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ミステリの祭典

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スウェーデン館の謎
作家アリス&火村シリーズ

作家 有栖川有栖
出版日1995年05月
平均点6.34点
書評数47人

No.47 7点 E-BANKER
(2020/05/06 15:01登録)
国名シリーズでは短編集の「ロシア紅茶の謎」に続いて発表された二作目。
作者あとがきを読むと、本作は当初”長めの短編”のはずが、プロットが膨らんだ結果、長編になったとのこと。
それは多分「正解」! 1995年の発表。

~取材で雪深い裏磐梯を訪れたミステリー作家の有栖川有栖は、スウェーデン館と地元の人が呼ぶログハウスに招かれ、そこで深い悲しみに包まれた殺人事件に遭遇する。臨床犯罪学者・火村英生に応援を頼み、絶妙コンビが美人画家姉妹に訪れたおぞましい惨劇の謎に挑む。大好評の国名シリーズ第二弾~

作者の「火村-作家アリス」シリーズに対しては、大した出来ではないとか、サプライズが薄いとか、これまで散々書いてきた。相性が悪いのは確かで、先般読了した大作「鍵のかかった男」でも、心を動かされる箇所は正直、ひとつもなかったように思う。

そんな中でも、本作は短編「スイス時計の謎」と並んで、作者の「良さ」が十分に出た作品に思えた。
何が「良さ」かというと、実に「丁寧」なミステリーなのだ。
本格ミステリーなのだから、作者は当然伏線に気を遣う。本作はその「伏線」の張り方ひとつにしても、実に丁寧。
感心したのはやはり「指にまかれたバンドエイド」(ネタバレ?)について。
何てことない、たったひとつの物証、伏線が真犯人の弄したトリックに芋蔓式につながるわけだから、大げさに言えばこれこそが本格ミステリーの醍醐味。

そして本作のもうひとつのテーマは「雪密室」。
これも数多のミステリー作家がチャレンジしてきたテーマなのだが、本作のトリックは逆転の発想が実にうまく決まっている。(リアリティとしては薄くて、パズル的要素が強いのが玉に瑕だが・・・。個人的には、二階堂黎人の初期作品が思い浮かんだ。)

惜しむらくはやはりフーダニットか。他の多数の方が指摘されているとおり、動機の点からあまりに見え見え過ぎた。ここら当たりにもう一工夫あれば、「江神-学生アリス」シリーズの佳作に近づけたのかもしれない。
でもまぁ、十分に高評価を付けられる作品。火村の推理も実に無駄がなく、脇道が最小限だったことも高評価につながる。

No.46 6点 いいちこ
(2020/01/21 17:38登録)
足跡のトリックは、フィージビリティにこそ難があるものの、シンプルで鮮やかな斬れ味を評価。
折れた煙突の謎は、あまりにもシンプルで身も蓋もない真相だが、だからこそリアリティは強い。
真犯人は、本作のプロット・人物造形から、まるで意外性がなく、サプライズの点で強く物足りなさが残る。
以上、作者らしさが発揮された硬質な作風で、突出した美点はないものの、水準以上に達していると評価

No.45 7点 HORNET
(2019/11/23 20:16登録)
 雪に残った足跡からの密室、という古典的な設定ながら、(当然)新味を出していてそれなりに面白かった。
 むしろ「折れた煙突の謎」の種明かしの方が面白かった。てっきり密室の構成に関わっているものと思い、その方向でいろいろ推理していたのだが、そうくるとは。ある意味肩透かしだが、ある意味うまいミスリードだったとも言える。
 本道のフーダニットだが、犯人は冒頭から何となく「そうなるのでは」と思っていた通りだったので意外性はなかった。しかし犯行のからくりと動機が謎として十分に魅力的だったので、謎解きを堪能できた。

No.44 6点 ボナンザ
(2019/04/28 12:00登録)
足跡のトリック等々単純ながら効果的で、有栖川の美点が発揮された佳作だと思う。

No.43 7点 mediocrity
(2019/03/24 11:26登録)
派手さはないが丁寧でフェアでロジカル。そして何より現実的。スウェーデン館自体も普通だし、一般人が普通に手に入れられない物を一切使っていない。煙突はシンプルすぎて逆に驚きました。

No.42 7点 蟷螂の斧
(2018/09/24 17:35登録)
足跡のない雪密室自体は、既存トリックの応用ですが、そこに至るトリックが秀逸。心理的盲点を突かれました。ただ、折れた煙突の扱いはしょぼい(笑)。

No.41 7点 まさむね
(2018/02/17 12:31登録)
 正統派の本格作品。この時期に読んだのも雰囲気が出てよかった。(偶然にも2月14日に火村が現場の裏磐梯に到着する設定でしたしね。)寒い冬に雪密室、うーん、炬燵にミカンみたいなものですな。
 雪上の足跡の謎。確かにインパクトとしては弱いのだろうけれども、解決に至るロジックは相当に楽しめましたね。一方で、犯人にとっては相当にリスキーな手法ではないのか、その時点での対応策として合理的とは言い難いのではないか…といった疑問もないではありません。
 しかし、堅実かつ誠実で、リーダビリティも高い作品というのは、個人的には評価したくなりますね。

No.40 6点 パメル
(2017/06/01 13:09登録)
この作品はなんといっても消えた足跡トリックだと思うがそれを証明するためにいくつかの手掛かりをロジカルに組み立てていくさまが鮮やかで謎解きの面白さを堪能出来る
作者は海外のある作品に良く似たものがあると気付くが同じ足跡トリックでもルーツが異なるため大丈夫だと確信が持てたため発表に踏み切ったそうです
ただ犯人の行動は無理があるしリスクが大きすぎると感じてしまった
トリックよりロジックが好きという方にはお薦め出来ます

No.39 8点 邪魅
(2017/02/17 13:05登録)
親指の傷から紡がれるロジックは素晴らしいです
そこから即犯人が分かるというものでも無いですが、そこから考えていけば雪の足跡のトリックもおのずと氷解していく様は数学の証明のように鮮やかでした

No.38 7点 ボンボン
(2016/03/21 18:47登録)
しんみりと哀しい気分で読み終わる。
事件が始まる前に、後々のため、いろいろ言い訳めいた説明(というか、いまいちスマートじゃない伏線?)があったのが少し気になった。しかし、全体的には流れるように美しくまとまっており、きちんと状況や心情が語り尽くされているので、普通じゃないトリックが際立つような展開をあまり好まない私でも、違和感なく納得できた。登場人物もみんな無駄なく活躍し、いろいろな詰め込まれた要素も一つ一つ十分に楽しめた。
本筋に関係ないが、火村先生が語った即興の童話(?)がすごく良かった。

No.37 7点 青い車
(2016/02/06 23:39登録)
ありそうでなかったアイディアを用いた雪の密室ものの秀作です。些細な物証をヒントにトリックを紐解く火村の推理の飛躍はシリーズ屈指だと思います。足跡トリックものでは発見者=犯人という図式がどうしても抜け出せない型なのですが、本作は十分意外性のある解決を見せてくれています。舞台となる雪山の情景や哀しくも悪くない読後感もまたいいです。

No.36 6点 風桜青紫
(2016/01/14 03:44登録)
足跡トリックについては別に真新しくないし、そこまでインパクトがあるわけでもないんだが、なんか面白かった一冊。人妻ヴェロニカさんをうまく落とそうとするプレイボーイ・アリスの口運びには舌を巻くばかり。油断のならんやつだ。火村シリーズって江神シリーズに比べると本格としては弱いんだけども、ストーリーやキャラクター描写はこっちのほうが上手なように思えるのね。作者が歳をとってるから当たり前かもしれないけど。ああ、ザリガニ食べたい。文庫解説の宮部先生がノリノリで笑える。

No.35 6点 ロマン
(2015/10/25 11:38登録)
読み終えて感心したのは著者の話作りの上手さ。事件の規模は決して大きくはない が、調査の途中で立ち止まって仮説を立てたり、犯人の動機を読者にあれこれと考える間を与えたりして、話をうまく膨らませている印象を受けた。火村の推理は、一見他に可能性がありそうな危ない橋のように見えるのに、他にめぼしい推理が見つからないのがなんだか悔しい。ただ、犯人の行動のリスクが高さとが気になるところ。

No.34 3点 虫暮部
(2015/06/24 08:59登録)
 何か変だ。大いにネタバレするが、遺体移動のトリックに関して。
 母屋にいた犯人は、どうやって離れに眠り込んだ酔っ払いがいることを知ったのか?

 (また、重りの代わりなんて何でもいいわけで、いつ目を覚まさないとも限らないリスキーな人間を使う必然性は乏しいのでは?他人の眠りの深さを外側から測ることは出来ないのだから)

No.33 5点 ayulifeman
(2014/12/26 15:10登録)
雪の中、外部の犯行ではない、不可解な事象がある。
THEミステリーって感じで好きです。
ただガーっと一気読みしたかというとそうではないので、「まぁ楽しめた」の5点。

No.32 7点 バード
(2013/09/21 09:29登録)
火村シリーズの中でも作風が好きな作品。登場人物のイメージが付きやすくどのような環境で事件が起きたかも想像しやすかった、自分も将来こういう家に静かに住みたいものだ。
トリックは中々簡単だと思うが読んだ当時まだ雪による密室に慣れてなくて推理がかすりもしなかった(笑)

No.31 5点 TON2
(2012/12/10 17:18登録)
講談社文庫
 裏磐梯、五色沼が舞台。
 雪の中の離れで死体が見つかるが、足跡は片道だけというののは、本格王道の謎でしょう。
 犯人は、最もそれらしくない者というこれまた王道に従えば、分かります。

No.30 6点 mozart
(2012/09/23 07:51登録)
これまでに読んだこのシリーズの中ではまずまずといったところでしょうか。全編を通して雰囲気はとても良く、雪の足跡の謎についても、単純なものでなく、それなりに「多重構造」になっており、感心させられました。
ただ、犯人のもくろみ自体は、法医学や科学捜査の「目」を欺き通すことはかなり難しいのではないかな~。

No.29 7点 smile66
(2011/02/27 23:44登録)
かなり地味めなお話だがあまり嫌いな感じではない。
ヒントとしての証拠品の見せ方がわかるようでわからないようにうまく出来ていると思う。

No.28 6点 こみめたる
(2011/01/22 00:57登録)
可もなく不可もなくという作品。
トリックも強引過ぎず、しかし驚愕の結末があるわけでもない。最後はあっさり終わってしまった感じ。
ただ、最近、とてもプロのミステリ作家とは思えないようなくだらない作品に当たることが多かったが、この作品は全く不快な感じはしなかった。
もう少し国名シリーズ読んでみたいと思う。

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