空さんの登録情報 | |
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平均点:6.12点 | 書評数:1515件 |
No.1155 | 6点 | 横溝正史探偵小説選Ⅰ 横溝正史 |
(2020/01/31 22:38登録) 探偵小説選となっていますが、実際には後1/3近くの分量がエッセイです。しかし読んでみると、横溝正史はやはり学術的な文章より芸術的な小説の方が、はるかにいいと思いました。 その小説の方ですが、冒頭の『霧の中の出来事』は新発見の「微笑小説」。続いて『水晶の栓』と『奇岩城』を自由に翻案して中編にまとめたものがあり、その後も戦前の作品を中心とした21編のうち、単行本初収録作が19編という、珍しい作品ばかり集めた選集になっています。中には本当に横溝正史作か疑問のあるものも含まれています。 エッセイ集の最初に『ビーストンの面白さ』が収められていますが、なるほど、ビーストンを思わせる短編がいくつも入っています。『化学教室の怪火』『十二時前後』等初期の謎解き系から『卵と結婚』『お尻を叩く話』等ミステリでないヨタ話まで、有名作はデビュー作『恐ろしきエイプリル・フール』だけですが、なかなか楽しめました。 |
No.1154 | 7点 | 死の配当 ブレット・ハリデイ |
(2020/01/25 19:05登録) 最初に読んだ時は、犯人の意外性というのではありませんが、様々な伏線をうまく回収して事件のからくりを解き明かしていて、謎解きミステリとして感心したのでした。また、ラファエロの絵の真贋問題については、『ギリシャ棺の謎』のダ・ヴィンチを連想したのですが、今回久々に再読してみるとそれだけではなく、上述事件の真相自体、本作のちょっと前に発表されたやはりクイーンの作品と似たアイディアを使っていることに気づきました。後の『夜に目覚めて』ではダネイをちょっとですが登場させていますし、EQMMに対してマイク・シェーン・ミステリ・マガジンを出すなど、ハリデイは意外にクイーンを意識しているのではないかという気もします。 それにしてもマイケル・シェーンって、赤毛を金田一耕助並みにかきまわす癖が(少なくとも初期には)あったんですね。後には彼と結婚する依頼人フィリスが、なかなか可愛らしく描かれています。 |
No.1153 | 5点 | 優しく殺して アン・モリス |
(2020/01/22 20:03登録) 調べてみると、訳者あとがきに載っているアン・モリスの24作品は、最初の別名義2作を除いて、女優テッサ・クライトンのシリーズのようですが、それにもかかわらず、邦訳があるのは現在のところ本作のみ。全然売れなかったのでしょうか。コージー系パズラーとしては、悪くないと思うのですが。 ただしそれは謎解き要素についてはということで、小説としてはあまり感心できないところもあります。この手の小説に欠かせないユーモアは、上品で微笑を誘うわけでもなく、ドタバタで大笑いさせるわけでもありません。ちょっと野暮ったい感じで、あまり笑えないのです。また、真相解明シーンに至る流れが、あまりにあっさりと説明が始まってしまい、知的サスペンスを感じさせる演出がありません。 それでも、ごく少ない容疑者で意外性を出してみせるフーダニットのアイディアはなかなかのものです。 |
No.1152 | 7点 | 聖悪魔 渡辺啓助 |
(2020/01/18 22:57登録) 表題作等戦前の小説8編、詩2編、戦後の小説4編を収録しています。 戦前の作品は、大雑把に言えば犯罪要素を加味した異常心理小説と言っていいでしょう。中にはそうと思わせておいて最後に軽くひっくり返すものも2編ありますが、そのうち1編はひっくり返った状況もまた、それまでほどではなくても異常なものになっています。また、『血蝙蝠』と『タンタラスの呪い血』は、謎解きミステリ的な意外性も持った作品です。8編どれも不気味と言うか狂気めいた雰囲気が印象に残ります。 戦後の作品は、戦前の作品にもそういうものが多かったのですが、本書に収録された4編はすべて海外が舞台になっています。ストーリーについては、登場人物の異常さは薄らいで、より普通の犯罪が描かれています。なお、最後の『吸血鬼(ヴァムピロ)一泊』はタイトルにもかかわらずミステリでもホラーでもありません。 |
No.1151 | 4点 | 殺害者のK スー・グラフトン |
(2020/01/15 20:07登録) 1994年に発表され、翌年のシェイマス賞を受賞、またアンソニー賞にもノミネートされた作品です。 しかし、これは個人的には駄目でした。いや、全体の8割を過ぎるあたりまでだったら、充分おもしろく、6点はかたいと思っていたのです。警察では一応殺人と推定しているというぐらいで、死因を断定できない事件の捜査を、キンジーは家族から依頼されます。事件は地味ではあるのですが、死者の生活を明らかにしていく地道な捜査過程の中で、さらに新たな事件が起こってという展開は楽しめます。 ところが最後の方になって、これをどうまとめるのだろうと心配になってきたのですが、心配は的中し、犯人は特定されるものの、事件全体像はなんとなくあいまいなままなのです。途中で出て来る謎の大物人物の組織の正体も不明なままですし、第2の事件の最終的な原因も説明されません。なんとも中途半端な結末でした。 |
No.1150 | 4点 | 大胆なおとり E・S・ガードナー |
(2020/01/09 22:43登録) メイスンの勧告にもかかわらず、依頼人が自分に疑いがかからないよう勝手に何やら画策し、そのためかえって警察に疑われる羽目に陥ることの多いシリーズですが、本作の依頼人は基本的に冷静な若い社長ということもあるのでしょう、下手なことは一切せず、メイスンの指示に従っています。 しかし、それにもかかわらず今回その社長が容疑者になってしまう原因は、ちょっと複雑すぎます。そのような結果を生み出した犯人でないある人物の行動の動機には、さすがに無理がありますし、行うことも手が込みすぎていて不自然です。さらに凶器でなかった拳銃のからくりは、偶然の多用でいたずらに事件を複雑化させているだけで、入れない方がよかったでしょう。 それにしても今回のバーガー検事、慎重なトラッグ警部はもとより、直情型のホルコム部長刑事さえ自制しているのに、粗暴な振る舞いが多すぎます。 |
No.1149 | 7点 | 静かな炎天 若竹七海 |
(2020/01/06 23:17登録) 葉村晶シリーズ久々の短編集、収められた6編、7月から12月までの各月にちなんだ作品になっています。葉村はミステリ専門書店〈MURDER BEAR BOOKSHOP〉でバイトもしていて、ミステリのことがふんだんに語られますので、これはどこかでクイーンの『犯罪カレンダー』が言及されるかとも思っていたのですが、ありませんでした。しかし最後には作中書店の富山店長からということで、出て来るミステリの解説が入れてあります。 長編『悪いうさぎ』はハードでしたが、本作の短編はいずれも軽いノリで、笑えます。これがなんとなくハードボイルドらしいユーモアなのが楽しい。次々に舞い込む依頼があっという間に片付いていき、最後に意外な関連性が浮かび上がる表題作が最も気に入りました。最後の『聖夜プラス1』は、ほとんどミステリじゃないって感じですが、それでもやはりおもしろく、タイトルの意味にも納得。 |
No.1148 | 7点 | テロリスト マイ・シューヴァル&ペール・ヴァールー |
(2020/01/02 23:09登録) 1965年に『ロセアンナ』で始まったマルティン・ベックとその仲間たちシリーズは、1975年に発表されたこの第10作で打ち止めになりました。夫君のヴァールーは同年に没していますが、もっと長生きしていたらシリーズはどうなっていたのでしょう。本作自体は、これで「完結」という感じはしないのですが。 さて、その最終作、1/3近くまでは、最初の方でどこかの国に出張したラーソンがテロ事件に遭遇するエピソードは入るものの、銀行強盗事件の裁判とポルノ映画監督殺害事件が中心です。その後、テロリストの視点から描かれる部分をところどころに加えながら、来訪したアメリカ上院議員の暗殺計画をめぐる攻防が始まります。 ベックたちの暗殺阻止計画は、ごく早い段階で見当がつきましたが、その後起こる展開には驚かされます。ラストの緊迫感が今ひとつとも思えましたが、充分楽しめる作品でした。 |
No.1147 | 7点 | 砕かれた夜 フィリップ・カー |
(2019/12/29 08:39登録) カーといっても KERR ですから、密室の巨匠とは綴りだけでなく、おそらく発音も違うはずです。 作者初期のグンター・シリーズ3部作の第2作ですが、本作では、彼は刑事警察総監からの要請(「きみにはあまり選択の余地がなさそうだ」と言われて)で、警察に警部として一時復帰し、部下の刑事たちを指揮して、少女連続殺人事件の捜査に当たります。そんなプロットですから、ジャンルとしては警察小説としました。しかし、私立探偵になった者が一時的に警察官に戻るなんて、戦争の準備を着々と整えつつあったヒトラー政権下のドイツという特殊状況でも、あり得るんでしょうか。 その点を除けば、1938年ベルリンの情勢がリアルに描かれていて、迫力があります。と言っても、当時のドイツ史については細かいことはほとんど知らないのですが。ただ殺人事件真相と史実のユダヤ人迫害との絡め方には、少々疑問も感じました。 |
No.1146 | 5点 | 聖者の行進 伊集院大介のクリスマス 栗本薫 |
(2019/12/23 23:22登録) ジャンルを何にしようか困った作品でした。伊集院大介シリーズの1冊ということでまず思い浮かぶ本格派としては、あまりに弱いのです。最後の真相解説は、読者にも示されていた伏線を基にした推理にはなっていず、今まで実はこんな調査をやっていたということが説明されるだけです。 というわけで、こんな考え方もありかなと思った社会派という分類ですが、反対される方も多いと思います。 もちろん松本清張のような企業や官僚組織の腐敗等にメスを入れていくという意味の社会派では全くありません。小さなレズ・バーの経営者である藤島樹の一人称形式で語られる本作は、彼女―いや、本人にしてみれば「彼」と呼んでもらいたいかもしれませんが、樹の生き方や、事件の舞台となるゲイバーの思い出などを語るのが主体となっていると言っていいほどです。そのようなバブル時代の同性愛社会を描いた作品という意味で。 |
No.1145 | 7点 | ラスト・ウェイ・アウト フェデリコ・アシャット |
(2019/12/20 22:20登録) アルゼンチンの作家の手になる、アメリカを舞台にした作品。 カバーの作品紹介では「南米発の〝奇書″」とされていますが、日本の三大奇書と比較するなら、『ドグラ・マグラ』に近いタイプでしょうか、と言っても、実は『ドグラ・マグラ』は読んでなくて、松本俊夫監督の映画を見ただけなのですが。ただし夢野久作の難解な原作をうまく整理したと言われる映画と比べても、本作は半ばまではわけがわからないものの、最終的に大部分辻褄が合うようにできています。ここまで論理性に重きを置くなら、最後までもっと徹底してもらった方がよかったかなと思えました。大きく4部に分れた第1部から、異様な現れ方をするオポッサム(フクロネズミ)についてのラストのまとめ方が、疑問に思えるのです。 また、普通にハッピー・エンドにした方が自然だったのではないかとも思いますが、幻覚と現実の融合によるサスペンスは楽しめました。 |
No.1144 | 6点 | 死のひそむ家 ルース・レンデル |
(2019/12/16 22:45登録) ウェクスフォード警部シリーズではない作品なので、心理サスペンスかと思っていたのですが。 創元推理文庫で本格派(?帽子男)として出版されているのは、正解でした。まあ「情死」事件の起こった家の隣人スーザンの視点から描かれた部分が特に前半はほとんどですし、真相は見え見えというか、巻半ば、ウルフ警部の視点部分でかなりの部分を明かしてしまっていますから、最後はアイリッシュ等みたいに怖くなるのかとも思ったのですが、全然そうはならないのです。となると、あまりおもしろくなさそうですが、本作はそこが持ち味になっていて、犯人の心情変化が見どころですので、低い点数は付けられません。 予想と違っていたと言えば、ウルフ警部もそうで、上記の半ば部分を除くと、真相解明にはほとんど役に立っていません。探偵役は「情死」した男の友人デイヴィッドで、あちこち飛び回って精力的に調査してくれます。 |
No.1143 | 6点 | 消えた少年 東直己 |
(2019/12/13 23:19登録) ススキノ探偵シリーズ第3作。前2作に対する「冗長でふざけた文」(大泉耕作さん)、「調子に乗った、おちゃらけ気味の主人公」(Tetchyさん)といった評に、うんざりさせられることを覚悟して読み始めたのでしたが、本作はそれほどとも思えませんでした。確かに後の畦原探偵ものと比べるとコメディ色が強いところはありますが、これくらいなら個人的には問題ありません。後に消えることになる中学二年の少年と『遊星からの物体X』(小説発表時期から考えると古い映画です)を見た後、映画について語り合ったりするところなど、楽しめます。 しかし本筋の事件はかなり異常で、さらに犯人は驚くほどとんでもない人間でした(正体が意外という意味ではありません)。クライマックスのアクションはほとんど無茶苦茶なハードさです。途中チンピラたちとの追跡劇を入れるための設定など、かなり無理やりなものも感じますが、とりあえず。 |
No.1142 | 6点 | 死者にかかってきた電話 ジョン・ル・カレ |
(2019/12/08 17:49登録) 久々の再読ですが、クライマックスの霧の中の対決部分がなんとなく記憶の片隅に残っていたぐらいで、他は全く覚えていませんでした。『寒い国から帰ってきたスパイ』との関連性も、あれ、こんな感じだったっけというぐらいです。それにしても本作ではハードボイルド探偵並みにたっぷり活躍してくれるスマイリー、途中で上司の無理解に怒って退職願を出しているんですね。最後まで願いは撤回しません。でも『寒い国~』につながっていくということは… その『寒い国~』でも謎解きやからくり要素はかなりあったわけですが、このデビュー作はそれ以上に謎解き要素に重点が置かれています。要するにスパイ小説の中でも、ル・カレは資質的に少なくとも初期には謎解き好きだったということでしょう。本作のからくりはわかりやすいものですが、死んだスパイ容疑者にかかってきた電話の謎の解決は鮮やかでした。 |
No.1141 | 7点 | 密室の王 カーラ・ノートン |
(2019/12/04 19:39登録) 密室と言っても、ディクスン・カーみたいな意味ではありません。少女誘拐監禁事件をテーマにした作品で、少女を閉じ込めておく部屋の意味です。 もともとノートンは犯罪ノンフィクションの作家だそうで、小説としては本作がデビュー作になります。しかしこれは読みやすくおもしろくできていました。原文はどうかわかりませんが、翻訳文は現在形で統一されているのが珍しいでしょう。 過去に誘拐監禁された経験を持つリーヴが、カウンセリングを受けている医師から頼まれて、新たに発生した監禁事件の被害者少女の家族の話し相手になるのですが、今回発覚した監禁事件の裏には、他にも2件の少女誘拐を指揮した黒幕「公爵」がいて、対決することになるというストーリーです。「公爵」の側から描かれる部分では、彼の犯罪計画の異常なまでの徹底ぶりが見ものです。ただ、最後の方ダミー犯人に関する部分が、不明瞭になってしまっているのは残念です。 |
No.1140 | 6点 | 無貌伝 ~夢境ホテルの午睡~ 望月守宮 |
(2019/11/30 14:25登録) 精霊的存在であるヒトデナシが存在するパラレルワールドを舞台にしたシリーズの第2作。前回読んだ第3作ではタイトルのヒトデナシ無貌がたいして活躍しませんでしたが、本作では捕まった無貌が、登場シーンはさほど多くないものの、クライマックスでは派手に暴れて秋津探偵と対決し、楽しませてくれます。 ミステリ的な内容については、本作でも意外性は確かにあります。特に最後の最後に明かされる殺し屋の依頼者の秘密には、不自然さは感じながらも驚かされました。しかし、今回は登場人物が多すぎて、ごちゃついてしまった気がします。「信用できます」と言われる御堂八雲探偵は、何やってんだかという感じですし。舞台となる夢境ホテルの1週間の設定は、ハードSFではおなじみの似た効果の現象と比べると、整合性がどうなんだろうと思えるところもありました。まあ夢だからいいのかなぁ… |
No.1139 | 6点 | わが名はアーチャー ロス・マクドナルド |
(2019/11/27 20:34登録) 『逃げた女』から『女を探せ』まで、邦題にはすべて「女」をつけた7編ですが、原題では女を表す言葉のあるのは Girl、Woman、Lady、それにBlonde も入れるとしても4編だけです。 邦訳ではそんなふうにタイトルはあえて統一されていて、作品自体も1954年、長編では『犠牲者は誰だ』発表年までの初期作品だけなのですが、中田耕治の翻訳には統一がとれていないところがあります。全体的にはこの翻訳者の粗野な感じは、殴り合いや銃の撃ちあいも多い初期ロス・マクにかなり合っていると思うのですが、リュウの一人称代名詞は『逃げた女』だけが「俺」で他は「私」です。その『逃げた女』の一節「ぼくの車に乗った。…(中略)…俺はノックした。」と同じ段落の中で代名詞が変わるのは、どう言い訳してもだめでしょう。 全体的にはやはり特に短い作品は解決が忙しく、もう少し長くした方がよかったかなとも思いましたが。 |
No.1138 | 6点 | 古狐が死ぬまで ジャネット・ドーソン |
(2019/11/21 22:54登録) 私立探偵ジェリ・ハワードの第2作 巻末解説は法月綸太郎で、女性PI(Private Eye、つまり私立探偵。この省略形の発想は、最近再読した米国某古典短編のネタを思い出させます)小説は有名どころさえ読んだことがないと言いながら、池上冬樹が女性版ロス・マクドナルドと評していたので、解説を書くことになったそうです。しかし、本作はロス・マクとはかなり違います。真相にはたいして意外性はありませんし、フィリピン系のコミュニティーを描いた、社会派的な視点を持っているのです。最後にはパレツキー並みのアクション・シーンもあり、なかなか楽しめました。ただし、パズラー系でないとはいえ、証拠品が見つかったことをある人物がどうやって知ったのかとか、別の人物がどうやってマンションに入ったのかという疑問への答がいずれも安易です。 文章はその場の情景を非常に細かく描写しているところが、少々わずらわしいでしょうか。 |
No.1137 | 6点 | 真実の絆 北川歩実 |
(2019/11/18 23:04登録) 幻冬舎の月刊誌PONTOONの1998年12月号からほぼ3か月に1回の割合で掲載された、ある死期の迫った大富豪の子孫をめぐる様々な欲望と企みをテーマとした連作短編7編に、書き下ろしの2編、というか最後の「うつろな縁」は全体をまとめる「章」と言うべきものを加えた作品です。最終章を除けば、他の部分を知らなくても一応独立した短編ミステリとして読める作りになっています。第2、3番目以外は、大富豪から依頼を受けて子孫の行方を追う児玉弁護士が一応名探偵役として登場します。さらにそれぞれのエピソードの後に、「依頼人との対話」という断章が挿入されています。 人工授精など、この作家らしい医学的なアイディアが使われていますが、特に3番目の『誕生日のない母』は複雑なことを考え出しています。このエピソードがむしろ全体構成の中では不要で、しかもその計画が実現されていないのには、不満を感じました。 |
No.1136 | 6点 | 深夜のベルボーイ ジム・トンプスン |
(2019/11/14 23:34登録) 巻末の著作リストを見ると、ずいぶん映画化された作品の多い作家なんですね。言わずと知れた『ゲッタウェイ』だけでなく、他にも見たことのある、あるいは見たいと思っていた映画が、これもトンプスン原作だったのかとびっくりさせられました。 本作も1996年に映画化されていますが、これは未見-というか映画の存在を知りませんでした。タイトルの夜勤ベルボーイであるダスティの視点から、彼の私生活・内面がたっぷり描かれていますが、かなり映画化しやすいとは思えます。原題 “A Swell-Looking Babe” の方は、ホテルに泊まりに来た、ダスティに言わせれば「すべての女を一身に集めた存在」であるマーシャを指しているわけですが、彼女の正体はなかなか意外です。ただその彼女がいくら美人であるにせよ、ダスティが一目惚れしてしまうのは偶然ではあります。 元ギャングで、昔はカポネさえ一目置いていたというタグがちょっとなさけなさすぎるのはどうかと思いますが。 |