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ミステリの祭典

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毒の矢
金田一耕助シリーズ

作家 横溝正史
出版日1959年01月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 6点 nukkam
(2022/05/25 07:33登録)
(ネタバレなしです) 1956年に短編版が発表され、同年に長編化した金田一耕助シリーズ第14作ですが角川文庫版で200ページに満たない短さのためか長編としてカウントしていない文献もあるそうです。「幽霊男」(1954年)や「吸血蛾」(1955年)など通俗スリラー作品が目立ち始めている中で本書はきっちりした犯人当て本格派推理小説として仕上がっており、推理説明が丁寧です。空さんがご講評で指摘されている、英国の某作家の某作品のトリックに類似とはああ、多分あれですね。事件解決後の幸福感は横溝の全作品中でも一番ではないでしょうか(そこも某作家の作風に通じるところありますね)。角川文庫版には本書に続けて書かれた短編「黒い翼」(1956年)が一緒に収められていますが、匿名の手紙がきっかけとなる展開が「毒の矢」と同工異曲的な作品ながら暗く重苦しい結末が対照的です。

No.1 6点
(2019/10/01 20:18登録)
中編に加筆した作品だそうで、サスペンス重視の通俗的なものではなく、200ページ弱でほどよくまとまった純粋なパズラーになっています。殺人トリックそのものは、英国有名作家の映画化もされた作品とそっくりですが、背中に彫られたトランプの刺青という作者らしい趣向をうまく利用して、さらに重要手掛かりにもしているところが評価できます。ただこの手がかりの与え方は、少々不自然かなとは思えますが。町中にばらまかれる匿名の手紙の動機も、一応納得できる形にしていますし、金田一耕助が殺人事件発生の当夜に事件を解決してしまうという名探偵らしさを見せてくれるのも好印象です。
角川文庫版には、同じ世田谷区緑ヶ丘を舞台にした中編『黒い翼』を併録しています。表題作の原型中編と連続して雑誌に発表されたそうで、テーマ的にも「幸運の手紙」系の葉書という表題作と似たものです。

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