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ミステリの祭典

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スイス時計の謎
作家アリス&火村シリーズ

作家 有栖川有栖
出版日2003年05月
平均点7.22点
書評数49人

No.49 5点 nukkam
(2023/02/19 20:20登録)
(ネタバレなしです) 2003年発表の火村英生シリーズ第7短編集で中短編の本格派推理小説を4作収めています。講談社文庫版で150ページを超す「スイス時計の謎」は論理的推理にこだわりぬいた作品です。容疑者たちからの反論をかいくぐりながら火村が犯人を絞り込む展開はまさにこれぞ本格派の醍醐味で、個人的にはこれがベストです。倒叙本格派の「シャイロックの密室」は面白い手掛かりにユニークなトリックが印象的ですが「間接的になら容易」のトリックをどう完成させたかがちょっと説明不足に感じます。「あるYの悲劇」は作者が「あとがき」でいいトリックが浮かばずダイイングメッセージ作品にしたと説明していますが苦しい出来栄えで、「フェイントの次元が違う」真相には脱力しました。意外性を狙うにしても一般知識の範囲内でやってほしかったですね。

No.48 7点 雪の日
(2022/06/20 14:01登録)
理論詰めってやつですね、気持ちいい

No.47 5点 ALFA
(2022/02/02 08:39登録)
表題作のみ7点。

ロジックが美しい。しかもそれが、三十路半ばに差し掛かったかつてのエリート高校生たちの成功と蹉跌、抜き差しならない犯行の動機、こちらも抜き差しならない被害者の事情といった濃いドラマの上に展開されるから、読みごたえは十分。
犯人が火村と同程度にロジカルでなければならないことや、果たしてこのあと起訴から公判まで持っていけるのか、など突っ込みどころはあるが・・・
なお犯人指摘の場面での、同級生同士の会話はややチープ。エリート同士なら火の出るような言葉のバトルが欲しかった。

他の三作は格段に落ちる。初めから読んでいったので、途中どうしようかとも思ったが、表題作まで行きついてよかった。

No.46 6点 蟷螂の斧
(2021/03/22 20:11登録)
①あるYの悲劇 3点 ダイイングメッセージの「Y」。それはないでしょ(苦笑)
②女彫刻家の首 5点 首なし理由は納得するも、推理が飛躍し過ぎ?(歯医者と病院を教えて勘違いする?)
③シャイロックの密室 7点 「ヴェニスの商人」を読み終えたばかりで、シャイロックに出会うとは。廊下の絵がずれていたがヒント。これは好きなタイプ 
④スイス時計の謎 8点 ロジックの好きな方は、すぐに理解できるのでしょうね。私など「うん?そうなのかな?」しばらく考えて「ああ成程ね」といった感じ。だから一発で分かるどんでん返しの方が好み。
なお、講談社文庫版P345~346の犯人を特定する肝心な文章が非常におかしい(意味不明と読者の何人かの人が指摘)。主語や目的語を補填し意味の通じる文章にしてくれている奇特な方がいらっしゃり助かりました。

No.45 6点 虫暮部
(2020/11/29 15:01登録)
 二重基準を発見。「あるYの悲劇」で、“H○○○をY○○○と聞き違えた”との説を“イントネーションが別物”と退けている。一方「女彫刻家の首」では、“○○○○と×○○○を聞き違えたのでは”としているが、こちらだってイントネーションが違うじゃないの。小説であってもイントネーションをきちんと考慮に入れて欲しいと私は思う。しかしわざわざこの二つを同じ本にまとめなくとも……。

No.44 8点 ぷちレコード
(2020/10/22 19:25登録)
表題作は小説の形式は極めてオーソドックスな型の探偵小説。
しかし、その論理展開には新鮮なものがあり、かつ理詰めで物事を突き詰めていくことの美しさや楽しさを十二分に伝えてくれるものだった。
設定、構成などの外見的な部分でケレンに頼らず、純粋に論理のみで勝負しており、本格ミステリとして高度な達成をなしえている。

No.43 6点 ボナンザ
(2020/05/21 19:02登録)
スイス時計はこちらのシリーズには珍しいロジックもの。
ほかはいつも通り。とはいえスイス時計もラストの他のメンバーとのやり取りが、むしろロジックをチープなものと描いているようにも見える。

No.42 6点 レッドキング
(2019/08/12 08:28登録)
(採点とコメントは表題作に対してのみ)
最初から何か「腑に落ち」なかった。てことはこの「ロジック」のどこかに瑕疵があるにちがいないと念入りに精査したが、特に瑕疵は見つけられなかった。

(訂正及び追記)
「ロジック」に「瑕疵」は見当たらないがイチャモンは付けたい。端折って最後の3人に容疑者を絞ったところから。
「犯人はABC以外にはあり得ない」「もしAが犯人ならばAはXをしない」「もしBが犯人ならばBはXをしない」「犯人はXを行った」「ゆえにA及びBは犯人ではなく残ったCが犯人である」・・・・
だが、現実の人間とは「もしAが犯人ならばAはXをする必要はないのに、無意味にXをしてしまう可能性もある」存在である・・・。
したがって採点も6点に変更。

No.41 9点 ねここねこ男爵
(2017/11/09 17:37登録)
ほぼ表題作のみの評価。ロジックもの短編の国内ベスト。

ロジックものはどうしても複雑な状況を作り複雑に解説するという形式になりがち。容疑者を一人ひとりふるい落とす根拠を用意せねばならず、そうすると容疑者の数が増えるほど長く複雑にせざるをえなくなる。さらに面白みを加えるためか、関係ありそうで無関係な事象を平行して走らせる小説が多く(出来の悪い長編あるある)、そうするともう何がなんだかとなりがち。
この作者は論理のために無理やりオーダーメイドされた世界を作ることをせず、ぱっと見意味のないような些細な状況から論理を構築するのが異様に巧みで、文章力もあいまって読ませる。特に表題作の見事さは『孤島パズル』に匹敵。

ちなみにその他の3短編も悪くなく、標準的なレベルにはあるかと。『女彫刻家の首』は首切り死体はなぜ首を切られるか?のバリエーションのひとつ。

『ロジックよりトリック』『どんでん返し!意外な犯人!衝撃の真実!』な人は読んではいけません。

No.40 8点 メルカトル
(2016/10/03 21:49登録)
以前、ある知り合いの女性が有栖川有栖の国名シリーズを好んで読んでいた。曰く「面白い、読みやすい」と。私は初期の江神二郎シリーズや『マジックミラー』『46番目の密室』などは読んでいたが、国名シリーズにあまり思い入れはなかったため、そんなものかくらいにしか思っていなかったものだが、本作を読んで考えを改めた。
表題作の目から鱗が落ちるような鮮やかな解決。『あるYの悲劇』のダイイングメッセージの意外性と意表を突くがごとき発想の突飛さ。ほかの二作もそれぞれトリックに新味が感じられ、好感が持てる。
まるでまろやかなココアのような舌触り、そんな読み心地の良い短編集であった。

No.39 8点 ボンボン
(2016/04/27 23:17登録)
表題作「スイス時計の謎」には感服した。火村の無駄のないたたみ掛けに、土下座する勢いで感服した。そんなに本格ファンでもない自分が、こんなにロジックそのものにブンブン頭を縦に振ったのは初めてじゃないか?
アリスの「閉塞した現在と不安な未来」についての心の動きも物語の裏支えになっている。他の3作も含め、もがきながらも人生に向き合っている人たちの日々が切ない。
それでもやっぱり、表題作以外の3作の物足りなさは残念かな。「あるYの悲劇」はまだいいが、他の2作のような短編は、面白く読むことはできても、火村とアリスである意味が薄いし、トリックの無理っぽさが悪目立ちしてしまう。

No.38 8点 青い車
(2016/02/20 21:18登録)
以下、各話の感想です。
①『あるYの悲劇』 他の人の評価はあまり芳しくないものの、僕はかなり好きです。ある誤認と特殊な形式のダイイング・メッセージとが相まって、意外な解決を見せてくれます。
②『女彫刻家の首』 首切りの理由が弱いことも不満ですが、それ以上に首をすげ替える必然性がぼやけたままなのがスッキリしません。これはやや落ちる出来かも。
③『シャイロックの密室』 専門知識がないのでこのトリックの実現性はわかりませんが、発想はなかなか悪くないです。しかし、タイトルにシャイロックと付けるメリットが見当たらないのは難です。
④『スイス時計の謎』 まず、現場の状況から容疑者を五人に絞り込み、そこからさらに腕時計というアイテムひとつから唯一無二の犯人を特定する、二段構えの推理が冴えわたっています。国名シリーズにあやかったタイトルに恥じない、まさにクイーン的な傑作。

何と言っても④の素晴らしさに尽きます。ワン・アイディアの短篇もいいですが、やっぱり有栖川さんが本領を発揮するのはこれくらいのヴォリュームの作品だと思います。あとはちょっと見劣りしますが、①もお気に入りです。

No.37 7点 風桜青紫
(2016/01/14 04:31登録)
『スイス時計の謎』は言うまでもなく犯人当て短編の傑作。犯人当てのとっかかりがイマイチ掴めないまま解決編に入るが、そこからの火村の推理には圧巻されるばかり。時計ひとつをここまで拡張させて犯人当てに利用するのは見事としかいいようがない。最後になんかアリスが少し報われたのもよかった。ヴェロニカさんを落としかけたテクニックをふんだんに使っていってほしい。

どうもこの短編集は表題作以外の評判が芳しくないようだが、私はどれもなかなか楽しめた。くだらないといえばそれまでだけども、三作品ともワンアイデアの適度な面白さがあるのである。『あるYの悲劇』の絶妙なくだらなさ、『女彫刻家の死』のあっさり感、『シャイロックの密室』のありそうでなかったとんでもトリック、どれも適度に楽しめた。

No.36 6点 パメル
(2016/01/13 21:42登録)
表題作のスイス時計の謎以外の作品は凡作に感じてしまった
スイス時計の謎は地味ではあるがトリックよりロジックという方には是非読んで欲しい作品

No.35 7点 505
(2015/10/15 10:04登録)
バラエティに富んだ国名シリーズであるが、なかでも表題作は必読の価値あり。これぞ、本格ということを自ら主張するかのように、直球勝負を仕掛けてくれた作者に感謝の言葉を述べたくなる。傑作である。〝なぜ犯人は被害者の腕時計を奪ったのか〟から導かれる犯人像の絞りと展開の流麗さは圧巻。純粋なフーダニットでもあるが、それ以上に〝腕時計を奪った〟というホワイダニットがシンプルがゆえに手堅い。論理的にもって犯人に迫る火村という探偵の存在感を際立たせつつ、容赦なく切って捨てる一面も見せるところもあるので、キャラ小説としてもこの上ない出来だと言えるだろう。『腕時計』という小道具から見えてくる可能性に対して、心理的根拠と物理的根拠を駆使して真正面から切り込んでいく様こそ本格ミステリの醍醐味ではないだろうか。意外性よりも論理の美しさを追求した作品である。

『あるYの悲劇』は、タイトル通りにエラリー・クイーンの名作を意識した作品で、凶器が楽器である。根幹としてあるのは、〝Y〟を絡めたダイイング・メッセージもの。本家では、堅牢なロジック以外にも〝意外な犯人〟と強烈な結末が売りであるが、本作はダイイング・メッセージの意味がやはり肝で、ある意味な〝意外な犯人〟という形まで描かれている。多少のツッコミ所はあるが、それに目を瞑りたいほどのミスディレクションがあり、その意図は唸らされる。

『女彫刻家の首』は、顔のない死体モノである。フーダニットというよりも、なぜ首を切ったのかが根底としてある。オーソドックスなミステリでありながら、ある人物のリアクションから導かれた発想は興味深いものとなっている。そして、火村の無神論者としての強烈な振る舞いが、ファンとしては印象に残るであろう作品。

『シャイロックな密室』は、シェイクスピアの香りを醸し出した、倒叙形式の密室モノ。倒叙ミステリなので、犯人が火村に追い詰められるシーンの迫力は確かなものがある。密室殺人自体は斬新というわけでもないが、その伏線の張り方は丁寧。シェイクスピアから感化された作品だけあって、モチーフにもヒントが隠されているが、そこに頼り切りではないところが好印象。倒叙形式にしたことにより、火村というキャラを際立たせたオチがシリーズ作品としての厚みを持たせる。

No.34 5点 文生
(2015/10/13 17:53登録)
表題作が非常に評価が高いわけだが、本作の柱となるロジックが納得できない。

犯行の最中に、自分の腕時計を割ってしまった犯人はなぜ、被害者が持っている同じ種類の腕時計と交換しなかったのか?
(交換しておけば腕時計に注目されて、容疑者を限定されることもなかったのに)

というのが推理の端緒になっているが、被害者の腕時計を持ち帰って自分のものとし、被害者の腕に割れた自分の腕時計をはめたとしても科学鑑定にかけられればいつ自分の腕時計である証拠が見つかるか分かったものではない。
どんな事情があろうと遺留品はすべて持ち帰るのが自然だと思うのだが
いかがなものだろうか。

No.33 7点
(2014/05/22 10:25登録)
「あるYの悲劇」・・・ダイイングメッセージ+α。単純だが平均以上の出来。
「女彫刻家の首」・・・いちばん印象が薄い。なんで首切ったんだったかな?
「シャイロックの密室」・・・トリックそのものはそれほど好きではないが、倒叙モノならではのワクワク感がたまらない。
「スイス時計の謎」・・・かなり良い。だが、登場人物が「論理的」とか「ロジック」とかいう言葉を吐きすぎ。こういうセリフに左右され、そう思い込んでしまうこともある。ちょっとずるいなあ。

短編ということもあって総じて地味。でも満足。
こういった作品群を読むと、本格ミステリって本当にいいな、とあらためて感じさせてくれます。

No.32 9点 いいちこ
(2014/04/07 17:29登録)
表題作以外の3作は見るべきものがない「凡作」。
表題作はロジックの比類なき切れ味と、無駄を削ぎ落としたストイックなプロット・構成が光る傑作。
中途半端なボリュームだけに、長編にも短編にもカテゴライズされず、随分と損をしているだろうが、長編に水増ししてもクオリティが低下するだけだろうから、やむを得まい。
それでも短編のオールタイムベストの常連にランクインしている事実は伊達ではない

No.31 7点 まさむね
(2012/06/16 18:47登録)
 国名シリーズの前作「ペルシャ猫の謎」が(平凡な)変化球であったのに対し,この短編集はど真ん中の剛速球といった感じです。
 特に,表題作はロジック全開。フーダニットとしても良質。読者を楽しませるのに,必ずしも派手な演出はいらないという好例。短編というよりも中編といった分量ですが,内容からすればベストの長さ。
 他の3短編も,水準級以上にはあります。個人的には,「あるYの悲劇」も推したいんですけどねぇ。でも,これは評価が分かれるかぁ(笑)。
 ともかく,「本格短編読みたいな」って方にはオススメでしょう。

No.30 8点 makomako
(2011/06/09 21:38登録)
スイス時計の謎は本格推理としてよく出来た作品と思います。この程度以上の長さがないとアリスと火村の掛け合いの楽しみが薄れてしまうのでちょうどよいのかも。いかにも本格らしいロジックにあふれていますが、しっかりと読んでいかないと意味不明の推理となりそうではあります。本格推理が好きな読者にとっては興味深い展開なので、当然私も興味しんしんで読みました。そのほかに3篇ではあるYの悲劇はまずまず。女彫刻家の首はちょっと落ちる。シャイロックの密室はトリック一本での勝負作。現実にこの話どうりになるかはかなり疑問ではあるが(理系の人間はすぐこういうことを考えていけませんね)まあ良しとしましょう。

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