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ミステリの祭典

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準急ながら
鬼貫警部シリーズ

作家 鮎川哲也
出版日1966年01月
平均点5.83点
書評数18人

No.18 7点 ぷちレコード
(2023/12/13 21:54登録)
土産物屋の店主殺しを中心にして、互いに関係のなさそうな事件の断片が提示される序盤から、刑事たちが駆け回って徐々に事件の全貌が浮かび上がる中盤にかけての展開は、捜査小説としての面白さを満喫させてくれる。
容疑者が絞り込まれて、鬼貫警部がアリバイ崩しに乗り出す後半も壮絶。仮説を組み立てては検証し、反証にぶつかって仮説を再構築する。それを何度も繰り返し、完璧なアリバイを少しずつ崩して犯人を追い詰める。そのダイナミックな論理の展開で、謎解きの醍醐味を堪能させてくれる。

No.17 6点 クリスティ再読
(2020/10/15 21:01登録)
鮎哲もやらなきゃね...なんて思ってたから、とっかかりは本作。
いや別に大した作品じゃない。「六、アリバイ」で犯人のアリバイが提出されて、「七、なぜパイを喰わせたのか」で鬼貫がアリバイを検証の上、看破する。だから一~五の文庫150ページが何なの?と思ってしまうと、逆に本作あたりは「長編ミステリとして、どうよ」という話になりかねないんだよね。

けどね、なぜか、鮎哲は愛される。この前半150ページに懸けて、実のところ評者も妙に鮎哲が好きなことを否定できないんだよ。まあ、本作のトリック自体、ホント大したものじゃないといえば、その通りなんだ。いわゆる「写真合成」じゃない、というあたりを丹念にツブしていくプロセスだとか、ほんわかしたユーモア感だとかもいいのだけども、北海道月寒・栃木烏山・愛知犬山・津軽・京都・伊豆雲見温泉・そして豊橋と短い作品なのに日本国中を駆け回るローカル色描写....で、このような日本各地をつなぐのが国鉄の列車である。
タイトルからして「準急 "ながら"」である。「今どき、準急に愛称がついてたりしないよ~」と言いたくなるような、懐かしい昭和ののんびりとした風情。東京から大垣まで6時間半かけて昼間に走る準急...特急でも急行でも、ましてや新幹線でもない、まさに庶民的で愛すべき準急の姿を、本作はミステリの中に定着したわけである。いや、いいね、ほんとに。

うん、鮎哲って、そういう作家なんだよ。

No.16 7点 文生
(2017/11/07 08:05登録)
アリバイ崩しを主軸とした作品ですが、トリック自体は作者の代表作と比べると小粒です。それでもアリバイを主張する容疑者に対してあーでもない、こうでもないと試行錯誤するさまは読み応え十分で本格ミステリとしての面白さを十分に堪能することができました。作品全体としても破綻なくまとまっており、手堅い佳作といった感じです。

No.15 6点 青い車
(2016/08/07 18:59登録)
 地道な捜査や、アリバイを見破る推理とその崩壊の繰り返しだけで読ませてくれます。カメラフィルムなどの知識が乏しいため読んでいて理解するのがやや大変でしたが、そこがまた昔の推理小説を読んでる満足感がありました。結果的にトリックはわりと小粒なものの、この作者らしく破綻なく練られていると思います。ただし、動機の説明があっさりと片付けられているところに物足りなさもあり、そこは少し減点対象です(それは直前に読んだ『人それを~』と比べたら、の話ですが)。

No.14 5点 nukkam
(2015/12/03 12:57登録)
(ネタバレなしです) 1966年発表の鬼貫警部シリーズ第10作のアリバイ崩し本格派推理小説です(読者が犯人当てに挑戦するタイプの作品ではありません)。全7章で(光文社文庫版で)250ページに満たない短い作品です。犯人のアリバイが成立した時はもう第6章に突入しており、鬼貫警部が前面に出て活躍するのもようやくここからです。残り少ないページ数で時刻表や写真からアリバイを崩そうと試行錯誤するところが本書のハイライトです。トリックもそれを見破られる失敗もそれほどインパクトのあるものではないのですが、その割に鬼貫警部に挑発まがいのことをする犯人の自信はどこから来るのでしょうかね。

No.13 6点 いいちこ
(2015/11/17 19:26登録)
地理的に遠く離れた一見無関係と思われる2つの事件が、警察の地道な捜査を経て、その密接な関係が浮かび上がってくる興味深いプロット。
メイントリックにはややチープさも感じられるところ、仮説の構築を繰り返す真相解明プロセス、とりわけ「なぜ遠方の写真店に現像を依頼したのか」というささやかな謎から解明に至る手際は実に見事。
人物造形やストーリーテリングは味わいに乏しく、一見して無味乾燥した印象を与えるものの、無駄のない筋肉質な構成はパズラーのお手本であり、一読の価値ある佳作と評価

No.12 5点 まさむね
(2015/06/07 20:47登録)
 個人的には、アリバイものは決して嫌いな訳ではなく、むしろ好きな部類なのですが、トリック自体が相当に地味でして、拍子抜けする方もいらっしゃるでしょう。
 一方で、謎めいた複数のエピソードが折り重なる序盤の展開や、「足で稼ぐ」刑事の姿、鬼貫警部の自問自答型推理などなど、何とも言えない懐かしさを感じる方も、これまた多いと思います。
 良くも悪くも“昭和”の香り溢れる作品ですねぇ。

No.11 8点 斎藤警部
(2015/05/20 12:34登録)
「ああ俺ってアユ好きだよなあ。。」と既に分かっている上で読んだ初めての作。鮎哲では既に五冊目でした。はじめて鮎川哲也を読んでから二十数年経っていた。好みも変わった事だろう。地味目に展開する話ですが一瞬たりとも退屈しなかった。徐々に徐々に、着実に解決に向かう捜査の描写が好きだ。古式ゆかしいアリバイトリックそのものより、アユさん独特のトリックを破る試行錯誤の雰囲気が好きなんだろうな、私は。 巧んでか巧まざるしてか、何ともトボケた味をチョィチョイ出して来るのもアユ師匠の大事な個性。本作のエンディングあたりは相当トボケてるなあ。 やはり、私には肌が合うんだと思います。
昭和40年前頃(’60年代中盤)の風俗がよく描かれているのも相当に素敵。

No.10 6点 ボナンザ
(2014/04/07 15:30登録)
シリーズの中では地味な印象。当然完成度は高いですが、マニア以外に率先して進める作品ではないでしょう。

No.9 4点 E-BANKER
(2013/04/20 20:20登録)
お馴染み「鬼貫警部シリーズ」の長編。
といえば、言うまでもなく鉄道・時刻表を絡めたアリバイトリックがテーマの作品。

~果たして、奇怪な殺人事件を解く鍵はどこにあるのか? 雪深き北海道・月寒で瀕死の怪我人を助けた海里昭子。その美談が十数年後、新聞に採り上げられた。一方、愛知県・犬山で経営不振にあった土産物屋店主が何者かに刺殺される事件が発生。だが驚いたことに、被害者の鈴木武造は、出身地・青森で健在だとの情報が入った。一見無関係な事件がダイナミックに絡み合う。そして鬼貫警部を悩ませるのは鉄壁のアリバイ!~

作者の「アリバイ崩し」としては「中の下」というレベル。
時刻表を駆使したアリバイトリックというのは、もはや現代の鉄道ダイヤでは不可能な“過去の遺物”になっていて、それだけノスタルジックで、守るべき「文化遺産」という感じ(あくまで個人的にだが・・・)なのだが・・・
本作のメイントリックはフィルムカメラの特性を駆使した「写真トリック」なのが好みからは外れている。
作品終盤、鬼貫警部が写真トリックでトライ&エラーを繰り返すプロットはまずまずなのだが、これってカメラの知識がないと読者にはお手上げではないか。

一見無関係と思われる二つの事件が結びつく・・・というプロットは面白そうなのだが、丹那刑事らの捜査で偶然に判明するというご都合主義が目立つのがちょっといただけない。
この辺は「黒いトランク」などの佳作とは、プロットの練り込み具合が違う。
人物造形もサラっと流していて、全体的に推理クイズレベルというのが偽らざるところかもしれない。

まぁ分量としては手頃なので、さっと読むにはいいかもしれないが、敢えて手に取るほどの作品ではないかな。
評価もやや辛め。
(「ながら」は当時、東京~大垣間を走っていた準急列車。当然、長良川の「ながら」・・・)

No.8 5点 isurrender
(2011/05/15 21:25登録)
巻末の解説で西沢氏が、こういう本の凄みが分からなかったかつての自身は甘かった、みたいなことを述べていましたが、僕もまだまだ甘いということなのでしょうか?

No.7 5点 江守森江
(2010/12/26 18:48登録)
この作品の書かれた時代にはフィルム式のカメラも高級品で一般家庭にさほど普及していない珍しい品だったのだろう、新し物好きな当時の推理作家達?(清張や土屋隆夫)がアリバイトリックに使用していた。
同時期に似たようなトリックが連発され更に藤原宰太郎の推理クイズネタにもピッタリな為にネタバレされまくった。
本作にはその程度の印象しか無かったので書評をアップしなかったのだが、以下を書きたいのでアップする。
※ほとんど余談
デジカメ全盛でフィルム式は廃れているが、小細工が科学的に見破り易い(要するに本作レベルのトリック)ので証拠の改竄がしにくい→日本では証拠資料写真には今でも、改竄が見破り難いデジカメではなくフィルム式が使われているらしい(←クイズ雑学王で出題された)
※ついでの余談
デジカメ登場以前、フィルム式で撮った○○写真は現像してもらえず、マニア向け雑誌に投稿して現像返却してもらった事がある(要するに目線入りで雑誌掲載された)

No.6 5点 りゅう
(2010/12/26 15:45登録)
 トリックは、種明かしを読むと「なあんだ!」と思うぐらい拍子抜けするものでした。途中で、鬼貫警部がフィルムカメラを使ったトリックに関する推理をいくつか披露していますが、こんな方法で本当にうまくいくのだろうかと悩んでしまいました(フィルムカメラも懐かしいアイテムになってしまったということでしょうか)。隕石がぶつかって気を失う女性、土産物屋にこけしの売り込みで近づく犯人など、それにしても風変わりな設定ですね。

No.5 6点 測量ボ-イ
(2009/06/26 19:59登録)
鮎川氏お得意のアリバイ破りもので、写真トリックが登場
します。でもこのオチは微妙・・、何だか西村京太郎氏が
使いそうなトリックですね(おっとネタばれか?)

謎の解明に関係ないですが、事件の関係者であった医者が、
父親が殺人者の汚名をきせられていたので自身が慕う女性
と結ばれない関係であったのが、その疑惑が晴れて二人は
めでたく結ばれる・・・というシ-ンが妙に印象に残りま
した。

No.4 6点 ギザじゅう
(2003/08/25 18:40登録)
写真にアリバイトリックがあったせいか、丹那刑事とのディスカッションが少なく感じた。
けれど、鬼貫警部の推理の過程は面白いし、コンパクトにまとまっていてよく出来ていると思う。

No.3 7点 テツロー
(2002/10/16 23:55登録)
 前半と後半で主要登場人物が違うし、前半は海里昭子と巴屋のそれぞれの事件と、二つの事件の関連を調査する展開で、後半がアリバイ崩しメインの展開なのだから、第1部第2部という風にもっと大きい括りにした方が、メリハリが効いて良かったと思う。細かい事ですが。
 前半の方が面白かったかな。多数の証言を元に事件を形作る捜査過程が良かった。文章もテンポ良く読みやすい。
 後半のアリバイ崩しも、トリックそのものは良いのですが、鬼貫が一人だけで考え、煮詰まっていく辺りが、どうかなと。もっと他の刑事とディスカッションしてくれぇ、などと思った。アリバイが崩れた後も、事件のことを感慨深く振り返ることも無く、「手がかりにすぐ気付かなかったことを部下に揶揄されたらどうしよう」と考える、ここら辺も何かずれてるな、と感じた。
 文章は言われるほど古い訳では無いし、描写される風俗・世の中の様子は、程好くノスタルジーを感じさせます。全体としては、良です。

No.2 5点 由良小三郎
(2002/03/14 22:16登録)
1966年の作品です。文章とかは僕には古くなくて読みやすいのですが、読み終わるとやはり古く感じるのは、犯人のアリバイくずして、おそれいったかという感じで、牧歌的なところを感じるところです。あえて読まなければならないほどの傑作ではないと思いました。

No.1 6点 tenkyu
(2001/08/31 18:55登録)
う〜ん、期待ほどではなかった。
転回がないのだよ、転回が。
・・・楽しみにしてたのに。

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