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ミステリの祭典

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46番目の密室
作家アリス&火村シリーズ

作家 有栖川有栖
出版日1992年03月
平均点5.39点
書評数57人

No.57 6点 斎藤警部
(2024/06/08 12:57登録)
“あるいは小説作品のトリックとしては面白味に欠けていながら、高度な実用性を具えたトリックが。もし、それを××が盗用したとしたら、最も危険な廃物利用になるのではないか?”

やたらな牽引力でリーダビリティ猛烈。 ユーモアとペーソス両サイドからフットワークの良い文章。 いかにもロジック伏兵の忍び込んであれよあれよと活躍しそうな空間やら盲点候補がソコカシコに本当にキラキラしてて愉しい。 零れ落ちる、どうしたって避け得ないメタの空気感には目を瞑ろうではないか。 ×××と見せかけて(もいないか?)実は×××トリックにこそ軸足という構造は驚天動地ではないが、その反転エネルギーはさほど強大ではないが、知的興味に訴える所あって決して悪くない。 足跡トリックの構造と機微にはなかなかフムフムしました。 「針と糸」系密室トリック再現実験に興じる刑事たちのシーン、メタ微笑ましくて笑いました。

「うれしいか?」
「いや、別に」
「俺もだ」

北軽井沢にて恒例のクリスマス・パーティーに参集したのは “日本のディクスン・カー” と称される大物小説家を中心に、その同居人、ミステリ作家や編集者に有栖川有栖(この人もミステリ作家)と探偵役・火村英生、更には近所で目撃された不審人物を含め計十二名。 顔を焼かれた屍体としてほぼ同時に発見されたのはその内の二名。

“一人の男が容疑者の輪に入ってきて、名前さえ聞かないうちにすぐまた退場していった。”

この本ねえ、中盤のスリルは相当なもので本当に熱くなったんだけど、ラストクウォーターで減速しちゃったかなと。。 キラキラ光った魅惑の「九十メートル」! ネタが明かされてみればまあそこそこだったが、いいでしょう。 いっそあの 『泣かせるダミー動機』 の物語にしっかり尺とって講釈してもらってくれてたら良かったかもにゃあ。 ところが、ソコあっさり否定されて真犯人もあっさり暴露! ってコトはまだ何んかあんじゃないかと期待もしてしまいましたよ。 あの動機反転の(控えめな)ドヤ顔もちょっとなあ。。時代背景の違いもあるにせよなあ。 あと、探偵役・火村が(時に有栖川も一緒に)事件の謎をリストアップする場面で、それまで盲点となっていたような意外な謎が掘り起こされず単なるおさらいで済んじゃったのは、ちょっと湿っちゃいました。

それこそ、もうちょぃとばかし(本格ミステリ演出効果のために)人間が描けていたらなぁ。。 とは惜しまれる。 文章自体は悪くないですよ。

“――やれやれ、それでは転がしたサイコロの出す目は偶数、もしくは奇数である、と言っているのに等しいではないか。”

「スウェーデンのディクスン・カー」 にも言及されていましたが、 「韓国のアントニイ・バークリー」 とか 「ベトナムのボワロー&ナルスジャック」 とか 「アメリカの麻耶雄嵩」 とか、 「北アイルランドの連城三紀彦」 とか 「シリアの鮎川哲也」 とか、いないんでしょうか。

No.56 6点 パメル
(2020/11/09 19:39登録)
推理作家・有栖川有栖とその友人の犯罪学者・火村英生のコンビシリーズ第一弾。
密室を扱ったミステリばかりを発表する推理小説作家・真壁聖一から、クリスマスパーティーに招かれた有栖川と火村は星火荘へ向かった。そんな中、完全な密室の中で真壁は殺されてしまう。自分の考えた46番目の密室トリックで殺されたのか。
タイトルのとおり、密室に焦点を当てた作品かと思ったが、メインの対象としては扱われてはいない。その他の様々なデータを集め、それらを組み合わせて犯人を導き出すというロジカルな謎解きが楽しめる。有栖川と火村のやり取りも楽しいし、テンポも良くリーダビリティが高く好印象。

No.55 5点 雪の日
(2020/05/03 21:04登録)
普通の本格ミステリ

No.54 7点 虫暮部
(2019/07/30 11:55登録)
 揚げ足取り。
 煙突の中の暗号は、出鱈目を書いておいても(いや、何も書かなくとも)犯行に於いて問題は無い。それなのにわざわざちゃんとした暗号を作って使っている。作中で突っ込んで“ミステリ好きの矜持です”とか言わせればいいのに。
 火村が小さな声で歌ったザ・ローリング・ストーンズ「Paint It, Black」。実は作中の表記に該当する適切なフレーズは存在しない。

No.53 7点 mediocrity
(2019/06/16 03:08登録)
現状平均5.31点ということであまり期待せずに読み始めたんですが、何作か読んだ火村シリーズの中では上位に感じました。
特に足跡の謎解明が良かったです。タイトルの割に、本作の密室の謎はちょっと肩透かしだったかもしれません。個人的には動機が一番マイナスポイントですかねえ。

No.52 5点 ボナンザ
(2018/11/09 22:34登録)
舞台設定やトリックなど若書きなところもあるが、独創的な試みが嬉しいデビュー作。

No.51 7点 Tetchy
(2017/12/17 23:29登録)
このシリーズは先に文庫書下ろしで出版された2作目の『ダリの繭』を先に読んでいたので、前後したが、これでようやくシリーズの最初から触れることが出来た。

私が面白いと思ったのはこれはいわゆる雪の足跡トリックの変奏曲であることだ。通常このトリックはその名の通り、雪に囲まれた部屋や建物の周囲に残された足跡によって密室状態が生まれるトリックを指す。今回の舞台となった星火荘もまたその例に洩れず、周囲が雪に覆われた状態であるのだが、それにも関わらずこの足跡トリックが建物の外ではなく内側にて発生しているところだ。石灰を敷き詰めたことで生まれた足跡トリックだが、面白いことを考えるものだなぁと感心した。

まだ若かりし頃の本格ミステリに対して無限の可能性を信じて止まない有栖川氏の本格ミステリへの理想と夢が随所に込められているように思える。
まずやはり冒頭の真壁聖一の存在。世界に認められた日本本格ミステリの巨匠というのは日本の本格ミステリが世界にいつか通じるだろうと信じ、そんな未来を夢見ていた有栖川氏の理想の存在、いや自身が目指すべき目標であるように思える。それは現在実現しており、アメリカのエドガー賞に日本のミステリがノミネートされるまでになっている。

次に真壁氏が次の密室物を最後にまだ見ぬ「天上の推理小説」を書くと云った件だ。これこそ有栖川氏自身の未来への宣言ではないだろうか。「新本格」という目新しい呼称で十把一絡げに括られているまだ駆け出しの本格推理小説家ではあるが、いつかはかつて書かれてことのない物語を書いてみせる、といった若者の主張のように思える。そして今なお精力的に本格ミステリを著しては発表し、年末のランキングに作品が名を連ねている現状から見ても、この時抱いた有栖川氏の、高みへと目指す心意気はいささかも衰えていないように思える。巷間に流布する既存のミステリとは異なる次元に存在する天上の推理小説。有栖川氏の定義する天上の推理小説をいつか読みたいものだ。

そして最後はやはり犯人だけが見た、真壁氏が遺した最後の密室「46番目の密室」だ。それは「まるで世界が、世界を守るためによってたかって一人の人間を抹殺するかのようなもの」。これもまた有栖川氏が抱く、いつか書くべき最後の密室ミステリなのではないか。そんなミステリを読んでみたいと彼は思い、そして出来れば自分で書いてみたいと思っているのではないだろうか。

と、このようにデビューしてまだ3年の時に書いたこの作家アリスシリーズには本格ミステリ作家となった有栖川氏の歓びとミステリ愛と、そして野心が込められている、実に初々しくも若々しい作品なのだ。

No.50 7点 邪魅
(2017/02/18 02:15登録)
トリックはシンプルでしたね
特に真新しさは感じられないです、が、やはり足跡から犯人逮捕につながるロジックはやはり見事の一言です

No.49 6点 nukkam
(2016/07/05 16:29登録)
(ネタバレなしです) 1992年発表の火村英夫シリーズ第1作となる本格派推理小説です。ワトソン役にアリス(男です、念のため)を配しているのは江神二郎シリーズと同じですがこちらのアリスは推理作家という設定です。シリーズ第1作といっても火村の特別な紹介場面もなく、スムーズに物語が進行します。とはいえ第2章での火村の告白には仰天しましたが。もったいぶった言い回しで読者(とアリス)をいらいらさせることのない火村の説明には好感を抱きました。容疑者とのやり取りよりも現場調査(フィールドワーク)の方に力を入れているのが新鮮でした。タイトルは魅力的に過ぎます。45の密室トリックが紹介されるものと勝手に期待してしまいました。

No.48 6点 ボンボン
(2016/03/28 14:26登録)
この頃、有栖川先生もまだまだ若かったんだなあ、という印象。推理小説に対する情熱というか、崇高な想いというか、視線も高くキラキラしたものに心打たれたので、その分プラス1点。
トリックや謎解きの流れは結構普通なので、多少めんどくさく感じてしまったが、文章が巧いので、物語には引き込まれた。基本的には、品の良さや思いやりの深さが根底にあるので安心して読める。
しかし、あんな人間関係なのに、みんな「まあいいか」的にわざわざクリスマスパーティに参加するんだ。自分だったら絶対行きたくない。

No.47 6点 青い車
(2016/02/24 23:07登録)
まだ本格推理小説に免疫がない時期に読んだ初めての密室殺人ものだったということもあり、僕は素直に感心しました。まあ、確かに慣れた人からしたらトリックは他愛のないものかも。しかし、個人的には真壁聖一の最後の大トリックや、あとがきにあった「輝くような密室トリックは『不在』ならぬ『未在』だと夢見たかった」の言葉などから見られる、作者のミステリーへのロマンに敬意を表したいです。それに、トリックそのものは大したことないかもしれませんが、犯人が白いものづくめのイタズラをした隠された意図などはよくできています。

No.46 5点 風桜青紫
(2016/01/14 03:07登録)
密室を構築した理由はなかなか面白かったが、それをごまかすための犯人の行動にはいまいち納得できず。白一色にそめるなんて面白いガジェットを出してきたと思ったら……。これ系のネタは有栖川作品では他にもあったが、どうにも肩透かしだし、やる必要性が弱く思える。冒頭シーンを始めとするあからさまなミスリードにも首をかしげた。アイデアは良いが、そのぶん荒らさが目立ってしまったのでは。火村もこの作品だけだといまいち掴み所がない人物なのよね。これじゃただの野蛮なおっさんじゃないか!

No.45 6点 ミステリ初心者
(2014/02/05 07:55登録)
 ネタバレを含みます

 「どうやって殺したか?」が楽しめる作品でした。かつ、足跡の問題は、ロジックも楽しめると思います。
 密室がつくタイトル、被害者が密室ものの巨匠。ハードルがあがりまくりました。改めて考えると、ミスリードだったか

 以下、不満点。
 密室が犯人の意図したものでない(地下室)。密室ものでなかった(すごいの期待してた・・・)。
 犯人に偶然の不幸が起きる(推測はできる)。
 トリックもそんなにびっくりするものじゃなかった(自分はわかりませんでした)。
 星火荘の地図をつけてほしい。トリックに関係あってもなくても、地図をつてもらうと、格段に読みやすくなります。
 火村とアリスのキャラが好きになれない。

No.44 6点 まさむね
(2013/11/02 20:26登録)
 火村シリーズの第一作品。
 地味という印象もあり得ましょうが,伏線を含めてきっちりとした構成で,個人的には好きなタイプの作品。非常に纏まっています。

No.43 3点 mohicant
(2013/08/05 01:30登録)
 密室に面白味がなかった。

No.42 6点 バード
(2013/07/03 11:51登録)
良くも悪くも有栖川さんの作品といった感じかな。読みやすくてトリックや推理は小奇麗にまとまっている、その一方どんでん返しや目だったシーンもない。

この作品のメイントリックは長編一本のトリックとしては弱いと思う、それでもうまいこと考えるなと納得もしやすかった。

No.41 4点 mozart
(2012/09/15 16:46登録)
火村「助」教授+作家有栖シリーズの第1作を読んでいなかったことに最近気づいて、今更ながら図書館で借りてきて読了。う~ん、このシリーズはもっと面白かったはずなのに・・・、とややがっかりした、というのが偽らざる感想でした。

No.40 4点 スパイラルライフ
(2012/02/06 12:34登録)
タイトルに期待しすぎた私が悪かった。
斬新な密室トリックはでてきません。

氏らしい論理性には富んだ本格ミステリだとは思う。

No.39 5点 makomako
(2011/04/23 21:37登録)
火村と作家アリスシリーズの記念すべき第1作。初めてこれを読んだときは学生アリスの探偵江神さんと比べてだいぶ落ちるなあと少なからずがっかりした覚えがある。今回再読してみたがやっぱり同じ感触であった。有栖川氏の作品の多くははトリックだけでなく情緒や雰囲気を楽しめるのだが、本作品は雰囲気もさほどでなくトリックもまあこんなものといった程度。火村助教授も作品を重ねるたびにいい感じになったように思うがこの作品ではいまいち。

No.38 5点 HORNET
(2011/01/11 02:04登録)
 皆さんの評価に「無難」という言葉が多い,その通りだと思います。タイトルがそれらしく,長編なので本格的な密室ものとしての期待が高まってしまいますが,このトリックならいつものように短編でもよかったのでは,と思います。解明をしていく手順というか展開は,筋道だった論理が大切にされているとは感じました。

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