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ミステリの祭典

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見えない敵
フレンチシリーズ

作家 F・W・クロフツ
出版日1960年07月
平均点4.00点
書評数4人

No.4 6点 斎藤警部
(2026/05/30 00:30登録)
“住民たちは、戦争が許すかぎりの平和な生活に落ちついた。”

大戦下のイングランドはコーンウォールの海岸にて、動機不明の老人爆殺事件が発生。 現場の状況から、犯人の本当のターゲットは、老人の近くを歩いていた “嫌われ者” のもう一人の老人ではなかったかとの疑いが持たれる。 同時に “嫌われ者” の老人自身が犯人ではとの指摘も出た。 そんな状況の中、戦時らしい純然たる物理トリックの可能性が綿密に論じられ、上質な退屈の靄が立ち込めるが、物語はやがて玄妙にして緻密なご近所心理分析へと移り、ここで一気にミステリの熱が上がる。 更には過去深掘りの意外な震動が唸りを上げた。

「けしからん、あんちきしょうですね、わたしも、あなたに賛成しますよ」

フレンチが試行錯誤を繰り返す中、なかなかに真犯人決め打ち、事件構造仮決めとは行かない壁の厚さが心地よい。 ミステリとしてこの見通しの利かなさは甘い夢を見るようである。
船も、電車も、自動車や自転車さえ絡まないアリバイトリック、と呼ぶのかさえ怪しい或る犯罪トリック暴露への道には味わいがあった。

「スリラーは、まったく別ものです。 スリラーでは、目的はスリルです」

意外なタイミングと内容で “転” が来たのはスリリングだった。 いいぞもっとやれと物語を鞭打つ気分だ。
偶然の空圧も適時襲い掛かるわけだが、致し方なし。 その分だけ評価は低くして、許しましょう。
タイトル “ENEMY UNSEEN” の思わせぶりや、何気に活発なミスディレクションの最終処理が豪快放り投げっぱなしな感もあるが、その豪快さに免じよう。

最後は、再び泰然と純粋物理トリックの場に立ち返り、考察と行動が場を満たし、落ち着いた捕物シーンで犯罪劇は幕を閉じる。
エピローグ的最終パラグラフも良し。

ごく狭いエリアで起こった小さな事件の筈なのに、謎に大きな物語感覚に包まれる。 これはやはり◯◯がその背景に幻のように蔽いかぶさっている所為でしょうか。
良い意味で、中身は小ぶりでも器がやたら大きい推理小説なのかも知れません。

No.3 2点 レッドキング
(2023/12/31 01:54登録)
クロフツ第二十九作。第二次世界大戦下、武器庫から盗まれた手榴弾による遠隔爆破殺人。動機とアリバイ時間表と手段と・・これはもう確実に、"晩(末)期クロフツ"と言うべきであろう・・

No.2 4点 nukkam
(2022/02/11 20:07登録)
(ネタバレなしです) 1945年発表のフレンチシリーズ第25作の本格派推理小説で、創元推理文庫版(1960年初版)では肩書が警視と表記されていますが空さんのご講評で指摘されている通り本書の時点ではまだ警視に昇進していないはずです。第二次世界大戦中の作品であることを強く感じさせるのが殺害方法で、何と爆殺です。ドイツ軍の機雷か演習用の機雷かはたまた盗まれた手榴弾か、どの凶器がどのように使われたのかを巡って推理が重ねられますがなかなか明らかにならない上に理系要素が強いので私には難解な作品です。動機と機会についても丹念に捜査されますがこちらも大苦戦で、容疑が濃くなるどころか誰もが犯人らしくなくなる非常にじりじりした展開です。細かく考え抜かれてはいますが、細か過ぎて爆殺以外がまるで記憶に残りません。現場見取り図も欲しかったです。

No.1 4点
(2019/08/07 23:41登録)
1945年に発表された、第二次大戦中の殺人事件を扱った作品です。軍の倉庫から盗まれた手榴弾で行われた爆殺ということで、時にはスリラーっぽい作品も書いているクロフツですし、スパイ小説をも思わせるタイトルでもありますが、純粋な謎解き捜査小説です。
地方で起こった事件にスコットランド・ヤードから応援に出張するのはご存知フレンチ警視-いや、これは井上勇氏の階級名称翻訳の問題で、まだ警部のはずでしょう。これもお馴染みカーター部長を連れていますが、この人ヴァン・ダイン(作中の)並みに影の薄いことがあります。
これも以前に盗まれていた電線を使っての遠隔殺人であることは、フレンチが捜査を始めた直後に明らかになるのですが犯人の特定はなかなかできません。トリックが解明されてみると、そんな複雑なことをしなくてもいい方法があったのではないかと思えてしまう点が不満でした。

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