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ミステリの祭典

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クロエへの挽歌
キャンピオン氏

作家 マージェリー・アリンガム
出版日2007年08月
平均点6.25点
書評数4人

No.4 6点
(2022/02/13 22:46登録)
本作をアリンガムの代表作に推す人は、miniさん等かなりいるようですが、個人的には事件全体の構成はよかったもののそれほどかなあと思えました。
『霧の中の虎』や『殺人者の街角』では影の薄かったキャンピオンですが、本作では彼の視点を中心に書かれています。ではそれだけ名探偵として活躍してくれるかというと、なかなかそうなりません。ある理由から、事件の起こった館に行きたがらず、まるで駄々っ子みたいにうじうじしていて、いらいらさせられました。まあそこが、ある意味ミスディレクション的にも使われていたことが、真相解明シーンになってわかるのですが、それでも小説技巧的な意味でキャンピオンの態度を誉めたくはありません。
後、最後に残った機会に関する疑問の解明があまりにあっけない点については、そもそもそんなことがあったっけというぐらいで、さほど気になりませんでした。

No.3 6点 nukkam
(2014/09/02 17:15登録)
(ネタバレなしです) アリンガムの本格派推理小説としては1937年発表のアルバート・キャンピオンシリーズ第8作となる本書が最もお勧めです。miniさんの講評通り、「屍衣の流行」(1938年)は優れたトリックが印象的ですがプロットが冗長に感じるところがあり、個人的には本書の方が好みです。キャンピオンの描写に特徴があり、ある登場人物をひっぱたきたい衝動にかられたり、ある女性の魅力の虜になったりと結構情緒不安定です(笑)。それだけでなく探偵としてはやる気がいまひとつなく(笑)、普通の推理小説とは物語のリズムが異なるところもありますが最後はどんでん返しが印象的な真相が待っています。

No.2 6点 kanamori
(2010/12/27 18:28登録)
人気ミュージカル男優の館での、中年女優・クロエの不審死の謎を中核とした”館ミステリ”の様相から、中盤以降思わぬ派手な展開を見せるプロットは女史の作品の中では面白く読めました。
素人探偵キャンピオンは、同時代の名探偵と比べ個性に欠けるきらいがありますが、今回、当初傍観者を決め込む理由がミスディレクションになっている点はよかった。邦訳タイトルになったクロエの造形は、現代作家ならもっと書き込んだものになっていたと思えるのがちょっと惜しい。

No.1 7点 mini
(2008/10/29 10:57登録)
新樹社からはアリンガムが二冊出ているが、「クロエ」は代表作とも言える出来だ
アリンガムの中期作品には業界に関連した社会風俗と謎解きとの融合を意図した作品が三作あり、特に国書刊行会の「屍衣の流行」は最高傑作とも言われている
「屍衣の流行」が代表作でも異論はないのだが、「屍衣の流行」は無駄に長く感じる冗長な面もあり、もう一作推したいのが新樹社の「クロエへの挽歌」なのだ
邦訳題名にはもう一工夫欲しかったが、「クロエ」は「屍衣の流行」よりも文章構成ともすっきりしており、謎解き色も「クロエ」の方が強くアリンガム中期の名作だろう

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