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ミステリの祭典

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はなれわざ
コックリル警部シリーズ

作家 クリスチアナ・ブランド
出版日1959年01月
平均点6.88点
書評数17人

No.17 7点 レッドキング
(2024/09/25 04:08登録)
孤島小国の海岸ホテルを舞台にした、広義の密室殺人事件。「密室」を形作るのは主役警部の視点で、六人の容疑者には、全員、犯行は不可能・・なはずだった。隻腕の音楽家を要にした妻と二人の愛人を廻る四角関係をメインに、半ば狂った恋情ドラマが、不可能犯罪のダミー解決を波状的に繰り返したあげく、カタストロフ風の悲劇エンドへ・・と思わせて・・・。
※最初の容疑者扱いが、視点を担う主役警部ってのが笑える・・「犯行時、あんたは皆を見ていたかもしれんが、皆はあんたを見ていない」・・確かに(^'^)

No.16 8点
(2022/04/13 20:30登録)
原題を直訳すれば、鮮やかな手際のはなれわざと言うより、豪快な力業です。"Tour de FORCE"(フランス語)ですからね。ちなみに離れ業に相当するのは Tour d'adresse。
クリスティーの『白昼の悪魔』と比較している人もいますが、それはあくまで舞台設定が共通するというだけのことで、事件経過や真相は全く異なります。あ、でも同じアイディアをひとつだけ利用していましたか。それより、クイーン30年台の某作と、犯人隠匿アイディアでは共通するものを感じました。本作の方が大胆な使い方で、その可能性は何となく頭にちらついていたものの、やられたなあと思える落とし方にしています。
ただ、初期傑作群と比べると、最終段階に入ってからのダミー解決つるべ打ちではなく、様々な仮説がコックリル警部もまじえてじっくり検討される構成になっているため、多少盛り上げ感に欠けるとは言えるでしょうか。

No.15 5点 文生
(2017/11/08 16:58登録)
1985年版東西ミステリベスト100の38位に選ばれ、一時はクリスチアナ・ブランドの最高傑作と目された作品である。しかし、読んでみると物語の起伏が乏しく、中盤が相当だるい。感情移入がうまくできないために、どうしても作者の狙いがピンとこず、せっかくの仕掛けも「なんだ、そんなことか」と感じてしまうのだ。ちなみに、1955年発表の本作は1941年発表のクリスティ作「白昼の悪魔」と共通点が多々見受けられる。もちろん、ストーリーやトリックは別物なのだがミステリーとしての構造がそっくりなのだ。
具体的には、バカンスで地中海に訪れた探偵、そこで起きる殺人事件、関係者全員にアリバイがあり、それをひとつずつ崩しながらやがて真相に到達するといった具合だ。
後発だけあって本作の方がより大胆な仕掛けを施しているのだが、テンポよく話が進む白昼の悪魔の方がミステリーとしての切れ味を感じることができた。そして、明確な比較対象があるため、本作の評価はどうしても低いものになってしまう。

No.14 6点 HORNET
(2016/12/24 23:33登録)
 御多分に漏れず、クリスチアナ・ブランドの代表作と名高いため、「まずはこれから」と読んだ。促音が大文字で表記されているようなポケミスで、歴史を感じた(笑)。
 最終盤の展開直前には「え、結局そんな結末…」と思ってしまったのだが、その失望が最後に一気に裏切られてよかった。かなりスッとした。中盤では、島の当局の理不尽な捜査を阻もうと、各自が推理を披露したり独白をしたりするのだが、それが最後にあんなふうにひっくり返して生きてくるとは…結構素直に驚いた(面白かった)。
 ただ、島や海岸の構造とか、舞台となったホテルの構造とかがいまひとつ頭に描きにくくて、一枚だけ図はあったが文章で読み進めていると具体がイメージしづらく苦労した。海外古典には往々にしてある婉曲的な登場人物の物言いも、すぐに理解できない所がよくあり、こちらも苦労した。
 中盤がやや冗長な感じはあるが、全体的には満足感の方が高かった。

No.13 7点 take5
(2016/11/20 18:12登録)
1985年発行のハヤカワミステリーで読みました。
促音が大きい「つ」で書かれていて、ある意味雰囲気満載でした。
パエリヤやカプチーノにいちいち注釈がついています^^;
決して読みやすくないのに、読み終えて思うのは
時代を超えてきちんと残る名作という事です。
女性男性それぞれのバカンスにおける描写が、
景色は古臭くかつ心理は普遍的に描かれています。
女性作家の方が繊細なのか、クリスティー女史の後継者と評される力なのか。
大どんでん返しも気持ちよいし、
秋の夜長に良い作品です。
同一人物の名前の書き分けが二行前とかわるので、
英語らしさで大変です。

No.12 8点 青い車
(2016/10/24 21:11登録)
 この小説の真の「はなれわざ」はトリックそのものではなく、あまりに堂々と提示されたヒントとそれに伴うミスディレクションにあります。ブランドはトリック・メイカーというよりテクニシャンとして達者な作家であることが良くわかる最上の一作でしょう。終盤における圧巻の多重推理はもはや彼女の独壇場だと思います。

No.11 8点 ロマン
(2015/10/22 21:24登録)
スコットランドヤードのコックリル警部が休暇でイタリア近郊の某国観光ツアーに参加するも、殺人事件が起きる。まさに「はなれわざ」。トリックの大胆さもさることながら、この綱渡りのように危うい欺瞞を成立させた作者の手際に舌を巻いた。伏線とミスディレクションの配置が芸術的で、特に作中人物の“ある属性”が真犯人から嫌疑を逸らす役割と真犯人を暴露する役割の双方を時間差で果たす趣向には感動…

No.10 8点 nukkam
(2015/10/11 22:57登録)
(ネタバレなしです) 1955年発表の本書はコックリル警部の登場する長編としてはシリーズ第6作にして最終作となった作品です(シリーズ短編はその後も何作か書かれていますが)。ブランド全盛期の最後を飾る作品と言ってもいい本格派推理小説の逸品です。ブランドが得意とする、仮説が組み立てれは崩壊し、また新たな仮説が組み立てられていくという謎解きプロットは本書でも健在。果たして仮説は真相に近づいているのか、それともまんまと作者に誤った方向へミスリードされているのか、謎解き好き読者をいい意味で悩ませてくれます。それからコックリルが異国でのコミュニケーションに苦しむ場面ではブランドがユーモアのセンスも一流であることがわかります。コックリルと地元警察の出会いの場面やお店での事情聴取の場面は結構笑えました。

No.9 7点 蟷螂の斧
(2015/06/29 17:56登録)
裏表紙より~『休暇をすごすため、イタリア周遊ツアーに参加したスコットランド・ヤードの名警部コックリル。だが、事件が彼を放っておかなかった。景勝で知られる孤島で一行のひとりが何者かに殺された。地元警察の捜査に不安を感じたコックリルは自ら調査に乗り出すが、容疑者であるツアーの面々は、女性推理作家やデザイナー、隻腕の元ピアニストなど一癖ある連中ばかり…ミステリ史上に輝く大胆なトリックで名高い、著者の代表作』~
著者と相性があまり良くなかったのですが、本作は楽しめました。「緑は危険(5点)」「ジェゼベルの死(4点)」の2作とも、場面・人物がイメージしにくかったという印象が強いです。本作は”浜辺の図(事件発生時の各容疑者の位置)”が挿入され、人物像も個性豊かに描かれており頭に入ってきました。刑事が、容疑者全員のアリバイを証明している点がミソですね。恋愛が絡んだ物語には高得点をつける傾向があることに、自分自身気が付きました(笑)。真相にはかなりの無理があるのでは?と思わせないことが、著者にとっての「はなれわざ」なのでしょうか。物語自体は、クリスティ氏の「白昼の悪魔」(1941)を連想しました。

No.8 9点 斎藤警部
(2015/05/21 12:21登録)
××××トリックもこれほどのスケール感でやってくれるとクラクラするほど感動的。
真相を知った瞬間、高~い空の上に解き放たれて漂い始めた様な感覚に襲われたものです。
きれいでユーモラスな物語の雰囲気、文章の肌触りがとても好き。

No.7 6点 ボナンザ
(2014/04/08 21:42登録)
たしかにはなれわざだ。
タイトルから期待値が跳ね上がるが、それに見事に答えている。

No.6 6点 mini
(2014/02/10 09:59登録)
先月29日に創元社からクリスチアナ・ブランド「領主館の花嫁たち」が刊行された、同じ創元から出た晩年の「暗闇の薔薇」の後の作、作者最後の長編である
”おぉ!ブランドの新刊なら読むか”と思った貴方、早速新刊書店に行って文庫棚を探しても見つかりませんよぉ~、なぜなら創元だけど文庫版じゃなくてハードカバー版なんだよね
しかも内容的にはゴシック小説風らしい、ブランドの中期には「猫とねずみ」といったゴシック・ロマンスっぽい作も有るので元々こういう方面に関心が有ったのだろう

さてブランド作品を大きく前期後期に分けると「はなれわざ」もどちらかと言えば後期作と言えるだろう、初期の2作の後の前期の4大傑作あたりまでが前期だと思う
「はなれわざ」は結構以前だとブランドで1番読まれていた時期があった作だろう、ただしその理由は内容が特に優れていたからではない
未だポケミス版のまま文庫化されていない「自宅にて急逝」はともかく、「疑惑の霧」も今では文庫化されてるが当時はポケミスしかなかったし、早くから文庫化された「緑は危険」「ジェゼベルの死」が逆に文庫化が早過ぎて絶版になるのも早かったという事情が有った
その頃にポケミス版とは言え1番入手が容易というか唯一新刊本で入手可能なのが「はなれわざ」だった時期が有ったのだ
この為にブランドでこれから読んだという人も居たみたいで当時はブランドの代表作に祭り上げられていた感も有る
しかし「緑は危険」「ジェゼベルの死」などと比べて明らかに見劣りするのは否めない
途中のしつこいディスカッションがブランドの特徴では有るが、これは好みが分かれる事だろう
でも「緑は危険」ではそれが魅力では有るし、「ジェゼベル」ではそれがクライマックスに効果的に使われていた、まぁ「疑惑の霧」では流石にちょっとくど過ぎるなとは思ったけど
「はなれわざ」ではディスカッション部分がダレる感が有ってサスペンスに結び付いていない印象が有る
さらにいけないのがメイントリックで、「ジェゼベル」での戦慄のトリックを先に知ってしまうと、どうしても「はなれわざ」のトリックはつまらなく感じてしまう
一応凡作ではないにしても「緑は危険」などが凄過ぎて、「はなれわざ」はまぁ作者としては佳作レベルかなぁ

文庫化の話題が出たのでちょっとついでだが、早川書房さん、コックリル警部初登場作「切られた首」と「自宅にて急逝」の2冊は文庫化すべきでしょう

No.5 6点 あびびび
(2011/09/06 13:45登録)
田舎から都会に出た時は周囲のすべてが謎に見えたが、都会暮らしになれると自然に見えてくるものがある。

このメイントリックはそんな感じで、ミステリ愛好者には途中でからくりが分かるのではないかと思う。終盤は、いつそれが明かされるのか、残りのページを確かめたり、退屈この上ない。

ただ、物語の流れ、状況は自分の好みだった。

No.4 6点 kanamori
(2010/07/19 20:46登録)
大胆なアリバイ・トリックがタイトルの由来ですが、それほど感心するトリックではなかった。
コックリル警部自身がツアー客全員のアリバイ証言者というところが面白いが、シリーズ愛好者でないと、なかなか進展しないプロットが退屈に感じられると思います。

No.3 6点 ロビン
(2010/01/28 02:13登録)
真っ先にこの作品を読んで思い出したのが(ネタばれ?⇒)『古畑任三郎』の最終話「ラスト・ダンス」です(松嶋菜々子が犯人の回)。
間違いなくこの作品を元ネタにしてるでしょ、三谷さん。

正直中だるみはひどいですが、演出的にはそれもフリになっています。
しかし、たった一つの殺人でここまで引っ張るか、というあおりが、上記のようなこともあり、サプライズの破壊力は減少。

きっと、かの有名な「金田一」事件の被害者たちは、こんな気分だったんだろうなと感傷的に。

No.2 7点 あい
(2009/03/11 18:42登録)
伏線の張り方が非常にうまくて、完成度が高かったが、メイントリックがかなりのはなれわざであることや、長い作品の中で殺人が一回しか行われないことで、なかだるみ感が否めない事など欠点もある

No.1 7点 ぷねうま
(2008/01/27 08:35登録)
言われてみればかなりバカバカしいトリックを巧みに演出したクリスチアナ・ブランドの手腕は素晴らしい。
また人物描写がうまく読んでいて飽きさせないのも○。

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