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ミステリの祭典

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聯愁殺

作家 西澤保彦
出版日2002年03月
平均点6.60点
書評数20人

No.20 6点 メルカトル
(2021/06/28 22:23登録)
大晦日の夜。連続無差別殺人事件の唯一の生存者、梢絵を囲んで推理集団“恋謎会”の面々が集まった。四年前、彼女はなぜ襲われたのか。犯人は今どこにいるのか。ミステリ作家や元刑事などのメンバーが、さまざまな推理を繰り広げるが…。ロジックの名手がつきつける衝撃の本格ミステリ、初の文庫化。
『BOOK』データベースより。

冒頭に主な登場人物一覧が記載されていますが、何とも読み辛い名前の多い事。一礼比(いちらお)、双侶(なるとも)、凡河(おつかわ)、丁部(よぼろべ)、これは読めないって。他にも舎人(とねり)、口羽(くつわ)、寸八寸(かまつか)等々。嫌がらせかと思うほどで、覚えきれず何度も前に戻って読み直さなければなりませんでした。
まあそれはそれとして、ミステリ作家達の連続殺人事件に対するアプローチが、もう一つ凝ったものであったり、突飛な発想から出たものであったならもっと面白かったと思います。しかし重箱の隅をつついたような些細な事柄から、推理の翼を目一杯広げていく作者の苦心の跡が見られて、そこは認めなければならないでしょうね。

オチはブラック過ぎて、ちょっと引いてしまいました。そこまでするか、という悲惨な結末。この余韻に浸れる人はかなりディープなメタミスファンかも知れません。メタと言っても、誰もが想像するような一種爽快感や酩酊感を伴うものではなく、只管暗く救いのない構成の妙が効いた、他に類を見ない仕掛けが施された作者らしいものです。これは評価が割れるでしょうね、高低の差が激しいですがさもありなんと言った所です、いや気持ちは分かりますよ。

No.19 9点 zuso
(2020/07/29 20:28登録)
複数探偵による推理合戦は作者が自家薬籠中のものとしている魅力的なシチュエーション。これまた、と思わせておいて結末で見せるどんでん返しの凄まじさ、論理のアクロバットだけで読ませて、かつ面白い。

No.18 5点 ミステリ初心者
(2019/05/26 01:04登録)
ネタバレをしています。

 過去の連続殺人事件の生き残った被害者と、担当刑事、ミステリ作家や警察OBや心理学者などが集まる恋謎会でディスカッションして解明しよ~! 的な内容です。毒入りチョコレート事件を思い出しました。
 各人の披露する新事実と推理によって、物語が少しずつ分かっていきます。みな、どこかで否定されてしまうのですが、それぞれ面白い推理でした。
 真相はどんでん返しがあり、楽しめました。被害者が返り討ちにする→その後、被害者が犯人の計画を沿う…の構成を効果的に魅せ、隠すためにうまく叙述トリックを取り入れられています。梢絵が知らない、知りたいのは襲ってきた男の動機であり、嘘は書いてありません。
 物語が進むにつれ、梢絵はかなり怪しくなっていきます(笑)。そのため、まあ梢絵が犯人なんだろうと高を括っていたのですが、襲われた順番が大きな問題であり、頭を悩ませていました。最後まで読んでみて、なぜこの叙述トリックに気づかないのだろうと、あらためて自分の頭のパープリンさに絶望しました(笑)。私は叙述トリックに一生ひっかかり続けるでしょう。

 以下、好みではなかった部分
 読者が推理を楽しむ類の小説ではなかった。新事実→推理→新事実→否定の流れです。その形式の小説は多々あり、この作品特有のものではないのですが、自分は好みではありません(笑)。作者が勝手に推理をしてしまって、置いてけぼり感があります。
 場所・時間をあいまいに書き、その認識をずらす類の叙述トリック自体は目新しさはなかったと思います。しかし、自分はだまされたし、使い方がうまいな~とは感じました。
 偶然に偶然がからみ、読者が真相にたどり着くのはかなり難しいと思います。梢絵が襲われた後、架谷を殺すまでは動機も納得しましたが、それから何人も殺すのはよくわかりません(笑)。ラストシーンでは、狂ったようになっていたんで、もう半分狂ってたんでしょうね。

No.17 8点 名探偵ジャパン
(2018/06/06 13:07登録)
大好きな作品です。
手がかりがどんどん後出しされるという展開に不満を持つ方もいるようですが、それらは「警察側が事件解決には不要と思い伏せていた手がかり」のため、探偵がそれを知らないまま推理を繰り広げ、それを受けて必要だと思ったら警察が新しく手がかりを出していく、という流れは自然でかえってリアルだと思います。これはいわゆる「後期クイーン的問題」を作品内レベルに落とし込んだものなのですよね。

真相も後味の悪さは残りますが、納得のできるものでした。「後味の悪い終わり方をして読者に苦い読書体験をさせてやろう(笑)」という作者の嫌がらせに近い、メタレベルからの介入による後味の悪さではなくて、作品内できっちりと流れのある展開だからでしょう。

ただひとつの不満点は、登場人物の名前です。どうして意味もなくこんな難読漢字を当てるのか(西澤は本作に限らずそういう傾向が多いですよね)。読書のテンポを阻害する要因でしかありません(これこそ嫌がらせでは)。ここまで変な名前を出すのであれば、初登場時だけではなく毎回ルビを振ってほしいです。

No.16 6点 レッドキング
(2018/06/04 18:31登録)
犯人を殺人鬼にまでしちゃう二段落ちはくどいような気が 最後はあの殺人で終わらせてよかったじゃん

No.15 8点 パメル
(2018/05/23 01:12登録)
ミステリ作家・私立探偵・犯罪心理学者が集まる推理集団「恋謎会」が、連続無差別殺人の唯一の生き残りの梢絵をゲストに呼び推理合戦をする。
ほぼ全編に渡り、推理合戦が繰り広げられるが、飽きることは無かった。
内容的には古典的な多重解決ものですが、それだけでは終わらない。正統派と思わせておいて、最後には衝撃的などんでん返しが待っている。
大胆なミスディレクションと構図の技巧が光る作品。
再読をおすすめしたい作品のひとつで、初読時とは違った印象を持つと思います。

No.14 7点 パンやん
(2016/04/05 08:00登録)
推理集団がそれぞれ突拍子もない珍説、怪説を展開するのが楽しめるのだが、あらゆる伏線を回収する終盤の畳み掛けが秀逸、再読に値する良作なれど、後味は悪くてコワイ。しかし、名字が難しいのにはマイッタよ。

No.13 6点 斎藤警部
(2015/08/07 22:36登録)
愉しい愉しい多重解決物語。。で終わるわきゃ無いよねえ、と思ってたら、そういう事だったんですか! aさんの動機はだいたいそういう事ですねとまず納得、ところがbさんの動機は。。 珍しい連続殺人動機として珍重しますが、そこまでするほど頭のぶっちぎれた人には見えないんですが、bさん。。 しかしこの構成の妙は、一連の事件の真相と合わせて後からじわじわ来ますね。

「これらの名前の共通点に気づきませんか?」 には笑ったなあ。 揃いも揃って超の付く珍姓さんばかり、に決まってんだろ! って突っ込みたくなった。  

No.12 4点 蟷螂の斧
(2015/04/03 14:41登録)
色々な試みは評価したいと思いますが、その結果プロット等に無理が生じてしまったという印象です。第1章は読者にヒントを与えていない点でアンフェアかな?。第2章は、主人公の心理描写がありますが、大いに矛盾しているように感じます。1人称であれば許容できるものですが、三人称では???。やはり、最大の疑問・謎は、なぜ「恋謎会」で討議されなければならなかったのか?。これも突き詰めていくと矛盾していると思うのですが・・・。

No.11 8点 いいちこ
(2015/03/04 20:18登録)
本書のプロット・構成に対してアンフェアとの意見も散見されるが、氷川透氏による解説が的確だと思う。
一見して、本作の大半が「犯人はなぜ主人公を殺そうとしたのか?」という謎に対する「解決篇」を装いながら、実は大半がより上位の謎に対する「問題篇」であるという構成が絶妙。
主人公の思考を読者に対しての伏線としつつ、逆にミスリードする仕掛け、真相を隠蔽するトリックのいずれもが実に巧妙。
犯人の動機は陰惨な犯行と犯人を待ち受ける壮絶なラストに相応しく、読み応えのある傑作。

No.10 6点 ボナンザ
(2014/08/23 00:29登録)
どこまでを出題編と考えるかでフェア・アンフェアが分かれる。
まあ、どんでん返しもうまくまとまっているし推理する楽しみと合わせて傑作と呼んでよいだろう。
でも最後の本当の動機しょぼすぎじゃない?

No.9 4点 いけお
(2012/05/27 02:38登録)
推理している連中のレベルが低過ぎ。
個人的にはラストだけはアンフェアとは感じず、全体の構成含め意外で楽しめた。

No.8 7点 黒い夢
(2011/12/16 08:01登録)
読み始める前と後で印象がかなり変わりました。
推理合戦をメインに考えていたのですが、それにしては手がかりがあとからあとからでてくるのでおかしいなぁとは思ってたんですが。
読み終えてすべて納得できました。

No.7 6点 yoneppi
(2011/10/07 21:57登録)
かなり期待していた作品で、ちょっとハードルを上げ過ぎた。最終章は必要なのかとたしかに思った。あと、登場人物の難しい名前も。

No.6 6点 E-BANKER
(2011/03/21 01:09登録)
(引き続き、ミステリーを楽しむことのできる喜びを噛み締めながら・・・)
ノンシリーズ。
なかなか手の込んだ面白い手法を盛り込んでいる作品。
~大晦日の夜。連続無差別殺人事件の唯一の生存者である梢絵を囲んで推理集団「恋謎会」の面々が集まった。4年前、彼女はなぜ襲われたのか、犯人は今どこにいるのか。ミステリー作家や元刑事などのメンバーが様々な推理を繰り広げるものの・・・~という粗筋。

前半から中盤に渡って繰り広げられる推理合戦は、バークリーの名作「毒入りチョコレート事件」を完全に意識したプロット&展開のように見えます。
しかしながら、真相&ラストは、本家とは異なっていて、ある明確な回答が示される。(それがサプライズ!)
フェアかアンフェアかと聞かれれば、確かに後出しジャンケン的なところもあるため、アンフェアな気はしますが、これはこれでプロットの妙という見方もできるのでは?
冒頭部分もうまい具合に「効いて」おり、サプライズ感を増す結果に。
ただ、この真相なら、果たして途中の推理合戦にそれほど意味があるのかという気がしないでもないところが「ちょっと気になります」かねぇ・・・
まぁでも、現代ミステリーらしい切れ味とテクニックを感じられる佳作っていう評価でいいでしょう。
(ラストは割りとブラックなオチ。あと登場人物の名前がややこしくてなかなか覚えにくい・・・)

No.5 10点 文生
(2010/01/19 14:07登録)
推理合戦の内容はかなりゆるく、あとから新事実が提示されるなどパズラーとしてはフェアとは言い難いのですが、本書の主眼は実は別の所にあります。
単なる多重解決ものだと思って油断していると最後にとんでもない背負い投げをくらってしまいます。
推理合戦はその1点に収斂させるための手段にすぎません。
正直なところ、そこにいたるまでの展開に中だるみを感じるという看過しがたい欠点があるのですが、その衝撃の大きさに10点進呈です。

No.4 6点 シーマスター
(2009/08/25 22:02登録)
この人の、「七回・・」を始めとするロジックのための妙ちくりんな設定の話はあまり好みではないし、(本作に近いタイプとされる)ビールの話も退屈だったので、本書を読むにあたり期待度を低め(4m10cm位‥イシンバエワ残念)に設置して挑んだのが功を奏したのか、個人的にあまり肌に合わない西澤作品にしては、いれ込めた話だった。

だけど所々ウソっぽい状況が鼻につかなかったわけではない。
たとえば新聞の投書欄に、投稿者の住所をフルで載せるなんてことがあるだろうか?

また、なのさんが御指摘のように、「みんなで推理し合う」話なのに、あとからあとから「知らされていなかった事実」を次々出してくるのは如何なものかとも思うが、作者自身元々本作を「正統派の推理ゲーム」なんぞにするつもりは毛頭なく、この毒チョコ形式は「意外な真相」を際立たせるための手段でしかなかったのだろう。
ただ本作のメインテーマである「動機」はやはりスッキリしない。

それでもdeiさんやaoさんが仰るとおり、パズラー好きが楽しめる「語らいの一夜」にはなっています。国会答弁のような「ああ言えば、こう言う」、ロジックというよりコジッケな議論も多いけど。

味のある役者を揃えて映像化したら面白いだろーな。

No.3 9点 dei
(2008/07/29 19:34登録)
あるひとつの点を除いて非常にうまく構成されたミステリ

特に本格が好きなら間違いなく楽しめる

No.2 4点 なの
(2004/09/05 21:59登録)
推理合戦はいいんですけど、情報が曖昧過ぎて唐突です。
伏線は張ってあるので、真実には近付き易いのですが・・・。
この手の作品の場合、持ち札は最初に明かすべきでは?
ちょっとアンフェアな感じです。

No.1 7点 ao
(2002/06/19 15:10登録)
西澤作品としては可もなく不可もなく。面白い試みとは思うけど。『毒チョコ』を彷彿とさせる作品だけど、構成は全然違う。推理合戦が本書のほとんどを占めているのでそれを楽しめる人なら面白いんじゃないかな。ラストは西澤らしい驚きの結末。

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