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ミステリの祭典

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砕けちった泡

作家 ボアロー&ナルスジャック
出版日1974年03月
平均点6.50点
書評数2人

No.2 7点 クリスティ再読
(2024/10/09 19:04登録)
金持ち女と結婚した整体師の主人公は、妻とのトラブルから不利な状況での告白書を書かれされて別居した。しかし、主人公にアメリカ人実父からの巨額の遺産が舞い込んだ。これが妻に知れたら遺産の大部分を妻に奪われかねない。しかし妻は交通事故を起こして重体。主人公が病院に行くと妻を名乗る女は別人だった....

こんな話。妻のはずの女が別人、というのはボア&ナルお得意の頻出パターン。でも、本作は後期らしさが目立つ「再出発作」みたいなニュアンスがあるのだろうか。何となくだが「悪魔のような女」とか「牝狼」を連想していた...でも心理主義的というよりも、奇妙な状況に追い込まれた主人公があれこれ真相を推理しながら自分の利益のためにジタバタを繰り返す小説。だから前期の重苦しさよりもアイロニカルな状況に囚われた主人公の奮闘ぶりに同情しながら読んでいく。重度の半身不随に陥った妻の介護&リハビリに奮闘する主人公の職業が整体師(作中ではキネジテラプートと呼ばれている)なのが、なかなか効いている。

でも状況に追い詰められて....だけどとんだ逆噴射をお楽しみ。そういえばフランスって夫婦共有財産制がデフォルトらしいね。夫婦別産制ベースの日本とは離婚時の財産分割の考え方が違うみたいだ。

No.1 6点
(2020/02/08 18:42登録)
主人公のデュバルは一種のマッサージ師、作中ではキネジテラプートという専門用語を、適当な訳語がないからと注釈をつけて、そのまま使っています。結婚したものの、数か月で妻にうんざりした彼が、彼等二人の乗る車のタイヤを交換した際、衝動的にタイヤのボルトをゆるめたままにして、交通事故が起こってもかまわない状態にしたことから始まるサスペンス小説です。
読み終えた後で振り返ってみると、この偶発的なデュバルの行動も、だからこそのクライマックスになっていたことがわかります。その意味では、必然と偶然を巧みにからめたプロットはよくできていると思います。特に警察が、デュバルの妻が巻き込まれた交通事故の容疑者を突き止めたことを彼に告げに来たシーン以降の、彼の絶望的な行動には迫力があり、ラストのひねりも予想してはいましたが、うまく決まっています。
ただ、途中のデュバルの勝手な思い込みにはうんざりしたところもありました。

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