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ミステリの祭典

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私立探偵マイク・ハマー

作家 ミッキー・スピレイン
出版日1965年01月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 5点
(2016/06/23 22:45登録)
マイク・ハマーが久々にカムバックしての第2作です。ヴェルダとの再会シーンから始まりますが、その冒頭部分からなかなかいい雰囲気を出しています。犯人の設定がスピレインらしくないとも思えますが、それだけにまあ意外性があるとも言えるでしょう。
しかし、ハマーが銃を突き付けられ危機一髪になるシーンが3回あるのですが、どれも偶然助かり、しかも『大いなる殺人』みたいな伏線もないのでは、ハマーって、やたら運がいいだけじゃないかと思えてしまい、偶然のパターンを変えてはいても、さすがに安易と言わざるを得ません。
最後部分も、犯人がいつの間にか現れて、しかも犯人はそこに以前に来たことがないとしか思えない展開になるのは、説得力に欠けます。犯人がその場所を知らなかったとは考えにくいですし、知らなかったとしても、ハマーとヴェルダを尾行するのはかなり困難な場所なのです。

No.1 6点 クリスティ再読
(2015/08/23 13:33登録)
スピレインって過小評価されすぎ作家だ、というのが評者の昔からの持論なんだけど、今回再読してその面白みを改めて感じた。

パルプマガジンってのは都会のブルーカラーの娯楽読み物として発達したわけで、そもそも田舎モノはお呼びじゃなかったんだろうね。しかし、第二次大戦で田舎の若者が徴兵→都会定住を通じて、ハードボイルド小説の読者になってきた時に、その「イナカモノ根性」も一緒にハードボイルドに混ぜ込もうとしたために、旧来のシティボーイな読者たちに猛反発を食らった...という風に評者は理解しているんだけど違うかなぁ。

だからイナカモノのヒーローであるハマーは、女性関係にオクテなほど慎重で、オマワリと仲がよく、ウヨク保守的なんだよね。しかし何やかんや言って文章は実に官能的で素晴らしいし、本作あたりだと「裁くのは俺だ」みたいな冒頭と結末だけが異常によくて中盤のヤッツケな「キセル小説」ではなくて、一応ちゃんと謎もあって、隠れた犯人もいるマトモな「私立探偵捜査小説」になっていて、ドラマチックな幕切れまである。

とはいえスピレインの良さはこういうハッタリのよく効いたカッコイイ文章の佳さだ。
「死人があれば、いつでもそこから始められる。死人とはどんづまりであり、同時に理想的な始まりなのだ。死は明瞭きわまるから多くの解釈を許さない。これを相手にしている限りは、足が地についている。」
大詩人小笠原豊樹氏の名訳に感謝。

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