七人の中にいる |
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作家 | 今邑彩 |
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出版日 | 1994年09月 |
平均点 | 6.00点 |
書評数 | 11人 |
No.11 | 6点 | 虫暮部 | |
(2023/01/19 15:04登録) 友行・一美夫妻の第一子が緑、第二子が一行。なんで弟の名前だけ両親の字を引き継いでるのか。さては緑が養子なんだな。養子を取った後で実子が生まれたんだ。同じパターンの家族がもう一つ登場するけど、それがヒントね。事件関係者が既に死んでいて復讐する立場の者がいない? そら来た! 緑の元の家族が存命でそれが復讐者、と言うのが真相さ。この作者は伏線を判り易く優等生的に張るよね。 結局は全て私の勘繰り過ぎだったわけだが、だったらあのネーミングは何なの。伏線に見えて伏線じゃないダミー伏線? |
No.10 | 8点 | 蟷螂の斧 | |
(2021/03/18 15:59登録) サスペンスフルな展開で堪能できました。皆さんと違い、犯人は最後まで分からず、その意味でも十分楽しめました。私なんぞ、家族関係から犯人を導き出すなんていう離れ業は不可能です(笑)。だから「両親と姉を殺害した犯人を許さない」の脅迫文には大いに感心したところです。著者は本格ものではないと謙遜していますが、それはある仕掛けを指している?だけで、消去法やアリバイ崩し等々本格ものとしても楽しめました。 |
No.9 | 6点 | 人並由真 | |
(2020/11/26 05:23登録) (ネタバレなし) 1972年のクリスマスイヴの夜。田園調布の医者・葛西家で凄惨な凶行が生じた。それから21年。当時の事件に関わった女性で39歳の村上晶子(しょうこ)は、6年前に病死した夫と始めた軽井沢のペンション「春風」を守り抜き、いまやシェフの中条郁夫と再婚しようとしていた。大学生の娘あずさや、ペンションの常連客たちから祝福をうけながら、クリスマスイヴの結婚パーティのための準備を進める晶子だが、そこに過去の惨劇にからむ忌まわしい影が。 うーん、サクサクとテンポよく読めたが、一方でここまで登場人物の頭数が増えていくとは思わなかった。題名からせいぜい10人ちょっとかと予期したら、総勢40人以上だよ。 当初は「正体のわかっているキーパーソン」? どう切り返すのだろう? と一瞬だけゾクゾクしたものの、じきに(中略)。 作者がテクニックで読み手をひっかけようとしている箇所も早くからバレバレで、評者程度のいい加減な読者でも、仕込んであるネタの見当がついてしまう。それと後半~終盤の流れで、もろもろの事態が明らかになっていくと……(中略)。 仕掛けも犯人も早めに見え見え。作中のリアリティとしても……と、とうてい出来がイイとも言えない作品。……なんだけど、なぜかそれなり以上に楽しくは読めた。 たぶん全体的にこなれた語り口と、とにもかくにも筋立てに大小のイベントをもりこみ続けた作者のサービス精神のたまものであろう。 2~3時間ぐらい電車か飛行機で遠出する際には、退屈をふきとばす一冊になるとは思う。読者への娯楽要素としてフリカケた、ヒューマニズムの粉末もよろしい。エンターテインメント本として、佳作。 |
No.8 | 5点 | E-BANKER | |
(2019/10/08 21:18登録) 未読作品が少なくなってきた作者の作品。 本作も「確か読んだはず・・・」と勘違いをしていて今回が初読。 1994年の発表。 ~クリスマスイヴをひかえ、ペンション「春風」に集まった七人の客。そんな折、オーナーの晶子のもとに二十一年前に起きた医者一家虐殺事件の復讐予告が届く。刻々と迫る殺人者の足音を前に、常連客の知られざる一面が明らかになっていき・・・。復讐を心に秘めているのは誰か。葬ったはずの悪夢から、晶子は家族を守ることができるのか~ ひとことで言うと「分かりやすい」「察しやすい」プロット。 作者自身、あとがきで「(本作は)本格ミステリーではなくサスペンス」と書いているので、そういう意味では「謎解き」興味よりは、徐々に復讐鬼が迫ってくるサスペンス妙味の方を優先したのかもしれない。 それにしてもなぁー、緻密でレベルの高い作品が多い作家という個人的な印象からするとチープかなと思う。 他の方も触れてますが、恐らく10人中9人は「きっとこうだろう」と想像する真相。 確かに候補は「七人」いるんだけど、あまりにも「捨て筋」感が強すぎるのだ。 そういう意味では、途中の「ああでもない、こうでもない」という佐竹の捜査行もなんだか冗長なだけ・・・という感じになってしまう。 サスペンス要素もどうかなぁー? ホラーにも佳作が多い作者としては、あまり迫ってこないというか、ゾクゾクしないというか、いずれにしても中途半端だ。 連載もので手探りで書いたというわけでもなさそうだけど・・・ ということでちょっと辛い評価になってしまう。 やっぱり「七人」というのは引っ掛けだったんだよね? そこは作者らしいというか、そこがプロットの出発点だったんだろう。 普遍的で、ミステリー作家としては手を出しやすいテーマだと思う。が、如何せん食い足りない。 |
No.7 | 5点 | メルカトル | |
(2011/08/27 22:05登録) 私は本作にあまりミステリ性を見出せなかった。例えば伏線が少なすぎるとか、犯人を特定する材料に乏しいなど。 やはり作者本人が言っている様にサスペンスではないだろうか。 そうした目で見ると、かなりの良作であるのは間違いないと思うが、ミエミエの最終章は安易に過ぎるきらいがある。 サスペンスフルで中盤までは面白く読ませてもらったが、やや長すぎるのではという気がする。 もう少しコンパクトに纏めることはできなかっただろうか、と少々残念ではある。 |
No.6 | 7点 | makomako | |
(2011/07/16 14:24登録) かなり面白い。結構長いお話なのに一気に読んでしまった。確かに多少地味かもしれないがミステリーの基本をしっかりと押さえた作風は好きです。作者はサスペンスといっているがちゃんとしたミステリーだと思います。発表当時はあまり注目されなかったようだが、やはり主人公が地味なことと、男からみると登場する女性がもうひとつかわいくない。女性の視点からみるとこうなるのだろうし多分この方が現実として正しいかもしれないのだが。 いずれにせよ最近作者の作品が次々に復刻されて誠に喜ばしいことだと思います。 |
No.5 | 6点 | いけお | |
(2010/01/07 02:10登録) トリックは読者に対してではなく、作中の人物が対象となっているため安易に感じる犯人特定に不満。 加えてラストはさらに微妙だが、途中の展開は楽しめた。 |
No.4 | 6点 | touko | |
(2010/01/05 23:21登録) 他のこの作家の既読作品同様、登場人物が生命の危険のある状況のわりに暢気なのが気になるものの、シンプルでオーソドックスですが、サスペンスフルな展開で楽しめました。 それにしたって、ここまで、大半の読者が感情移入出来ず応援も出来ないであろう主人公はないですよね……強引にいい話で終わらせようとしているラストが、むしろ後味悪くしている気も……。 |
No.3 | 6点 | こう | |
(2009/12/13 23:44登録) 数年前に読んだのですがオーソドックスな閉鎖空間内のサスペンスでありオーソドックスな犯人でした。途中で大部分の読者は犯人を予想できる内容だと思いますがストーリーは確かにそつがなくよくまとまっているなと感じました。 難点としては主人公があまりにも独りよがりで共感が全く得られないことです。また犯人の性格設定とラストもかなり不満です。ラストもこの展開なら殺すしかないのになあと個人的には思いました。探偵役の事故もストーリー上は仕方ないのでしょうが少しばかばかしく感じます。 特に主人公への不満点も強いですが作品そのものは楽しめた覚えがあります。 |
No.2 | 6点 | シーマスター | |
(2009/06/20 23:27登録) 今邑氏らしい纏まりのいいサスペンスフル・ミステリー。 自分は彼女をソツがないとは思わないが、本作は彼女の「ミスがない」(そりゃー細かい事を言えばキリがないが)標準作のように感じた。 文庫で500ページ近い作品だが、中だるみを覚えることもなく読んでいる間ずっと楽しめた、といってもいいエンターテインメント性の高さも感じた。 ただし、ミステリとしての切れ味を出すためには、もう少し短い方がよかったかもしれない。 少しミステリを読み慣れた人なら終盤以前に「この流れなら犯人はコイツしかあり得ない」と読めてしまうだろう。(この辺の器用貧乏さが、この人が今一つメジャーに成りきれない所以の一つではないかと思ったりもする。ていうかまだ作家やってるのかな?) 本作品は2時間、いや3時間ぐらいのドラマや映画に化しても、原作に忠実に作れば退屈とは無縁の目が離せない作品になりそう。(ミトコンドリアが逆立ちするほど安易なラストだけは少し手入れして頂いて) |
No.1 | 5点 | こもと | |
(2007/10/15 23:41登録) 今邑氏はですね、以前から思っていたことなんですが、ソツがないんですよね。 どの作品も「面白くなかった~」というのはなく、読ませてくれるんですけど、自分の印象としては、ん~何というか、『華』がないんですね。 まぁ派手さにばかり気をとられている作家に比べると、地味でも今邑氏の方が断然面白いとは、ずっと感じているんですが。 この作品もそうなんですけど、『華』がないっていうのは、自分が書くキャラクターへの愛情が薄そうな印象があるからかな、と思う。 なんとなく、客観的というかちょっとクールと言うか。 特に、初期作品はその印象が強い。 |