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ミステリの祭典

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消しゴム

作家 アラン・ロブ=グリエ
出版日1959年01月
平均点6.50点
書評数2人

No.2 7点
(2017/12/08 22:58登録)
「難解」「散文詩的」等と評されがちなロブ=グリエですが、後の『覗くひと』や『迷路のなかで』に比べると、確かに新訳だからということも多少あるでしょうが、このデビュー作は非常に読みやすく、そのことに驚かされました。複雑緻密な文章による執拗な反復の中に閉じ込められたような気がするのを覚悟していたのですが、様々な人物の視点を次々切り替えながらどんどん話が進んでいき、とりあえずは普通におもしろいのです。反復性は、捜査官ヴァラスが特別な消しゴムを買おうとすることぐらい。この程度の難解さならカフカや安部公房並みで、普通のミステリ・ファンにも一応お勧めできます。
偶然を重ねたシニカルな結末にしても、巻末解説に安部公房の『燃えつきた地図』を引き合いに出して述べられている「謎解きを宙づりにする謎解きミステリー」パターンではなく、驚くほどまともです。まあ全然解決のついていない細部はいろいろありますけれど。

No.1 6点 kanamori
(2013/11/12 18:05登録)
特別捜査局のヴァラスは、殺人事件の報せを受け運河と跳ね橋のある街にやってきた。しかし犯人も被害者の遺体も見当たらず、関係者たちの曖昧な証言に迷宮のような街を右往左往するのみ-----。

戦後フランスにおきた文学革命”ヌーヴォー・ロマン”の旗手、アラン・ロブ=グリエの処女作です。解説を読んでもボンクラ頭にはそれまでの文学とどう違うのかいまいち分かりません。捜査の合間にヴァラス刑事が文房具屋で消しゴムを買い求める場面が何度か挿入されるなど意味不明で、こういった何を象徴する描写なのか読者に委ねる試みは前衛的なのかもしれません。ただ、実験的・前衛的といっても、文章自体は平明で、新訳ということもあって非常に読みやすいです。
本書はミステリ(のパロディ)のある趣向を取り入れた文学となっていて、解説では「黄色い部屋」や「アクロイド」を引き合いに出していますが、この仕掛けで一番に連想したのはピーター・アントニイの「衣裳戸棚の女」でした。

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