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ミステリの祭典

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双頭の悪魔
学生アリス&江神シリーズ

作家 有栖川有栖
出版日1992年02月
平均点7.98点
書評数113人

No.113 10点 ぷちレコード
(2024/05/07 22:25登録)
江神部長以下四人の推理小説研究会メンバーは、麻里亜の父から娘を連れ戻して欲しいと依頼され、木更村とは橋一本で繋がった隣村の夏森村までやってきた。しかし芸術の里の住人達はことさら外部の人間を警戒していて、麻里亜との接触も拒絶されてしまう。
物語は江神部長だけ潜入に成功した木更村と、陸の孤島となってしまった夏森村とで二元中継的に進む。木更村の方は有馬麻里亜が、夏森村の方は作者と同名の研究会員・有栖川有栖が、それぞれ語り手を務める。荒天のさなか、両方の村で時を置かず殺人事件が発生し、片やシリーズ探偵の江神が、片や残された研究メンバーが、物証と証言をもとに推理を積み重ね、論理的に犯人を限定していく。その詰め筋は、着実かつスリリングである。

No.112 8点 hsiyehmeipo
(2024/05/05 02:23登録)
2か所で2つの謎ときと、2つの謎解きを合わせた最後の謎解きと一つで三度楽しめた。
先輩コンビの会話や、冒険パートなどもとても楽しく読めた。

No.111 8点 ALFA
(2023/07/08 14:30登録)
冒頭からクリスティの「春にして君を離れ」を思わせるマリアの内省的な叙述が続く。200ページあたりまで異変は起こらず冗長にも感じられる。しかしこれは読者を熟成させるのに必要な長さなのだろう。
やがて事態は動き始める。川の向こうとこちらでそれぞれに。
テンポは速からず遅からず、あちらこちらに張り巡らされている伏線を探りながら読み進めることとなる。
精緻なロジックを堪能できる新本格の大作。
しかし残念ながら・・・



以下ネタバレ
唯一にして最大の問題はXを仲介者とするxx殺人であること。両犯人ともにXが仲介者ではなく当の契約相手であると信じている。しかしこれはXの属性を考えるとまずあり得ない。
動機(Xにとっての)の脆弱さも減点要素。

No.110 7点 密室とアリバイ
(2023/05/25 01:47登録)
得意のロジックは孤島パズルの方が好きだ

No.109 8点 みりん
(2023/02/19 12:49登録)
望月さんの推理がついに炸裂するのが見どころ。アリスの影が薄い。

No.108 8点 じきる
(2020/11/03 17:25登録)
川を隔てた両サイドで繰り広げられるリーダビリティ抜群のストーリーと、それに散りばめられた手掛かりを元に構築されるロジックを存分に味わえる大作です。
事件の構成やタイトルも秀逸。

No.107 8点 虫暮部
(2020/08/20 17:53登録)
 気になった点。
 Xが殺したかったのは片方だけなのか両方なのか。
 “手紙の工作”は少々わざとらしい手掛かりだ。インクが違えばばれる。また、密会の理由が警察に伝わってしまう。再利用ではなく新たに(脅迫状とか懸想文とか)でっちあげた方が捜査の攪乱に有効では。
 マリアがモデルを務めたのは裸婦像かと思ったが、読み返すと幾つか否定的な記述が。ちっ。

No.106 8点 斎藤警部
(2020/06/18 19:50登録)
悪いことをして、考えられる限りの物的証拠を抹殺し、状況証拠を払拭しても、犯罪を取り巻く大きな場には、目に見えないウィルスのような何かが疎在し、同じく目には見えないロジックという太さの無い糸でそのサムシングが達人の手に拠り正しく紡ぎ合わせられたが最後、悪いことは露見してしまう!それはつまり、スリリングなロジック展開で追い詰められる愉しさ。。。殺人の舞台が二手に分割され片方にはもう片方の状況が分からないという趣向と、だからこそ三度も挿入される「読者への挑戦」、この二つの適度な見栄え、見得切りに刺激されてこその、ロジックの輝き。 天才探偵が事件(A)を解決、凡人探偵群が事件(B)を解決、ところが天才探偵が更に事件(A+B)を解決!という構造も素晴らしい。 たしかに、そのロジックの奥深さ華麗さに較べると、動機ってやつがいまいちドキドキさせてくれない恨みはチラつきますが、、丁度良い緊張感が最後の最後まで持続するんだから、良しとしましょう。 真犯人、現実世界ならともかく、本格ミステリの中で悪魔呼ばわりするほどか?なんて思うけど、二人の先輩が区別付かなかったけど、あほらしい茶番もヘンてなもんだけど、そういう微妙な突きの弱さの諸々が気にならないのは、やはりトリックやプロットの派手さ豪快さではなく、ロジックの精妙さ美しさで勝負している作品であるがゆえでしょうか。 淡い恋愛要素も邪魔をせず、むしろ小説を心地よくしてくれる。江神氏いいねえ。エピローグのさりげなさも素敵。 頭に残る物語全体風景の美しさは、個人的に「獄門島」に近いものがあります。

「月光」「孤島」がまったく響かなかった私ですが、シリーズ第三作「悪魔」はお気に入り。 「ローマ」「オランダ」が響かず(「フランス」はちょっと好き)「ギリシャ」「エジプト」でいきなりガツガツンと来たEQと、個人的にやはり通じるものがあります。 本作の表題、「お主も相当の悪よのう」的な言い草に掛けてあるのかと思ったら、そうでもないみたいですね。 そうそう、本作の真相全体構造(●●殺人に一ひねり半?)はデジタルビジネスの栄え始めた今こそ心に沁みる、その犯罪ビジネスモデルの拡がりの予感に胸が震えるってえもんです。

No.105 8点 雪の日
(2020/05/17 19:01登録)
有栖川有栖の最高傑作と名高い本作。
細かな伏線が至る所に巡らせてあり、その回収も見事。
とんでもトリックや、どんでん返しが好きな僕でも楽しむことができました。

No.104 8点 nukkam
(2019/12/24 21:40登録)
(ネタバレなしです) 1992年発表の江神二郎シリーズ第3作の本格派推理小説です。それほど多くはないでしょうけど「読者への挑戦状」が2度挿入された作品なら古くはベルギーのS=A・ステーマンや高木彬光、もう少し新しいところでは島田荘司やロビン・ハサウェイや篠田秀幸の作品が頭に思い浮かびましたが、それが3度も挿入となると全く前例を知りません。しかもそれぞれの挑戦状で異なる謎を解けと読者に突きつけています。これは非常によく考え抜かれた作戦だと思います。というのは真相はややもすると読者にアンフェアではという不満を与えかねない類のもので、このネタでいかにフェアな謎解きであるか主張し、そして読者を納得させるためにこの挑戦状は必須アイテムだったという気がしてなりません。ストーリーテリングに大きな飛躍が見られ、創元推文庫版で700ページ近い大作ですが全く退屈しませんでした。

No.103 8点 バード
(2019/10/19 17:33登録)
質のいい犯人当て小説を世に出している新本格作家は?と聞かれたら誰だろう?私的には「孤島パズル」を書いた有栖川さんは筆頭候補者の一人である。
本書は三回もの読者への挑戦状付きで非常に楽しませてもらった。(その分読むのに4週間くらいかかったが。)
豪勢な犯人当て×3をもってして基本点を10点とする。ただし犯人当てクイズを売りにするからにはその論理を多少厳しく評価してみる。

(以下ネタバレ)
挑戦状の事件ごとに評価
・小野殺し(第一の挑戦状)
犯人が単独犯なら(これ重要)、江神のロジックで犯人を絞れる。私も推理が的中。感心した点も文句を言いたい点もないのでここ単体としては±0。


・相原殺し(第二の挑戦状)
相原が自ら手紙を右後ろポケットにしまうのは不自然という点から、小学校で密会することを伝える手紙が一度犯人に渡ったという、望月の推理には感心したので+1。(相原が手紙を渡せていなかった場合を私は捨てきれませんでした。)

アリスの推理は私も的中。しかしここは有栖川さん(作者)に一つ文句がある。犯人特定パートにてアリスが
「相原さんが手紙を書いたのが四時。僕たちについて宿を出たのが六時。その間、宿の外部の誰とも接触していません。書いた手紙をどうするつもりだったんでしょうか?」
(p.533 十三章 3(1999年 創元推理文庫))と言い、これを起点に相原が手紙を渡せた相手を限定していく。しかし挑戦状より前の情報で相原が四時~六時の間に宿に籠っていたという記述はない。
該当場面を見ると四時頃に相原が手紙を渡した場面から、飲み会の場面に移りその会話の中で六時頃に相原とアリス達が宿を出たという情報がでる。警察の事情聴取パートでもこの時間帯の相原の行動を明記している箇所はない。つまり読者は
「四時~六時の間に相原が直接犯人(例えば診療所にいる中尾や保坂)のもとに出向いて小学校で密会することを伝えようとするも、何らかの理由で直接会えなかったので、念のため用意した手紙を犯人宅のポストにいれた」
というストーリーも作れる。
これは挑戦状の前に必要な情報に不足ありと言えるだろう(-2)。


・八木沢殺し(第三の挑戦状)
これは別解があるように思える。どういう別解かというと犯人=千原由衣という解である。
「マリアがピアノの音を聞かなかったのはおかしい。(作中の江神の推理と同じ。)ゆえに犯人は八木沢がピアノを弾けない状態にあると知っていた。八木沢がピアノを弾けない状態とは眠っている状態、つまり音楽室に入る前に飲んでいたコーヒーに睡眠薬を仕込めた人物千原由衣が犯人である。」
という推理である。これが頭によぎったため犯人を千原由衣と真犯人の二択で絞れなかった。上記の推理のネックは小野殺しの事件の顛末を盗み聞きした人物Xと千原由衣がイコールでない点であるが、X=殺人犯は作中でも江神の推測で終わっているので否定材料にはならないと思う。
この別解は動機の点で苦しいが、可能性が否定されないうちは-1です。

あと犯人特定の決め手となった、死体とピアノに香水をふりかけたという行動に犯人のメリットがなく、全登場人物の行動の中で一番不自然な行動と思うので-1。


・事件全体について
交換殺人が行われていたというのは相原殺人の犯人の家から小野の耳が出てきたあたりで想像できたので±0。しかしそれを直接二人がやっていたのではなく、仲介人がいた、というのは完全に意識外で二つの事件の結び付け方としては面白く、非常に驚きだった(+1)。

しかし一連の事件が複数人の共同犯罪とすると小野殺しの犯人に異議をさしはさむ余地がでてくるんだよね。例えば第一の犯人(小野殺し)と第二の犯人(相原殺し)の間で
第一の犯人「俺が香水をかけておくから、後から鍾乳洞に入り、においを頼りに小野のもとに行き、殺せ。」
第二の犯人「了解。」
というやりとりがあれば、第二の犯人を小野殺しの犯人とすることもできる。(第一の事件の段階で橋は落ちていない。)それに実は他にも別解を作れる。総合的にこれも-1。だから共犯ものは苦手なんよ。犯人達の自由度が上がって別解が増えすぎるから。


・最後に勝手な思いつきで勝手に加点
第一の犯人が小野の死体を岩棚の上に担いだ理由は、もちろん共犯者と思っている第三の犯人(八木沢殺し)を容疑圏外に外すためだろうが、それ以上に愛するあの人を容疑圏外に外したかったのではないかと思う。これは作中で話題になっていないので真相は不明だが、なんとなくこの解釈は気に入っている(勝手に+1)。


以上で合計8点。真面目にロジックで勝負をしてきた作者にはこのくらい真面目に採点します。いつもより厳しめかもだが、これはこれでということで。

No.102 5点 レッドキング
(2019/04/28 16:24登録)
ヒロインが山道を歩いて行く冒頭の場面が実に素晴らしい。ひょっとして「湖底のまつり」の冒頭場面や、「匣の中の失楽」の雨の夜道描写のオマージュなんかな。

No.101 9点 mediocrity
(2019/04/26 00:48登録)
有栖川先生、還暦おめでとうございます。

学生アリスシリーズ長編3作目。前作よりページ数も内容もスケールアップしている。ミステリー研究会メンバーが全員登場するのもうれしい。とことん理詰め(今回は消去法が多い)で謎を丁寧に解きほぐしていくのは前作と同じ。
例のごとく橋が落ちるが、今回は橋の両側で事件が起きてそれらが密接に絡み合ってるのが良い。もう少し終盤ビックリさせて欲しい気はしないでもないが、できないのではなくあえて抑えてるのだろう。
火村シリーズよりこちらのシリーズ方が好きなのに、未読が残り1作しかないのか。なんだか読むのがもったいないな。

No.100 7点 ボナンザ
(2018/10/26 21:12登録)
習作の感じがあった前二作からは格段の進歩がみられる傑作。ここまでロジックをしっかりした作品は最近まれだろう。

No.99 10点 ねここねこ男爵
(2017/10/24 14:58登録)
トリックでなくロジックであるこの作者の最高レベルの傑作。3つある読者への挑戦がタイトルへとつながっていくのはお見事。『孤島パズル』と並んでこのタイプのミステリでは国内最高峰でしょう。この作者はとにかく文章が上手いですね。
個人的に江神さん以外の推理研メンバーが活躍するのも好きです。

「ロジックよりトリック」「どんでん返し!意外な犯人!衝撃の真実!」な人には全くオススメできません。

No.98 5点 madara
(2017/03/18 15:12登録)
孤島ではない孤島物。
全く面白く無い訳ではなかったが正直微妙だった。
読者への挑戦状が3回もあるがそこまでするほどのトリックがあったとは思えませんでしたね。
雰囲気は悪くないが驚きもない、そんな感じ。

No.97 6点 yoshi
(2017/03/08 14:40登録)
鍾乳洞の中の画家殺しの犯人指摘ロジックは流石だと思った。
だがカメラマンの殺人には少し疑問が残った。
どうしてカメラマンは直接郵便局に行かなかったのだろうとか、細かい点が気になった。
論理的に犯人をただ一人に特定するまでには行っておらず、
犯人を逃亡させることで、犯人特定に至るのが本格ミステリー的にはやや不満。
それからピアニスト殺しは、他の方も仰っているが、
やはりマリアの証言がアンフェアに感じる。
ただもしマリアが「ピアノの音が聞こえなかった」と証言していたら、
その時点で犯人が丸わかりなので、曖昧な証言をさせたあたりが作者の苦心なのでしょう。
大傑作という世間的評価は知りつつも、敢えてこの点数で。

No.96 8点 邪魅
(2017/02/23 12:27登録)
再三にわたる読者への挑戦状
そのいずれもが前作の孤島パズルに勝るとも劣らない出来となればこの評価は納得です
それにしてもこの作者はさりげないところに手がかりを提示するのが本当に上手いですね、感心してしまいます

No.95 9点 まさむね
(2016/10/23 22:10登録)
 読者への挑戦を3段構えで配置する贅沢さ(?)ですが、それはそれで意義のあることで、極めて純度の高いフーダニットの傑作と言うべきでしょう。

 豪雨で孤立した木更村には江神とマリア、対岸の夏森村にはアリスら英都大学推理研の面々、その両村で殺人事件が…という、絶妙な設定。個人的には、木更村における江神の役回りも勿論良いのだけれども、夏森村でアリスたちがディスカッションしながら真相に迫る過程が実に楽しかったですね。
 ちょっと気になる点がない訳ではないのですが、このサイトでの評価が高いことは、素直に首肯できます。

No.94 8点 青い車
(2016/02/25 17:02登録)
「すごく面白かった」ことはおぼえているものの、恥ずかしながら細部の記憶が曖昧だったので、パラパラ読み返してみました。すると、記憶していた以上に作り込まれた傑作であることに気付きました。
分断された夏森村と木更村で別々に起こる殺人を、アリスとマリアの二人が交代で綴る構成の面白さがまずいいです。また、三つの挑戦状を盛り込んだ贅沢さが何と言っても魅力的で、この大長篇を薄まった感じは微塵もなく高密度なものにしています。第一の挑戦の鍾乳洞での殺害トリック、第二の挑戦での手紙のトリック、そして第三の挑戦ですべてを集約させるダイナミックさは最高です。『ギリシャ棺の謎』を思わせる多重推理は、本格ミステリー好きにとってはたまらないでしょう。あと、読み返してみて気付いたのは、夏森村でのアリスと望月・織田の先輩コンビのディスカッションの楽しさです。特に望月先輩が張り切って推理に挑むクイーン・マニアらしさには、親しみを覚えました。
江神部長の「悲劇を止める」ために推理をするキャラクターも相変わらずでほっとするものがあり、紛れもない傑作です。ただし、あくまで好みの問題ですが『孤島パズル』での精緻をきわめた推理を超えた推理は見られなかったので、差別化のため8点とします。

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