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ミステリの祭典

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空さんの登録情報
平均点:6.12点 書評数:1515件

プロフィール| 書評

No.1115 6点 魔人
金来成
(2019/08/19 22:49登録)
韓国ミステリの祖と言われる金来成(キム・ネソン)が1939年に新聞に連載し、すぐ単行本で出版されてベスト・セラーになった作品。執筆時期にもかかわらず、内容的には日本の影は全く感じられません。
論創社邦訳の帯には「江戸川乱歩の世界を彷彿とさせる怪奇と浪漫」とされていて、確かに展開には乱歩並みに通俗的に派手なところはあるものの、『蜘蛛男』等に比べると、全体的な事件構図ははるかに論理的にできています。ただトリックの独創性はなく、最初の仮面舞踏会での事件については、アメリカの某有名作を連想する人は多いでしょう。まあ作者自身それは承知の上で、探偵役にその作家名だけは言わせています。そのシーンで真相の大部分は解明されたかに思えるのですが、さらにひねりを加えて盛りだくさんな作品に仕上げています。
ところで名探偵の劉不亂(ユブラン)、1か所(第26章)、ルビを「ルブラン」と誤植したところがあります。


No.1114 8点 センチュリアン
ジョゼフ・ウォンボー
(2019/08/15 22:22登録)
原題は "The New Centurions"。"Century" には古語で「百人隊」の意味もあり、その隊長のことだそうです。本書は文庫化された時にミステリ文庫ではなく「NV」つまりノベルズの方で出版されています。実際、警察小説ではあるものの、ミステリとは呼びにくいところがあります。この作家は21世紀に入ってからのハリウッド警察シリーズしか読んでいないのですが、このデビュー作は警察官の日常を描いているものの、そもそも全体を通してのメインとなる犯罪事件がありません。主人公は同時期に警察官になった3人。1960年初夏のプロローグ(研修期間)から始まって、毎年8月、最後は1965年8月まで続きます。まあこの最後の年には現実に取材した大事件が起こり、そこで3人が久しぶりに出会うことにもなるのですが。
ともかくドキュメンタリーを読んでいるような気にさせられる臨場感がすごい作品です。


No.1113 4点 夜行列車
森村誠一
(2019/08/11 22:38登録)
220ページほどという、森村誠一にしては短めの長編です。講談社文庫の帯には、「ドラマティックミステリー 本格長編推理傑作」と書かれていますが、「本格」ねえ、という感じはします。謎解き的な部分としておもしろいのは、ひき逃げと殺人の犯人が逮捕されても、まだ謎は残っているという構成と、最後の決め手となる証拠だけでしょう。全体的な流れを読後に振り返ってみると、あまりに偶然が多いですし、後段の犯人設定に何の工夫もないことにがっかりさせられます。容疑者が浮かんできた段階で、もう一ひねりあるのではないかなと、この段階に入った部分を思い返して予想したのですが、違っていました。
細かく言えばナンバープレートに指紋がその時期まで残っているかといった疑問もありますが、それより容疑者を逮捕する時、隠し玉の証拠があるから逮捕に踏み切ったことだけは読者にも説明しておくべきでしょう。


No.1112 4点 見えない敵
F・W・クロフツ
(2019/08/07 23:41登録)
1945年に発表された、第二次大戦中の殺人事件を扱った作品です。軍の倉庫から盗まれた手榴弾で行われた爆殺ということで、時にはスリラーっぽい作品も書いているクロフツですし、スパイ小説をも思わせるタイトルでもありますが、純粋な謎解き捜査小説です。
地方で起こった事件にスコットランド・ヤードから応援に出張するのはご存知フレンチ警視-いや、これは井上勇氏の階級名称翻訳の問題で、まだ警部のはずでしょう。これもお馴染みカーター部長を連れていますが、この人ヴァン・ダイン(作中の)並みに影の薄いことがあります。
これも以前に盗まれていた電線を使っての遠隔殺人であることは、フレンチが捜査を始めた直後に明らかになるのですが犯人の特定はなかなかできません。トリックが解明されてみると、そんな複雑なことをしなくてもいい方法があったのではないかと思えてしまう点が不満でした。


No.1111 10点 雪は汚れていた
ジョルジュ・シムノン
(2019/08/03 10:49登録)
シムノンの膨大な作品中でも一般的に最も高く評価されているのが、ジッドを驚嘆させたという本作でしょう。実際、犯罪小説らしい前半も充分面白いのですが、主人公が逮捕されてからの後半には圧倒されます。
しかし、シムノンらしい代表作とは言えないかもしれません。むしろ異色な要素もあるのです。まず長さですが、文庫本で200ページ前後のものが多い作家なのに、本作は約300ページと、普通の長編といった長さです。もっと長い、いわゆる大作だと、『ドナデュの遺書』、『フェルショー家の兄』、未訳の “Le voyageur de la Toussaint” 等もあるのですが。また、舞台の町がどこかが明記されないのも、珍しいことです。雪の積もった地方で、登場人物たちは主人公フランク・フリードマイヤー、隣人のゲルハルト・ホルストといったドイツ系の名前。
なお、読んだのは早川書房シメノン選集の永戸俊雄訳で、文章は古めかしいですが、作品評価としてはやはりこれで。


No.1110 5点 海の墓標
水上勉
(2019/07/29 23:29登録)
北海道根室半島の突端にある珸瑤瑁の村に住む男が、コンブ採りに出てソ連に拿捕されるという事件がプロローグに置かれています。地方の村、特に海浜の寒村を描くのが巧みな水上勉らしい雰囲気のある作品です。昭和37年11月から翌年12月まで雑誌掲載されたもので、この時期は作品内容と密接な関係を持っています。ソ連との間に漁業協定が結ばれたのが昭和38年6月で、連載中だったわけです。犯人逮捕に向かうラストはこの協定を受けて、当初の予定に変更を加えたものでしょう。小説のテーマとしてはうまく結びついていますが、そのため警察が多少間抜けな感じになり、また警察に協力した被害者の友人の存在意義が希薄になってしまっているとも言えます。
真相の大まかな部分は途中で見当がつくものの、証拠不足がネックという展開ですが、十善警部補がいつの間にか事件全容を解明してしまい、捜査過程が描かれていないのはいただけません。


No.1109 5点 マクシム少佐の指揮
ギャビン・ライアル
(2019/07/25 23:17登録)
ライアルが1980年台になって始めたマクシム少佐シリーズの第2作です。
マクシム少佐がSAS(空軍特殊部隊)時代の部下から、困った事件の処理について依頼を受ける前、第1章で正体不明の女性ピアノ教師のことがちょっと描かれます。で、この人の持つ秘密が最終的には本作の謎の中心部分にあることになります。
まあその秘密は意外ではあるのですが、不満もあります。特にマクシム少佐が依頼の件を上司に報告した後開かれる会議は、出席者が多くて誰が誰やらわからなくなります。その会議もそうですが、最初のうちテンポが遅く、読みにくさを感じました。
冷戦時代、東西ドイツを話の中心にしたスパイ小説と言えば、ル・カレ等シリアスなものは大好きですし、逆に荒唐無稽なものも楽しめます。しかし本作は最後には派手なアクションを見せてくれるものの、全体的なバランスは今一つといった感じでした。


No.1108 6点 運のいい敗北者
E・S・ガードナー
(2019/07/21 23:33登録)
冒頭に工夫を凝らしてくれることの多いシリーズですが、今回最初の依頼は、ひき逃げ事件裁判を傍聴して、意見を聞かせてくれというもの。ところがそれが実は殺人事件だったことが後でわかるというのは、まあよくある展開と言えるでしょう。
殺人事件裁判が始まった直後にメイスンが提示する法律上の問題点には、死体再調査の時点で疑問を感じたのですが、メイスンに指摘されるまで法律の専門家である裁判官や検事がそれに気づかないのは、あり得るのかなと思ってしまいました。これは他にも例があるアイディアですが、なかなかおもしろい使い方です。最終的な真相は、これも有名アイディアのヴァリエーションですが、手順にちょっと煩雑すぎるところはあるものの、かなり鮮やかに決まっています。
それにしても今回のバーガー検事は、ただ間抜け役を演じるために裁判の最後の方で登場するだけ。この人初期には厳格さが好感の持てる検事だったんですが。


No.1107 7点 てのひらの闇
藤原伊織
(2019/07/18 23:06登録)
飲料会社の宣伝部課長堀江が六本木のバーの前の道で、酔いつぶれて寝ていたのが雨で目が覚める、というシーンから始まる作品です。その日、彼は部長と一緒に、会社の会長に呼び出されてある依頼を受けるのですが…という展開で、最初のバーがある建物も実は会長の依頼と関係を持っていることがわかってきます。このバーをやっているナミちゃんとマイクのキャラが実に楽しいのです。堀江の人物像も、彼の過去をかなり早い段階から少しずつ明かしていくことで、鮮明にしていきます。
しかし印象に残る登場人物と言えば、最初の方で会長の通夜に姿を見せた坂崎組長です。なんともクールで礼儀正しくかっこいい。もう1回、最後に彼は顔を見せなければならないはずと思っていたら、こういう登場の仕方でしたか。
しかし事件そのものは解決した後、翌日の最後の数行は、あまりにもベタに抒情的すぎるかなあ。


No.1106 6点 ディミティおばさまと古代遺跡の謎
ナンシー・アサートン
(2019/07/12 22:45登録)
ディミティおばさまはミス・マープルの幽霊版みたいなものかしらと思って読んでみたのです。もちろんクリスティーみたいな大胆な欺しのテクニックは全然期待していませんでしたが。
ところがディミティおばさまは少なくとも本作については、全く探偵役ではないのです。双子が生まれて、育児にてんてこ舞いのロリの優しい相談相手ではああるのですが。おばさまは目に見える幽霊らしい幽霊ではなく、青い日記帳に文字を現すという方法で生きている人間とコンタクトするという設定は、楽しいとも言えますし、なんとなく物足らない気もします。
起こる事件は、村の牧師館からの古い図録盗難。あと、ロリが盗難事件について調査していると、宇宙人を見たという目撃者も出てきますが、これはどうでもよろしい。それより遺跡発掘にまつわる村のトラブルが最後にはすべて円満に解決するほのぼのした雰囲気を楽しめれば、それでいいのでしょう。


No.1105 7点 ブラック・リスト
サラ・パレツキー
(2019/07/08 22:49登録)
ハメットの名前が何回か出て来る作品です。ただしハードボイルド・ミステリの始祖としてではなく、1950年台前半「赤狩り」によって投獄までされた作家として言及されるのです。
発表されたのは2002年。前年9/11の同時多発テロに対して制定された「愛国者法」の考え方が、そのかつてのマッカーシズムと同じなのではないか、というのが今回の主要テーマで、タイトルも、容疑対象者リストの意味なのです。事件関係者の多くは「赤狩り」の告発者、被告発者両サイドにいた人たちで、その時代の秘められた過去が、現在の殺人事件を引き起こすという展開です。ゴールド・ダガーを受賞したのも、二つの時代を関連付けるテーマ性のゆえでしょう。
今回はヴィクの友人の医者ロティの出番はごくわずかですし、隣人ミスタ・コントレーラスもほとんどヴィクの身を案じるだけの役割(最後には彼の人柄が役に立ちますが)なのが少しもの足らないでしょうか。


No.1104 6点 迷路荘の惨劇
横溝正史
(2019/07/03 20:03登録)
原型の中編『迷路荘の怪人』を読んでいないので、どこをどのように膨らませたのかはわかりませんが、確かに最初の殺人のアイディアを中心にして、さらに様々な要素を継ぎ足していったという感じのする作品でした。いかにも作者らしい要素の詰め込み方は、なんとなく自己模倣的にも思えます。それでも抜け穴や自然にできた洞窟の探検など、やはりおもしろく読ませてくれるからいいのですが。
時代設定は1950年秋。作中ではフルートに絡んで『悪魔が来りて笛を吹く』が何度か言及されています。本作でもフルートの音が「重要な決め手」になることは予告されていて、最後の「大団円」章でその所以が明かされます。
前半、殺人が起こった後は関係者からの事情聴取が延々続くところが、その手順で状況を少しずつ明らかにしていく手際のうまいクイーンやクリスティーに比べると、退屈でした。


No.1103 6点 ハリウッドに別れを
アンドリュー・バーグマン
(2019/06/29 22:59登録)
作者のバーグマンをWIKIで検索してみると、まず監督・脚本家として紹介されていて、グレゴリー・マクドナルド原作の『フレッチ/殺人方程式』の脚本も担当しています。ハリウッドを舞台にした小説を書くのも当然と思われますが、他の作品は翻訳されていないので、映画との関係は不明。
映画ではコメディを得意とした作者らしく、ユーモラスな面もかなりある軽快なハードボイルドで、時代設定の1947年、アメリカの「赤狩り」というシリアスに扱えばいくらでも重くできるテーマも、あっさりと扱われています。リチャード・ニクスン議員(もちろん後の大統領。本作はウォーターゲイト事件後に書かれています)も登場して、巻末解説では「悪役」とも書かれていますが、真面目に共産主義に危惧を抱く人物としては描かれています。もう一人、これは私立探偵ルヴァインを助ける実在の俳優の活躍は、実に痛快でした。


No.1102 5点 ダイヤル911
トマス・チャステイン
(2019/06/24 23:29登録)
911は、アメリカの緊急通報用電話番号(日本の110と119を兼ねたようなもの)で、1968年に開設されたことが最初に書かれています。
カウフマン警視シリーズ第2作で、前作の奇想天外な窃盗計画に比べると、クリスマス・シーズンの爆破魔ということで、派手ではあっても特に驚かされる話ではありません。それでも犯人の視点部分を数か所挿入しながら、サスペンスを盛り上げてくれます。しかしかなり初めの方の爆破事件の1つが他の事件とは明らかに異質で、これは何かあるなと疑ったのですが、結局その異質性には何の説明もありませんでした。
まあ読んでいる間は楽しめ、特にラス前の爆破事件には感心したのですが、その後がいけません。最後の犯人の行動は、警察の前に姿をさらすための作者のご都合主義としか思えませんし、カウフマン警視の作戦は警察として根本的におかしいですし、上記説明放棄もあり、なんだかなという感じでした。


No.1101 6点 煙とサクランボ
松尾由美
(2019/06/20 20:22登録)
ジャンルとしてはSF/ファンタジーにしてみましたし、実際主役の墨津は幽霊という設定ですから、ファンタジーには違いないのですが、プロットは完全にミステリです。ユーモアという言葉の蘊蓄を披露してくれたりする最初の部分では、これはミステリと呼べる話になるのかなと思わせられ、次にバーテンダー柳井と墨津とが出会った過去の窃盗事件が語られる部分では、連作短編的な構成なのかなと思わせられ、ところが全体としてはやはり過去に起こった放火事件の謎に対する解答を与える作品になっていました。
動機の根本については、最初に動機についての議論が行われたところですぐ見当はついてしまいましたが、伏線は丁寧に張ってありますし、語り口はすっきりと心地よいですし、最後まで楽しく読んでいけました。本作における幽霊の基本設定には、細かく考えれば無理がありそうですが、まあいいでしょう。


No.1100 8点 探偵コンティネンタル・オプ
ダシール・ハメット
(2019/06/16 18:13登録)
収録5編中、同じ早川書房のミステリ文庫から出ている『コンチネンタル・オプの事件簿』とは『メインの死』だけが重なっています。チャンドラーだと早川も創元も、大系的に(ほぼ)すべての中短編を網羅する形にまとめているのに、ハメットの方は計画性がないのは、少々不満なところではあります。
しかしその意味で編集的には不満があっても、個々の作品は充分楽しめます。最初の『シナ人の死』は最も長く、最も複雑。それにしても1975年時点の再販で、タイトル等の表記手直しを全くしていないんですね、翻訳者砧一郎の没年は不明だそうですが。『金の馬蹄』は、トリックは早い段階で可能性には気づいていたのですが、上手く決着をつけてくれています。『だれがボブ・ティールを殺したか』には、実際の事件とは関係者の名前が違う云々などと書かれているのが、珍しいところ。『フウジス小僧』のクライマックス・シーンは迫力満点でした。


No.1099 5点 ブルー・シティ
マイクル・コリンズ
(2019/06/13 00:14登録)
ブルー・シティと言えば、ロス・マクドナルドの『青いジャングル』(別題『憂愁の街』)の原題ですが、本作の原題は実は “Blue Death”。最後近くで、「もう死んだも同然さ。憂鬱な死だ」というセリフが出てきます。
国際金属精製株式会社(IMR)の担当者が、ガレージの土地貸借契約更新手続で面会を求めても会おうとしない、という事件ともいえないようなことで、ダン・フォーチューンは昔知っていた女から依頼を受けることになります。しかし当然それだけで終わるはずもなく、依頼人の夫が瀕死の重傷を負わされ(病院で数日後死亡)、さらにIMR内部のトラブルが少しずつ明るみに出て来ることになります。
人間関係や過去の事件とのつながりなどがかなり複雑で、その収拾は今一つ鮮やかさに欠けるように思いました。またフォーチューン自身、何度も襲われることになるのですが、その襲撃者の正体も理由も、拍子抜けでした。


No.1098 5点 伊集院大介の新冒険
栗本薫
(2019/06/07 23:41登録)
伊集院大介の活躍する短編7編を収録しています。全体的な印象をまず書かせていただくと、なんだか古めかしいなという感じでした。1970~80年台前半のイメージがあるのですが、実際の発表年は1992~94年です。「新冒険」というとクイーンの短編集をも思い出しますが、『神の灯』やスポーツ・シリーズを意識した感じはありません。
『顔のない街』と『ごく平凡な殺人』の2編は同じ少年の一人称形式で語られています。前者については、越して間もないわけでもないのに間違えた点には疑問を感じました。後者は、この事件が平凡なものなんてないという考え方の元になるとは考えられないと思っていたら、最後には何とかこじつけてくれました。『事実より奇なり』は「奇」の意味の捉え方が変です。そんな感じでもう一つ好きになれない作品が多いのですが、『盗癖のある女』は意外に気に入りました。


No.1097 7点 囁く谺
ミネット・ウォルターズ
(2019/06/03 23:42登録)
ウォルターズの第5作で中心となる事件は、浮浪者の餓死事件です。それが実は殺人だったというオチもなく、その意味では、雑誌記者がその裏事情を探索していく話は非常に地味です。開幕早々に挿入される本からの抜粋など構成に工夫は凝らしていますが、意外にスムーズに楽しく読んでいけました。途中、最後までその正体が明確に書かれない人物が登場するシーンが2か所出てきますが、これも最後まで読めば、推測は簡単につきます。
登場人物たちの描き方もさすがですし、最後近くまでは非常に満足できる内容だったのです。ただ最初に死体を発見するミス・パウエルの人物像だけは、この作者にしては今一つはっきりしないかなとは思っていたのですが。
で、最後上記謎の人物以外はすべて説明される部分に突入するわけですが、ここは記者の憶測が大部分で、特に意外というわけでもなく、多少不満は残ってしまいました。


No.1096 6点 黄色い恐怖の眼
ジョン・D・マクドナルド
(2019/05/30 18:28登録)
本作を読んでいてふと思ったのが、ジョン・D・マクドナルドって抄訳しやすい作家だなということでした。冒頭の飛行機がシカゴ・オヘア空港に着陸する部分からして、2ページ中1ページ半はカットしても全く問題ありません。特に本作はストーリーや全体テーマとは無関係なことをマッギーが考え、解説する部分が多いように思いました。
今回シカゴにやってきたマッギーが引き受ける財産消失事件の調査で、脅迫という言葉はごく早い段階で出てきますが、どんな脅迫かがなんとなくわかってくるのは半分あたりです。しかし本当にそんな脅迫がうまくいくのだろうかと疑問も感じてしまいました。で、さらに7割を過ぎてから殺人も起こり、タイトルの言葉はこの殺人現場で出てきます。
最後の犯人と対決しに行くシーンは、なぜ呑気な二人ドライブでって感じだったのですが、これはその後の最終章のためには必要だったわけなんですね。

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