死の配当 私立探偵マイケル・シェーン |
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作家 | ブレット・ハリデイ |
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出版日 | 1961年01月 |
平均点 | 6.75点 |
書評数 | 4人 |
No.4 | 8点 | 人並由真 | |
(2024/01/14 15:41登録) (ネタバレなし) マイアミで少しは名の売れた、35歳の赤毛の私立探偵マイケル・シェーン。彼はある日、二十歳になったかどうかという美人の娘の訪問を受ける。彼女19歳のフィリス・ブライトンは、ニューヨークで未亡人の母が大富豪ルーファス・ブライトンと再婚したのを機に、フィリス自身もルーファスの養女になった。それで現在、義父の静養のためにこのマイアミに来ており、母は後からニューヨークからこちらに来る。だが実は、精神科医ほか周囲の者がフィリスの精神が不安定だと指摘し、彼女が母を殺傷してしまう危険を訴えていた。思いあぐねて地元の有名な探偵シェーンを訪ねたフィリスだが、シェーンは特異な話をひとまず受け入れ、ルーファスの逗留する別荘に向かうが。 1939年のアメリカ作品。マイケル・シェーンシリーズの第一弾で、フィリスとの出会い編……って何を今さら(笑)。 私的な話題で恐縮ながらつい最近まで仕事に追われ、いささかうっすらワーカホリック気味。ミステリを読む意欲も減退していたが、さすがにまったく補給せずに済ませることもできなくて、ウン十年ぶりに本作を再読する。 少年時代にはポケミスで読んだが、今度はだいぶ前にブックオフの100円棚で見つけて購入しておいたHM文庫版で読了。 さすがに導入部とエピローグはほぼしっかり覚えていたが、事件の全体像も犯人もまるっきり忘れていた(最後まで思い出さなかった)ので、けっこう新鮮な気分で読み進む。 翻訳が、隠れた? 名訳者の丸本聡明(ほかはウェストレイクだのロス・トーマスだの)で、読みやすいことはこの上ない。もちろん原文自体がバランス良いんだろうけど、会話と地の文の比重の心地よさは最高であった。 伏線やちょっと弱い気もするので読者視点からの謎解き作品としては若干甘いが、シェーンが関係した複数の事件や事態が錯綜し、最後に意外な真相にまとまる流れはさすがに面白い。シェーンシリーズらしい、ミステリ味は存分に味わえる。 しかしデビュー編とはいえ、シェーンはこの一作の中だけでどれだけダメージ受けてるのか(何度も殴られたり、撃たれたり)。どう見ても、ハードボイルドのパロディもののギャグ描写だろ、こりゃ。 でもって肝心のフィリスは記憶通りに可愛かったんだけれど、再読して気になったのは(中略)が(中略)した以降の描写。もっと普通に素直に悲しんで泣けばいいと思うのだが、この辺はまだハリディ、キャラ描写が甘い感じ。あとのシリーズだと、その辺は少しずつ、こなれてくると思うけど。 あー、シリーズ二作目が読みたいな。もっとマジメに英語を勉強しておけば良かったぜい(涙)。 評価は1点おまけ。ファンなので(笑)。 |
No.3 | 7点 | 空 | |
(2020/01/25 19:05登録) 最初に読んだ時は、犯人の意外性というのではありませんが、様々な伏線をうまく回収して事件のからくりを解き明かしていて、謎解きミステリとして感心したのでした。また、ラファエロの絵の真贋問題については、『ギリシャ棺の謎』のダ・ヴィンチを連想したのですが、今回久々に再読してみるとそれだけではなく、上述事件の真相自体、本作のちょっと前に発表されたやはりクイーンの作品と似たアイディアを使っていることに気づきました。後の『夜に目覚めて』ではダネイをちょっとですが登場させていますし、EQMMに対してマイク・シェーン・ミステリ・マガジンを出すなど、ハリデイは意外にクイーンを意識しているのではないかという気もします。 それにしてもマイケル・シェーンって、赤毛を金田一耕助並みにかきまわす癖が(少なくとも初期には)あったんですね。後には彼と結婚する依頼人フィリスが、なかなか可愛らしく描かれています。 |
No.2 | 6点 | kanamori | |
(2010/09/05 15:35登録) 赤毛の私立探偵・マイケル・シェーン初登場作品。 舞台がマイアミということもあるかと思いますが、私立探偵が主人公であってもあまりハードボイルドという感じはしなくて、ラファエル絵画を巡るクライム・ストーリーの趣がありました。解決後にシェーンが、事件の収支計算をするところなどもそう思わせます。 依頼人の娘の母親が殺される理由とか、絵画に施された仕掛けなど、謎解きの部分は結構しっかりしていると思いました。 |
No.1 | 6点 | mini | |
(2010/05/12 09:56登録) ヘレン・マクロイの元旦那だったのがブレット・ハリデイ、後に離婚してしまったけど ロスマク夫人がマーガレット・ミラーだし、ビル・プロンジーニ夫人がマーシャ・マラー、生島治郎の元夫人は小泉喜美子だから、ハードボイルド作家ってよくよく女流作家が好きなんだな ミラーとロスマクには作風に共通性が有るけれども、マクロイとハリデイはあまり似て無いのが面白い シリーズ第1作のこの作品から赤毛の私立探偵マイケル・シェーンが登場する ハリデイは余程この主人公に愛着があったらしく、名を冠したミステリマガジンの編集にも従事した 通俗ハードボイルドみたいに言われる事もあるけど、そこまで通俗ではなくて、正統派と通俗の中間くらいな感じか ラティマーとかF・グルーバーとか通俗タイプには妙に謎解きにこだわった作家が居るが、ハリデイもそんな感じでハードボイルドの中では謎解き色が強い 「死の配当」「死体が転がりこんできた」と文庫化された二冊共現在絶版なので、こういう作家こそ早川は復刊すべきだよなあ |