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ミステリの祭典

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空さんの登録情報
平均点:6.12点 書評数:1505件

プロフィール| 書評

No.865 7点 女王蜂
横溝正史
(2016/04/12 22:03登録)
久々の再読ですが、なかなかよかったという印象は残っていたものの、実際に覚えていたのは中心人物が絶世の美女(女王蜂)であることと、本作最大の謎である「蝙蝠」の意味だけでした。
チェスタトンの某短編のヴァリエーション・トリックはあるものの、他の2つのアイディア、時計の問題と19年前の密室については、犯人が特に意図したところではなかったにもかかわらず、特異な状況が起こってしまったというものです。こういう偶然を利用したタイプの解決を嫌う人もいるかと思いますが、個人的には犯人がややこしい計画をひねくりまわすのよりも好みです。ただ時計の方は途中であっさり明かしてしまっています。
月琴島、伊豆半島、東京と広範囲を舞台とした読みごたえのある作品に仕上がっていますが、途中で気づいたいくつかの伏線が、金田一耕助の推理の中に出てこないのは不満でした。


No.864 5点 青いジャングル
ロス・マクドナルド
(2016/04/06 22:58登録)
ロス・マクの初期長編2作はスパイ小説系でしたが、この第3作は、ギャングに牛耳られる悪徳の町を舞台としたいかにもハードボイルドらしい話であり、その意味では自らのジャンルを確立した記念すべき作品と言えるでしょうか。ただし後のリュウ・アーチャー・シリーズとは違い、第1作の『暗いトンネル』と較べてもどこか安っぽい感じのするタッチです。田中小実昌の訳が最初のページから「あまくやさしくおもえる」「おもったよりもはやく」のように、普通漢字で書くところをひらがな表記にしているのも、その一因ではあるでしょうが。
1947年発表と言えば、スピレインが『裁くのは俺だ』で華々しくデビューした年ですが、正統派よりもそういった通俗ハードボイルドに近い感覚があるように思われます。ただし、思想的には登場人物を通してマルクス主義にむしろ親近感を示しているあたり、スピレインとは正反対です。


No.863 6点 凍える街
アンネ・ホルト
(2016/04/03 22:43登録)
ハンネ・ヴィルヘルムセン警部シリーズの第7作と言っても、翻訳されたのは本作までで4冊だけです。
最後ハンネがどうなったかは、あいまいなままにしてありますが、それは作者自身この後シリーズをどうするか、決めかねていたからではないかと思われます。それにしても、彼女は作中で他の者から批判されるほど一匹狼という感じはしませんでした。自分の考えを述べないのも、自分自身の中でも言葉にできるほど固まっていないからと思えます。メグレ警視が「私は何も考えない」と言うのに近いかもしれません。
読者に伏線を提示しておくタイプの作品ではないにもかかわらず、犯人の人物像はなんとなく予想はできてしまいました。しかしそれより、ところどころに挿入される弁護士未亡人とその息子のエピソードが、事件解決にそれほど決定的な役割を果たしていないところが気になりました。


No.862 7点 ホテル・モーリス
森晶麿
(2016/03/29 21:12登録)
第1回アガサ・クリスティー賞受賞作家による、2013年に発表された本作は、いろいろ意外性に工夫をこらして楽しませてくれるものの、本格派系とは言えません。プロローグとエピローグの間に、第一話から第五話まで並んでいて、それぞれ一応独立した短編になっているのですが、どれも〈鳥獣会〉というギャングがらみの事件なのです。そしてその第五話ではそのギャングの宴会が描かれ、全体を長編的にまとめる形になっています。で、その5編の舞台となっているのが、タイトルのホテル・モーリス。ホテルの支配人に叔父から突然任命された青年である「俺」の一人称形式部分と、三人称形式の部分とをうまく組み合わせていて、なかなか効果を出しています。
「モーリス」というのは有名な『ボレロ』の作曲家ラヴェルのファースト・ネームということで、以前のホテル・オーナーの名前が星野ボレロ。このネーミング、意味があるとは思えませんが。


No.861 6点 白魔
ロジャー・スカーレット
(2016/03/26 15:59登録)
論創社はシムノンの『自由酒場』“Liberty Bar” の新訳版を『紺碧海岸のメグレ』という妙な邦題にしていましたが、一方で、原題 ”Back Bay Murders” の本作に、昔の翻訳と同じほとんど意味不明な邦題を付けるなんて、タイトルに対する感性がよくわかりません。
謎解きはよくできているのですが、他の評者も書かれているように、小説的には稚拙さを感じさせます。巻末解説では、昔の森下雨村のダイジェスト訳を、第5章の終り方を例に挙げて褒めていますが、雨村的な章区切りはカーなどが得意とする手法で、そういった小説技巧や登場人物の描き分けが不足しているのです。
なお、p.58~59に「九時五分に」「九時五分だった」の記述がありますが、これはその後の、それを言った人物の再度の証言からしても、明らかに原文の誤植あるいは誤訳で、「九時五分前」です。矛盾に何か意味があるのかと頭を悩ます必要はありません。


No.860 7点 夜の記憶
トマス・H・クック
(2016/03/21 23:24登録)
今まで読んだクックの日本語タイトルでは「記憶」が付いた3作(死・夜・沼地)の中では、その構成が最も率直にいいと思えた作品です。技巧派好きな人なら『沼地の記憶』を挙げるかもしれませんが。
主役は時代物ミステリ作家で、登場人物表の中にはなんと彼が書いた作中登場人物の名前まで出てきます。50年前に起こった事件の再調査を彼が依頼され、さらに彼自身の子どもの頃の残酷な事件の記憶とからまりながら話が進んでいき、それに漠然とした形ではありますが作中作まで混ざり合ってくる構成は、「記憶」というかひたすら暗い「過去」への徹底的なこだわりを感じさせます。
少しずつ明かされていく彼自身の過去の事件の隠匿部分はすぐ想像がつきますし、依頼される事件も特に驚くような結末ではないのですが、説得力はあります。重々しいじっくり型作品にもかかわらず、意外に読みやすいのも評価できます。


No.859 6点 童話の時代
結城昌治
(2016/03/18 22:42登録)
5編を収録した角川文庫短編集ですが、最後の2編、表題作とその続編『凍った時間』は「優秀な探知能力を内蔵した宇宙衛星が地球を四六時中まわっている」時代(発表された1968年と言えば、アポロ11号が月着陸を果たす前年です)の現実的なスパイ小説です。タイトルの意味は、いわゆる「外套と短剣」的なスパイ時代のことを指しているのですが、皮肉な使われ方がしています。『凍った時間』は、表題作のラスト1段落を受けた作品で、その意味では話が始まる前から結末をネタばらししているとも言えます。
最初の『小指のサリー』は人探しの物語ではあるのですが、ストーリー展開はミステリらしくない、なんとも哀しい結末の作品です。この短編集は実は再読なのですが、最も記憶に残っていたのが『沈む夕日に』の後味の悪いラストでした。逆に『紺の彼方』は全く記憶に残ってなかったのですが、悪くはありません。


No.858 6点 緊急深夜版
ウィリアム・P・マッギヴァーン
(2016/03/12 16:02登録)
マッギヴァーンが若手の新聞記者を主人公にして描いた本作は、海外のジャンルにも社会派があれば、それに投票したい作品でした。まあハードボイルドと言っていいとは思いますが、ハメット等正統派だけでなくスピレイン等にも共通する雰囲気は、それほど感じられません。
市長選挙戦の最中、理想主義の改革派候補が殺人容疑で逮捕される事件で、担当した警部がその容疑を否定する証拠を握りつぶそうとしている状況ですから、黒幕は最初から明らかです。それでもひねりはあって、実は第2の殺人(最初は自殺として処理されますが、ミステリ初心者でも殺人だとすぐ気付くでしょう)が起こった時点で、それならば当然こうなるだろうなと思ったことがあったのですが、やはりそうでした。そしてラストはその点を利用してうまく盛り上げてまとめています。前作『ファイル7』に比べると人物造形が平板という不満もあるのですが。


No.857 7点 ママは何でも知っている
ジェームズ・ヤッフェ
(2016/03/09 23:07登録)
全8編が収録されていますが、そのうち最後の『ママは憶えている』だけは70ページほどの中編です。初出は5編が1952~55年、3編が1966~68年と、間に10年以上の開きがある2つの時期に分かれています。それでもスタイルは変わっていません。法月氏の巻末解説では同じアームチェア・ディテクティヴの例として『隅の老人』や『黒後家蜘蛛の会』、『退職刑事』等を挙げていますが、ボナンザさんも指摘するように、クリスティーの『火曜クラブ』がまず連想されます(nukkamさんが念頭に置いたのもやはりこれじゃないでしょうか)。なんといってもママの推理方法が、身近な人たちとの比較という、ミス・マープル流なのですから。
『ママは賭ける』『ママが泣いた』はどちらも短編らしい意外性では文句がないのですが、犯人の側から殺人計画を考えてみると、疑われる危険度が高いという問題点があるように思いました。


No.856 6点 無垢と罪
岸田るり子
(2016/03/04 22:47登録)
2010年5月から2013年3月までという、長い期間にわたって、しかも掲載誌を途中から代えて発表された作品です。一応連作短編集というか、6編全体でまとまる形のものになっていますが、それぞれ独立した短編として読むと弱いところがあります。最初の『愛と死』(武者小路実篤の同題小説を作中に使っています)は、ありきたりな結末ですし、次の『謎の転校生』は説明不足で最後も今ひとつ釈然としません。次の『嘘と罪』は単体で完結した小説とは言えませんが、『謎の転校生』の説明不足な部分を示していて…
ということで、これは発表形式にもかかわらず、むしろ長編として評価すべきものでしょう。ただ、そうすると『愛と死』と5番目の『幽霊のいる部屋』は本筋とは基本的に別の話であり、他の部分との関連性が薄いと思います。最後に向かってゆるやかに溢れてくる静かな哀しみは、この作者らしい味わいでいいのですが。


No.855 6点 闇に消える
ジョゼフ・ハンセン
(2016/02/29 22:59登録)
いわゆるネオ・ハードボイルドに属する作家による、デイヴィッド・ブランドステッター・シリーズの第1作。ただし彼は私立探偵ではなく、保険調査員です。また長くて覚えにくい名前(登場人物の一人も「ミスター・ブランド―何でした?」なんて聞いてます)も、特徴の一つと言えるかもしれません。さらにこのタイプの作品には珍しく、語りは三人称形式です。
…と列挙してきましたが、やはり最大の特徴は、ブランドステッターが同性愛者ということでしょう。しかし、書き出しは普通にロス・マク風で、彼が同性愛者だということはすぐには明かされません。その後私生活が描かれる部分もかなり出てくるものの、事件とは無関係だなと思っていたのですが、最後にはなるほど、こうオチをつけましたか。
行方不明から殺人へと続く事件の真犯人は意外とは言えますが、殺人の契機となったある情報については、その情報を普通ばらまくだろうかと疑問を感じました。


No.854 7点 大いなる殺人
ミッキー・スピレイン
(2016/02/23 18:48登録)
マイク・ハマー・シリーズ第4作では、このタフガイ探偵がなんと殺された男の赤ん坊を自分の家に連れて帰って世話をするなんて、意外なところを見せてくれます。もちろん探偵の仕事があるので、すぐに看護師をやとって面倒を見させるんですけど。その仕事も、誰かに依頼されてではなく、その子を孤児にした犯人を許せないという正義感から、捜査に乗り出すのです。
で、その殺人事件を中心としたプロットはというと、これが謎解きとしてかなりきっちりできているのです。ハマーがギャングたちにずいぶん痛めつけられたりもする派手でハードなストーリーの陰に隠れて目立ちませんが、これまで読んだスピレインの中でも、最も論理的に組み立てられた作品だと思います。
ラスト1段落のオチをつけるために、その直前はご都合主義な展開になっていますが、オチのための伏線は早い段階からたっぷり張ってあります。


No.853 5点 水に描かれた館
佐々木丸美
(2016/02/19 23:04登録)
本作は、精神が肉体・物質を完璧に支配下に置いている世界を舞台にしています。その意味ではファンタジーあるいはSFです。ですから、「日蓮上人が念仏をとなえて神風を起こした」(創元推理文庫版p.339)なんて伝説もこの小説中ではあり得るのです。現実の歴史では、日蓮は念仏信仰など国に災厄をもたらすだけだと主張したことで有名です。
トリックもそのような世界であればこそ可能なもので、しかも設定自体が不明瞭なため、基本構成自体は新本格派ファン好みのいわゆる館ものですが、アシモフやランドル・ギャレットのようなフェアな謎解きミステリには元来なり得ません。
館に住む少女涼子の主観が非常に多く、それも事件についてよりも自分の恋について、人間の運命など哲学的なことについてなど、様々な思いを溢れさせていて、その中に溺れることができる人なら、はまりそうな作品です。


No.852 6点 クロノス計画
ウィリアム・L・デアンドリア
(2016/02/15 23:08登録)
デアンドリアの作品を読むのは今回が3冊目ですが、それぞれ違ったタイプの作品です。
マット・コブ・シリーズも軽い印象はありましたが、本作はB級っぽい匂いが最初から漂う荒唐無稽なスパイ・スリラーで、冒頭に置かれた、現実には存在しない云々の文章には苦笑してしまうような事件です。ただし舞台はほとんど架空の都市だけに限定されています。まあシリアス・スパイだったらアンブラーの『あるスパイへの墓碑銘』なんて、ほとんど館ものみたいなのもありましたが。1984年の作で、ソ連の「クロノス計画」(の一部)を実行しようとするテロリストのグループと、その計画を阻止しようとするアメリカ政府の秘密情報機関エイジェント側、両方の視点から描かれていきます。
ただし、作者が基本的に謎解き要素を重んじる作家であることも間違いなく、結末の意外性はなかなかのものです。「クロノス計画」の必要性には大いに疑問を感じましたが。


No.851 7点 バースデイ・ブルー
サラ・パレツキー
(2016/02/12 22:30登録)
ヴィク・シリーズの長編第8作は、それまでの最長だった前作『ガーディアン・エンジェル』からさらに15%近くも長くなって、約660ページ、それも最近の活字が大きくなった文庫ではなく、1ページ19行の版でという長大さです。しかし、前作が長さに見合うだけの内容が感じられなかったのに対して、今回はなかなか充実した事件内容になっていて、社会福祉的な主題も読みごたえがあります。ただ、凶器が発見された時点で、それを殺人現場まで持ち運ぶことを考えると、ほとんど当然容疑対象から外されるだろうと思われる2人に、ヴィクも警察もこだわり続けているのだけは、ちょっと間抜けに思えますが。
例によっての巻頭謝辞の中であえて設定を1992年にしたことが述べられていて、その理由は何なのだろうと思っていたのですが、現実に起こった(読後にWEBで確認)大変な出来事をうまく取り入れて見せ場にしていました。


No.850 6点 高校殺人事件
松本清張
(2016/02/06 14:05登録)
松本清張の長編では他に例を知らないのですが、一人称形式で語られる作品です。作中の「私」は高校3年生。自分を示す言葉が「僕」ではなく、さらに清張節の落ち着いた文章であるだけに、大人になってから高校時代の思い出を書いたという印象を受けました。
仲良しグループの一人が殺される事件が起こりますが、ただ死体が発見されるのではなく、そこに至る過程がなかなか魅力的です。殺される学生がポーやボードレールの詩が好きだという設定で、自作の(つまり清張作の)暗い耽美的な詩まで披露されています。全体的にはコナン・ドイルあたりの感じを受け、実際ドイル当時にはまだ確立されていなかったように、本作でもフェアプレイは守られていません。まあ誰でもある程度見当のつきそうな真相ではありますが。また探偵役が事件を解決(推理)するわけでもなく、本格派としてなら失格です。しかし小説として楽しめたことは確かなので。


No.849 7点 証人たち
ジョルジュ・シムノン
(2016/02/01 23:41登録)
殺人事件の裁判長になった判事を主役にした、裁判前夜から裁判終結日の夜までの話です。ただしシムノンらしく、途中に主人公の過去の思い出や日常生活などをふんだんに取り入れて、そんな様々な記憶が法廷での彼の態度に影響を及ぼす様が描かれます。裁判劇中心ということで一応本サイトに登録しましたが、ミステリ度はかなり低い作品で、妙な期待を持って読むと、本格派ファンならずともこの結末にはがっかりするかもしれません。小説としてなら納得のいく判決ではあるのですが。さらに裁判終結の後に主人公を待ち受けていた衝撃には、感銘を受けます。
文学的テーマを別にすると、興味深いのがフランスの裁判制度でした。シムノンがどの程度現実の裁判に忠実に書いているのかはわかりませんが、本作を読む限り、ペリー・メイスンでおなじみのアメリカや、それに近い日本の制度とは全く違うところがあるのです。


No.848 6点 魔術師を探せ!
ランドル・ギャレット
(2016/01/28 20:36登録)
『魔術師が多すぎる』以前に書かれたダーシー卿シリーズのこの3中編を続けて読むと、作者の描いた魔法の国がかなりはっきりイメージできます。そして感じたのは、これはハードSFと言う場合と同じ意味で、ハード・ファンタジーなのだなということでした。つまりハードSFでは、たとえばもしタイム・トラベルが可能だとしたら、という前提の下に整合性あるプロットを組み立てるわけですが、このシリーズではその前提が魔法なのです。だからこそ、パズラーにもなり得るのでしょう。
2作目『シェルブールの呪い』は、むしろスパイ小説の要素が強い作品です。現実には他国からの侵略に苦しんだポーランドが英仏帝国に敵対する大国になっているという設定がおもしろいのですが、東欧の人が読んだらどう感じるだろうかと心配したりもして。この作品でのダーシー卿の犯人指摘の推理は、ちょっと説明不足だと思えます。


No.847 4点 能登路殺人行
中町信
(2016/01/24 13:41登録)
これまで読んだ中町信の中でも、小説としての味わいに最も欠けた作品だなあと思いながら、読み進んでいきました。タイトルにもかかわらず、とてもトラベル・ミステリーに分類することなどできない旅情の無さ、登場人物たちの味気ない会話など。特に本作では探偵役2人の性格づけがいいかげんで全く魅力が無いことが、大きな減点要因でしょう。
ただしパズル的要素に関しては、むりやり連続殺人にしていく展開がありきたりであるにしても、登場人物(容疑者)を非常に限定していながら、その枠中での一筋縄ではいかない謎の提出はなかなかのものです。ダイイング・メッセージもリアリティはともかく、その発想自体には感心させられます。
最初の被害者が言ったある言葉に関して、はてなと思った点はあったのですが、やはりそこが重要な手がかりの一つになっていました。


No.846 6点 アマンダの影
キャロル・オコンネル
(2016/01/18 00:00登録)
キャシー・マロリー刑事のシリーズ第2作。オコンネルを読むのは初めてですが、少なくとも本作を読む限り、同一シリーズの他作品でジャンル分類されているハードボイルド度はゼロです。マロリーが第1作タイトルの「氷の天使」にふさわしいほとんど無機質な感じを与える天才ハッカーという設定は、読み進んでいくと、作者と正反対の人格ではないかと思えます。マロリーの友人で協力者のチャールズが、殺人事件の被害者アマンダの幻影を造り出し、ほとんどその幻影に憑かれたようになっていくあたりなど、作者の資質・傾向はこっちの方ではないかと思えるのです。この幻影、実のところ本作の中心プロットに必要不可欠なわけではありません。
全く無関係な2つの事件が同時進行していきますが、クライマックス・シーンでの2つの結び付け方はなかなかのものでした。その最終日の章、強引なご都合主義はありますが。

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