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ミステリの祭典

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「裏窓」殺人事件 tの密室
貴島柊志刑事シリーズ/改題『「裏窓」殺人事件 警視庁捜査一課・貴島柊志』

作家 今邑彩
出版日1991年10月
平均点6.00点
書評数10人

No.10 5点 虫暮部
(2023/02/24 14:40登録)
 真相を知ってみると成程なかなか上手く捻ってある。しかしそこに至るまでの事件の展開にはあまり乗れなかった。
 この人の作風に警察官の主人公は合わないのではと思ったが、事件がこれなら必然だ。警察の視点ゆえに成立してしまった謎。

 確認:
 犯人と本命被害者をつなぐ糸は、他者から見ればそれほど太くはない。“被害者を恨んでいた者はいますか?” との質問に、即座に名前が挙がるポジションではない。
 しかし、アリバイ工作は、例えば1ヶ月後に覚えていたら却って不自然な内容である。つまり犯人は、自分の名前が即座に挙がり取調べを受けることを想定していた。
 その想定は犯人に有利な側に外れた。ところがアリバイ工作から偶然、少女の “事件目撃” が生じてしまった。犯人にしてみればそれは別件だが、警察官が部屋を訪れ、そこで或る物を見た。
 “つなぐ糸” がいずれ露見した可能性はあるが、作中の展開ではそれ以前に “或る物” が真相解明の決め手となっている。従って、結果的に、余計な想定からアリバイ工作をした為に犯人は捕まった、と言うことになる。皮肉な成り行き。

No.9 6点 パメル
(2021/08/20 10:08登録)
三鷹にある8階建てのマンションの最上階から、ひとり暮らしのデザイナー・北川翠が墜落死した。そして向かいのマンションに住む坪田順子という少女から三鷹署に、不審な男の影を見たとの通報が入る。しかし北川翠の部屋が密室だったことから、勘違いとして片付けられてしまう。
貴島柊志シリーズの第二作。タイトル通り、ヒッチコックの傑作映画「裏窓」がメインのモチーフとなっている。坪田順子自身、足が不自由で映画の中に登場するカメラマン・ジェフのように、双眼鏡で向かいのマンションを覗いている。もちろん「裏窓」のビデオは何回も繰り返して観ている。ストーリーは映画に忠実に進んでいくが、いつしか映画から逸れていき、全く違う方向へと展開していく。ほぼ同時に起きた二つの事件の繋がりは思いがけないものであり、そして意外な真相を暴き出され驚かされる。
最後に貴島刑事が真相を見破るシーンもよくあるパターンだと思うが、綺麗ににまとまっていると思う。ただ、冒頭とラストに登場する幻想的な雰囲気の絵の存在はどうなんだろう。せっかくの理想のオチなのに、やや逆効果のような気がしますが。この本を読む前に、映画「裏窓」を再度観直したのだが、ある意味効果的に楽しめました。

No.8 6点 nukkam
(2015/08/22 08:20登録)
(ネタバレなしです)  1991年発表の貴島柊志シリーズ第2作の本格派推理小説です。作者が「怪奇と本格推理の融合」を試みた作品ですが本書の場合は怪奇色が出てくるのは物語の3分の2が進行してからです。エピローグについて「合理的な謎解きのお好きな人は読む必要がありません」と断り書きしていますが、まだおとなしいレベルかなと思います。

No.7 7点 蟷螂の斧
(2014/08/08 09:00登録)
中公文庫版にて。副題は「警視庁捜査一課・貴島柊志」、メイントリックからしても、旧「tの密室」の方がマッチしていると思いました(苦笑)。著者あとがきでは、構想に苦労したと語っていますが、まさにその通り構想の勝利といった作品でした。伏線もしっかりと描かれており、非常にフェアで好感が持てます。犯人の狂気も、トリックもお気に入りです。あとがきの続き~「合理的な謎解き」のお好きな人は、エピローグを読む必要はありません。(中略)読んじゃった人はさっさと忘れてください。蛇足みたいなものですので。こういう「???」みたいな話を色々想像して楽しめる人のために残しただけです。少ないとは思いますけれど・・・・・・。~カーの有名作品を想定していっているのかな?(笑)。

No.6 7点 初老人
(2014/05/23 09:51登録)
(ネタバレあり)
貴島刑事シリーズを読むのはこれが初めてです。 時刻誤認をした結果として密室が作り出される、というのは 斬新な試みではないかと思います(もっとも私が知らないだけで前例があるのかもしれませんが)。しかも被害者の家に犯行当時男物の靴が置いてあった事から、もう一捻りした真相を作り出す事に成功しています。
最後のオカルト部分は今一つ好きになれないのですが、これを読んで貴島刑事が出てくる他の作品も読みたくなりました。

No.5 7点 測量ボ-イ
(2013/05/18 16:47登録)
氏の作品の中では良作の部類でしょう。
導入部が入りやすく、謎もシンプルでわかり易い。
そして解決もスッキリしていて、フェアプレイも問題
なし。伏線の回収も見事で犯人の意外性のありました。
(動機はさすがに推理不可能ですが)

氏は現在本格色の強い作品を書ける貴重な存在でした
が最近亡くなられたそうで残念な限りです。

No.4 5点 E-BANKER
(2012/06/19 21:56登録)
「i~鏡に消えた殺人者」に続く、警視庁捜査一課・貴島柊一シリーズの第2作。
作者らしい軽いオカルト風味の効いた作品。

~自殺と見えた密室からの女性の墜落死。向かいのマンションに住む少女は、犯行時刻の部屋に男を目撃していた。少女に迫る犯人の魔の手・・・。また、同時刻に別の場所で起こった殴殺事件も同一人物の犯行と見られるが・・・。衝撃の密室トリックに貴島刑事が挑む。本格推理+怪奇の傑作!~

良くいえば「まとまってる作品」。悪くいえば「地味」とでもいうべきか・・・
プロットはよく練られてるし、女流作家らしく洗練されてる。
プロットのメインは王道ともいうべき「アリバイトリック」。
最初から小道具として「時計」が再三登場するので、読者としてもトリックの大筋には気付いてしまうのが難だが、見せ方はうまい。
電話や「音」を伏線などで効果的に使ってるのもなかなか。

そして、もう一つのサプライズが真犯人と動機。
この「動機」はスゲエなぁ・・・
普段は至極まともな人間なのに、特定の部分だけは常人では考えられないほどの異常さを示す。
これぞ狂人の考え方なのだろうが、迫力があって犯人の造形としては成功しているだろう。
さらに、追い打ちをかけるような、複雑な事件の背景・・・
まぁ、これも1人の脇役のエピソードに長々文字数を使ってるので、「なんかあるな」とは察してしまった。

というわけで、誉めるべきところは多いものの、個人的には前作の方が好き。
(貴島刑事の謎は徐々に明らかにされるものの、まだまだ秘密の多い過去がある模様・・・)

No.3 6点 メルカトル
(2011/07/06 21:46登録)
密室状態からの飛び降り自殺?と女子大生連続殺人事件が有機的に繋がっていく様は、なかなかサスペンスフルで小気味良い。
車椅子の少女をめぐる人間関係と、刑事達の地道な捜査、女子大生殺人事件の謎など、様々な要素がバランスよく配置されて、読んでいて飽きが来ない。
意外な犯人と併せて、まさかの人物が予想外に事件に関わってくるのは、さすがに読めない展開だ。

No.2 6点 makomako
(2011/06/24 07:43登録)
一見無関係な事件がだんだんと捜査するに従いつながってくる過程は興味深く読める。探偵の貴島は陰気で暗く、あまり好きなキャラクターではない。彼の性格上結構衝撃的な話なのに物語の伸展が平坦な感じがする。目撃者の女の子もえらく気が強そうでもうひとつ魅力に欠ける。登場人物がよければこの話はもっともっとよくなりそうなのに。

No.1 5点 Tetchy
(2007/10/14 22:26登録)
本作もある先達の作品へのオマージュとなっております(題名からバレバレか)。
前作よりも洗練されて全てが謎解きに寄与している、贅肉の無い作品だと思いました。
1作目の趣向が今回も凝らされていたが、前作よりもやはりその衝撃度は落ちますね。
でももっと沢山の人に読んでほしい作家です。

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