makomakoさんの登録情報 | |
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平均点:6.18点 | 書評数:873件 |
No.193 | 7点 | ルームメイト 今邑彩 |
(2011/05/09 19:50登録) 意外と皆さんの評価が低いけど、私は結構楽しく読みました。ミステリーとしてもできは良いし、すらすらと読めて興味津々のところもあっていいじゃないですかねえ。 以下ネタバレが少し。 多重人格が主題となっていますが、本当に多重人格なんてあるのかと思い友人の精神科医に聞いてみたらたまには経験するとのこと。うーんそんな人に会ったことないけどなあ。まあ隕石に当たって死ぬというよりは現実味があるということでしょう。 |
No.192 | 7点 | タイトルマッチ 岡嶋二人 |
(2011/05/01 09:45登録) ボクシングは好きなので興味深く読んだ。誘拐犯の要求が実にユニークで私にとってはかなり最後になるまで犯人も分からずどうなることかと読み進んでいった。誘拐をテーマとすると卑怯でいやみな印象を受けることが多いが、本作品にはそういったことは無かった。残念ながら死亡者が出てしまうが(死なない設定だってありえそうなのに)最後もなかなか気分が良い。さらりと読むにはちょうど良い作品。 |
No.191 | 7点 | 眠れぬ夜の殺人 岡嶋二人 |
(2011/04/25 19:58登録) 出だしがよろしくない。善良な市民が不幸にも犯罪者となっていくというくだりは推理小説では時々あるが、こういった設定が嫌いだ。特に筆力の優れた作者だと現実味が増して実にやりきれない。途中で読めようかと思ったが岡島二人なので我慢して読んでいった。 読んでよかった。最初の不愉快さは見事に解消され最後はなかなか気分がよくなった。続編もあるというから探して読んでみよう。それにしても聡美という女性はなかなか魅力的。お相手なしたくないけどね。 |
No.190 | 5点 | 46番目の密室 有栖川有栖 |
(2011/04/23 21:37登録) 火村と作家アリスシリーズの記念すべき第1作。初めてこれを読んだときは学生アリスの探偵江神さんと比べてだいぶ落ちるなあと少なからずがっかりした覚えがある。今回再読してみたがやっぱり同じ感触であった。有栖川氏の作品の多くははトリックだけでなく情緒や雰囲気を楽しめるのだが、本作品は雰囲気もさほどでなくトリックもまあこんなものといった程度。火村助教授も作品を重ねるたびにいい感じになったように思うがこの作品ではいまいち。 |
No.189 | 8点 | 風果つる館の殺人 加賀美雅之 |
(2011/04/17 09:24登録) 物語の雰囲気も好きだし魅力的な謎と大掛かりなトリックは私にこの大作を一気に読ませる力がありました。読み出したら止められなくなったのは久しぶりです。ぜひ加賀美氏にもう少し速いペースで作品を発表してほしいと願うのはないものねだりかな。 こういったとんでもないトリックの合理的解決方法など所詮無理があることは承知なのですが、2番目におきた殺人のトリックは残念ながら無理でしょう。また昔起きた事件の凶器も相当無理があると思いますが、もしこれならきっと血がついているので当然そのときに気づくでしょう。でも読者なのだろうな。 |
No.188 | 8点 | 完全恋愛 牧薩次 |
(2011/04/13 22:01登録) ロマンチックで大きな謎もあり私は好きです。本格推理小説としてみれば禁じ手に近いところもあるけど。 生涯ただ一度の夜の場面はとても印象が深い。この場面は推理小説で言えばちょっと問題があるようにも思えるが素敵なシーンなので許してしまおう。 完全犯罪があれば完全恋愛があってもよいというのはなかなかのこじつけに思えるが、この題名の本をおっさんが読むのはかなり気恥ずかしかしく、こそこそと題名が見えないように表紙を裏返して読んだ。。 |
No.187 | 6点 | 絶叫城殺人事件 有栖川有栖 |
(2011/04/11 20:26登録) 有栖川は好みの作家なのだが、トリックのみが目立ったものとなるとがっかりするものもある。氏の短編集はトリックが主体作品となるものが多く私にとってはそのトリックの出来不出来によって作品の評価が決まってしまう。黒鳥亭なんかはかなり好きだが雪華楼のようにあまりに偶然を頼りにしたものはしらけるなあ。全体として読んで悪い印象があるものはないがすばらしいと感じるほどのものもない。ちょっとたったらすぐに内容を忘れそう。 |
No.186 | 7点 | 縛り首の塔の館 加賀美雅之 |
(2011/04/01 18:11登録) この短編集でもシャルル・ベルトランシリーズらしい時代がかったおどろおどろしい雰囲気と飛び切りの謎が楽しめる。このような大掛かりで絶対不可能と思われるトリックを量産することは困難らしく、表題の作品は自分の霊で30マイルはなれた相手を刺殺するのみならず相手からの反撃で自分も密室内で死んでしまったというとんでもない謎を、まず見事に解決しているのはすばらしい。ところが2作、3作と読んでいくと謎は同様に大掛かりで不可能に思われるが、解決に無理がでてくる。 以下ネタバレ 吸血鬼の塔は残念ながら人間はこんなふうには動けないと思われるし、きわめて低い確率の僥倖によってのみ可能な方法もいけないねえ。最後の妖女の島は殺人の方法自体が自己矛盾してしまっていてこりゃ絶対ありえないでしょう。 やはりこんな不可能な謎を合理的に解く方法はそう何種類も思いつけないのでしょうね。でもこんな大掛かりで不可能な謎に挑戦し続ける作者に期待もしています。 |
No.185 | 5点 | ダブル・プロット 岡嶋二人 |
(2011/03/27 16:33登録) だまされた。インターネットで「記録された殺人」と本書を一緒に購入してしまった。作者も驚く未収録作品発見とうたってあるのに実は「記録された殺人」にそれより劣る3つの短編が加わっているだけではないか。裏表紙や作者のあとがきにもちゃんと書いてはあるのだがインターネットで見ると全く違う短編集が新たに発売されたように見えてしまうのだ(作者もちょっとあざといとしてはいる)。本屋で買えばこんなことは無いのだが。 したがって私の書評としては結構厚い本なのに実質短編が3編しかないものを買わされたことをことを考慮してこの程度です。「記録された殺人」を買わないで本書のみを購入していたらもう少し評価は上となりますが。 |
No.184 | 7点 | 検察捜査 中嶋博行 |
(2011/03/27 09:07登録) 江戸川乱歩賞受賞作はたいてい読んでいるが検察や裁判の話は食指が動かず未読のままであった。遅ればせながら読んでみたが検察や弁護士の実態が思っていたこととかなり異なっていることにまずびっくり。検事は強大な権力があって上下関係に弱い警察などぺいぺいになると思いきや尊大な警察官が出てきたり、検事そのものが定員割れするほど不足しているなどなど。なるほどこれでは最近の特捜部のでっち上げ?もおきるべくしておきなのかと妙に納得してしまう。高学歴集団独特の陰湿で政治的な動きが正義を守る検事の世界にもあったのは意外でしたが、さすがにこんなことは実際にはおきないと信じたい。 |
No.183 | 6点 | 開けっぱなしの密室 岡嶋二人 |
(2011/03/20 09:34登録) 岡島二人の最初の短編集。全体としてやや小粒であるが一定の水準を保ったものばかり、逆に言えばとても面白いというものもない。どれもテンポがよくさらっと読める。読んで損はないが感動的とか心に残るというものではない。彼らの作品としてはちょっとおちるかな。 |
No.182 | 7点 | 記録された殺人 岡嶋二人 |
(2011/03/20 09:26登録) 6つの短編集。どの作品も岡島二人らしい無駄のない筆使いできびきびと話が進んでいく。推理小説を読んでいるとしばしばトリックを考え出しそれを広げていってある程度の長さ(多分出版社などから求められている長さなのだろう)としたと考えられるようなものが多いのだが、この短編集はかなり長めの話を作りあげた後に無駄を削って結晶化したような印象を受けた。表題作が一番面白い。犯人の性格の悪さが最後になって暴かれるのも興味深い。 |
No.181 | 7点 | 暗い宿 有栖川有栖 |
(2011/03/20 09:12登録) 宿をテーマのちょっと長めの短編が4つ。作品のでき不出来(好き嫌いではないと思う)がちょっと大きい気がする。表題の暗い宿やホテル・ラフレシアは推理の要素も有栖川氏特有のムードもあってとても楽しめたが、異形の客はちょっとおちる。201号室の災厄はぜんぜんだめ。こんなの無理でしょ。まあ作品のできに波があるのが氏の特徴かもしれないので我慢しましょう。よいものはとてもよいのだから。 |
No.180 | 5点 | ちあき電脳探偵社 北森鴻 |
(2011/02/28 18:24登録) 北森鴻の幻の美少女探偵小説と銘打ってインターネットで販売されたので迷わず購入した。届いてみるとえらく大きな活字であとがきを見ると、ななんと小学3年生に連載されたとあるではないか!。本屋で見たら買わなかったなあ。インターネットは便利だが、本の中まで見えないのでこういうこともあるのだ。子供向きなのですらすらと読めるしまあ面白いのだろうが、探偵小説好きのおじさんにはちょっともの足りない。小学生の親戚の子にあげよう。きっと喜びそう。 |
No.179 | 10点 | ジークフリートの剣 深水黎一郎 |
(2011/02/09 20:48登録) 今回はついにワグナー。しかも人類が作りえた最大の大作ラインの黄金がとりあげられた。作者の芸術に関する知識は深いことが分かってはいたがこれほどとは思わなかった。フランスへ留学したとのことだがドイツのバイロイトへ何度もいっているようで、クラシック好きにとって羨ましい限り。 読んでいるうちに音楽が聞きたくなって所有しているショルティー、ベーム、フルトヴェングラー、クナ、メータなどを聞きなおしてしまった。そしてヘルデンテノールはやっぱり希少なのだと改めて認識しながらも、この小説ってミステリー?でもこれはこれでいいやと思っていた。ところが最後の段階となってしっかりとミステリー。最後は実に感動的。こんなことは実際にはありえないと思ったがはるかに感動が大きかった。 作者は聞くだけで4日もかかるワグナーの畢生の大作についてきちんと説明はしているが、この楽劇に対する興味とシンパシーがないと理解しがたいところがあるので万人向きではないかもしれません。私にとってはとてもすばらしいお話で、読むに従いジークフリートやノートゥングのライトモチーフが頭に響き、最高でした。 |
No.178 | 7点 | 水魑の如き沈むもの 三津田信三 |
(2011/01/16 09:44登録) 民話とミステリーのおどろおどろしい合体は今回も健在で、このぶんについてはとても楽しめた。謎も多彩で刀城が最後のほうで多くの謎を整理して呈示して最終的にすべてを解くというミステリーのお決まりもかたちとしてはきちんとしているようにみえる。 ところがその解決の過程にいたっては探偵は無理な推理を長々とやってくれるし、最後も犯人が分からないままみんなを集めてしまうしとめちゃくちゃなところも目立つ。 以下ネタバレのところがあります。 旧帝国海軍の潜水具が見つかれば女子供でも装着して真っ暗な水中洞窟を潜水していける!。ピストルを手にしたら初めて手にした人が離れたところから連発で命中させて立ち会った人が気づく前に逃走できる!。睡眠薬で寝かされていた子供が起きた瞬間に大人の急所をいっぱつでしとめてしまえる!、など次々と気になるところが出てきてこれが出来るという仮定の下の推理が長々と続き、しかもその多くをまた否定してしまうこととなる。はじめっから無理なことは分かるでしょ。最終的な解決もどうもすっきりしない。 読んで楽しめたかといった点では十分に楽しんだのでそんなに文句をたれてもいけないとも思うが、現在一番期待している作家なのでちょっと言い過ぎかもしれません。次作を期待しています。 |
No.177 | 8点 | 亜愛一郎の逃亡 泡坂妻夫 |
(2011/01/10 09:46登録) なんとなく違和感を感じていたこのシリーズもここまで読み進むと愛着のようなものも感じられるようになった。 作者独特のユーモアとサービス精神は立派なもので、そのうえ奇抜なアイデアにあふれている。当初はこんなユニークなトリックの長編が読みたいと思っていたが、作者は多分マジックの一発芸のような趣でこの連作を書いたんだろうと一人で納得している。 単純ななテーブルマジックはあっと驚くが何度もやると種がわかってしまうように、これらの話も長編として色々な角度から推理するなんてことをすると傷が目立ってくるのだろう。 それにしても最後の「逃亡」は出場人物のカーテンコールのようでとても愉快だった。 |
No.176 | 7点 | 山魔の如き嗤うもの 三津田信三 |
(2011/01/07 19:41登録) 相変わらず雰囲気は好きです。こんな世界は三津田氏の独壇場でしょう。ただ最後の場面で二転三転する推理は意外性もあるが一度決め付けておいて次々と裏返すような展開はあまり好みではない。とても注目している作家ではあるがこれほど背負い投げを食らわせられるとちょっとね。こんなことなら違う推理を主張するワトソンのような存在があったほうが自然に思うけど。しかも最後に何となくぼんやりした結果となるのが消化不良の感を抱くところです。これだと犯人が結局誰でも成り立つのではないかといった感じがするのだが。 |
No.175 | 7点 | 亜愛一郎の転倒 泡坂妻夫 |
(2011/01/02 11:14登録) 皆さんの評価が高い「砂蛾家の消失」と「病人に刃物」はすごく奇抜なトリックではあるのですが、現実にはほとんどありえないことが職業上分かってしまうのである面でちょっとびっくりした。しばらくしてひょっとしたら作者のことだからこの小説をある一定の知識があるものが読めば現実にはありえないことが分かることを承知の上で書いたのかもしれないとの思いに至りさらにびっくりした。 まあそういったところがあるので一番好きなのは「珠洲子の装い」です。奇抜なトリックでもあり、なるほどこれならと納得させられる。 |
No.174 | 6点 | 喜劇悲奇劇 泡坂妻夫 |
(2010/12/30 09:22登録) この小説が出た頃は泡坂妻夫をもっとも注目しており新しいものが出るたびに買い求めたが、この作品以後ちょっと遠ざかってしまった。題名も章題も出場人物も回文というあまりに凝った内容のわりに小説としての魅力に欠けるところがあるように感じたからです。作者の小説の中ではだいぶ落ちると思うがここまでよくやったということでこの評価です。 |