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ミステリの祭典

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プラスティック

作家 井上夢人
出版日1994年05月
平均点6.50点
書評数14人

No.14 7点 Tetchy
(2018/10/14 21:29登録)
かつて井上氏がウェブ上で展開していた『99人の最終列車』を彷彿とさせる群像劇。
それは東京のマンションで起きるある若夫婦の殺人事件を発端にした、男女5人の事件を巡るそれぞれの奇妙な道行を描いた内容となっている。

5人の男女、即ち向井洵子、高幡英世、奥村恭輔、若尾茉莉子、藤本幹也の手記もしくは供述で構築されていく物語はそれら登場人物たちの話によって逆に事態が収束していくわけではなく、謎が謎を呼び、そしてそれぞれのアンデンティティがどんどん歪みを増していく。

人格と云う迷路がどんどん解きほぐされ、それぞれの人格が主張する内容が明らかになるのだが、明らかになるにつれ、逆にこれらの人格を宿す本多初美という手記のない人物像が浮かび上がってくる。その結果読者が知らされるのは彼女がいかに報われず、孤独でそして不幸な人生を歩んできたことかという事実である。
そして最終章はこの語っていない人物、本多初美というタイトルの付いた白紙のファイルで幕を閉じる。6つの人格によって形成された本多初美そのものを自身で語るために。そしてそれは逆にこの女性の人生を読んできた読者自身に彼女の思いを託しているかのように。

複数の人物によって綴られた手記が実は一人の人物の手によるものだった。これは1990年代に多くの作家によって書かれた多重人格ミステリの1つに過ぎないと捉えればそれまでだろう。
しかしこの複数の人物によって書かれた物が実は一人の人物によるものだったというのは実は小説家の創作行為そのものではないか。つまり本書は小説家自身を描いたミステリと考えることが出来るだろう。

貴方は本当の貴方でしょうか。もしかしたら貴方は貴方ではなく貴女なのかもしれない。前作ではいささかファンタジー的な設定だったが、本書では現実的に起こりうる話として我々に問いかける。

本書の題名プラスティックの意味は最後に出てくる。
可塑的。つまり自由自在に形を形成できること。つまり現代社会においてそれぞれ相手の性格や地位によって応対方法を使い分ける我々もまた可塑的な存在だ。ただ感情の振れ幅と生まれた境遇が少しばかり普通だっただけで、我々もまた本多初美なのだ。

No.13 6点 初老人
(2014/05/03 16:17登録)
(ネタバレあり)途中様々な人物の視点が入り乱れ、混乱を極めていく中、この事態にどう収拾をつけるつもりなのかと期待しながら読み進めたが、設定自体はありがちなもので多少がっかりした。ただ、まさか傍観者まで、とは想像出来なかったのでその点はプラス。最後のファイルの○○が何とも言えない余韻を感じさせる。

No.12 6点 yoneppi
(2013/09/15 10:38登録)
この設定だけでラストまで読ませるのはさすが。

No.11 4点 seiryuu
(2010/07/16 16:55登録)
設定は悪くないけどファイル方式が嫌い。
途中でトリックが読めてしまう。

No.10 5点 いけお
(2008/09/15 18:34登録)
トリックというか内容自体は楽しんで読めた。

No.9 7点 こう
(2008/06/08 21:06登録)
 メインプロットは今では誰でも知っていることで矛盾だらけのストーリーの内に読者が気付くことが多いと思います。恐らく作者もそれが暴かれるのは前提としていたと思います。
 最後にわかるもう一ひねりした真相は勘のいい方ならわかると思いますが、自分は初読時ひっかかりました。ありふれたサイコサスペンス物とみせておいて実は、というこちらが狙いだったと思います。
 ある意味井上作品後では一番ミステリぽいかなと思います。

No.8 6点 こをな
(2007/11/15 10:15登録)
 冒頭の掴み、構成、読後感がとても良かった。トリックは中盤でわかったものの、読む気がなくなる、という事はまったくなく、ほぼ一気読みでした。

No.7 9点 こもと
(2007/10/13 13:12登録)
 ある程度、トリックが読めてしまったこともあって、余裕の表情でページを繰っていった自分が、「ちゃんちゃら、可笑しいや」って感じです(笑) うーん、注意一秒、怪我一生、油断が死を招きました。
 そのショックは、「かかと落としで脳天をガツーンとやられ、昇天、合掌という感じ」と言ったらおわかりいただけますでしょーか(笑)

No.6 7点 VOLKS
(2007/10/07 20:48登録)
再読した時の方が楽しめる作品、ということでこの作品は気に入っている。

No.5 8点 sophia
(2005/02/22 00:00登録)
自分的に井上夢人のベスト。ひと昔前の文明の利器、フロッピー・ディスクを使った演出を最大限に生かした作品です。特殊な構成の作品ですが、このような構成を採った意味がラストの54番目のファイルで明らかになります。そしてタイトル「プラスティック」の意味も。

No.4 7点 ギザじゅう
(2004/03/16 22:06登録)
トリックそのものはシンプルにして単純。途中で気づいてもさほど読者に支障はない。むしろ、トリックの明かされた後が井上の真骨頂。
誰が誰で何が起こっているのかという展開は本格を思わせ、それに対する不安や恐怖はサスペンスを思わせ、結末自体はSFを思わせもする。しかし、井上の作品にその様な分類をする事がナンセンス。
この作品は格をもたない「無格」であり、「プラスティック」である。井上夢人その人が「プラスティック」なのかも知れない。
「ダレカガナカニイル・・・」同様、はまる人はとことんはまると思う(自分のこと)。

No.3 9点 kenichi
(2003/06/30 00:23登録)
何がなんだかさっぱりと思ったら、いやあやることがエグイです。畳み掛けるようなラストの意外性がすき。

No.2 6点 YAMA
(2002/10/26 14:18登録)
トリックと言う意味では、比較的ありふれた物だと思いますが、読者を引きつける文章はさすがだと思います。

No.1 4点 りのあ
(2002/07/31 11:24登録)
いろいろなミステリを読んで、さまざまなトリックに触れてしまったせいか、すぐわかってしまいました。初心者の方ならおもしろいかも・・・。

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