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ミステリの祭典

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人蟻
百谷泉一郎弁護士シリーズ

作家 高木彬光
出版日1960年01月
平均点5.80点
書評数5人

No.5 4点 ボナンザ
(2021/08/27 23:54登録)
社会派というよりはサスペンスだろうか。お約束の展開が多いような気はした。

No.4 6点 人並由真
(2020/04/14 20:18登録)
(ネタバレなし)
 記憶の中にある『誘拐』『破戒裁判』の二大傑作に比すると、百谷泉一郎の若々しい言動がかなり新鮮であった。
 かたや明子のいい女っぷりは初弾の本作から全開で、たぶん当時の高木彬光の目標は<アメリカのよくできた夫婦探偵ものの再現>だったのだろうと勝手に想像している(明子の「メイスン」シリーズファンだという発言は、本作を法曹界ものというより、まずはそっちの<おしどりコンビもの>のラインで、という作者の意志表示だろうね)。

 ストーリーの前半は文句なしに面白いが、途中で敵側の設定が見えてからは話がとっちらかってきた。過去の事件の実態なども、キーパーソンのキャラクターを見せるためにあれこれ都合よく調整された感じ。「シャーロック・ホームズ」の正体も、途中で仮想される人物の方がロマンがあった。

 今後のシリーズを築き上げていく前の助走的な感触だが、断片的には得点要素も少なくない。ページが残り少なくなっていく中、最終的にどのジャンルに着地するかという読み手の興味を煽る感覚は、この作品ならではの趣だったし。

No.3 7点
(2016/01/09 22:07登録)
この百谷泉一郎弁護士シリーズの第1作は、高木彬光が社会派的な方向に進んだ最初の作品です。現実に1955~1958年に起こったドミニカ糖輸入事件のある意味後日談的な内容で、企業犯罪を、政治家との癒着も含めて真正面から描いていて、少なくとも今まで読んだ中では、作者の最も社会派的な作品です。作者も気合を入れて執筆したことがうかがわれます。
それだけに、犯人というか悪役は最初からわかっています。途中で章タイトルにもある「特急よりはやい準急」のトリック(偽アリバイのためではありません)は出てきますが、たいしたことはありません。また最後に明かされるシャーロック・ホームズの謎は、たぶん誰でも見当がつくでしょう。しかし技巧的な謎解きの面白さを狙った作品ではないので、欠点とは言えません。
百谷弁護士の成長物語でもあり、また明子夫人との出会いの話でもあるのも興味深いところです。

No.2 7点 斎藤警部
(2015/09/09 01:15登録)
言うほど社会派魂は求め得ないが、先の大戦から繋がる大規模悪事を起爆剤に使った、人間達の因縁蠢く昭和サスペンスの力作。

No.1 5点 kanamori
(2010/09/05 15:18登録)
弁護士・百谷泉一郎シリーズの第1作。
これは、製糖会社の不正と株の仕手戦が絡む経済ミステリでした。ある秘密を嗅ぎつけたジャーナリストらが被害者となる連続殺人も発生しますが、「日本の黒い霧」などと同系列の、砂糖に群がる蟻の様な男たちの癒着と欲望を描いた社会派ミステリです。
百谷弁護士とコンビを組むことになる経済評論家の娘・明子は、後に「誘拐」で演じる勝負師の片鱗が覗えますね。

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