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ミステリの祭典

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高校殺人事件

作家 松本清張
出版日1961年01月
平均点6.00点
書評数8人

No.8 5点 クリスティ再読
(2024/02/23 14:39登録)
清張って駄作はあっても奇作・怪作は珍しい作家だが(苦笑)、しいて言えば本作とか「神と野獣の日」とか「火の路」あたりが、そうかなあ。やはり清張は自分の資質がしっかり分かっていて、それを生かすようにしていた作家という印象がある。
だからかボードレールやらポーや国木田独歩やらという文学的リソースの参照に妙なリアルさがあるのに、高校生活にリアルさがないという困った小説になったわけだ。ジュブナイルなんて書くもんじゃなかった、ときっと思ったことだろう。

7人の少年少女探偵団のディスカッションはホームルームみたいだが、まあ探偵に集団討議はマッチしないなあ....皆さまも羽鳥さち子嬢ばかりがウケている(笑)まあそんな小説。それでもリーダビリティは最強レベルで、清張独特の落ち着いた文体が心地よい。しかし高校生の一人称だから、地の文から会話になると精神年齢がぐっと落ちる印象(困惑)
1950年代末の調布近辺が、まだまだ武蔵野の面影をしっかりと残している描写が興味深い。高校生詩人で被害者のノッポの家の商売が馬蹄の鍛冶屋!

No.7 5点 人並由真
(2018/09/26 17:52登録)
(ネタバレなし)
 元版のイラスト入りカッパ・ノベルス版で読了。
 大井廣介(広介)の「紙上殺人現場」だっけ。これの評で「今の高校生は普通に大人向けのミステリ読むんだから、わざわざ高校生向けと銘打ってこんなの書くことはない」と書いてあったの。いや21世紀のラノベミステリ全否定ですな(笑)。まあラノベって、もうちょっと下の年齢層からも読むかもしれんけど。
 ついでにその「紙上~」だったかどっかの書評で「読者はこの作品の犯人を当てることはできない。なぜなら(中略)」と書いてあったと思うけど、実際に読んでみると……なんだ、犯人は、一応(中略)。

 しかし実作を通読してみると、主人公チームを冒頭から7人と明確に設定しながら、ものの見事にいてもいなくてもどうでもいい、中島くん・山口くん・手島加奈枝さん。この三人の存在感の無さは逆の意味でスゴい。
 さらに清張、終盤でもうこの主人公チームに探偵役としての伸びしろがないと見切ったように、新ヒロインのさち子を登場させる臆面の無さに爆笑しました。乱歩の『猟奇の果』で、物語のやりくりがつかなくなってから明智が引っ張り出されたのといい勝負ではなかろうか。
 いやいろんな意味で楽しい作品ではあった(笑)。そんなにホメんけど。

No.6 5点 斎藤警部
(2017/06/06 12:10登録)
やっぱ清張にラノベは無理かw 
冒頭の重々しいモノローグの末、おいおいそれが「私」(男子高校生)かよ! と噴き出しそうになりました。 怪しい事象に対する主人公の疑いの持ち方の、特に人間関係の機微に関しての、立脚の浅さが高校生っぽさを何気にぎりぎり醸し出していますかね。ところが、よりミステリ文脈での明からさまな伏線攻撃にまでそんな柔っちい無反応を見せつけられると、重厚な文体との違和感が愈々。。賢い従姉妹ちゃんが登場してよかったね。
高校生向け学習雑誌(高校上級コース/高校コース)への連載らしくサスペンス度も社会派度も抑え目。若者たちが社会に出るのが嫌にならない程度にという配慮か(笑)? 本格ミステリとして見たら更に薄味だが、とは言え真犯人はギリ意外。某人物の敵味方属性は見え見えだけど、犯人側構造暴露のスリルはまずまず。それにしても「ノッポ」と「人夫のおじさん」は惜しまれる。。。
その昔NHK平日夕食時の「少年ドラマシリーズ」にて、原題の『赤い月』として放映されていました。

No.5 6点
(2016/02/15 13:25登録)
清張であって清張ではない、というふうに見せながらも、やはり清張なんですよね。そんな感じの、社会派青春ミステリー超大作?でした。武蔵野の描写あり、ポーやボードレール風の詩ありの芸術性ゆたかな推理小説でもあります。
個人的には、他の清張作品よりもさらに読みやすく、軽く読めたことがよかったかな。

みなさんがおっしゃるように、清張節あり、萌え少女あり、そしていちおう本格要素ありです。
これだけの分量で、事件は盛り沢山、真相もご立派、という点を勘案すればすばらしい作品なのでは?
まあだからこそ本格としては標準以下ということはいえるのですが(笑)。

No.4 6点
(2016/02/06 14:05登録)
松本清張の長編では他に例を知らないのですが、一人称形式で語られる作品です。作中の「私」は高校3年生。自分を示す言葉が「僕」ではなく、さらに清張節の落ち着いた文章であるだけに、大人になってから高校時代の思い出を書いたという印象を受けました。
仲良しグループの一人が殺される事件が起こりますが、ただ死体が発見されるのではなく、そこに至る過程がなかなか魅力的です。殺される学生がポーやボードレールの詩が好きだという設定で、自作の(つまり清張作の)暗い耽美的な詩まで披露されています。全体的にはコナン・ドイルあたりの感じを受け、実際ドイル当時にはまだ確立されていなかったように、本作でもフェアプレイは守られていません。まあ誰でもある程度見当のつきそうな真相ではありますが。また探偵役が事件を解決(推理)するわけでもなく、本格派としてなら失格です。しかし小説として楽しめたことは確かなので。

No.3 6点 了然和尚
(2015/11/29 13:45登録)
252ページ一気読みできた本でした。高校生雑誌向けということもあり文章が平易で読みやすかったということでしょうか。構成的には特に高校生向けを感じない内容でしたが、主役が高校生グループというのが対象読者へのサービスでしょうか(あまり生きてなかったが) むしろ開発されていく武蔵野の風景描写に味がありました。ま、私は関東圏ではないので実感は薄くて残念なんですが。
で、結末はいつもの清張のパターンで残念な終わり方なのですが、終盤に「萌えいとこ」が探偵役で登場しますが、これは衝撃でした。(プラス1点)
本書が好評であったのなら(多分、良くなかった?)、続編として女子高生探偵ものが連続して書かれて、推理小説の進化が50年早まったのではとかと妄想してしまいます。ちなみに女子高校生探偵たちの愛読書はクリスティーとガードナーだそうです。

No.2 10点 saino
(2010/06/13 13:04登録)
この作品の最大の魅力は最後の方に出てくる、少女探偵の魅力が最高なことだろう。
まさに「昔の女学生」という感じである。
普通は「てよだわ口調」や一人称のみで女性キャラを表現するのは低等なことなのかもしれないが、
ここまで完璧だとまさに芸の域かもしれない。

No.1 5点 kanamori
(2010/05/16 18:44登録)
高校生向け学習雑誌に「赤い月」のタイトルで掲載されたジュブナイル系ミステリ。
東京郊外の高校裏の沼で男子高校生が惨殺された事件を級友グループが解決に乗り出すというストーリーですが、高校生の一人称で語られる文章が重厚で格調高いのが笑える。ジュブナイルなのに、清張節はそのままでした。

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