空さんの登録情報 | |
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平均点:6.12点 | 書評数:1515件 |
No.995 | 6点 | ニューオーリンズの葬送 ジュリー・スミス |
(2017/11/29 23:57登録) 1991年度エドガー賞を受賞した大作です。最初の方の「幕間」の章では、舞台となる都市名の発音についていろいろ書かれていて、そんな「街」を描いた小説としても高く評価されたのかもしれません。 基本的には交通巡査のスキップ・ラングドンが被害者家族の知り合いだったため殺人事件の捜査に抜擢されて活躍する警察小説です。しかしそんな特殊状況のせいもあり、警察組織の中でも孤立したこのヒロインは、むしろハードボイルド系のヴィクやキンジーに近いものを感じさせます。ただスキップの新人らしい戸惑い、感情の起伏が激しくひがみっぽい性格の強調には少々うんざりさせられました。 事件の真相も、ロス・マクに通じるような悲劇なのですが、事件関係者たちの内面をネタバレにならないように制御しながらもじっくり描いた展開になっています。その描き方が本当に効果的だったか、疑問ではありますが。 |
No.994 | 8点 | コンチネンタル・オプの事件簿 ダシール・ハメット |
(2017/11/25 13:34登録) 創元推理文庫のコンチネンタル・オプ・シリーズを集めた『フェアウェルの殺人』と共通するのは、『放火罪および…』だけ。で創元の方が謎解き要素の高いものが多かったのに対して、こちらは中心となるのが2種類の2編の連作で、どちらもまさにハードボイルドって感じです。いや、『血の報酬第一部 でぶの大女』のとんでもなく派手な銀行強盗は、ここまでくるとハードボイルドの範疇から逸脱してしまっているかもしれません。しかしやはり文句なしにおもしろい。第二部の『小柄な老人』の最後に、コンチネンタル・オプが「おれはパパドパロス(作中の協力者を次々に始末する悪役)と同類さ」と言うのには納得。 異色短編とされる『ジェフリー・メインの死』も、こんな粋な解決をつけるタイプがあってもちっともおかしくないと思えます。シリーズ最終作『死の会社』は事件の基本的な部分は明らかですが、うまくまとめてくれていて、これも悪くありません。 |
No.993 | 5点 | 二万パーセントのアリバイ 越谷友華 |
(2017/11/21 23:03登録) 第12回(2013年)「このミス」大賞応募時には『生き霊』のタイトルで、その段階では刑務所に服役中でアリバイを持つ男の生霊が殺人を起こしたように見せる演出がされていたそうです。その後大幅に改稿された上で出版されているので、印象はかなり変わっているのでしょう。 その印象ですが、ジャンル分けの難しい作品になっています。小児殺人事件の現場付近にあったティッシュに付いていた精液のDNAが、16年前に起こった全く同じ手口の殺人事件犯人として服役中の男のもので、その時も同じように精液が決め手になっていたという、提出された謎はおもしろいのです。しかしなぜ全く同じ手口で不可能犯罪を演出したのかという、パズラーなら非常に重要な部分が、犯人の殺人動機に一応結びついてはいるものの説得力がありません。またアリバイトリックも、どうということはないものです。 一方、服役中の男たちを描いた部分は実に楽しく読ませてくれる作品でした。 |
No.992 | 6点 | そして殺人の幕が上がる ジェーン・デンティンガー |
(2017/11/17 22:20登録) 本作でデビューしたデンティンガーは女優でもあるそうです。 被害者の女優は「演劇界の鼻つまみ」と紹介されていますが、実際に読んでみるとそれほどとも思えませんでした。もっとわがままな性格なのかと思っていたのですが、むしろ知名度ほどの実力がない女優として描かれています。 謎解き的には完全にフーダニット・タイプですが、段ボール箱の配達人の話が出た瞬間に、だったら最も怪しいのはこの人物だと予想できてしまいました。また最重要手がかりについては、なぜそれがそこにあったのか殺人が起こる前から疑問に思っていたのですが、説明が全くできていません。それでもこの評価なのは、さすがに舞台となる演劇界の状況の描き方に説得力があり、おもしろくできているからです。 なお主人公は登場人物表では「ジョスリン(ジョシュ)・オルーク……わたし。女優」となっていますが、三人称形式で書かれた小説です。 |
No.991 | 6点 | マイケル・シェーン登場 ブレット・ハリデイ |
(2017/11/12 10:25登録) まるでシリーズ第1作みたいなタイトルですが、たぶん第18作です。原題は "This is it, Michael Shayne" で、「まさにこれだ」ということですが、何のことだかわかりません。 巻末解説ではハリデイとガードナーと売上を比較したりもしていますが、タイプ的にも、かなり謎解き要素が高く、また文学性ではなくエンタテインメントに徹していること等、なんとなくペリー・メイスン・シリーズと近い感じもします。さらにシェーンがハードボイルドでは珍しく全国的に有名な私立探偵という設定も、メイスンと共通するものです。 真相については、第2の殺人が起こる少し前に、これはどうしてもこうならざるを得ないなとは思ったのですが、予想以上に細かいところまでうまく辻褄を合わせてまとめてくれていました。結末の意外性はガードナーほどではありませんが、論理的整合性では、むしろ上かもしれません。 |
No.990 | 5点 | 分離の時間 松本清張 |
(2017/11/08 18:27登録) 「黒の図説」シリーズ第1・2作として週刊誌に発表された作品を収録していますが、本では順番を逆にしています。ただし『黒の画集』みたいな短編集ではないので、シリーズとする必要もないと思うのですが。 表題作は量的に『点と線』と大して変わらない短い長編。松本清張らしい、民間人が偶然に遭遇したことから疑惑を感じて、殺人事件の調査をすることになる、という展開です。友人の雑誌記者の方が結局名探偵役を果たすことになるのも、作者らしいところ。政治家と企業トップとの癒着糾弾よりもむしろ同性愛をテーマにしているのは清張としては珍しいでしょうが、全体的にはまあ無難にまとめたという感じでした。 中編『速力の告発』は速力に対する告発の意味で、自動車産業の無責任さに対する、斎藤警部さんも書かれているようにまさにストレートな批判ですが、最後に突然ミステリになるところは落差がありすぎと思えました。 |
No.989 | 5点 | 知りすぎた男 G・K・チェスタトン |
(2017/11/04 19:03登録) 『ブラウン神父の知恵』の後1926年に『不信』で「ブラウン神父の復活」を果たす前、1922年に発表された短編集。タイトルについては、名探偵役のホーン・フィッシャーが第1作『標的の顔』の中で「いろいろ知りすぎていてね。そこがわたしの問題点なんですよ。」と言っています。 作者が作者ですから、文章が難解なのは当然とも言えますが、本短編集はブラウン神父シリーズ以上にわかりにくいものになっています。ブラウン神父がキリスト教という普遍的哲学を基本にしているのに対して、フィッシャーはイギリスの首相や閣僚たちとも親戚関係にあるような人物で、当時の政治的な主題が背景にあるのも一因でしょう。また、全般的に登場人物が無駄に多いように感じました。シリーズ最終作『像の復讐』については、チェスタトンもこの手は使っていたんですね。 シリーズ外の最後の2編の方が、シンプルにまとまった読みやすい作品になっていました。 |
No.988 | 6点 | コパーヘッド ウィリアム・カッツ |
(2017/10/30 23:37登録) 『恐怖の誕生パーティ』等のサイコ・サスペンスが知られるカッツの作品だからでしょうか、創元推理文庫では猫マークに分類されていますが、これはSF的設定を取り入れたポリティカル・アクション(戦争)・スリラーです。1982年作品で、BRAVOと名付けられている放射能無力化兵器の開発最終段階にあるアメリカに脅威を感じたソ連が、ボストンにあるその新兵器開発所を核爆弾で破壊しようという計画のド派手ストーリーなのですから。そもそも物理的に無理なこの「新兵器」、存在すればむしろ平和的利用にこそ有効なはずです。 コパーヘッドとは、その計画実行飛行機が搭載する、世界一の性能を誇るソ連製ミサイルのことです。最後にアメリカ側が講じた手段も無茶ですが、ソ連機がなぜそれに気づかなかったのかも不明。 そんなわけで穴だらけの荒唐無稽プロットではありますが、途中の展開は迫力があり楽しめました。 |
No.987 | 6点 | 伯林-一八八八年 海渡英祐 |
(2017/10/26 19:54登録) 森鴎外は軍医でもあっただけに、ミステリには合いますね。というか本作の時代設定ではまだ医学のための留学中で、自分自身作家になるなどとは思っていなかったはずです。『舞姫』のモデルになったエリスも、殺人事件にこそ関与しませんが登場します。ミステリからは離れますが、彼女に対する林太郎の感情がなかなかおもしろいと思いました。 事件全体の構造から考えると、こんな複雑なことをする必要があるとは思えませんでした。また細かいことを言えば、鍵穴に布を詰めた理由は死体発見に至る流れから見て、やはり弱いと思います。それと関連しますが、19世紀末とは言え、医者が発見直後の死体を一応検めているのですから、トリックの重要部分にはその時点で気づくのではないでしょうか。 なお、読んだ講談社文庫版の巻末解説で中島河太郎氏、さりげなく真犯人について完全ネタばらしをやってくれています。ここはもっとあいまいな書き方ができたでしょう。 |
No.986 | 7点 | 目覚めない女 フランセス・ファイフィールド |
(2017/10/21 11:22登録) 公訴官弁護士ヘレン・ウェスト・シリーズ第3作は1991年度シルバー・ダガー賞受賞作です。 訳者あとがきではハウダニットに重点が置かれていると書かれていますが、毒殺トリックとしてはどうということもありません。実際、半分にも達しない段階で、殺害方法は解明されてしまいます。ただ麻酔医が、クロロフォルムの特性から考えて事故ではありえないことを証明するところだけは、なるほどと思わせられました。体内から検出されたのが致死量に達していない点の説明はあまり明確ではありませんが。 しかしそんな謎解きより、この作者らしい細かな視点の切り替えによるサスペンスの盛り上げが見どころです。犯人の側から描いた部分もかなりありますが、事件そのものに関する内面描写はプロローグと最後の方だけにしているのも効果的です。それにしても本作の事件関係者たち、まともじゃないなあ。 |
No.985 | 6点 | 俺のなかの殺し屋 ミッキー・スピレイン |
(2017/10/17 22:34登録) 表題作および『孤独の男』の長めの中編2編が収録されています。 表題作の語り手スカンロンは警部補で、自分が生まれ育った地区で起こった連続殺人の捜査をすることになります。しかし主役が警察官でも警察小説っぽい感じはありません。この作者らしく、いやマイク・ハマーもの以上に、街の雰囲気や住人たちの描き方等まさにハードボイルドです。プロローグにクライマックス直前のシーンを持ってきていて、「わたしは自分自身を殺さねばならないのだ」なんて思わせぶりな表現も出てきます。犯人の意外性はマニアックな本格派作家が考えそうなものですが、伏線不足なのが残念なところ。 もう1編『孤独の男』は、罠にかかって殺人罪で裁判にかけられ、それでもなんとか無罪を勝ち取った元刑事の話です。真相は表題作とは逆にすぐに予想のつくものですが、スピレインらしいハードなおもしろさはさすがでした。 |
No.984 | 5点 | バイリンガル 高林さわ |
(2017/10/13 23:31登録) 2012年第5回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞受賞作。 第一章は東京で始まりますが、事件の舞台は約30年前のアメリカです。メインの誘拐事件に殺人も加わる展開で、謎解きの捜査や推理よりもサスペンス中心の作風です。その中に、主に小児に起こる発音間違いの「構音障害」を謎解き要素として取り入れていて、この症例については知らないのですが、なかなか楽しめました。ダイイング・メッセージもありますが、これは不要ですね。 第五章のあるセリフの伏線があまりに露骨なのは気になりましたし、第六章での唐突なネタバレセリフにも唖然とさせられました。ただし後者の方は、巻末の選考評によれば受賞後、島田荘司の勧めにより作品構造自体に手を入れたそうなので、その時の削除忘れと思われます。このどんでん返し狙いの改稿により、最初聡子がニーナを避けたがった理由がほとんどなくなってしまっている点が、かえって不満でした。 |
No.983 | 6点 | 魔のプール ロス・マクドナルド |
(2017/10/08 22:34登録) リュウ・アーチャー・シリーズ第2作は、ほとんど最後近くまでは前作以上に通俗ハードボイルドっぽい派手なストーリー展開の作品でした。特に閉じ込められた部屋からリュウが脱出するシーンは壮観です。本作は『新・動く標的』のタイトルで映画化されたそうで、未見ですが、確かに映像化すると迫力がありそうです。文章の方では、すでに情景描写には、さすがロス・マクと思わせる表現も多少見受けられますが、ウィットに富んだ会話には欠けます。 ただ最終の第25章だけは、それまでの通俗的はったりとは全く異質なものになっています。次作『人の死に行く道』以降の作品にもつながるような犯人の告白も渋くていいのですが、それよりもその後にある「何の役にも立たない喧嘩」のシーンにけっこう感動してしまいました。この最終章における落差をどう捉えるかは人それぞれでしょうが、個人的には一応評価1点アップ。 |
No.982 | 7点 | 冬そして夜 S・J・ローザン |
(2017/10/04 22:45登録) 今回はビル・スミスの一人称形式で書かれたシリーズ第8作で、2003年度エドガー賞受賞作品です。 タイトルは、冒頭に引用されたウィリアム・ブレイクの詩『乳母の歌』の「お前たちの冬と夜は、虚偽のなかで空費される」という部分から採られています。虚偽…巻末解説の中でも触れられているように、マイケル・ムーア監督の『ボウリング・フォー・コロンバイン』でも取り上げられた実際の事件に触発された作品であることは間違いありませんが、ローザンの視点は、いじめを黙認どころか助長するコミュニティに向けられ、高校アメフト部員をかばうための町ぐるみと言ってもよい虚偽が大事件の根幹にあることを指摘します。事件の一部は解決されないままで、今後に不安を残す幕切れとなっているのも、全面的解決の困難さを示しているのでしょう。 ビルの両親や妹の家族のことが初めて語られる(リディアに対してさえ)作品でもあります。 |
No.981 | 6点 | サイバーテロ 漂流少女 一田和樹 |
(2017/09/29 21:46登録) 実際にサイバーセキュリティ情報サービス事業をやっていた作者による、サイバーセキュリティ・コンサルタント君島悟のシリーズ第2作です。 冒頭の出来事については、いくらなんでも2011年の段階で現実にはそれはないでしょう。たとえ外部から操作すべてをコントロールできるとしても、君島がその条件を挙げているとおり、状況的に無理があるのですが、その作中での疑問はうやむやなままになってしまっています。それにしても、このシーンをプロローグ的に使う意味は、あまり感じられませんでした。 それでも、SFに片足突っ込んだミステリとしては、なかなかおもしろいと思います。全国的な金融等の混乱を引き起こすサイバーテロ計画の全貌がだんだん明らかになってきて、その対策を考えるあたり、タイムリミット・サスペンスが効いています。そのテロ事件が一応解決した後の全体的な真相解明もかなり鮮やかでした。 |
No.980 | 6点 | パーフェクト・アリバイ A・A・ミルン |
(2017/09/25 22:45登録) A・A・ミルンが1929年に発表した戯曲の表題作に、短編小説2編を加えた形になっています。 巻末解説によると、最初ロンドンで “The Fourth Wall” のタイトルで上演されたのが、ニューヨークでの上演時に “The Perfect Alibi” に改題されたのだとか。「第4の壁」って、3幕同じ室内セットで通すこの劇の観客席側の壁のことでしょうか、それにしても、タイトルの意味はよくわかりません。アリバイの方は、演劇ですから凝ったことをするはずもなく、とても完全とは言えません。しかしちょっとした工夫によって、自然なものになっています。なお本作は倒叙ものですが、殺人の起こる前段階に犯人の意外性があります。最初のうちわずらわしい感じも多少ありますが、プーさんの作者らしい楽しい作品に仕上がっています。 叙述トリックを仕込んだ『十一時の殺人』、皮肉な結末のごく短い倒叙『ほぼ完璧』もなかなかの出来栄えでした。 |
No.979 | 7点 | 事件当夜は雨 ヒラリー・ウォー |
(2017/09/20 23:26登録) 久々の再読ですが、内容はほとんど覚えていませんでした。かなり印象に残るはずだと思われる最後のひねりさえも記憶から抜け落ちてしまっていて。 本格派の立場から言えば、極めて大胆な伏線が張られている作品です。その伏線は犯人が逮捕された後、上述のひねりの部分で生きて来るという趣向です。そんな伏線や様々な可能性についての緻密な検討の他、クイーンの『ギリシャ柩』や『十日間の不思議』にも通じる発想がフェローズ署長により語られるなど、この作家を知っている人には当然でしょうが、本作も本格派ファンが楽しめる作品です。ただ本格派と言ってもクロフツの地味な捜査小説がダメな人にはお勧めできません。なにしろ捜査の試行錯誤はクロフツ以上です。そう言えば、犯人の弄したトリックは、クロフツの某有名作のアイディアを単純化した感じです。 kanamoriさんも書かれていますが、犯人像にも感心させられた作品でした。 |
No.978 | 6点 | 待っていた女・渇き 東直己 |
(2017/09/16 13:41登録) 札幌の私立探偵畝原浩一初登場の短編『待っていた女』と、同シリーズ長編第1作『渇き』が収録されています。かなり仕事は多くて忙しい畝原は離婚していて、小学生の娘冴香を育てているという子連れ探偵で、2作ともラストは、冴香を抱きしめるシーンで締めくくられることになります。一方幕開きがユーモラスなシーンであることも2作の共通点です。 『待っていた女』は異常な事件ではあるのですが、それを語るストーリーはあまりにあっけない感じがします。その事件の依頼人であるデザイナーの姉川明美は『渇き』にも登場しますが、畝原が事件に関わることになるきっかけを作る役割です。『渇き』は事件そのものは比較的シンプルですが、構成はハードボイルドらしい展開で、なかなかおもしろくできています。ただ最後に全ての要素を強引に結び付けすぎて、自然さがなくなってしまったかなとは思います。 |
No.977 | 6点 | 赤の女 ポーラ・ゴズリング |
(2017/09/11 23:26登録) 1983年に「現代スペイン絵画なんてものが存在するとは知らなかったわ―すべてゴヤで終わったのかと思ってた」とアメリカの刺繍芸術家に本気で言わせるなんて、ゴズリングは美術のことをそんなに知らないのでしょうか。ピカソもダリも知らない、少なくともこの20世紀を代表する巨匠たちがスペイン人であることを知らない? 「それがスペインさ」と決めつける画一的な見方もなんだかなあ… といった、ミステリ以外の要素には不満もあるのですが、巻末解説にも「ヒッチコック映画そのままのサスペンスフルな」と書かれている展開はなかなかおもしろく読ませてくれます。犯人の意外性は、まあどうでもいいというか、クリスティーなら当然こんなひねりがあるだろうが、ゴズリングはどうかな、なんて思いながら読んでしまいました。 |
No.976 | 7点 | チムニーズ館の秘密 アガサ・クリスティー |
(2017/09/07 23:31登録) 久々に読んだクリスティーは、バトル警視初登場の冒険スリラーです。まあバトル警視はほとんどの作品で脇役なんですが、特に本作では口数も少なく、いつの間にか主人公たちのそばに立っているなんて、影みたいな存在です。で、最後にはある人物についての調査も既に済ませてしまっていることがわかったりして。 本作では、あるパターンの技巧が何重にも仕掛けられています。同じ手をこれほど繰り返し使っている作品は、クリスティーに限らず珍しいのではないでしょうか。最後の一つには、明かされる直前には気づいたのですが、よくもまあここまでと呆れてしまいます。また、ミカエル王子殺害犯人の設定は、アンフェアと非難されないようにした構成が巧みです。クライマックス、主人公危機一髪のシーンは、考えてみれば無理があるのですが、驚かされました。 というわけで、個人的にはかなり気に入った作品でした。 |