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ミステリの祭典

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こもとさんの登録情報
平均点:6.60点 書評数:86件

プロフィール| 書評

No.26 5点 謎亭論処
西澤保彦
(2007/10/16 22:01登録)
 ご期待どおり、余すところ無く飲酒シーンが収められております。 これぞ、タックシリーズ(笑)
 トリック的には、コレといったものはないというのが正直なところですが、タックとその友人たちのキャラ主体で読み進めていくには、良いかと。 書き手も、タックあり、ウサコあり、タカチあり、神の視点あり・・・と、バラエティ豊かだし、時系列がバラつき気味な点も、お馴染みのメンバーのその後もわかり、様々な表情が楽しめます。
 ただ、このシリーズの社会人編を読む度に軽い違和感を感じるのは、ボアン先輩のあまりの変わり様。 社会人になっても、もう少し破天荒なままのボアン先輩でいて欲しかったんだけどな、私としては。


No.25 9点 光の帝国 常野物語
恩田陸
(2007/10/16 21:51登録)
 文字を辿っては泣き、泣いてはまた辿る。 ラストシーンのツル先生の一言に、私の目は洪水を起こしました。 電車の中で読むには、恐ろしい存在の本です。
 もう、多くは言いません。 ただ、一度手にとって、最初の一編を読んでみて欲しい。 私に言えることは、それだけです。 ツルは千年、カメは万年・・・。


No.24 6点 御手洗潔の挨拶
島田荘司
(2007/10/16 21:49登録)
 この本で私が一番好きな作品は、文句なく「数字錠」です。
 なんとも言えぬ悲しい気持ちを感じながらも、「この事件を解決する探偵が、他の誰でもなく、御手洗潔で良かった・・・」そんな気分にさえ、なれてしまうのです。
 よく、「変人だ」と言われる御手洗氏ですが、そんなヒトコトでは片付けられない彼の魅力が、ぎゅっと詰まった作品だと思っています。 御手洗氏の変人以外の部分(?)、側面を見たい方は、是非(笑)


No.23 6点 スタジアム 虹の事件簿
青井夏海
(2007/10/16 21:46登録)
 連作短編集。 実際に自分が体験したわけでもなし、人伝えに聞いたわずかな手がかりだけで謎を解く、鮮やかなアームチェア・ディテクティブ(安楽椅子探偵)。 読者は、まったく同じ手がかりを与えられているだけに、論理的な考えで解決まで導く多佳子さんの姿に舌を巻きます。
 多佳子さんにとっての安楽椅子とは、レインボーズスタジアムの観客席なのですねぇ、きっと。


No.22 7点 風が吹いたら桶屋がもうかる
井上夢人
(2007/10/16 21:43登録)
 十返舎一九の『東海道中膝栗毛』の中に見られる「風が吹いたら」にのせて、依頼人までもがリレー方式。 しかも、あれよあれよと言う間に、ヨーノスケに対する超能力の評価までもが、雪だるま式に大きくなってゆくのは笑えます。
 美女の依頼を受ける三人の中の、とどのつまりは、さて、誰がもうかったんでしょうね? 一番の謎だったりして(笑)


No.21 7点 らんぼう
大沢在昌
(2007/10/16 21:39登録)
 大沢流・痛快アクションモノ。
 非番の日、偶然遭遇してしまった事件を「面倒くさい」と考え、隠蔽しようとするなんざ、刑事にあるまじき行為なんでしょうが。 でも・・・くっくっくっ・・・笑えます(笑) 型破りとしか言いようの無い二人に、「どうしようもないなぁ」と苦笑を交えつつも、読み進めていくうち、彼らがただの乱暴刑事ではない、とても骨のある男たちだということもわかります。
 これだけ笑わせてくれる短編集のラストシーンなのに、なんだかちょっとホロリとしてしまう、やはりそれが大沢流でしょうか。


No.20 9点 邪馬台国はどこですか?
鯨統一郎
(2007/10/15 23:52登録)
 邪馬台国がそんなところにあるなんて!?
 ブッダが悟りを開いてないって!?
 聖徳太子の正体が誰だっていうの!?
 いやはや、なんと馬鹿げたことをと、思うなかれ。 宮田六郎が次々と繰り出す新説を、あなたには否定する材料がありますか?(笑) 超お気に入りの連作短編集。


No.19 7点 盗聴
真保裕一
(2007/10/15 23:47登録)
 『ホワイトアウト』を読んだ時にも感じたことなのだが、真保氏の書く文章が醸し出す臨場感は、タダモノではない。 ストーリーの山場にくると、とにかく、必死で活字を目で追っている自分がいる。 そうでなければ、「主人公が」というより、読み手である「自分自身が」、その場に立ち竦んで一歩も動けなくなってしまう錯覚に陥るからだ。 ホントに真保氏は、「読ませてくれる」作家さんだと、つくづく思う。
 それにしても、この4編を読む限り、「オンナって怖い生き物だよなぁ」と思ってしまったのは、私だけだろうか?(笑)


No.18 7点 防壁
真保裕一
(2007/10/15 23:46登録)
 第2短編集。 1冊目よりも、こもとはこちらが、より、好み。 危険性の高い職業に就く4人の男たち。 その職務内容と、それぞれの私生活を反映させること・・・4編の共通性はそこにあったように思う。
 真保作品のリアリティについてはもう、今更述べるまでもないのだろうが、活字が映像として頭に浮かんでしまう描写は、やはり感心せずにはいられないものだ。
 それにしても真保氏がつけるタイトルって毎回、シンプルだけど的確。 上手いなぁ。 ディック・フランシスっぽいけど。


No.17 5点 七人の中にいる
今邑彩
(2007/10/15 23:41登録)
 今邑氏はですね、以前から思っていたことなんですが、ソツがないんですよね。
 どの作品も「面白くなかった~」というのはなく、読ませてくれるんですけど、自分の印象としては、ん~何というか、『華』がないんですね。 まぁ派手さにばかり気をとられている作家に比べると、地味でも今邑氏の方が断然面白いとは、ずっと感じているんですが。
 この作品もそうなんですけど、『華』がないっていうのは、自分が書くキャラクターへの愛情が薄そうな印象があるからかな、と思う。 なんとなく、客観的というかちょっとクールと言うか。 特に、初期作品はその印象が強い。


No.16 6点 九杯目には早すぎる
蒼井上鷹
(2007/10/15 23:35登録)
 いやはや、全編に亘ってブラックユーモアが冴えてますなぁ。
 長いことミステリを読み続けていると、探偵役がいて、犯人がいて、事件が起きて、解決編があって・・・「ミステリとはこうあるもの」だと、知らず知らずに思い込んでいる概念ってあると思うんですが、蒼井氏はそれを粉砕してくれますね。 意外な出来事に虚を突かれた瞬間は、「えっ?」ではなく、「へっ?」という表現がぴったりか、と(笑)
 ハリィ・ケメルマンの名作「九マイル・・・」に似せたタイトルに惹かれてしまった・・・。


No.15 6点 むかし僕が死んだ家
東野圭吾
(2007/10/15 23:29登録)
 登場人物は、たったの二人。 場所は時間の止まった、奇妙な館。 舞台設定はそれだけなので、普通、途中で気怠くなると思うんですが、後半になるにつれ盛り上がるんですよね。 さすがは東野氏、すごい『腕』だ。
 不気味に進む話に「ひ~~~っ」と半泣きになりましたが、結局、それだけ私が、ストーリーの中に引き込まれていたということですね。 おもしろく、そして悲しかったです。(え?矛盾してる?)
 私が読んだ頃は確か、解説にこの本の一番オイシイ部分が堂々と記されていて、激怒した人も多かったはずですが、今は変えてあるのかなぁ?


No.14 6点 日曜日の沈黙
石崎幸二
(2007/10/14 16:06登録)
 う~ん・・・女子高生二人のキャラがあまりにもベタで、最初はかなり辟易していたというのが正直なところなんですが。
 でも、二人はただのキャラではありませんでした。
 ラスト付近で見せてくれる彼女たちの推理披露に、もう「まいった!」という感じです。 笑いました。 こんなの、アリ?(笑)


No.13 10点 テロリストのパラソル
藤原伊織
(2007/10/13 13:16登録)
 一歩間違うと、むさくるしいだけ(?)になってしまいそうな主人公なのに、この小説に登場する誰もが、『何故か彼に惹かれていく』という気持ちが、とてもよくわかってしまう。
 それはたぶん、彼が誰かと交わす気の利いた会話、そこにカギがある。 特に、敵方と言える存在のヤクザ(浅井)とのそれは、内容がすごく洒落ていて、作者の圧倒的な筆力を感じさせてくれるもの。
 第41回江戸川乱歩賞・第114回直木賞の『ダブル受賞の看板に偽りナシ!』の作品だと思っている。


No.12 9点 プラスティック
井上夢人
(2007/10/13 13:12登録)
 ある程度、トリックが読めてしまったこともあって、余裕の表情でページを繰っていった自分が、「ちゃんちゃら、可笑しいや」って感じです(笑) うーん、注意一秒、怪我一生、油断が死を招きました。
 そのショックは、「かかと落としで脳天をガツーンとやられ、昇天、合掌という感じ」と言ったらおわかりいただけますでしょーか(笑)


No.11 6点 りら荘事件
鮎川哲也
(2007/10/13 13:09登録)
 バタバタと人がいなくなる(笑)、連続殺人が起きるわけですが、読み終えた後振り返ってみても、「あっ」と驚くトリックはないんですね。 でも、妙に納得してしまっている。 たぶん、小さくても一つ一つの謎に、きちんと解答が用意されているからか、と。 ただ、探偵の登場があまりにも遅くて、しびれが来てしまいましたが・・・。
 いまだに不思議で仕方がないことと言えば、合宿などという強制的なものでもないのに、こんなに仲が悪い7人組で何故旅行に来てるのでしょう?(笑) うちに秘めた憎悪というならわかるんですが、傍目にもわかる仲の悪さなのに。 ある意味、それが一番の謎(笑)


No.10 9点 奪取
真保裕一
(2007/10/13 12:49登録)
 主人公から脇役まで、活字の上で人物が生き、そして動き回る。 偽札作りに執念を燃やす仲間たちの様子を、楽しんで読める一冊。 (いや、上下巻なので、二冊か? /笑)


No.9 5点 六枚のとんかつ
蘇部健一
(2007/10/13 12:48登録)
 笑うか、本を床にたたきつけるか、という前評判でしたが、私は後者かもしれません。 最初から、「これはお笑いミステリ」と自分に十分言い聞かせてから読まなければ、とんでもない大火傷を負います(笑)
 多少、行き過ぎな感が漂うバカミスですが、古藤さんのキャラが中途半端なところが痛い。 鋭く推理する話と、こけまくる話・・・ここらへんが今ひとつ、ハッキリしない。
 15編の短編が収録されてますが、私が一番ウケたのは、何故だか番外編であるはずの「最後のエピローグ」。 「まったく、この作者は性懲りもなく・・・」と、これには思わず拳を震わせつつも笑ってしまった。 但し、この作品だけを読むのは御法度で、その前までの呆れ具合が大きければ大きい程、最後の最後まで呆れ続けられることウケアイです(笑)
 あ、この本は他作品のネタバレの宝庫ですので、重々ご注意下さい。


No.8 7点 浦島太郎の真相 恐ろしい八つの昔話 連作推理小説
鯨統一郎
(2007/10/13 12:43登録)
 誰もが知る既存の話に、新解釈を加える設定は、鯨氏のスタンダードだ。 中には、こじつけとしか思えない、無茶な解釈もあるけれど、妙に納得してしまう解釈も多いので、これが侮れない(笑)
 若い方にはハードルが高すぎるかもしれないが、ヤクドシトリオのコアな昔話も、思わず吹き出してしまう程、私には楽しかった。
 オススメはやはり表題作。 ええ、これこそ浦島太郎の真相に違いありませんから(←鯨氏信奉者/笑)


No.7 6点 茨姫はたたかう
近藤史恵
(2007/10/13 12:36登録)
 近藤氏は、女性が抱える不安や不満等、心理を描くのが上手い人だ。
 とりわけ今回の、自分をとりまく環境を不幸だと決めつけ、頑なだった梨花子の心が開いていくという、脆さが強さに変わるその瞬間が訪れたときには、私も梨花子と一緒に目が覚めた。
 脆く、傷つきやすく、すぐに被害妄想に陥りがちな女性に、『たたかって』欲しいと思った。 梨花子のように。

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