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ミステリの祭典

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スタジアム 虹の事件簿

作家 青井夏海
出版日1994年01月
平均点5.14点
書評数7人

No.7 6点 斎藤警部
(2023/06/11 17:04登録)
探偵役のマダムは、亡夫からプロ野球チームオーナーを継いだものの当人は完全なる野球音痴。それでも足繁くスタジアムに通う彼女は周囲の観客から少しずつ野球のルールを学び、また野球の試合に纏わる種々のシーンをヒントに、周りの観客席から漏れ聞いた様々な「事件」への深い洞察をさり気なく披露し、時に市井のトラブル解決に寄与、時には警察の事件捜査へも協力する結果となる。

以下は連作短篇個別コメント。似たような感想ばかりなので全体一つに纏めようかと考えたが、何故か一作ずつ個包装で評したくなる不思議な愛おしさに押し切られた。

幻の虹
誘拐事件も使いよう。犯人側は意外とフィージブルかも知れないが、探偵側はかなりの無理筋。でも憎めない。

見えない虹
隠し事を秘めた文通から展開する物語。一話目でどことなくパターンが読めた気がして油断していたら、おっと、こりゃ存外ディープな真相宿してるのかも知らないぞ、ひっくり返しが果たしてどこまで続くのか興味津々。。と期待したものだが、、まさかの中途半端な肩透かし。この展開なら、途中から連城マジック的真相を夢見てしまうよなあ。。だが、主人公二人のあり様がミステリ的には捻り無く最後まで完走したのはある意味意外。恋愛小説としては小説の枠外にまだ物語が残っている。そこが美点。

破れた虹
謎1は緩い直球でミステリ性極薄。謎2は、野球の伏線こそ大いにしぼんだものの、しっかり構築された推理が魅了する(絵空事の匂いも嗅げなくはないが)。謎1と謎2がかすりもしないのは物足りない。謎1に因むまずまずの感動という置き土産が光って終了。どうも構造的にちぐはぐだが、何故にこうも許せてしまうのか。

騒々しい虹
野球の試合を観るため親に隠れたアルバイトで金を稼ぎたい少年。彼が思い掛けず巻き込まれた、バイト先での留守電脅迫事件。本作もやはり、深みのありそうな謎があっさり薄味に解決されるのはミステリとして歯がゆい。だが少年の成長物語としては意外と読ませる。少年にいろいろ教えてくれた探偵役のポジショニングか絶妙。

ダイヤモンドに掛かる虹
恋愛(?)と殺人(?)となかなか複雑でディープな相互関係をチラチラ見せつつ、またしても、この。。。ミステリとしての肩透かし感と物語としてのまずまずの深みとの、微妙に角度がずれて補完し合いきれていないもどかしさよ。。いや、そうは言ってもこの恋愛(?)物語側のミステリ的着地点は予想外に深いものがあった!

全篇を通して、パラダイス・リーグ(パ・リーグ)弱小球団「東海レインボーズ」のペナントレース奮戦記(そして親会社の・・)としても読めるよう構成されている。このパ・リーグの描写がなんとも箱庭的で、とても全国トップリーグの話と思えない筆の弱さはあるが、爽やかな感動をもたらすストーリーの力でどうにか補完出来ている、のではなかろうか。 個別書評に書いた通り、いろいろと良い素材を活かし切れない嚙み合わせの稚拙さなど目立つものの、自費出版デビュー作という事情を考慮せずとも、それらを越えて天空にやさしく輝く虹が、この連作短篇集には掛かっている。

No.6 5点 ʖˋ ၊၂ ਡ
(2022/08/09 16:07登録)
東海レインボーズというプロ野球球団の試合が行われているスタジアムで謎が解かれるという、洒落た設定の連作短編集。
探偵役を務めるのは、レインボーズのオーナーだった夫が没したため、後を引き継いだ虹森多佳子。彼女は全くの野球音痴なので、野球のルールなど細かく説明しなくてはいけないのだが、それが後で謎解きにも絡んでくるという趣向。
万年最下位だったレインボーズが優勝へ向かう過程を同時に読むことができる。

No.5 6点 まさむね
(2012/10/18 22:35登録)
 安楽椅子モノの連作短編。
 ミステリ部分は,正直特筆すべきモノはないのですが,登場人物が揃って魅力的で,野球を絡めた展開も面白いです。万年最下位のプロ野球球団の女性オーナー(しかも野球オンチ)を探偵役に設定したことで,膨らみが増しています。
 ちなみに,個人的な話で恐縮ですが,私は大のパ・リーグファン。なので,結構楽しめたわけです。プロ野球好きの方は,どうぞ。

No.4 6点 kanamori
(2010/06/30 17:45登録)
弱小プロ野球球団のオーナーで野球オンチの多佳子夫人を探偵役に据えた軽ミステリ連作短編集。
感心するようなトリックやロジックのキレはありませんが、キャラクターとシチュエーションの魅力で楽しめました。

No.3 5点 江守森江
(2009/05/23 18:14登録)
日常の謎と球団経営をほのぼのとしたタッチで描いている。
ほのぼのとした日常の謎は赤ちゃんシリーズにも受け継がれた。

No.2 2点 なの
(2008/02/17 22:06登録)
何と言いますか、稚拙さばかりが目立ちます。
探偵役のキャラもイマイチ、事件自体も文章も・・・。
これが自費出版から高評価で創元入りってのは、ちょっと不思議。

No.1 6点 こもと
(2007/10/16 21:46登録)
 連作短編集。 実際に自分が体験したわけでもなし、人伝えに聞いたわずかな手がかりだけで謎を解く、鮮やかなアームチェア・ディテクティブ(安楽椅子探偵)。 読者は、まったく同じ手がかりを与えられているだけに、論理的な考えで解決まで導く多佳子さんの姿に舌を巻きます。
 多佳子さんにとっての安楽椅子とは、レインボーズスタジアムの観客席なのですねぇ、きっと。

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