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ミステリの祭典

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キリオン・スレイの生活と推理
キリオン・スレイシリーズ

作家 都筑道夫
出版日1972年01月
平均点5.67点
書評数6人

No.6 6点
(2020/02/11 11:18登録)
名探偵の名前 Quillion は、フランス語の古語で剣のつかを意味することが、最初の作品で説明されています(ちなみに Qui はフランス語では原則「クィ」ではなく「キ」と発音します)。目次には、作品名として文字によるタイトルではなく絵が使われていますが、それが様々な西洋の剣の絵であるのも、そんなわけなのです。
収録6編すべて、「なぜ」から始まるサブタイトルが付いていますが、本当に「なぜ」の部分に魅力があり、その理由に意外性が感じられるのは、3番目と4番目だけのように思えました。最初の「なぜ自殺に~」も銃殺トリックは意外なのですが、自殺に見せかけようとするなら被害者に自殺の動機があったことを示さなければなりませんから、「なぜ」が謎として成立していないと思います。密室殺人デーマの5番目と6番目も、むしろちょっとひねった不可能性の方が印象的で、実際密室トリック自体悪くありません。

No.5 5点 虫暮部
(2020/02/03 13:23登録)
 “こういう奇妙な事件にしたい、その為には犯人がこういう風に動けばいいはずだ”と言う作者の思惑だけで登場人物が駒のように行動して不自然。犯人やその関係者の作為が妙に回りくどかったり、心情的に何故そこでそう動くのか納得しづらかったり。物語としての枝葉末節をもっと整えるべきだった。

No.4 5点 E-BANKER
(2011/08/16 20:46登録)
アメリカ人の詩人、キリオン・スレイを探偵役としたシリーズ。
本作も作者の提唱する「トリックよりもロジック」を実践した作品集。
①「最初の?」="なぜ自殺にみせかけられる犯罪を他殺にしたのか”というのがテーマ。まずはプロットが分かりにくい。今回は凶器(銃)の所在が問題となりまずが、真相はちょっと唐突。
②「第二の?」="なぜ悪魔のいない日本で黒弥撤を行うのか”がテーマ。若い女性が怪しい性儀式に巻き込まれますが、スレイ氏の目には黒弥撤が別の儀式に見えていた。これも今ひとつピンとこない。
③「第三の?」="なぜ完璧なアリバイを容疑者が否定したのか”がテーマ。これはいかにもありそうなプロット。
④「第四の?」="なぜ殺人現場が死体もろとも消失したのか”がテーマ。居直り強盗が殺人を犯したはずの家から死体が消え、被害者の家族も殺人を否定する・・・一見すると魅力的な謎なのですが、被害者家族の背景を調査すれば簡単にからくりが判明してしまうのでは?
⑤「第五の?」="なぜ密室から凶器だけが消えたのか”がテーマ。これもやや喰い足りない。大掛かりなトリックは作者の好みでないのは分かりますが、こんなロジックでは「ふーん」としか言えない。
⑥「最後の?」="なぜ幽霊は朝飯を食ったのか”が最後のテーマ。すでに死亡推定時刻を過ぎているのに、被害者が朝食を食べるのを目撃されていた・・・ということですが、まぁこういう真相になっちゃいますよねぇー。
以上6編。
感想を言うなら「喰い足りない」の一言。
謎の設定そのものは悪くないのですが、オチが面白みに欠ける印象だし、そもそもプロットに魅力を感じないのが痛い。
都筑氏の作品ということで、期待して読んでると期待を裏切られるかも・・・
(敢えて選べば③か④かなぁ・・・)

No.3 6点 nukkam
(2010/09/27 21:47登録)
(ネタバレなしです) 長編1作と短編集3作で活躍するキリオン・スレイシリーズの1972年発表の第1短編集です。発表時にはちゃんとタイトル付きの短編だったのを、短編集を編集した際にはタイトルを削除して「なぜ」で始まるサブタイトルのみが残りました。「なぜ密室から凶器だけが消えたのか」(原題は「溶けたナイフ」です)のような不可能犯罪風な事件さえも、「どうやって」よりも「なぜ」を謎の主眼に置いています。トリックにはあまり多くを期待しない方がいいと思います。ユーモア本格派推理小説に属しますが謎解きはしっかりしており、理詰めというよりはちょっとした伏線から推理をどんどん飛躍させているような感じを受けましたが、作品の質は均一です。

No.2 6点 こう
(2010/05/14 22:36登録)
 「なぜ自殺に見せかけられる犯罪を他殺にしたのか」「なぜ完璧のアリバイを容疑者は否定したのか」「なぜ殺人現場が死体もろとも消失したのか」など各短編タイトルは非常に魅力的です。しかし期待したほどロジックを解き明かすという作品ばかりでないのが少し残念です。
 都筑道夫氏の短編の主人公(探偵)については「退職刑事」も「~もどき」などもそうですがあまり魅力を感じません。この作品集はへんてこ外国人キリオン・スレイを配していますがあまりおかしみは感じません。都筑道夫氏の作品は実験精神あふれる作品ばかりでお薦めですが短編についてはこの作品も含めてまあまあかなと思います。 

No.1 6点 kanamori
(2010/04/27 18:22登録)
詩人の外国人を探偵役とした連作ミステリの第1弾。
各編の表題がすべて「なぜ・・」で始まる事から分かるように、不可能犯罪ものとして成立できる物語でも、あえて不可解犯罪もののミステリに仕上げていて、ホワイダニットにこだわっています。
作者の提唱する<論理のアクロバット>の実践として書かれたようなミステリで、探偵役を外国人にしたのも合理性を重んじる西洋人がふさわしいという考えからでしょうか。なかには、強引すぎる机上の空論めいた推理もありますが、まずまず楽しめました。

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