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ミステリの祭典

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山下利三郎探偵小説選Ⅰ
論創ミステリ叢書

作家 山下利三郎
出版日2007年06月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点
(2015/07/15 22:09登録)
収録22遍のうち『朱色の祭壇』だけは約80ページもある中編です。発表当時(1929年)としては、かなり本格的なフーダニット構成と言えるでしょう。ただし発端部分の意味が説明不足ですし、老若2人の刑事の捜査方法の対比も明確ではありません。もっと書き込んで長くすべきだと思えました。
横溝正史は山下利三郎について、乱歩に「あんな漱石ばりの文章では困る。」と言ったそうです。実際、文章は乱歩などに比べて古めかしいのですが、さすがに格調はあります。漱石との関連では、『君子の眼』は、巻末解題に『吾輩は猫である』を意識したものだろうと書かれていますが、1行目の「住み難いからつて他へ移ればなお住み難くなる。」という文からして『草枕』冒頭部分のパクリでしょう。コメディ、人情話、謎解き要素の強いもの等さまざまなタイプが並んでいますが、さすがにいわゆる通俗的な感じはしません。

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