中でさらなる殺人を犯したりして、なかなかサスペンスがありました。ただし、最後に主人公が手がかりに気づくところは嘘っぽいですね。


No.793 6点 函館水上警察
高城高
(2015/05/25 22:18登録)
和製ハードボイルドの草分け的存在だった作者が、久々に筆を執った本作は、明治時代の函館港を舞台にした警察小説でした。一応4作収録の連作短編ですが、話としてそれぞれが独立しているわけではなく、特に第1作『密猟船アークテック号』(密漁ではなく密猟。獲るのはオットセイやラッコ)でのもやもやした結末に第4作『スクーネル船上での決闘』で決着をつけていて、全体としてみればマクベインなど警察小説にありがちなモジュラー型とさえ言えそうです。期間的にも明治24年の夏から秋にかけての事件というわけで、連続性が重視されています。
そのシリーズの他にもう1編収録された『坂の上の対話―又は「後北游日乗」補遺』は森鴎外が21歳の時函館を訪れたことがあるという記録を基にしたフィクションですが、コレラで最初に死亡した2人は何者なのかという謎の設定があって、ミステリ度はこの作品が最も高いとも言えそうです。


No.792 7点 エステルハージ博士の事件簿
アヴラム・デイヴィッドスン
(2015/05/22 22:26登録)
20世紀初頭、バルカン半島にある架空の帝国を舞台とした連作短編集で、1976年度世界幻想文学大賞(アンソロジー短編集部門)を受賞した作品です。
タイトルが「事件簿」となっているからといって、アシモフみたいなSF系の謎解きミステリを期待してはいけません。最初の『眠れる童女、ポリー・チャームズ』では、架空帝国の首都ベラが紹介された後、警視総監がエステルハージ博士を訪ねてくるシーンから始まります。レストレード警部がホームズに難事件について知恵を借りに来たようなものかと思いきや、何のことはない、眠れる童女の見世物見物の誘いに来ただけという、おとぼけぶりです。
結局収録8編のうち、ミステリ(本格派ではない)と断言できるのは、『エルサレムの宝冠 または、告げ口頭』のみ、他に『真珠の擬母』もそう言えるかなあという程度です。エステルハージ博士を案内人とした不思議な架空帝国巡りを楽しむ作品です。


No.791 6点 暴走
ディック・フランシス
(2015/05/19 23:45登録)
競馬スリラーの中でも、本作は舞台がイギリス国内ではなくノルウェーである点が珍しいと言えるでしょうか。開幕早々、その10月の冷たい海中に、主人公は投げ出されてしまいます。まだどんな事件かほとんど説明されないうちからの危機一髪シーンという構成は、期待を抱かせます。
主人公は英国ジョッキイ・クラブ調査部主任で、冒頭のつかみの後は競馬の売上金盗難事件に関する聞き込み調査になります。で、80ページぐらいで早くも、調査結果から事件のからくりを説明してしまいます。この推理が非常に論理的ですし、以後についても本作はかなり謎解き的要素を重視した作りになっています。一方でさらに主人公が殺し屋に狙われたり、自動車爆発シーンがあったりと、派手な見せ場もあります。
ただ、フランシスとしては緊迫感は並み程度かなというところでした。締めくくり方も悪くはないのですが、鮮やかさには欠けるかなと思いました。


No.790 3点 大阪経由17時10分の死者
津村秀介
(2015/05/13 21:42登録)
鉄壁のアリバイ崩しなんて言葉がカバー表紙には印刷されていますが、メインの謎は著者の言葉にもあるように、動機です。全く接点のなさそうな2人の男が横浜と奈良で殺されますが、両方の現場に梶井基次郎の同じ文庫本が残されていて、凶器のナイフも同一の品、というわけで、謎の提示はなかなかのものです。
しかし、動機不明なまま指紋から犯人が特定される件、さらにスナックでの聞き込みで文庫本の謎が解けるところなど、かなりご都合主義です。だいたい、計画殺人なのに犯人が指紋を文庫本に残すこと自体、変な話です。横浜の殺人の方で犯人が文庫本を落としたのも、偶然なのか故意なのか、結局はっきりしません。
最後にはアリバイ崩しになりますが、これも鉄壁どころかごく平凡な発想で、しかも尋問者から当然の質問をされれば答に窮するはずというわけで、どうも冴えない作品でした。


No.789 6点 誘拐
ビル・プロンジーニ
(2015/05/10 12:04登録)
名無しの探偵シリーズ第1作。
このラストには驚かされました。ミステリ的な意外性では、結局やはりそうだったかというところなのですが、最後の殺人後の真犯人の描き方にびっくりさせられたのです。これだけで評価はある程度アップします。
誘拐犯の1人が霧の深い金の受け渡し場所で何者かに殺されるというストーリーは、なかなかおもしろくできています。なぜ「私」が受け渡し場所をある程度離れてから殺人を行わなかったのかという疑問は、早い段階で提出された上、それなりの答はすぐに出されるのですが、最後に至っても結局すっきり解決されませんでした。さらに、その殺人に関して、犯人はどうやってある知識を得たのかという点も、真相がわかってみると、かえって疑問が出てきます。
細かく言えばそんな疑問もあるのですが、矛盾があるというよりも説明不足という感じなので、まあ許容範囲かな、というところです。


No.788 5点 赤き死の香り
ジョナサン・ラティマー
(2015/05/04 22:59登録)
ビル・クレイン・シリーズ5作目にして最終作。
この作家にはスピレイン等のようなハードさはなく、途中でクレインがギャングに捕えられる窮地にしても、あっさり助かってしまい迫力がありません。一方、持ち味のコメディ・タッチは『処刑6日前』より増していますが、後の『シカゴの事件記者』ほどでもなく、ちょっと中途半端な感じがしました。クレインが酒にだらしないのも、むしろうんざりさせられます。そんなわけで連続一酸化炭素中毒死の事件の推移は、途中までは今ひとつ乗り気になれません。
それでも最終段階で、探偵事務所長の娘アンの独自調査とのカット・バックを利用したり、銃撃アクションを入れたりして、なかなか楽しませてくれました。犯人の意外性や伏線は、さすがにうまくできていると思います。殺人未遂に終わった事件については、この発想に対して批判的な人もいるでしょうが、個人的には気になりませんでした。


No.787 7点 喜劇悲奇劇
泡坂妻夫
(2015/05/01 21:54登録)
作中に散りばめられた回文は、たぶん作者が作り溜めていたものでしょう。『亜愛一郎の転倒』中の『意外な遺骸』でも回文は使われていましたしね。船の中という限られた空間の中で次々に起こる事件は、ごちゃごちゃと絡まりあったまま、真相解明まで転がり続ける感じがしました。
犯人が分かりやすいという人が多いようですが、どうなんでしょう。第15章で動機が明確になった後は、もう推理と次の殺人とが並走して、終章の派手な結末まで一気呵成ですから、作者ももはや犯人が誰かを隠そうとはしていないと思うのです。一方第14章以前では、序章で使われたトリックがある程度推測できていないと、犯人を見破ったことにならないはずなのですが、犯人が分かりやすいとは、トリックの見当がつきやすいという意味なのでしょうか。個人的には、第15章で初めて疑惑を持ったのですが。
蛇足(妙な自慢):持っているカドカワ・ノベルズ版には、作者に筆名と本名、両方のサインをもらっています。


No.786 6点 ロセアンナ
マイ・シューヴァル&ペール・ヴァールー
(2015/04/29 09:35登録)
スウェーデンの夫婦作家による警察小説シリーズの第1作は、身元不明の女の死体発見シーンから始まります。その死体が、観光船から投棄された可能性が浮かんでくる経緯、被害者の身元が題名のロゼアンナだと判明する経緯など、偶然ではあるのですが、ていねいに調査を続けていれば、そのうち明らかになるのが当然という気もします。実際、事件の輪郭は何ヶ月もかけて、少しずつ見えてきます。テンポは遅いのですが、退屈ではありません。
しかし意外に早い段階で、容疑者は絞られてしまいます。後、全体の3割ぐらいも残っているのにこれからどうするのだろう、それともこの容疑者はダミーか、等と思ったのですが、後はどうやって逮捕にこぎつけるのかが、じっくり描かれていました。逮捕後、犯人の自白で明かされる動機はかなり意外です。ただ、ラストでの囮捜査のサスペンスだけは、作りものっぽくなってしまったという感じがしました。


No.785 7点 ブルー・ドレスの女
ウォルター・モズリイ
(2015/04/21 22:33登録)
原作は1990年に出版され、シェイマス賞と英国推理作家協会賞両方の新人賞を受賞したという、評判作です。
時代設定は1948年。一人称の語り口は、通常のハードボイルドがいつそれを書いたのかという疑問を無視しているのに対して、当時は~だったというように、過去を振り返っているところが見受けられます。
黒人とユダヤ人夫婦の間に生まれたモズリイですから、人種差別をテーマに据えるのは当然でしょうし、だからこその時代設定と言えそうです。世評の高さも、そのテーマのとり上げ方によるところが大きいでしょう。プロット自体は特に優れているとは思えませんでした。ただし、原題は “Devil in a Blue Dress” ですから、主人公のイージー(エゼキエル・ローリンズ)が捜す女が怪しげなことは明らかですが、彼女の秘密には驚かされました。なお、イージーは本書ラストで私立探偵になり、シリーズ化されることになります。


No.784 6点 殺人者の空
山野浩一
(2015/04/18 09:22登録)
J・G・バラードのファンとしては、同じニューウェーブSFの作家ということで名前は知っていた山野浩一ですが、実際に読むのは今回、表題作など6編を収めたこの短編集(仮面社版)が初めてです。
このタイプの元祖といえばやはりカフカ。彼の持つ絶望的な重いリアリティに明確な科学的根拠を与えて理知的に(しかも熱狂的に)世界を構築したのがバラードだとすると、山野浩一は科学的な説明を多少入れることはあるにしても、むしろ不条理な世界を奇妙な明るさ、軽さを持ってそのまま描いた、安部公房に近い作風です。果てしなく続き渡ることが不可能なハイウェイ(『メシメリ街道』)、地球上からの加速度的な人間消失(『Tと失踪者たち』)など、理屈が全く通らない世界です。そして主人公の自己喪失感、『首狩り』中の言葉では「どのみち私には敗北しかない」という感覚が、ほぼ全作品に共通しています。全然ミステリではありません。


No.783 6点 死者のノック
ジョン・ディクスン・カー
(2015/04/12 14:14登録)
密室トリックの説明に不備があることがよく話題にされる作品です。翻訳の問題なのか、原文も間違っているのか、議論もあるようです。
しかし個人的には、ずいぶん以前に読んだ時にそのことには全く気づかず、すんなり納得できてしまっていました。原理がシンプルで、実行手順も明確なため、細かい用語の使い方は気にならなかったのでしょう。今回読み返してみると、説明自体には1ヶ所問題点があるのですが、実際の事件の設定ではその見方に対する対処ができています。
そんなわけで密室は覚えやすいトリックなのですが、それ以外は記憶に残っていませんでした。しかし再読で、フーダニットとしては他の方々も書かれているように、かなりのものだと再認識しました。体育館での理由不明な「いたずら」やある人物が何を見たのかの謎にもうまく説明をつけていますし、人物関係的な意味での犯人の設定も意外性を生み出していると思います。


No.782 5点 トフ氏と黒衣の女-トフ氏の事件簿〈1〉
ジョン・クリーシー
(2015/04/09 22:37登録)
500冊以上もの小説を書いたジョン・クリーシーですが、翻訳作品はJ・J・マリック名義のギデオン警視ものを除くと、本作より前にはほとんどありません。
原題は ”Here comes the Toff”。”Toff” とは固有名詞ではなく、上流階級のダンディーな紳士を意味することは、訳者あとがきだけでなく、小説の冒頭部分にも書かれています。そんな言葉を「トフ氏」としたことを訳者は「これで勘弁していただきたい」と断っていますが、個人的には悪くないと思います。
巻頭に置かれた「読書の栞」で、横井司氏は、トフ氏を遠山の金さんにたとえていますが、なるほどと納得のいく内容です。それも主役のキャラクターだけでなく、ストーリーや雰囲気にも共通点があるのです。ジャンルは冒険・スリラー系ですが、ディック・フランシス等のような緊迫感はまるでありません。ゆるい冒険を気楽に楽しむものだとわりきって読めば、それなりにといったところでしょうか。


No.781 4点 白妖鬼
高木彬光
(2015/04/03 23:11登録)
酒場での一幕の後、弁護士が、記憶喪失だと言う女を家に連れて帰ったところ、妙な暗号電報を受け取るところから事件は本格的に始まります。ごく簡単な暗号で、解いてみると「白妖鬼」(当時の電報なのでカタカナですが)なる人物からのものだと判明して、というわけで、なぜ暗号にする必要があったのか、「テヲヒケ」とは何からなのか、といった点に疑問を感じながら、なんだか乱歩の通俗作品っぽいなあとも思っていたのですが。
結局、そのあたりの論理的整合性がとれていない作品でした。最大のポイントは第2の殺人でしょうが、これも基本的な発想はなかなかおもしろいのですが、そうする必然性が弱いと言わざるを得ません。また、犯人のキャラクターがあまり印象に残らないのも、不満なところです。第2の殺人の方法に明確な理由を与えられないのならば、むしろに八方破れな通俗作品にしてしまった方がよかったかもしれません。


No.780 5点 奇妙な花嫁
E・S・ガードナー
(2015/03/31 23:05登録)
訪れてきた依頼人が、自分自身のことを友だちから尋ねられたことだと偽ったことに対して、メイスンがわざと尊大ぶった冷ややかな態度をとったことを反省して、調査に乗り出すというところから事件は始まります。
殺人事件の本筋には、露骨過ぎると言ってもいい伏線が早い段階であり、誰もそれを問題にしないのが不思議なぐらいです。しかし、裁判でも重要視される建物の入り口のベルを鳴らしたのが誰かという点については、2人のうちの1人が結局どうだったのか、あいまいなままに終わってしまっています。また、メイスンがそのベルに関して行うあることに関しては、その音の響きの偶然、検察側の態度の偶然等に頼っていて、鮮やかに法廷戦略をきめることのできる確率は低いと思わざるを得ません。それにその行為が本当に適法範囲内なのか、非常に疑問でもあります。話はおもしろくできてはいるのですが、完成度は今ひとつ。


No.779 6点 その男 凶暴につき
ハドリー・チェイス
(2015/03/28 00:06登録)
邦題については、北野武監督の映画とは、「男」の後に読点がつくかどうかだけの違いですが、内容は全く無関係です。またジャンル的にも、創元推理文庫では拳銃マーク(ハードボイルド/警察小説)であるものの、武映画のような無骨なリアリズムとは無縁です。テレル署長を始めとするパラダイス・シティ警察シリーズの第4作だそうですが、警察小説でもありません。ほとんどSF的とも言える新発明金属を事件の核とした荒唐無稽な冒険/スパイ・スリラー系作品でした。ちなみに邦訳出版は1972年なので、武映画の17年前。
全体的には手慣れた感じで、普通におもしろいという程度だったのですが、最後にはとんでもない結末が用意されていました。いや、結末そのものは、純粋なSFじゃないんだからそうならざるを得ないだろうと予測できるのですが、その結末の原因が、肩すかしというか意表外というか、チェイスらしいのです。


No.778 5点 ハーメルンの笛を聴け
深谷忠記
(2015/03/22 21:57登録)
深谷忠紀はこれまで倉敷や伊豆の情景を丁寧に描いた壮&美緒のトラベル・ミステリ・シリーズしか読んだことがなかったので、本作はストーリーだけでなく架空の町を中心舞台にしたところも意外でした。1982年乱歩賞候補作になった後、1989年に初出版されたものだそうです。その間にどの程度改稿されたのかは不明ですが。
途中まではハーメルンの笛吹き男を名乗る人物からの謎の手紙を中心に置いたミッシングリンク系の本格派という感じで、作者自身がサスペンスと定義している理由がわからなかったのですが、クライマックスに突入してからは、納得できました。ただ、事件が長期に渡っていて、最後近くになるまでむしろじっくり型なのは、この終わり方にはあまり合っていないように感じました。
あと、第4の事件の起こし方については、犯人の意図にはそぐわないはずだという問題は少々気になりました。


No.777 8点 武器の道
エリック・アンブラー
(2015/03/17 23:45登録)
冒頭にウェブスター辞典の “passage” 第9項の意味を並べ立てていることからすると、早川邦題は今ひとつです。miniさん評の「武器が辿る道」とまで言ってしまえばいいのでしょうが、辞典から引用されている取引、誓約の取交し、交戦といった言葉が、作品内容にはあてはまっていると思えるのです。
最初のうちは既読アンブラー作の中でもとりわけゆったりした展開です。武器発見からそれが取引対象になる経緯の後、特にアメリカ人夫婦が船で日本を巡るあたりは全然ミステリでないだけでなく、普通の小説としてもむしろ退屈と言えるほどです。ところが後半になってくると、武器の取引をめぐって、しだいに緊迫感が高まり、ついには派手な戦闘シーンにまで発展していきます。
武器取引の決着がついた後、一人これではちょっとかわいそうかなと思った登場人物もいたのですが、その点もすっきり満足いくラストを用意してくれていました。


No.776 5点 私立探偵
ローレン・D・エスルマン
(2015/03/11 22:29登録)
邦題にもかかわらず、主人公のラルフ・ポティートは厳密には私立探偵ではありません。デトロイトの興信所に勤めているとはいうものの、資料整理係に格下げされているという状況。このラルフが下品で実にいいかげんな小悪党なのです。ばれるに決まっている嘘を平気でつきますし、ネコババなんかは日常茶飯事。しかし悪賢いところはなく、かなり間抜けという設定です。
そんな主役が活躍するというより、いろいろおかしくも悲惨な目に合いながらも、最後には事件がなんとなく解決してしまう小説です。ハードボイルド的なアウトローなところはあるのですが、スラプスティックなギャグが連続するコメディ・ミステリです。
かなり大げさな事件の裏が結局整合性のとれたものだったのかどうかも、読み終えてみてはっきりしないような作品でしたが、こんなとぼけた作風なら、それでいいのではないでしょうか。

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