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ミステリの祭典

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空さんの登録情報
平均点:6.12点 書評数:1530件

プロフィール| 書評

No.1350 8点 はなれわざ
クリスチアナ・ブランド
(2022/04/13 20:30登録)
原題を直訳すれば、鮮やかな手際のはなれわざと言うより、豪快な力業です。"Tour de FORCE"(フランス語)ですからね。ちなみに離れ業に相当するのは Tour d'adresse。
クリスティーの『白昼の悪魔』と比較している人もいますが、それはあくまで舞台設定が共通するというだけのことで、事件経過や真相は全く異なります。あ、でも同じアイディアをひとつだけ利用していましたか。それより、クイーン30年台の某作と、犯人隠匿アイディアでは共通するものを感じました。本作の方が大胆な使い方で、その可能性は何となく頭にちらついていたものの、やられたなあと思える落とし方にしています。
ただ、初期傑作群と比べると、最終段階に入ってからのダミー解決つるべ打ちではなく、様々な仮説がコックリル警部もまじえてじっくり検討される構成になっているため、多少盛り上げ感に欠けるとは言えるでしょうか。


No.1349 8点 雨のやまない夜
サム・リーヴズ
(2022/04/10 08:01登録)
シカゴのタクシー・ドライバー、クーパー・マクリーシュのシリーズ第2作は、第1作よりハメット寄りのハードな内容になっていました。クーパーは恋人ダイアナが巻き込まれた事件の解決に奮闘することになります。戦うべき相手は最初からわかっていて、フーダニット的な要素はほとんどありません。「ほとんど」と言うのは、最後にちょっとした意外性があるからです。早い段階から気にはなっていた点ではあったのですが。
しかしアクションやサスペンスがすぐれているというだけではなく、プロットもなかなか工夫されています。冒頭部分でクーパーと知り合う老人とか、トリニダードからやって来るセシルとか、特に後者は事件関係者の知り合いではあるものの、どう事件に絡んでくるのかといったところ、よくできています。二人の最終的扱いは、何となく逆になるのではないかと予想していたのですが、文句はありません。


No.1348 6点 ファントム・ピークス
北林一光
(2022/04/04 23:28登録)
映画『CURE』等の黒沢清監督による文庫版巻末解説を読むと、作者は元映画宣伝会社に勤めていたそうですが、その中でスピルバーグの良さも語られていて、同監督作品名は一切出てきませんが、本作を読んでみるとプロローグから明らかに『ジョーズ』の山中バージョンだとわかります。『ジョーズ』と違うのは、半ばまで長野県の山に出没するそいつの正体がわからないことで、実在の動物かどうかさえ不明です。
まあ、正体そのものには意外性はないですし、伏線はあからさまですが、どこからそいつが現れたのかは工夫されています。実際のところ、後半はエスカレートしていくパニック・シーンと、そいつの出自捜査とが並行して描かれていくことになります。さらに最後の「対決」部分もうまく考えられています。そのような意味でミステリ的興味をも兼ね備えた…ホラーと言うかサスペンスと言うか、そんな作品です。


No.1347 6点 ディミティおばさま幽霊屋敷に行く
ナンシー・アサートン
(2022/04/01 20:58登録)
このシリーズ第6作では、ディミティおばさま以外にも(たぶん初めて?)幽霊が登場します。いや、登場というほど明確な形にはなっていないでしょうか。ロリが幽霊は怖くないと言うのも、おばさまを知っていれば当然。この設定でおばさまをどうやって登場させるのだろうと疑問を感じながら読んでいたのですが、その疑問を忘れたころになって、そう来ましたかというところです。
幽霊屋敷といっても、実際にはカーのようなタイプのところもあり、幽霊は本物なのかどうかが問題になります。また、プロローグではロリの車ががけ崩れに合いますし、秘密の通路が出てきたり、最後には他の登場人物ですが戦闘アクションもあったりということで、これまで読んだ3冊の中では最もコージーらしくない、サスペンス色の強い作品になっています。真相がまた意外というか、ほのぼの系からは程遠いもので、驚かされました。


No.1346 5点 ハニー誘拐事件を追う
G・G・フィックリング
(2022/03/29 21:01登録)
ハニー・ウェストのシリーズ第3作は、深夜ハニーが事務所に現れた男に拳銃を突き付けられ、服を脱げと脅されるシーンから始まります。すぐに男の言葉は、別の服に着替えさせるのが目的だとまともな説明がつけられますが、そんなまず読者を驚かせておいて、という趣向が全編にわたって繰り返される作品です。以前読んだのはシリーズ第8作だったので、少しは落ちつきが出て来ていたということなんでしょうか。本作はともかくむりやり危機一髪連続展開にしてしまおうという意欲ばかりが目立ちます。正当防衛も含め、殺される人の数もやたら多いですし、ハニー自身ずいぶんひどい目に合わされます。
誘拐事件の真相については、意外ではあるのですが、ハニーを巻き込むことになったそもそもの理由には、必然性が全くありません。他にもご都合主義だらけではあるのですが、読んでいる間はそれなりに楽しめてしまいました。


No.1345 5点 虹色の陥穽
大谷羊太郎
(2022/03/23 21:18登録)
西村京太郎より3日前、2月28日に亡くなった大谷羊太郎の、出版順で言えば『殺意の演奏』に次ぐ第2作のようです。少なくとも初期には不可能犯罪を扱ったものが多い作家ですが、本作は最後にいかにもなアイディアが出てくるものの、全体的には珍しくサスペンス調です。パターン的にはボアロー&ナルスジャックにも近いような、殺人事件に巻き込まれて恐喝を受け、という展開です。ただ、芸能界ならではの歌手とプロダクションの関係を利用したところは、この作者ならではです。
考えてみれば、その計画ならば、そもそもそんなことまでする必要があったのか疑問ですし、最後の自白ででも一石二鳥を狙ったのだったと説明をつけることは簡単だったと思えます。確実性という点でも問題はあります。
しかし、それまでも時たまその視点からの部分があった刑事の視点による、さりげない皮肉なラストシーンはかなり好きです。


No.1344 7点 影なき男
ダシール・ハメット
(2022/03/20 11:13登録)
小鷹信光訳で読みましたが、率直な感想はこれもやっぱりハメットだなあということ。
ニックは「タフガイさん」と言われているところもあり(p.56)、実際アクションも少しは披露してくれます。でもだいたいはグラスを片手にごろごろしていますが、一日中酒を飲み続けていながら、頭脳はなかなか明晰です。奥さんのノラとの掛け合いも楽しめました。もともとハードボイルドの探偵って、堅苦しくなく、気のきいたセリフを言う人が多いわけですから、そのユーモラスな方向を推し進めただけに思えます。『赤い収穫』と『マルタの鷹』とからだって、受ける印象はかなり違いますしね。いろんなタイプの長編作品を書きながら、どれもハメットらしいという気がします。謎解き的にも、よくできています。
ハードボイルドには珍しく常に礼儀正しい(特に小鷹氏の訳では)ギルド警部補も気に入りました。


No.1343 5点 ランターン組織網
テッド・オールビュリー
(2022/03/17 20:21登録)
原題 "The Lantern Network"。今だったら当然全部カタカナの邦題にするところでしょう。
大きく3部に分れた中、全体の半分ちょっとある第2部が、1944年フランスのレジスタンス運動を描いています。その前後が現在の出来事で、第1部でベイリー警視正がごく軽く質問をしただけで突然自殺してしまった男の秘密が、第2部とどう繋がってくるのかということなわけです。
その接点ですが、これは第2部の終り時点であまりに明らかで、実際ベイリーもごく簡単に自殺者の正体を推測してしまいます。作者もそういったところで意外性を出そうという気は全くないのでしょう。それはいいのですが、現在の最終的な決着に結びつく第2部の二つの点の真相が、どうも釈然としません。
なお、峰岸久の翻訳は、原文との相性の問題もあるのでしょうか、ほとんどまともな日本語になっていないところも見受けられました。


No.1342 5点 コンピューター殺人事件
藤村正太
(2022/03/14 20:20登録)
1971年発表で、まだプログラムや処理データをワープロ感覚で作成できるようになる前、穴を開けた紙を読み込ませて命令を実行させていた頃の話です。そのような時代だからこその社会派的な「コンピューター公害」テーマが扱われています。ただSFでは、極秘任務遂行のため宇宙船乗組員たちを殺すコンピューターHALがその3年前に登場していますが。
最初の殺人のアリバイトリックは、シンプルですが悪くありません。一酸化炭素中毒死を引き起こす条件を考えると、原理は簡単にわかると思うのですが、その点の説明はありません。第2の殺人の方は、時刻表の意外な事実を基にしたトリックで、目の付け所はいいものの、もっと効果的で確実な使い方ができなかったかなという気もしました。
しかしこれは動機として成り立たないでしょう。現在ならちょっとした返還ミス、いや変換ミス程度のことでも起こり得ることでしてね。


No.1341 7点 生者たちのゲーム
パトリシア・ハイスミス
(2022/03/08 21:09登録)
ハイスミスのミステリ第5作はメキシコを舞台にした、殺人事件から始まり最後に犯人が判明するタイプの作品です。しかし解説にも「フーダニットの形式」だがそうである「以前に、とことんハイスミスの作品」だと書かれているとおり、謎解き興味はあまり感じられません。読了後最初の方を適当に読み返してみると、作者が伏線など全く考えていなかったらしいと思いました。
被害者の顔が切り刻まれていた理由は、最後にサウサス警部が「見当がついていました」と語っていますが、ミステリ的にはつまらない理由です。また、主人公テオドールが何度も経験する奇妙な出来事については、最後まで説明がつけられないままです。犯人の意外性はなくはないのですが、その明かし方演出には工夫が全くありません。
しかし、これがメキシコだからこその友情ドラマとしては読みごたえ充分になっているのが、ハイスミスらしいところなのでしょう。


No.1340 7点 悪魔の栄光
ジョン・エヴァンズ
(2022/03/05 08:23登録)
ポール・パイン・シリーズの第2作は、イエス・キリストの自筆文書というマルタの鷹どころではない宗教的歴史的超貴重品の争奪戦です。法月綸太郎の巻末解説では本作発表の前年に発見された死海写本の例を挙げ、エヴァンズが時事ネタに敏感であるとしていますが、さすがに無茶な設定だとは思います。福音書原本ぐらいの方が、リアリティはあるでしょう。犯人の意外性と文書との絡め方は、『マルタの鷹』よりもうまくまとまっていると思います。二重の意外性、特に後の方は、早い段階で一回怪しいかもしれないとは思ったのに、その後完全に失念していて、驚かされました。
アル・カポネをモデルにした老年のギャングの最終扱いは、こうせざるを得ないだろうなと予測はついていたのですが、文書がどうなるかということと併せて、印象的な結末にしてくれていました。老ギャングに対するパインの態度も、なかなか味があります。


No.1339 7点 分岐点
古処誠二
(2022/03/02 20:37登録)
僕は自分の意思で殺した。
そんな文が出てくる手紙の部分をプロローグに持ってきた、最初雑誌「小説推理」に連載された作品です。エピローグが同じ手紙の後半部分になっています。
しかし読んでいてほとんどミステリという感じのしない作品でした。この作家はこの手のものが多いようですが、太平洋戦争時代の人々の意識を扱った作品で、本作では1945年8月前半、つまり終戦直前、中学生たちを率いる部隊が描かれます。その中で中学生による殺人事件が起こるわけですが、殺人後死体を隠すシーンは描かれても、なぜ殺したのかを示す少年と被害者との対話部分は省かれています。つまりミステリとしては純粋なホワイダニットと言っていいでしょう。
しかしそれよりも、現在にも通じる、聖戦だと言いつくろう侵略戦争の実態と犯人の中学生の意識を生々しく描き出した作品です。


No.1338 6点 ジャクソンヴィルの闇
ブリジット・オベール
(2022/02/25 23:04登録)
様々なジャンルに挑戦するオベールの第3作は、完全にホラーです。基本的にホラーの非現実性・非合理性は論理的なミステリとは相容れないと思っているので、本サイトで採点すべきかどうか多少迷ったのですが、ハヤカワミステリ文庫から出ていますし、複雑なプロットを得意とする作者だけに様々な謎を散りばめている(完全には解答を出していませんが)ので、書評を入れることにしました。
最近読んだマーシャ・マラーの “Eye of the Storm” では犯人がいやがらせにゴキブリを使っていましたが、本作ではゴキブリの気持ち悪さが特に強調されていて、ジョージ・ロメロの某短編映画をも思わせます。しかし、作中では同じゾンビ・テーマでも『バタリアン・リターンズ』(未見)や『死霊のはらわた』等のタイトルが登場人物により言及されるだけあって、意外と風格のある演出のロメロより過激なアクション・ホラーになっています。


No.1337 6点 Eye of the Storm
マーシャ・マラー
(2022/02/22 20:57登録)
ハードボイルド系の作品としては珍しく、完全孤立ではないにしても、外界との行き来が不便であることは確かな、沼地の中の小島にある古い館で起きた事件を扱った、クローズド・サークルな話です。その事件がまた、ゴキブリが放たれたり、呪いの人形が木に掛けられていたりといったいやがらせで、その館を観光用に改築している人々の一人シャロンの妹からの依頼で、シャロンは島に調査に赴くわけですが、時は嵐の季節。暴風雨の中、渡し船担当者が殺され、シャロン自身殺されそうになります。
こうなってくると、書き方はハードボイルドでも、国内新本格派の館ものに近いプロットです。犯人の意外性アイディアはよくあるパターンですし、フェアプレイが守られているとは言いにくいですし、ということで本格派好きな読者の受けは悪そうですが、最後のかなり長い犯人との対決シーンの緊迫感等は楽しめます。


No.1336 4点 越後路殺人行
中町信
(2022/02/16 20:43登録)
中町信らしいプロローグなので、どこに仕掛けがあるのかと思っていたら、叙述トリックというほどのことはありませんでした。しかし犯人が勘違いした理由は、ごく単純ながら、実際にありそうだと納得させられるものです。ただそれを放置してかまわないとした犯人の心理には、リアリティがないと思います。
事故に見せかけた殺人の後、2件の殺人両方にそれぞれ異なるタイプのダイイング・メッセージ(その一つがプロローグ)というのは、ちょっと遊戯的すぎますし、その後で起こる事件は、かえって小説を安っぽくしているだけです。そんなこの作者によくある小説技巧的な欠点の他、本作では作者らしい発想の筋の良さが、ほとんどある人物が脅迫で「一千万円を要求した理由」のアイディアと、その理由に基づいた犯人の意外性だけで、謎解き的に小粒な感じになってしまっているのも不満なところです。


No.1335 6点 クロエへの挽歌
マージェリー・アリンガム
(2022/02/13 22:46登録)
本作をアリンガムの代表作に推す人は、miniさん等かなりいるようですが、個人的には事件全体の構成はよかったもののそれほどかなあと思えました。
『霧の中の虎』や『殺人者の街角』では影の薄かったキャンピオンですが、本作では彼の視点を中心に書かれています。ではそれだけ名探偵として活躍してくれるかというと、なかなかそうなりません。ある理由から、事件の起こった館に行きたがらず、まるで駄々っ子みたいにうじうじしていて、いらいらさせられました。まあそこが、ある意味ミスディレクション的にも使われていたことが、真相解明シーンになってわかるのですが、それでも小説技巧的な意味でキャンピオンの態度を誉めたくはありません。
後、最後に残った機会に関する疑問の解明があまりにあっけない点については、そもそもそんなことがあったっけというぐらいで、さほど気になりませんでした。


No.1334 7点 質屋探偵ヘイガー・スタンリーの事件簿
ファーガス・ヒューム
(2022/02/09 20:56登録)
全12編からなる連作短編集で、連続性がかなり強調され、目次も章立てになっています。第1章『ヘイガー登場』は章題にもかかわらず、ヘイガーが質屋で働くことになった顛末にとどまらない結末をもった話になっていますし、それは第12章『ヘイガー退場』も同じです。この最終章では、それまでに出てきた何人かの登場人物が集まり、事件が展開されます。
原題はただ "Hagar of Pawn-Shop" となっていて、確かにヘイガーは名探偵的な才能を発揮することも多いのですが、必ずしも探偵役とは限りません。クイーン編『犯罪の中のレディたち』にも収録された『一人目の客とフィレンツェ版ダンテ』、それにもう1編『五人目の客と銅の鍵』は暗号ミステリですが、結末にひねりを加えていて、特に後者はヘイガーの推理の後に起こる出来事が話を盛り上げます。そのような二重構造の話は他にもいくつかあり、なかなかバラエティに富んだ作品になっています。


No.1333 6点 オルレアンの魔女
稲羽白菟
(2022/02/06 15:09登録)
日本の古典芸能に対する造詣の深い作者ですが、今回は意外にも舞台をフランスにして、日本人ソプラノ歌手を主役に据えた作品になっています。ただ、オペラなど西洋古典芸能に対する蘊蓄はありません。しかし前作に対するコメントでは横溝正史の世界を連想させると書きましたが、その点は本作でも共通し、作中では「ハリウッドのB級ホラーみたいな」と形容される、不気味な仮面と衣装の人物が登場したり火刑殺人が起こったりと、はったりのきいた事件が展開されます。
犯人を特定する情報はあらかじめ読者に提示されず、パズラーとは言い難い気もしますが、ラストで明かされるプロローグの意味には、感心しました。
登場人物の一人、フランスを代表する女優は、名前からしても明らかに実在の大女優がモデルですが、その人、本名はオルレアンならぬドルレアックなんですよね。話に絡めてくるかと期待していたら、何も言及はありませんでした。


No.1332 5点 消された眠り
ジェレマイア・ヒーリイ
(2022/01/31 23:31登録)
ボストンの私立探偵ジョン・フランシス・カディのシリーズ第3作では、旧友の黒人警察官マーフィ警部補から依頼された事件が語られます。となると人種問題がからんできそうですが、それは、ほとんど警部補が管轄外地域で起こった事件について聞く当地の黒人警察官がいないから、カディに依頼したという点に限られます。殺された女子学生(白人)の逮捕されたボーイフレンドが黒人だという点についても、被害者の両親の拒否感は嫌悪というほどでもありません。
事件の設定からして、逮捕されたウィリアムが犯人でないとしたら、真相はそれ以外考えられないもので、意外性は全くありません。かといって、証拠をいかにして手に入れるかという捜査的興味もさほどではなく、犯人を罠に掛けようとする方法も、常識的に見て適法でないことは明かでしょう。
ただ事件の決着のつけ方には、疑問は感じながらも驚かされました。


No.1331 5点 細工は流々
エリザベス・フェラーズ
(2022/01/28 23:23登録)
『私が見たと蠅は言う』の作者として名前だけはずいぶん昔から知っていたエリザベス・フェラーズですが、読んだのは今回の本作が初めてです。結果…う~ん、今一つのれませんでした。いや、真相自体は鮮やかに決まっていますし、ミスディレクションもかなり効いているとは思うのです。意味不明な原題(”Remove the Bodies”)とは全く違う邦題も、読み終えてみるとなるほどという感じ。ただその小説スタイルが、合わなかったということでしょう。
会話の途中、誰かが重要なことを言おうとする直前に邪魔が入り、情報提供が遅れるのが執拗なまでに繰り返されるのには、いらいらさせられます。その他にも全体的に変に細かい技巧に走りすぎている感じがするのです。ジョージ(苗字不明)の耳が聞こえないふりも、巻末解説やkanamoriさんの評では褒めていますが、そんなことをする必要があるとは思えませんでした。

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