home

ミステリの祭典

login
空さんの登録情報
平均点:6.12点 書評数:1505件

プロフィール| 書評

No.825 6点 死角
ビル・プロンジーニ
(2015/10/11 11:55登録)
原題は”Labyrinth”ですが、プロンジーニにはこの言葉の直訳である「迷路」と邦題を付けた別作品(そちらの原題は”Scattershot”)もあるというのが、ややこしい話です。本作では「まるで迷宮の中にさまよいこんだようなものだった」というように、事件をラビリンスに例えています。
名無しのオプは、このシリーズ第6作(合作含む)では、すでに禁煙してかなりになるようです。一方のパルプ・マガジン・コレクションはさらに注文して、総額は1980年当時の値段で3万ドル以上の価値があるとか。本作では探偵事務所が徹底的に荒らされたため、自宅にあるコレクションが心配になり、隣人に時々自宅をチェックしてもらえるよう、依頼しているのですが、これが結末部分にうまく結びついています。その他にも名前に関する手がかりなど、謎解きの伏線が非常にきっちりできていて、一方ハードボイルドらしいアクションも充分にあり、楽しめました。


No.824 5点 兇悪の浜
ロス・マクドナルド
(2015/10/05 21:41登録)
ロス・マクの中でも、発表当時から一般的にあまり評判のよくなかった作品のようです。
確かに、『運命』以後の作品だけでなく、以前の『人の死に行く道』等と比べてみても、全体的な構成にこの作家らしさがあまり感じられないとは言えるでしょう。基本的には明快な犯罪計画に、悪党たちが余計な手を加えることによって事件をわけのわからないものにしているという構成になっています。その悪党たちの行動がリュウ・アーチャーの捜査と交錯することによって、アクションはいつもより豊富になります。発砲となると1発だけですが。
かなり以前に読んだ時には、かなりおもしろく感じたのですが、ロス・マクをまだあまり読んでいなくて、期待するものが固まっていなかったからかもしれません。再読でもかなり派手な展開は悪くないと思いましたが、この作者にしては論理的整合性に疑問があるのに気づきました。


No.823 4点 金糸雀が啼く夜
高里椎奈
(2015/10/02 21:42登録)
薬屋探偵妖綺談シリーズ第4作。この作家は初めて読んだのですが、本作に関する限り、予想とは違うタイプでした。深山木 秋、座木(くらき)、リベザルの3人が妖怪だか妖精だかではあるにしても、謎解きミステリの構造だと思っていたのです。しかし今回中心となる事件は、リベザルと座木が由緒あるサファイアを盗み出す計画に加担することになるといいうものです。つまり犯罪小説なわけで、さらにその後に、サファイアにまつわる何十年も前の出来事が語られます。
その中心物語はまあよかったのですが、途中に強引に挿入したシャンデリア墜落による3人の人間の死亡というやたらに派手な事件が、入手した手がかりを示していないという意味でフェアでもなく、たいした真相でもなく、減点対象でしかありません。
なお、ラノベらしいキャラは、「はにゃ?」とか「ほえー」とか言う御(おき)葉山刑事がほとんど一人で引き受けている感じでした。


No.822 5点 誘拐
ロバート・B・パーカー
(2015/09/28 22:23登録)
このパーカーの第2作の原題は “God Save The Child” であり、「誘拐」にあたる言葉は使われていません。実際のところ、同じ邦題のプロンジーニや高木彬光作品と比べると、「誘拐」ものらしさに欠けるところがあります。まずスペンサーが依頼を受けるのは、失踪した息子の捜索です。で、いくらか情報を得て2回目に依頼人を訪問すると、脅迫状が届いているのですが、その脅迫状の奇妙さについては、スペンサーや警察もその場で議論しているのです。この時点で、誰でもある仮説を思いつくでしょう。さらに事件は変な方向に捩れていき、中盤では予想外の人物が殺されますが、その殺人も妙にあっさりした扱いです。
結局、作者が描きたかったのはある崩壊しかけた家庭の再構築の物語だったのだなと、誘拐事件解決シーンでは納得できるようになっています。その後の別犯罪の真相解明は、どうでもいいかなという気もしますが。


No.821 8点 天を映す早瀬
S・J・ローザン
(2015/09/23 21:47登録)
2002年度のシェイマス賞を受賞したこのシーラ・ジュディス・ローザンによるリディア・チンとビル・スミスのコンビ探偵シリーズ第7作の舞台は香港です。今回リディア(中国名のリン・ワンジュがよく使われます)の一人称形式なのは、順番だけでなく舞台からしても当然といったところでしょうか。原題は “Reflecting The Sky”、最初の方で、占い師の「早瀬は天を映さない」という言葉が出てきます。
この作家を読むのは初めてなのですが、これは気に入りました。1ページ目から、二人のかけ合いには微笑を誘われます。事件そのものも、誘拐に対する別の人間からの全く異なる身代金請求という、なかなか魅力的な謎をはらんでいます。
リディア視点の作品だからでしょうか、さほどハードボイルドな感じはしませんが、私立探偵免許が無意味な外国での話であっても、私立探偵小説というジャンルならばあてはまります。


No.820 4点 山峡の章
松本清張
(2015/09/20 23:05登録)
『主婦の友』に連載された作品で、内容的にもそれらしい感じがします。全編通して官僚と結婚した女性の視点から描かれ、前半は少しずつ怪しげな事件が起こっていくだけの緩やかなサスペンス系の味わいです。中心事件の発端である2人の人物の失踪が起こるのが1/3を過ぎてからで、さらにその死体発見となると、1/2を過ぎてからです。その後やっと真相解明の調査が始まります。
強引な引っ越しの理由など多少整合性に欠けるところはあるものの、全体的なバランスは悪くないと思います。しかし社会派ミステリとしては、事件の裏は一方で状況が特殊すぎていながら、発想的には平凡であるという、どうにも冴えないもので、官僚機構の暗部に対する追及も手ぬるい感じがしました。
なお雑誌連載時のタイトルは『氷の灯火』という、意味のわからないものでしたが、現在のタイトルは内容に直結しています。


No.819 7点 パンドラの匣
トマス・チャステイン
(2015/09/13 12:02登録)
訳者あとがきによれば、この作家についてディクスン・カーが「ストーリーの語り口にかけては達人、人物の特徴描写にかけては抜群」と言ったそうですが、このカウフマン警視シリーズ第1作を読んでみると、確かにカーが気に入りそうな作品です。
一応警察小説に分類はしましたし、実際カウフマン警視が署長を務める16分署を中心とした警察の活躍が描かれているのですが、一方で犯罪者(窃盗犯)グループ側からの部分もあり、ストーリーは銭形警部対ルパンⅢ世的とも思えるほどはったりのきいたアイディア溢れる展開でした。何しろ盗みの対象は、メトロポリタン美術館所蔵のレンブラント、ピカソなど古今の名画5点で、大胆な計画を見せてくれます。
カウフマン警視の私生活がしつこく説明されているのは、第1作だからだとしても、さすがにくどすぎると思いましたし、結末がちょっと後味の悪いのは、どんなものかなあという気もしましたが。


No.818 4点 グレイシー・アレン殺人事件
S・S・ヴァン・ダイン
(2015/09/10 22:35登録)
映画化されたミステリはずいぶんありますが、実在の女優の名前を、その女優の出演を念頭においてタイトルに入れた小説なんて、めったにないでしょう。前作までだけでなく、次作『ウィンター殺人事件』でも踏襲している6文字単語のタイトル・パターンを唯一崩しているのが、作者自身の本作に対する態度を示しているようにも思えます。「[登場人物名]殺人事件」で、その登場人物が犯人でも被害者でもないのもまた、珍しいでしょう。
悪党の脱獄に始まる第1章でのヴァンスのセリフには、お前はマイク・ハマーかと言いたくなります。謎解き的には、ある勘違いが真相の意外性を支えていますが、その勘違いが起こる顛末は冗談みたいなものです。その真相も含め軽いタッチは、本サイトでジャンルをコージーにしている人がいるのも、なるほどと思える内容でした。ヴァン・ダインって、なんとコージー最初期の作家でもあったんですね。


No.817 6点 ありふれた死因
芦川澄子
(2015/09/07 21:49登録)
鮎川哲也夫人のミステリ集大成で、2~3ページほどのショートショート4編を含め、全17編の小説に、エッセイなども収録しています。
17編中『女に強くなる法』と『廃墟の死体』は問題編と回答編に分かれていますが、パズル性が変に強調されて不自然さが目立ち、好きになれません。真相もやたら複雑化しているだけという感じです。もう1編謎解き要素充分な『目は口ほどに』は、小説としてきれいにまとまっていました。
昭和34年の週刊朝日・宝石共催の探偵小説懸賞で一位になった最初の『愛と死を見つめて』は一人称形式でOLの疑心暗鬼が描かれて、確かによくできています。ただ巻末の資料集で、作者が結末に明快な答を出しているのは、むしろお好きに解釈してくださいと言った方がいいとも思えます。『マリ子の秘密』『村一番の女房』『ありふれた死因』等、アイディアはどうということもないのですが、さりげないタッチが味わいを出していました。


No.816 7点 殺しの儀式
ヴァル・マクダーミド
(2015/09/01 21:36登録)
1995年のゴールド・ダガーを受賞した作品で、キャロル・ジョーダン警部補とプロファイラーのトニー・ヒルが活躍するシリーズ第1作です。警察側と犯人側から交互に描いていくサイコ・サスペンスで、『羊たちの沈黙』(原作1988、映画1991)が何回か引き合いに出されています。舞台となるブラッドフィールドが架空の都市であることは、冒頭の謝辞の中でも述べられていますが、街のイメージはなかなか鮮やかに描かれています。
初期にはフェミニズム的な傾向が強かった作家だそうですが、本作には、そんな感じはありませんでした。むしろ新聞記者のペニー・バージスなど冷ややかな扱いで、事件がクライマックスに突入している最中に独りよがりになっている短いシーンを挿入したりしています。もう一人不愉快な登場人物として描かれているトム・クロス警視の扱いは、尻切れトンボになってしまったのが不満でした。


No.815 6点 カナリヤの爪
E・S・ガードナー
(2015/08/29 23:22登録)
ガードナーが考え出した事件解決までのタイム・リミットは、なんともとぼけたものでした。最終章でメイスンとデラが間一髪で間に合ったのには苦笑もの。次の事件の予告を入れるいつもとは全然違う大げさにロマンチックな終わり方でした。
事件の方はというと、タイトルのカナリヤの爪の問題は、ごく早い段階で簡単に解決してしまい、その後例によって殺人事件へと展開していきます。しかし今回は珍しく容疑者が3人もいて、一時は3人とも警察に逮捕されてしまいます。で、検察送りになるのは結局そのうち1人だけですが、その人物が被告人の裁判が始まる前に、もう一つの殺人事件の検死審問で事件は解決してしまいます。真相の背景は、ちょっと見当がつかないだろうというものでした。
それにしても、ドレイク探偵の「そうじゃないでしょう。まだだろう」という台詞に代表される阿部主計氏の統一のとれていない翻訳は、問題です。


No.814 6点 西洋骨牌探偵術
都筑道夫
(2015/08/23 12:27登録)
本書の西洋骨牌(かるた)とはタロットカードのことです。ただし、探偵役の鍬形修二は、タロットと呼ぶのは日本だけであり、英語ではタロウカードと読むので、自分もそう発音すると講釈しています。鍬形はそのタロウカードを使う占い師ですが、怠け者で、適当にそんな職業を名乗っているだけというのは、『七十五羽の烏』等の物部太郎にも通じるキャラクターです。
その占い師鍬形シリーズは、収録7編中最初の5編だけです。不可能興味もありますが、やはりWhy(犯行動機だけでなくなぜ小細工をしなければならなかったのかという謎)に重点を置いた論理派ミステリになっています。6編目の『二重底』を読み始めた時には、語りの手法を変えたのには何か企みがあるのかと勘ぐったのですが、何のことはない、シリーズ外というだけのことでした。最後の『空前絶後、意外な結末』も怠け者ユーモア・ミステリ。


No.813 6点 Terminus
ボアロー&ナルスジャック
(2015/08/20 23:25登録)
― パリ・ニース間を往復する列車の食堂車シェフであるシャヴァンヌは、妻が自動車事故で昏睡状態にあるとの知らせを受ける。妻のコートのポケットにあった画廊の展覧会案内。その画廊に出かけた彼は、そこで見た絵に愕然とする。―
1980年発表の未訳作品です。このコンビ作家は、1979年の『銀のカード』まで順調に翻訳されていましたが、その後書かれた10冊以上のうち翻訳されたのはジュヴナイルを除けば皆無です。ここまである時点を境に完全紹介から完全無視になった作家も珍しいでしょう。そんなわけで、日本ではその存在すらほとんど知られていない作品です。
読んでみると、ずいぶん変わったなというのが第一印象でした。異様な謎や強烈なサスペンスはなくなり、主人公の心理(と行動)をじっくり描いた心理小説になっているのです。最後いかにもなどんでん返しはありますが、意外性よりも、だからこその結末の哀しさが印象的でした。


No.812 5点 チャーム・シティ
ローラ・リップマン
(2015/08/16 18:23登録)
舞台となるボルチモアの描写が特に評価されたらしく、アメリカ探偵作家クラブのペーパーバック賞を受賞し、さらにアメリカ私立探偵作家クラブのペーパーバック賞も受賞、という作品ですが、悪くはないもののそれほどとは思えませんでした。
私立探偵小説あるいはハードボイルドと言うには、ゆるいのです。パレツキーやグラフトンみたいな、主人公が必要な捜査を速やかに遂行していく感じはありません。主人公テスが悪役一味につかまって、アジトから脱出する件にしても、少々間が抜けています。コメディーならそれで全く問題はありませんが、そんなタイプでもありません。クライマックスの雰囲気も、さほど強烈ではないサスペンス系といったところです。二つの無関係な事件を並行して描く構成ですが、特に効果的とも思えません。
なお、文章は少なくとも翻訳では完全にテスの視点からのみになっていますが、三人称形式です。


No.811 5点 扉の影の女
横溝正史
(2015/08/13 11:56登録)
かなり以前に読んだ時には凡庸な印象しか受けなくて、内容をほとんど忘れてしまっていたのですが、再読してみると、自分の嗜好が変わってきたこともあってか、そんなに悪くないと思いました。
「この物語は人生にまま起こる不思議な運命の十字路を語るのが目的だった」とは本作最終章の書き出し部分で、その「運命の十字路」の顛末は金田一耕助が筋道立てて説明しているのですから、その時点で本格派ミステリにはなっていると思うのです。その後についてはノックスやヴァン・ダインの原則に違反していますが、事件の最大の謎が名探偵によって解かれた後は、最終章表題どおり「蛇足」と言ってもいいでしょう。
文庫本240ページ程度と短めな本作は短編を膨らませたものだそうで、事件は地味で小味ですし、偶然過ぎると批判する人がいても当然かもしれませんが、それなりに楽しめました。


No.810 7点 ファイル7
ウィリアム・P・マッギヴァーン
(2015/08/09 18:10登録)
マッギヴァーンを読むのはこれが初めてなのですが、初期の有名な『殺人のためのバッジ』が悪徳警官を扱った作品であることを考えると、犯罪者の人物像を描くのが得意な作家ではないかと思えます。ただし本作では悪徳どころかハードボイルド系にしばしば現れる不愉快な警察官も一人も登場しません。ハヤカワ・ミステリ版には「FBI誘拐事件簿」のサブタイトルがついていますが、まさにそのとおりの内容で、有能なFBI捜査官たちが活躍します。全編にわたって、幼児誘拐犯のグループ視点とFBI視点のカットバックによって緊迫感を生み出す手法が採られています。
誘拐犯グループの部分では、デュークとハンク(ハンクは事件に巻き込まれる善玉役)の兄弟、それにエディとその情婦ベルとの関係がかなりじっくり描かれていますし、もう一人別行動の犯人クリーシーのいびつな性格もなかなか印象的です。


No.809 6点 トリプルX
L・A・モース
(2015/08/04 23:57登録)
デビュー作『オールド・ディック』では過去のハードボイルド作家への目配せがやたらにあったL.A.モースですが、この3作目では完全にスピレイン系の過激なハードボイルドになり、巨匠への言及は消えています。ただしマイク・ハマーが意外にセックスに対しては潔癖なところがあったのに対し、本作のサム・ハンター(いかにもな名前です)は、何人もとやりまくっています。このタフガイ探偵の特徴はもうひとつあって、なかなかの食通なんですね。やたらに食事のシーンが出てきて、料理(とビール)が並べたてられています。
謎解き的要素もかなりあり、事件の全体的な構造はなかなかつかめません。ただ、真相が複雑すぎて、本当に整合性がとれているのかどうか理解できないようなところがあります。複雑と言っても、ロス・マクみたいな整然とした結末ではなく、無理に複雑化している感じがしました。


No.808 6点 犯罪者たちの夜
結城昌治
(2015/07/28 23:09登録)
紺野弁護士シリーズ第2作には、1969年から1929年までの間に書かれた9編が収められています。前作『死者たちの夜』は1973年に出版されていますから、前作はそれまで書いたものをすべてまとめたわけではなかったことになりますね。
タイプとしては、弁護士が主人公であっても、雰囲気は私立探偵真木ものの『暗い落日』等と共通していて、つまりはロス・マク風ハードボイルドです。妻の失踪、三角関係の悩み、猫の誘拐(紺野弁護士は法律的には窃盗になると言っています)等から始まって殺人にまで発展するもの、それに最初から殺人罪で逮捕された者の弁護など、様々です。が、読み通してみると短編にはしにくいスタイルなのではないかと思えました。真相はそれなりに意外ですが、解決シーンが唐突であっけない感じのするものが多く、もっと長くしてじっくり読ませてもらいたいという気にさせるのです。


No.807 4点 引き潮の魔女
ジョン・ディクスン・カー
(2015/07/24 23:53登録)
歴史ミステリと言っても、これくらい新しい時代(1907年)になると、それらしい雰囲気はほとんど感じられません。カー自身が生まれた直後の時代設定ですからね。タイトルからも窺える足跡トリックがメインです。その前に地下室からの人間消失の謎もありますが、こっちはがっかりな真相でした。その地下室の方に対する、不可能に見せかける理由の欠如という問題点は、足跡トリックの方にもある程度当てはまります。
不満点は他にもあります。登場人物たちが好き勝手なことを言い合って話がうまく噛み合わず、それでわけがわからなくなっているようなところがあるのです。3人のうち誰が名探偵役なのかはっきりさせない構成も成功していると思えません。また最後の推理は、その人物に殺人動機があったことの論理的な指摘にとどまっていて、犯人であることを示す明確な手がかりが不足しています。犯人の設定自体はいいと思うのですが。


No.806 5点 ガーディアン・エンジェル
サラ・パレツキー
(2015/07/21 21:45登録)
ヴィクのシリーズ第7作にして、邦題が初めて原題そのままの作品です。このシリーズ、回を重ねるごとに長くなって、本作は文庫本で580ページの大作です。しかし、それだけの長さを必要とする事件だったかというと、疑問があります。2つの事件、その一方は違法かどうか微妙だという程度のもので、もう一方もある会社が殺人を複数回起こしながらも、動機はそんな重罪を犯す必要があったとはあまり思えません。2つの事件の絡み具合がまた微妙で、意外な結び付きがあったというほどでもありませんし、無関係なものを並行して描いたとも言い切れないのです。ヴィクのアクションはおもしろかったのですが、以上のような不満もあり、この点数。
なお、過去の作品にも登場していた人物たちの中でも、ヴィクと仲の悪い隣人や、元夫の弁護士も、事件に関わりがあるという、その意味では今までの総決算的な作品とも言えそうです。

1505中の書評を表示しています 681 - 700