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ミステリの祭典

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タロットは死の匂い
女私立探偵シャロン・マコーン

作家 マーシャ・マラー
出版日1991年08月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 6点 人並由真
(2020/07/28 13:47登録)
(ネタバレなし)
 その年の6月のサンフランシスコ。「わたし」こと女性私立探偵のシャロン(シャー)・マコーンは、自分のアパートの住人で、ふだん仲が良かった老婦人モリー・アントニーオが絞殺された事件に遭遇する。シャロンは嘱託している組織「オール・ソウルズ法律課協同組合」に頼んでこの事件の調査を業務扱いにしてもらい、情報収集を開始。やがてモリーの周辺や、近所の人々の錯綜した人間関係が見えてくる。だがそんなシャロンを悩ますもうひとつの案件、それは幼なじみの親友だが、今はアル中になりかかっている29歳の離婚女性リニア・キャラウェイのことだった。

 1982年のアメリカ作品。
 シャロン・マコーンシリーズの第二作目。評者は本シリーズは、大昔に先に講談社文庫で翻訳刊行された第一作『人形の夜』(日本では作者名マーシャ・ミュラー標記で刊行)と、プロンジーニの名無しのオプとの共演編『ダブル』を既読。
 つまりだいぶ遅ればせながら、なるべくシリーズ順(&翻訳刊行順)に読んでいることになる。

 おなじみ深町眞理子のこなれた訳文もあってとても読みやすい。良い意味で、50~60年代の軽ハードボイルド私立探偵小説を、80年代・女性私立探偵ものの枠内に再生した歯ごたえ。

 関係者の間を訪ねてまわる主人公探偵の調査が連鎖的に事件の真相を少しずつ引き寄せ、やがて(ちょっと)意外な犯罪の真実が浮かび上がってくる流れはきわめて王道で、この作品では殺人の向こうにどういう種類の犯罪が起きていたのかの具体的なビジュアルイメージが、なかなか面白い。まあある意味では、単純に違法行為というだけでなく、地味に、しかしかなり倫理的にインモラルな悪事であった。

 なお、シャロンの「鳥が弱点」「チョコレートに目がない」という特化されたキャラクター設定はいささか記号的でマンガチックではあるけれど、総体としては地に足のついた正統派私立探偵の女性主人公。
 犯罪捜査官としてシャロンにライバル心を抱きながら、一方で彼女に岡惚れしていつも不器用な恋のアタックをかけてくるサンフランシスコ警察の中年刑事グレッグ・マーカスや、前述したシャロンの親友リニアなど、周辺キャラとの関係性もけっこう楽しい。
 題名に掲げられたタロット(タロー)・カード(原題では単に「~CARDS~」)が大した意味をもってないのだけは、ちょっと「あれ?」という感じであった。
 また気が向いたら、手元にある未読のシリーズ作品を読んでみよう。佳作。

No.1 6点
(2015/11/04 22:25登録)
ビル・プロンジーニ夫人で、夫婦合作もあるこの作者の名前(Muller)は、マラーともミュラーとも表記されますが、どっちが正しいんでしょう。Wikipediaを参照してもミュラーらしいとは思われるのですが、明確には書かれていません。
そんな作者のこの第2作が出版されたのは、第1作の5年後の1982年です。女私立探偵が活躍する小説は、80年台にならないと評価されなかったということなのかどうか、ともかく、シャロン・マコーン・シリーズは本作の後はコンスタントに発表されていきます。シャロンはチョコレート好きなのはともかく、鳥恐怖症というのは妙な設定だなあと思ったのですが、本作でも烏におびえて殺人をくいとめられないというシーンがありました。
誰が殺人犯人でもかまわないように思えてくる事件なのは、少々不満とも言えますが、最後はハードボイルドらしい手堅いまとめ方をしてくれていました。

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