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ミステリの祭典

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どちらかが彼女を殺した
加賀恭一郎シリーズ

作家 東野圭吾
出版日1996年06月
平均点5.57点
書評数72人

No.72 6点 メルカトル
(2024/07/02 22:29登録)
「お兄ちゃん以外、信じられなくなっちゃった」
電話は切れ、妹は殺された。
愛知県交通課の兄・和泉は、
犯人への復讐を決意し、現場の証拠を隠蔽する。

容疑者は元恋人の男と親友の女。
決め手が見つからないなか、
練馬署の加賀刑事だけは兄の工作を嗅ぎ取る。
Amazon内容紹介より。

本作をノベルズ版で読んだ人はさぞかしモヤモヤしたでしょうね。何しろ犯人がどちらか書かれていない訳ですから。頼れるのは自身の推理のみ、自信のある人はどれだけいたんでしょうか。クレームの電話が殺到したのも已む無しですね。幸い私は文庫本で読んだので袋綴じである巻末の「推理の手引き」があった為、モヤモヤは回避出来たんですが、それでも犯人を断定するのに一抹の不安が残りました。全くどこまでも意地の悪い・・・。

最初から分かっていた事ですが、自分で推理せねばならないという命題を背負って読みました。解説そのままの引用にはなってしまいますが、読書中に思った事なので敢えて書きます、あまりに多くの手掛かりがばら撒かれて、どれが決め手なのか見当が付きませんでした。しかしそれは複雑なものではなく、至ってシンプルなものでした。残念ながらカタルシスは生まれませんでしたが。「手引き」がなかったらマイナス1点は堅かったと思います。それとは別に、自分がどれだけレベルの低い読者であるかを嫌でも自覚させられました。

No.71 7点 take5
(2023/03/29 11:36登録)
東野圭吾の殺したシリーズ
謎解き第一弾
お風呂で二時間一気読みして
上がってから早速
どちらかが犯人だろうと
文庫の袋とじをカッターで開いていたら
息子は袋とじの文化を知りませんでした。
開いちゃった文庫を譲ろうと思います。
袋の中は明快に解答があるわけでなく、
ヒントだったのではっきりカタルシスは
得られませんでしたが、
文庫の体裁を含め内容もエンタメとして
大変お勧めできます。
しかし深みも人間の描写も求める方には
お勧め致しません。
また、袋とじという古きよき文化を
継承しつつ、今日の読者がネットで
犯人を確かめる欲を抑えられないという
構造もまたこの作品の毒が効いていて
東野圭吾っぽく思うのです。

No.70 3点 文生
(2022/08/17 09:35登録)
試みとしては面白いとは思うけれど、探偵役の推理にカタルシスを覚えることを期待してミステリーを読んでいる身としては肩透かし以外の何ものでもなかった。
個人的には自分の推理がことごとく外れて予想外の真相が提示される作品こそが至高のミステリーだと考えているので、自分で真相にたどり着かなくてはならない作品はどうにも物足りない。

No.69 1点 Fヴァンス
(2019/07/14 15:56登録)
「私が彼を殺した」の評でも書いたが、最後に犯人を明かさないこのような作品はミステリーの基本からずれたもので論外だと思う。これなら作者は解決編を用意せず、いろいろ謎をかけておいて書きっぱなしでよい。中途半端で放り出したのと同じ。「斬新な試み」と評価する向きもあるが、私は単純にこんなものはインチキだと言いたい。

No.68 7点 ミステリ初心者
(2019/02/24 18:39登録)
 ネタバレをしています。文庫版です。

 これまでに読んだことのないタイプの推理小説で、個性があってよかったです。最後まで読んだとき、「??」でした(笑)。例えるなら、ラストページに読者への挑戦状があり、解決編がない感じでしょうか? 解決編がないものの、犯人断定の手がかりがあり、理不尽な感じもしないので、ありでした。
 妹を殺された兄が、犯行現場の証拠を勝手に持ち出して独自に事件を捜査→復讐のために潤一と佳世子を追う。それを加賀が追うといった構図が、なんだがスリリング(?)で、ページがすいすい進みました。東野作品は物語の構成がうまいのか、文がうまいのか、毎回読みやすくて良いですね…。倒叙もののような趣で、なおかつフーダニットの楽しみも損なわれてないですね!
 話の流れ的に、潤一と佳世子の利き手を解き明かせば犯人がわかるのは理解しましたが、読み返す作業が煩わしく感じ、袋とじ解説を読んでしまいました(笑)。

 以下、難癖。
 園子は、文を書くときや食事が右利きのやり方で、その他が左利きのやり方…というのは、兄である主人公の述懐なんでいいですが、その他の人たちもそうとは限らない気はします。左利きの人は右もうまく扱えることが多いから右利きの殺し方でも左利き犯人だ~といった作品も見たことがあり、推理小説にでてくる"利き手問題"は作品によって立場がころころ変わるのが苦手です。

No.67 6点 りゅうぐうのつかい
(2017/07/24 19:22登録)
『私が彼を殺した』の方を先に読み、そちらでは「推理の手引き」を読んでも犯人がわからず、ネットでネタバレ検索をしてようやく理解できたので、本作品は最初からかなり注意深く読んだ。それにも拘わらず、本編だけでは、加賀が他殺であると判断した根拠に確信を持てずじまいで、「推理の手引き」まで読んでようやくある程度の確信を持ったが、やはり、ネットでの確認が必要であった。
「推理の手引き」を読むと、文庫版では親本からカットされた箇所が一つあり、難易度が増しているとのこと。
タイトルどおり、容疑者が二人だけに絞られたシンプルなフーダニットの作品。被害者の兄の和泉康正が地元警察の捜査に委ねずに、証拠を一部隠ぺいして自殺と見せかけ、自ら調査して、犯人を追求する話。事件を取り巻く状況は凝っているし、最後に関係者が集まってからの訊問による二転三転も面白い。しかし、容疑者の供述に嘘が多くてわかりにくいし、犯人特定の条件となった○○○は根拠として弱いのが難点。

No.66 3点 nukkam
(2017/02/13 09:54登録)
(ネタバレなしです) 多彩な作風の東野には実験的と言えるような作品もありますが1996年発表の加賀恭一郎シリーズ第3作の本書はそんな一冊です。あまりにも有名なので私は読む前に問題の箇所をうっすらと知っていました。普通なら先にネタを知ってしまうのは読書の楽しみを減らしてしまうのですが本書の場合はむしろ失望を減らしたと言う点でよかったのかも。もし何の予備知識もなしで読んでいたら私は失望どころか激怒したかもしれません(私は袋綴じ付きの講談社文庫版で読みました)。主要登場人物は1人の被害者と2人の容疑者と2人の探偵役の少数です。探偵役の1人である主人公は同時に犯人への復讐者でもあり、もう1人の探偵役である加賀刑事の捜査を妨害するというプロットは大変充実していて終盤までは十分に楽しめる内容だったのですが結末の仕掛けであーあです(笑)。当然この仕掛けゆえに有名になったので成功作とは言えるでしょうし、高く評価している人が多いのもわからなくもないのですが本格派推理小説としてこれは読者を馬鹿にしてると感じる人もいるのではないでしょうか。

No.65 6点 青い車
(2017/02/09 21:33登録)
 まだ作者が超売れっ子になる前の作ですが、この頃から既にストーリー運びのうまさは完成されています。被害者の兄を視点にして緊張感を保ちつつ、文章そのものは平易なのでしんどさを感じずすらすらと展開を楽しめました。ただ何か文句を付けるとするなら、利き腕だけでなくもう一つか二つ犯人を当てる手がかりを配置した方がコクが増したのではないでしょうか。

No.64 6点 いいちこ
(2016/10/12 15:58登録)
「最終盤まで犯人候補を2人残しつつ、真犯人を特定しない」というアイデアの勝利。
本作を執筆するうえでは、このアイデアが厳しい制約条件となる訳だが、本格ミステリとしても、エンタテインメントとしても、一定の水準を保持した筆力を評価。
容疑者が限定的であり、真犯人を特定する手がかりがわかりやすい等、プロットが平易で一本調子であることは確かだが、広く読者が推理に参加するためにはやむを得ない配慮だと思う

No.63 4点 パメル
(2016/08/04 12:52登録)
登場人物を可能な限り排除し推理の過程を楽しむコンパクトにまとめられた作品
解決に必要な手掛かりはすべて示してあるので
「読者のみなさん解いてみてください」
そんな挑戦状を叩き付けられたような究極のフーダニット
試みとしては面白いと思うが利き腕から考えて●●の方が怪しいという程度で犯人を
特定するというのは納得できない

No.62 7点 風桜青紫
(2016/01/15 02:23登録)
なかなかスリリングな展開で一気に展開していくストーリーに引き付けられた。倒叙ミステリとしてもなかなかよくできており、加賀さんの恐ろしさには舌を巻くばかり。このあたりになると文章もずいぶん平易で、話し運びも上手いので、リーダビリティも高い。しかしなんといってもあのとんでもないオチである。ネタバレ(?)をされている人も多いようだが、あのように落としてくるとは予想外だった。犯人当てについてはなんだかしょうもないんだけども、初見のインパクトはなかなかのものだ。東野圭吾の技術の鍛練が色濃くでた作品といえるだろう。

No.61 7点 斎藤警部
(2015/10/06 06:50登録)
最後のシーン、二人の容疑者間の泥仕合には辟易。思わず「お前ら、どっちも悪い奴には変わり無いだろうが!?」って言いたくなりますw

フロンティア精神溢れる挑戦企画には拍手を送りましょう。 が、これだけの素晴らしい内容なら普通の推理小説として読みたかった気はかなりする。本当に回答がオープンになっているリドルストーリーとは違うんだし。。 そうそう、この小説は犯人だけでなくもう一人偽装をしている(読者には知らされている)人物が登場するんですよね。そういう興味深い構造も内在しているのに、いや、だからこそやるのが圭吾さんのこだわりの味なのかも知れないが、大きな一ひねり(複数構造の隠匿者)が巨大なひねり(作者が犯人明かさない)の陰に隠れちゃってる嫌いがあるのは何やら勿体無いよな気がします。

ところでこの小説が一般的な読者に促がしているのは「ちゃんと推理すること」よりむしろ「たまには再読すること」だったりしないかな?

No.60 6点 mozart
(2015/09/10 14:31登録)
確かに犯人を特定する決め手にやや難があるのは事実ですが、こうした作品でも最後まで一気に読ませる作者の才能には率直に感嘆しました。

【ややネタバレ?】
自分も「隠れ左利き(字と箸は右利きだけどマウスとかは左利き)」なので、○○を××する時は全く同様の「作法」でやっているため、それほど「強引」な解釈とは思いませんでした。

No.59 5点 ボナンザ
(2014/04/08 01:57登録)
おもしろい試みではあるが、肝心の内容が。
本当にあっちが犯人であっているのか未だに自信がない。

No.58 4点 バード
(2013/06/20 20:47登録)
読者に推理を丸投げするオチというのは知ってて読んだのでかなりきちんと考えながら読んだ。それでも犯人がどちらかわからず諦めて推理の手引きを見た。
そしたら犯人特定の理由がそれだけ?という内容だった。このような試みをした以上話が地味なのはしょうがないがもっと確実に絞れる内容にしてほしい。(紙の袋のあけ方なんざ利き腕にかかわらずその時々だろ・・・。)

No.57 4点 蟷螂の斧
(2012/08/24 17:26登録)
(ネタばれあり)                                                    設定(犯人が不明のまま。犯人の偽装+兄(警察署勤務)の偽装。兄と加賀刑事との対決)は非常に面白いと思います。しかし、犯人特定については、何人かの方が指摘しているよう納得はできませんでした。利き手を睡眠薬の袋の破れ方から推理(読者)するものですが、これは不可能でしょう?犯人がすべての袋を同じ面、同じ方向から破っているのなら理解できますが、裏にして破ったかもしれないし、上下左右逆にして破ったかもしれないし、左手または右手を手前に引いたかもしれないし・・・・・・この推理自体が誤り?(笑)

No.56 8点 Tetchy
(2011/12/27 21:43登録)
あえて犯人が誰かを書かない本格ミステリという野心的な作品である本書は発表当時非常に話題になったものだ。これは『名探偵の掟』にも登場人物の口から語られていた
「本当に推理しながらミステリを読む読者なんているのか?」
という疑問を解き明かす為に東野氏が読者に挑んだ作品なのだ。

だから探偵の解決にカタルシスを感じる方なのでダメだったとか犯人が書いてないなんて、どうして!とか論じている人は本書を発表した意図を十分に汲み取っていない。

私は推理をしながら読む方なので本書を十分に愉しんだ。色々な証拠や伏線を加賀や和泉に解き明かせて犯人を絞り込むある一点だけに読者に推理させるようにしているのは東野氏が読者が推理できるように配慮してくれたように解釈した。

推理小説は「推理する小説」。こういう試みは大歓迎。
単にパズラーに徹していなく、刑事対警官という構図でサスペンスを煽った東野氏の技巧を素直に誉めたい。

No.55 5点 haruka
(2011/05/07 00:13登録)
被害者の兄と加賀刑事の推理合戦という点で楽しめた。肝心の犯人当ては、犯人だと断定するだけの根拠が弱い気がした。

No.54 9点 3880403
(2011/04/06 20:09登録)
おもしろい。
二者択一なのだが、はじめは直感でしか犯人が分からなかった。
読み返してみて分かった時は納得(伏線ができている感じ!)

No.53 8点 E-BANKER
(2011/01/30 22:32登録)
加賀恭一郎シリーズの第3弾。
練馬署勤務時代の加賀刑事が描かれます。
~最愛の妹が偽装を施され殺害された。愛知県警豊橋署に勤務する兄・和泉康正は独自の現場検証の結果、容疑者を2人に絞り込む。1人は妹の親友。もう1人はかつての恋人。妹の復讐に燃え、真犯人に肉薄する兄。その前に立ちはだかる練馬署・加賀刑事。殺したのは「男」か「女」か、究極の推理!~

なかなか評価の分かれる作品のようですね。
で、個人的には「たいへん良くできてるミステリー」だなという評価。
本作を「究極のフーダニット」と見ると、ラストの「企み」がアンフェアとかもどかしさにつながるのかもしれません。
伏線がこれでもかと張られてるわけですから、読者としては、それを1つ1つ拾わされ、結局真犯人の名前が明かされないわけですから、「なんで?」と思うのもまぁ分からなくはないですね。
ただ、その作り込みがハンパなく精密にできてます。そういう意味では、再読して伏線をすべて確認していくべき作品なのかもしれません。(あまり楽しくはないかもしれませんけど・・・)
真犯人-和泉-加賀という三者の関係性も絶妙。「犯人探し」と「倒叙形式」の融合というわけで、作者にとってはかなり難しさもあったのでは? などと思ってしまいます。
というわけで、どちらかというと「面白い」と言うよりは、「感心!」ということでの評価。
(文庫版巻末の「推理の手引き」は必須ですね。これがないと本作が成り立たない)

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