空さんの登録情報 | |
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平均点:6.12点 | 書評数:1530件 |
No.850 | 6点 | 高校殺人事件 松本清張 |
(2016/02/06 14:05登録) 松本清張の長編では他に例を知らないのですが、一人称形式で語られる作品です。作中の「私」は高校3年生。自分を示す言葉が「僕」ではなく、さらに清張節の落ち着いた文章であるだけに、大人になってから高校時代の思い出を書いたという印象を受けました。 仲良しグループの一人が殺される事件が起こりますが、ただ死体が発見されるのではなく、そこに至る過程がなかなか魅力的です。殺される学生がポーやボードレールの詩が好きだという設定で、自作の(つまり清張作の)暗い耽美的な詩まで披露されています。全体的にはコナン・ドイルあたりの感じを受け、実際ドイル当時にはまだ確立されていなかったように、本作でもフェアプレイは守られていません。まあ誰でもある程度見当のつきそうな真相ではありますが。また探偵役が事件を解決(推理)するわけでもなく、本格派としてなら失格です。しかし小説として楽しめたことは確かなので。 |
No.849 | 7点 | 証人たち ジョルジュ・シムノン |
(2016/02/01 23:41登録) 殺人事件の裁判長になった判事を主役にした、裁判前夜から裁判終結日の夜までの話です。ただしシムノンらしく、途中に主人公の過去の思い出や日常生活などをふんだんに取り入れて、そんな様々な記憶が法廷での彼の態度に影響を及ぼす様が描かれます。裁判劇中心ということで一応本サイトに登録しましたが、ミステリ度はかなり低い作品で、妙な期待を持って読むと、本格派ファンならずともこの結末にはがっかりするかもしれません。小説としてなら納得のいく判決ではあるのですが。さらに裁判終結の後に主人公を待ち受けていた衝撃には、感銘を受けます。 文学的テーマを別にすると、興味深いのがフランスの裁判制度でした。シムノンがどの程度現実の裁判に忠実に書いているのかはわかりませんが、本作を読む限り、ペリー・メイスンでおなじみのアメリカや、それに近い日本の制度とは全く違うところがあるのです。 |
No.848 | 6点 | 魔術師を探せ! ランドル・ギャレット |
(2016/01/28 20:36登録) 『魔術師が多すぎる』以前に書かれたダーシー卿シリーズのこの3中編を続けて読むと、作者の描いた魔法の国がかなりはっきりイメージできます。そして感じたのは、これはハードSFと言う場合と同じ意味で、ハード・ファンタジーなのだなということでした。つまりハードSFでは、たとえばもしタイム・トラベルが可能だとしたら、という前提の下に整合性あるプロットを組み立てるわけですが、このシリーズではその前提が魔法なのです。だからこそ、パズラーにもなり得るのでしょう。 2作目『シェルブールの呪い』は、むしろスパイ小説の要素が強い作品です。現実には他国からの侵略に苦しんだポーランドが英仏帝国に敵対する大国になっているという設定がおもしろいのですが、東欧の人が読んだらどう感じるだろうかと心配したりもして。この作品でのダーシー卿の犯人指摘の推理は、ちょっと説明不足だと思えます。 |
No.847 | 4点 | 能登路殺人行 中町信 |
(2016/01/24 13:41登録) これまで読んだ中町信の中でも、小説としての味わいに最も欠けた作品だなあと思いながら、読み進んでいきました。タイトルにもかかわらず、とてもトラベル・ミステリーに分類することなどできない旅情の無さ、登場人物たちの味気ない会話など。特に本作では探偵役2人の性格づけがいいかげんで全く魅力が無いことが、大きな減点要因でしょう。 ただしパズル的要素に関しては、むりやり連続殺人にしていく展開がありきたりであるにしても、登場人物(容疑者)を非常に限定していながら、その枠中での一筋縄ではいかない謎の提出はなかなかのものです。ダイイング・メッセージもリアリティはともかく、その発想自体には感心させられます。 最初の被害者が言ったある言葉に関して、はてなと思った点はあったのですが、やはりそこが重要な手がかりの一つになっていました。 |
No.846 | 6点 | アマンダの影 キャロル・オコンネル |
(2016/01/18 00:00登録) キャシー・マロリー刑事のシリーズ第2作。オコンネルを読むのは初めてですが、少なくとも本作を読む限り、同一シリーズの他作品でジャンル分類されているハードボイルド度はゼロです。マロリーが第1作タイトルの「氷の天使」にふさわしいほとんど無機質な感じを与える天才ハッカーという設定は、読み進んでいくと、作者と正反対の人格ではないかと思えます。マロリーの友人で協力者のチャールズが、殺人事件の被害者アマンダの幻影を造り出し、ほとんどその幻影に憑かれたようになっていくあたりなど、作者の資質・傾向はこっちの方ではないかと思えるのです。この幻影、実のところ本作の中心プロットに必要不可欠なわけではありません。 全く無関係な2つの事件が同時進行していきますが、クライマックス・シーンでの2つの結び付け方はなかなかのものでした。その最終日の章、強引なご都合主義はありますが。 |
No.845 | 6点 | 危険なやつら チャールズ・ウィルフォード |
(2016/01/14 23:28登録) 作者の死後5年を経過した1993年に発表された作品だそうで、作者自身が「傑作」だと自認していたとか。死の直前頃には作者に対する評価が高まっていたにもかかわらず、なぜ死後そんなに経ってからの出版になったのかまでは、巻末解説にも書かれていません。 全体を通して同じ4人の男が主要登場人物ですが、それぞれ独立した話の4部に分かれていて、第2部が全体の約半分を占めるという、少々アンバランスな配分になっています。その第2部はそれだけできっちりまとまった中編として楽しめます。第3部の話はどうということはなさそうな展開ですが、主役の最後のセリフがじわりときます。本作は元々独立した作品に新たな部分を合体させ、さらに多少手直ししたものだそうですが、第2・3部がその元々の独立作品ではないかと思われます。第1・4部も一応独立した話なのですが、プロットというほどのものはなく、全体を1つにまとめる役という感じです。 |
No.844 | 7点 | 人蟻 高木彬光 |
(2016/01/09 22:07登録) この百谷泉一郎弁護士シリーズの第1作は、高木彬光が社会派的な方向に進んだ最初の作品です。現実に1955~1958年に起こったドミニカ糖輸入事件のある意味後日談的な内容で、企業犯罪を、政治家との癒着も含めて真正面から描いていて、少なくとも今まで読んだ中では、作者の最も社会派的な作品です。作者も気合を入れて執筆したことがうかがわれます。 それだけに、犯人というか悪役は最初からわかっています。途中で章タイトルにもある「特急よりはやい準急」のトリック(偽アリバイのためではありません)は出てきますが、たいしたことはありません。また最後に明かされるシャーロック・ホームズの謎は、たぶん誰でも見当がつくでしょう。しかし技巧的な謎解きの面白さを狙った作品ではないので、欠点とは言えません。 百谷弁護士の成長物語でもあり、また明子夫人との出会いの話でもあるのも興味深いところです。 |
No.843 | 6点 | 無言の叫び マイクル・コリンズ |
(2016/01/05 23:36登録) 片腕の私立探偵ダン・フォーチューン・シリーズの第6作。 写真の女の正体を探ってほしいと依頼を受けたフォーチューンは、何もはじめないうちに続けざまに2人の人物から、事件から手を引けと言われるという幕開きが何やらうさんくさい事件の印象を与えますが、結局はどちらにもさほどの意味はありませんでした。一方はその人物の特技を早々と読者に知らせるという意味はあるでしょうけれど。 殺されるのは計5人、さらにフォーチューンも撃たれて重傷を負います。ただしハードボイルド系にはよくあることでしょうが、すべてが同じ犯人の仕業というわけではないことだけなら、ここで明かしてもネタバレにはならないでしょう。 第2の2人殺される事件について使われたトリックは、本格派ではないにしてもあまり感心できるものではありませんが、犯人の意外性演出方法はなかなかよくできています。まあ、途中で見当はついてしまいましたが。 |
No.842 | 5点 | 「五つの鐘と貝殻骨」亭の奇縁 マーサ・グライムズ |
(2015/12/29 23:36登録) この作家を読むのは初めてですが、本作は第9作です。このジュリー警視シリーズにはどうやらレギュラー登場人物がかなり多いようで、最初のうちどんな人間関係なのかわからないままに次々説明もなく出てくる人物たちには混乱させられました。第1作から順番に読んでいっていれば、すんなり入れたのでしょうが、そうでない読者に対しては不親切な書き方だと思います。 コージーと言えば言えるかなあという感じもしますし、アガサ叔母さんが起こした追突事件の訴訟も同時進行ということでは、モジュラー型的要素も入っていますが、基本的には第2の殺人で一気にミステリアスなところが出てくる謎解き作品になっています。 その本筋事件のアイディア自体はシンプルながらおもしろいですし、確かに雰囲気はいいのですが、第2の殺人に関しては説明不足なところもありますし、殺人事件とその捜査以外の要素があまりに多すぎると思いました。 |
No.841 | 6点 | 風の岬 高城高 |
(2015/12/19 22:56登録) 創元推理文庫の高城高全集第4巻に収録されている作品14編は、すべて北海道が舞台であることが作中で明示されています。ごく短い『ホクロの女』など場所はどこでもいいような話ですが、やはり作者のこだわりでしょう。もちろん大部分はいかにも地方色を感じさせる作品です。 当時のソ連と近い地理関係を使ったスパイ小説系とも言える『北の罠』にしても、やはりハードボイルドな雰囲気はあります。もう1作、『風への墓碑銘』の方がスパイ小説らしさはありますが、これが何ともあいまいな幕切れで、そこがリアルなスパイ小説らしいとも言えるかもしれません。あいまいな幕切れと言えば、『上品な老人』もそうですが、こちらの結末は成功していると思えません。『気の毒な死体』は作者としては珍しい推理パズル。 表題作、『札幌に来た二人』、『穴無し熊』など、ストーリーのタイプは異なるものの、枯れた味わいが心地よい作品です。 |
No.840 | 6点 | そそっかしい小猫 E・S・ガードナー |
(2015/12/14 23:56登録) 事件の発端となる電話とほぼ同時刻にタイトルの猫が毒を盛られる(死にはしない)という、なかなか魅力的な謎で開幕する作品です。その後殺人は起こるのですが、クライマックスでの裁判は、なんとこの殺人事件についてのものではないというのが、本作の工夫です。途中で殺人の容疑者が逮捕されることもありません。 実はメイスンが事件に関わることになる部分には重大な疑問点が残ったままなのですが、ガードナーには有名作にもどこか論理的な穴がぽっかりあいていたりします。本作では考え方が不自然だという程度でしょうか。 全体の裏については、明らかにその可能性もあると最初からわかっているようなものですが、それでも展開の面白さで巧みに引っ張ってくれます。法廷でメイスンが指摘する手がかりは、猫の行動の理由を考えてみろということで、猫好きの陪審員もその指摘ですぐ気付くような、わかりやすい伏線でした。 |
No.839 | 6点 | 紺碧の嘆き ジョン・D・マクドナルド |
(2015/12/08 22:08登録) 邦題では「紺碧」となっていますが、原題は “The Turquoise Lament”、トルコ石色ですから、むしろ明るめの青、青緑という感じで、シムノンの『紺碧海岸のメグレ』の方が、本当の紺碧色(英語ならazure)です。まあどっちにしても、海の色には違いありませんが。こちらは冒頭のハワイからクライマックスのサモアの海です。トラヴィス・マッギーは船を住居としている人物ですから、海や島を主要舞台とした本作は彼にふさわしい話と言えるでしょう。 最初の依頼人はマッギーもよく知っている女で、さらにその亡き父親とは沈没船の宝探しを一緒にやったこともあるのですが、その沈没船の調査資料も絡んでくる、個人的な事件です。太平洋を航海している船が現在どこにいるのかなんて調べようがないという、ちょっと珍しいサスペンスもあります。 ただ、様々な事柄に対する講釈がやたらに長いのだけは少々うんざりでした。 |
No.838 | 6点 | 枯草の根 陳舜臣 |
(2015/12/04 23:06登録) これもずいぶん以前に読んで、内容をすっかり忘れていた作品です。 作者のデビュー作ですから陶展文ものとしても第1作なわけで、この名探偵についても丁寧に紹介されています。とりあえず本業の中華料理店には、事件関係者を招待していますし、漢方医としては最初の被害者などを診察していますが、お得意の拳法は、少なくとも本作では発揮されません。 鈍い読者でも真相の見当がつくようになってから陶展文の説明が始まるまでが少し長すぎるように思いますが、最初から登場する関係なさそうな2人の旅行者は、最後にうまく事件にかかわるようになっていました。 なお講談社文庫の巻末解説では、ノックスの十戒中の第五「中国人を登場させてはならない」戒めが根拠のないことを証明したと論評していますが、ビガーズによる中国人名探偵チャーリー・チャン初登場は、十戒発表の4年前です。1970年台にもなって持ち出す議論ではありません。 |
No.837 | 7点 | 殺人者の街角 マージェリー・アリンガム |
(2015/12/01 22:32登録) カバーの作品紹介や訳者あとがきでは、この1958年発表作はシルヴァー・ダガー賞受賞とされていますが、巻頭の「読書の栞」では、「現在でいえばシルヴァー・ダガー賞受賞に相当する」と正確な情報が記載されています。ちなみにシルヴァー・ダガー賞は1969~2005年に次点作品に授与されていました。 訳者あとがきでは、「追いつめられていく殺人鬼」を描いた作品としていますが、本作の悪役が殺人を犯すのは、あくまでもそれが目的達成のベスト手段と考えるからであり、決してシリアル・キラーではありません。彼が冷酷なのは、殺人という重罪でも他の手段と何らの区別をしない点です。したがって彼の最後の行動も、その状況では当然と言え、説得力があります。 キャンピオンは、あとがきでも比較されている共通点のある『霧の中の虎』以上に影が薄くなり、最後の活躍も単なる偶然にすぎません。 |
No.836 | 7点 | シュガータウン ローレン・D・エスルマン |
(2015/11/25 22:25登録) 1985年のシェイマス賞を受賞した作品です。 以前に読んだコメディ・タッチの『私立探偵』とは全然違い、この私立探偵エイモス・ウォーカーが活躍するシリーズは正統派ハードボイルドらしさにこだわっているようです。ウォーカーは、2日分の報酬をとりあえず受け取ったものの、調査が1日で終わったため、半額+必要経費を差し引いた金額を依頼人に返却する真面目ぶり。無関係に見える2つの事件の絡ませ方には、なかなか感心させられましたし、さらに意外な殺人犯も用意してあるという、謎解きにも趣向を凝らした作品になっていました。ただ、最後が駆け足になってしまった感じなのが、多少不満と言えるでしょうか。 舞台となるデトロイトの雰囲気もじっくり描かれていますが、長い文が多く、関係代名詞を使った英語の語順ではすんなり読めるのではないかとも思うのですが、この翻訳は意味が取りづらいです。 |
No.835 | 6点 | オランダ水牛の謎 松尾由美 |
(2015/11/22 23:14登録) 「安楽椅子探偵」アーチ―というアイディアは、やはり意味の曲解だけから思いつかれたのでしょうか。探偵役設定だけなら気楽なファンタジーで、したがってこの設定には当然必要なワトソン役も子どもにして、雰囲気を統一したということでしょう。 そのシリーズ2冊目は、「国名シリーズ」になっていて、5編が収められていますが、本家と違い、推理の厳密さにこだわったとかいうことは全くなさそうです。特に表題作は推理合戦までやっていますが、どれも単なる想像に過ぎず、それらの想像とは全く異なる真相は、関係者本人の口から語られます。また『アメリカ珈琲の謎』は、作者があとがきで「ハードボイルド風にしようと思った」と書いている、やくざがらみの失踪事件で、他の日常の謎系作品とは趣が異なります。アーチーも探偵ではなく、衛の相談役として登場するだけ。一方『イギリス雨傘の謎』は、ひねり過ぎと思えるくらいでした。 |
No.834 | 6点 | 鍵のない家 E・D・ビガーズ |
(2015/11/16 22:50登録) おっさんと同じく、ずいぶん前に「別冊宝石」の小山内徹訳で読んで以来の、新訳による再読です。かなり印象的なトリックでさえ思い出せないままに読み始めたのですが、早い段階で、確かこんな手を使っていたはずだとあいまいな記憶が甦ってきて、そこから犯人が誰かも必然的にわかってしまったのでした。それでも次々に容疑者が浮かんできては、犯人でなさそうだ(無罪が証明されるのではなく)ということになっていく展開は、読んでいる間は退屈しません。 チャーリー・チャンたちハワイ警察の捜査を手助けしようとするボストン育ちの青年の視点で、話は進んでいきます。人物描写や語りのテンポは、さすがに古めかしい感じですが、ラスト・シーンでは苦笑してしまうほどのロマンスや冒険小説的な味付け、さらに青年も最後には真相に気づく展開など、ほとんど後年のカーを思わせるところもあり、楽しめました。 |
No.833 | 5点 | タフガイなんて柄じゃない ジョン・ラッツ |
(2015/11/13 23:38登録) すでに10冊以上書かれているものの、邦訳はたぶん3冊だけのアロー・ナジャー・シリーズの第1作です。邦題は、ハードボイルド史上おそらく最も臆病な探偵であるナジャーにちなんで勝手に付けられたもので、原題は全く異なり、"Buyer Beware"。これについては、巻頭に「何をつかまされるかわからないから買い手は御用心」というラテン語が引用されています。また、作中にも「“買手は損しないように気をつけろ”という格言は、時代遅れだ」(p.63)という記述があります。この言葉と事件解決後のラストを考え合わせると、なるほどという感じです。 事件そのものは、ナジャーが得意としている親権のある親から依頼されての子どもの「合法的誘拐」のはずが、殺人事件に発展していく、いかにも私立探偵小説的な展開で、最後はかなり大がかりな捕り物になります。しかし。最初の依頼の件は、結局どうなるんだろうと、ちょっと疑問も感じました。 |
No.832 | 6点 | 第四の闇 香納諒一 |
(2015/11/10 23:15登録) 香納諒一は『心に雹の降りしきる』しか読んでいませんし、『幻の女』も似たタイプらしいので、本作もハードボイルドだろうと思っていたのですが…それらしい暴力シーンで幕を開けるものの、その後はサイコ・サスペンスっぽい展開で、驚かされました。何しろ、第1章タイトルどおり胴のない死体が発見され、さらに同じような殺人が以前に2件起こっていることがわかる、というのです。 胴のない理由は、『刺青殺人事件』的なアイディアとは全く違いますが、それなりに感心しました。また、事件の本筋とは無関係なある登場人物の異常な行動が明かされた時には唖然としてしまいました。その直後の派手な殺人アクション・シーンまでは、かなりおもしろく読めたのですが。 「私」と行動を共にするジローの最終的な扱いには、そんな必要があったのか少々疑問でしたし、ラスト・シーンはさすがに言い訳に過ぎないんじゃないかと思ってしまいました。 |
No.831 | 6点 | タロットは死の匂い マーシャ・マラー |
(2015/11/04 22:25登録) ビル・プロンジーニ夫人で、夫婦合作もあるこの作者の名前(Muller)は、マラーともミュラーとも表記されますが、どっちが正しいんでしょう。Wikipediaを参照してもミュラーらしいとは思われるのですが、明確には書かれていません。 そんな作者のこの第2作が出版されたのは、第1作の5年後の1982年です。女私立探偵が活躍する小説は、80年台にならないと評価されなかったということなのかどうか、ともかく、シャロン・マコーン・シリーズは本作の後はコンスタントに発表されていきます。シャロンはチョコレート好きなのはともかく、鳥恐怖症というのは妙な設定だなあと思ったのですが、本作でも烏におびえて殺人をくいとめられないというシーンがありました。 誰が殺人犯人でもかまわないように思えてくる事件なのは、少々不満とも言えますが、最後はハードボイルドらしい手堅いまとめ方をしてくれていました。 |